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異神退散
300. 階段発見
波打つ壁を見て、僕が咄嗟にやったのはゴーレム作成だ。材料は壁際の空気。笑い声に反応して、壁に異変が生じるなら、それを遮断してやればいいんじゃないかと思ったんだ。だけど、その狙い通りの効果があるかはわからなかった。何故なら、間に合わなかったから。空気ゴーレムができあがるのと、両側の壁から何かが生えるのとは同時だった。
「腕だ!」
「こっちもだよ!」
レイとサリィが互いに背を預けつつ報告する。二人が言うとおり、壁から生えてきたのは1m級の大きな腕だ。それぞれ右腕と左腕で、変に芸が細かい。
「どうする? 一旦下がるか?」
「いや、戦おう。下手に逃げても伝播していくだけだよ」
ローウェルの問いに、返事をする。敵は壁だ。動きまわったりしないから、こちらも下手に逃げ回るより、一カ所に留まって安全地帯を確保した方がいい。
ハルファとローウェルとスピラが右腕に、レイたち三人とシロル、プチゴーレムズが左腕に向かった。僕は少し下がって空気ゴーレムの作り直しだ。両腕が壁から突き出てきたときにさっきのゴーレムが壊れてしまったからね。もう一度作り直して、隣の壁に影響が及ばないように通路を塞ぐ位置に待機させておこう。まあ、コイツらには口がないから、そもそも笑い声を出せるかどうかわからないけど。
狭い通路でデカい腕が暴れるから、スペースの確保が難しい。攻撃を避けた先で味方とぶつかるなんてことになるとピンチになる。その点、右腕担当のハルファたちは上手くやってるけど、左腕担当のレイたちは苦戦している。
というか、これ、アレンたちが足をひっぱってるな。レイたちは上手く連携できてるけど、プチゴーレムズとぶつかりそうになってもたつくことがある。
「プチゴーレムズとシロルは、獅子の頭を止めて!」
「わかりました!」
『了解だぞ!』
一つ向こうの壁では、獅子の頭が健在。不気味な笑いでさらに周辺の壁を魔物化しようとしているので、プチゴーレムズにはそちらを止めてもらおう。抜けた穴には僕が入る。
「トルト、こっちは片づいた!」
「こっちももうすぐだよ!」
先に仕留めたのはローウェルたち。その頃には、僕らも左腕を追い詰めていた。壁から出る魔物は、思ったほど強くない。最初のドラゴンはともかく、大蛇は丸呑み以外大したことがなかったし、腕も固いだけで攻撃力は控えめな印象だ。出現の仕方にインパクトがあって動揺したけど、落ち着いて対処すれば勝てる相手だね。
「たぁっ!」
すでにボロボロになっていた左腕にミルがトドメの一撃を入れた。切断したわけじゃないけど、力尽きた左腕がだらりと地面に落ちる。手の甲に、切れ目が入った。
――ギッギッギッ
「げっ、そんなのアリ!?」
切れ目から笑い声が漏れる。左腕だけじゃなくて、先に倒した右腕からも。慌ててトドメをさすけど――――
「あ、隣の壁が揺れてる!」
スピラが異変に気づく。対処が間に合わず、隣の壁に伝染してしまった。空気ゴーレムで通路を塞いだくらいじゃ、防げないみたい。まだ、揺れてるだけだけど、心なしか激しくなっている。いずれは魔物化しそうだ。
「見て、トルト!」
またしても、何かを知らせる声。今度はハルファだ。だけど、その報告は僕らにとっては朗報だった。
「階段だよ!」
指さすのは、右腕の生えた壁があった向こう側。倒したことで、壁は消えている。薄らと暗いダンジョンで、どうにか見えるか見えないかってくらい先に、階段らしきものが見える。
「〈フローティング・ライト〉」
ふよふよ浮かぶ光弾を追加して、廊下の先に飛ばす。確かに階段だ。
この場に踏みとどまって戦おうかと思っていたけど、階段が見つかったのなら話は別だ。下の階に降りてしまえば、面倒な壁の魔物を相手にする必要はないんだから。
「みんな、階段まで走ろう!」
幸いなことに、階段までの壁はまだ魔物化していない。少し離れた場所にいるアレンたちを待って、みんなで走った。少し遅れて、背後の壁が魔物化する。ギリギリセーフだ。新たに生えたのは、悪魔みたいな彫像が左右に一体ずつ。ギラリと目を光らせて魔術を放ってきた。
「防ぐね!」
通路を遮断するように、スピラが氷の壁を張る。思ったよりも威力が高くて、氷壁の一部が吹き飛ぶけど、攻撃は無効化できた。そのまま階段に駆け込む。
「ふぅ。厄介な敵だったな」
敵が見えなくなる位置まで階段を降りたところで、レイが深々と息を吐く。僕を含めて、みんなが頷いた。突然現れるし、現れるまでどんな敵かわからない。しかも、次々仲間を増やしていく。勝てなくはないけど、厄介。そんな印象だ。
「まあ、動かないのがせめてもの救いかしらね」
「倒せば壁が消えるから、ある意味ショートカットにもなるし」
「そうだね。そのおかげで、階段が見つかったんだから」
それでもミル、サリィ、ハルファは前向きにへんてこ壁の利点を話している。確かに、結果としてこの階層では簡単に階段が見つかった。へんてこ壁が裏目に出た形だ。
そこまで考えて、僕は違和感を覚える。
……あれ、僕たち、誘導されてない?
「腕だ!」
「こっちもだよ!」
レイとサリィが互いに背を預けつつ報告する。二人が言うとおり、壁から生えてきたのは1m級の大きな腕だ。それぞれ右腕と左腕で、変に芸が細かい。
「どうする? 一旦下がるか?」
「いや、戦おう。下手に逃げても伝播していくだけだよ」
ローウェルの問いに、返事をする。敵は壁だ。動きまわったりしないから、こちらも下手に逃げ回るより、一カ所に留まって安全地帯を確保した方がいい。
ハルファとローウェルとスピラが右腕に、レイたち三人とシロル、プチゴーレムズが左腕に向かった。僕は少し下がって空気ゴーレムの作り直しだ。両腕が壁から突き出てきたときにさっきのゴーレムが壊れてしまったからね。もう一度作り直して、隣の壁に影響が及ばないように通路を塞ぐ位置に待機させておこう。まあ、コイツらには口がないから、そもそも笑い声を出せるかどうかわからないけど。
狭い通路でデカい腕が暴れるから、スペースの確保が難しい。攻撃を避けた先で味方とぶつかるなんてことになるとピンチになる。その点、右腕担当のハルファたちは上手くやってるけど、左腕担当のレイたちは苦戦している。
というか、これ、アレンたちが足をひっぱってるな。レイたちは上手く連携できてるけど、プチゴーレムズとぶつかりそうになってもたつくことがある。
「プチゴーレムズとシロルは、獅子の頭を止めて!」
「わかりました!」
『了解だぞ!』
一つ向こうの壁では、獅子の頭が健在。不気味な笑いでさらに周辺の壁を魔物化しようとしているので、プチゴーレムズにはそちらを止めてもらおう。抜けた穴には僕が入る。
「トルト、こっちは片づいた!」
「こっちももうすぐだよ!」
先に仕留めたのはローウェルたち。その頃には、僕らも左腕を追い詰めていた。壁から出る魔物は、思ったほど強くない。最初のドラゴンはともかく、大蛇は丸呑み以外大したことがなかったし、腕も固いだけで攻撃力は控えめな印象だ。出現の仕方にインパクトがあって動揺したけど、落ち着いて対処すれば勝てる相手だね。
「たぁっ!」
すでにボロボロになっていた左腕にミルがトドメの一撃を入れた。切断したわけじゃないけど、力尽きた左腕がだらりと地面に落ちる。手の甲に、切れ目が入った。
――ギッギッギッ
「げっ、そんなのアリ!?」
切れ目から笑い声が漏れる。左腕だけじゃなくて、先に倒した右腕からも。慌ててトドメをさすけど――――
「あ、隣の壁が揺れてる!」
スピラが異変に気づく。対処が間に合わず、隣の壁に伝染してしまった。空気ゴーレムで通路を塞いだくらいじゃ、防げないみたい。まだ、揺れてるだけだけど、心なしか激しくなっている。いずれは魔物化しそうだ。
「見て、トルト!」
またしても、何かを知らせる声。今度はハルファだ。だけど、その報告は僕らにとっては朗報だった。
「階段だよ!」
指さすのは、右腕の生えた壁があった向こう側。倒したことで、壁は消えている。薄らと暗いダンジョンで、どうにか見えるか見えないかってくらい先に、階段らしきものが見える。
「〈フローティング・ライト〉」
ふよふよ浮かぶ光弾を追加して、廊下の先に飛ばす。確かに階段だ。
この場に踏みとどまって戦おうかと思っていたけど、階段が見つかったのなら話は別だ。下の階に降りてしまえば、面倒な壁の魔物を相手にする必要はないんだから。
「みんな、階段まで走ろう!」
幸いなことに、階段までの壁はまだ魔物化していない。少し離れた場所にいるアレンたちを待って、みんなで走った。少し遅れて、背後の壁が魔物化する。ギリギリセーフだ。新たに生えたのは、悪魔みたいな彫像が左右に一体ずつ。ギラリと目を光らせて魔術を放ってきた。
「防ぐね!」
通路を遮断するように、スピラが氷の壁を張る。思ったよりも威力が高くて、氷壁の一部が吹き飛ぶけど、攻撃は無効化できた。そのまま階段に駆け込む。
「ふぅ。厄介な敵だったな」
敵が見えなくなる位置まで階段を降りたところで、レイが深々と息を吐く。僕を含めて、みんなが頷いた。突然現れるし、現れるまでどんな敵かわからない。しかも、次々仲間を増やしていく。勝てなくはないけど、厄介。そんな印象だ。
「まあ、動かないのがせめてもの救いかしらね」
「倒せば壁が消えるから、ある意味ショートカットにもなるし」
「そうだね。そのおかげで、階段が見つかったんだから」
それでもミル、サリィ、ハルファは前向きにへんてこ壁の利点を話している。確かに、結果としてこの階層では簡単に階段が見つかった。へんてこ壁が裏目に出た形だ。
そこまで考えて、僕は違和感を覚える。
……あれ、僕たち、誘導されてない?
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