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第2章 コロニー128脱獄計画
13話 「ずりぃよ」
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「……よぉ。カイ」
ミリーを背後に隠れさせ、水の球を9つ、目の前に作る。
さらに風の壁を展開しこちらに近づけない状態を作り、水球を人を殺せる程の密度と射出速度に設定して、グロムと向き合った。
「待っていたのか?」
「あぁ。お前と話がしたくなっちまってな」
「遅刻常習犯のお前が早朝出勤だなんて。そんなに俺の邪魔をするのを楽しみにしていたのか?」
「ちげぇって……」
そう言うと、奴はよっと声を出して立ち上がる。
「それ以上近づくな。動けば殺す」
水の魔術に力を込める。
最悪な気分だ。旅の始まりにどちらかが血を流す必要が出てきた。
迷わず殺せない辺りに自分の弱さを痛感する。
「……そうか。そうだよな。あんな事、しちまったんだもんな」
グロムは自分の罪の重さを噛みしめるようにそう言う。
また一緒に隣で話が出来るとでも思っていたのだろうか。
「なぁカイ。お前はどうして地上に行くんだ」
「知っているだろう。この子を、安全な所まで連れて行かなくちゃならない」
「なぜそんな事が出来る?」
ヴァリウスみたいな事を聞いてくる。
グロムは棒立ちで、少し俯きこう続けた。
「俺だって考えた事はあるんだぜ。こんないつ滅びるか分からないようなコロニーは捨てて、どっかに行けたら、もし天国みたな場所に行けたら報われるのかもしれねぇって……。だが、それをする勇気なんか、俺には無かった。あの婆さんらに負けたのもそうだ。結局俺は、人を殺す勇気なんてはなからなかったんだ」
どういう感情で聞いたらいいのか、分からなかった。
奴に対しての感情は、今となっては憎しみや恐怖。いっそそのまま悪漢を気取っていてくれればためらわず殺せたのかもしれないが、こいつも人間であるという事をまざまざと見せつけられている。
「聞いたが、殺せたのにも関わらず峰打ちを狙ったんだろう。お前は根性無しかもしれないが、俺達はそれで助かった。擁護する気はないが、そんなに悲観する事はないんじゃないか」
「それは……ちげぇ、あれはきっかけなだけだ。それがあって、根性無しな今までの人生を思い出しちまったんだ」
「……」
少し無言の時間が流れる。
ミリーは俺の背後で何も言わない。が、きっと恐怖を感じさせてしまっているだろう。
いきなりこんな事になってしまって、申し訳ない気持ちになる。出来れば人を殺す所など見せたくはない。
グロムの顔は俯いていて、常に浮かない表情。
この表情は、最近見た。家に訪ねてきた、あの女の表情によく似ている。
なぜこいつが俺を待ちわざわざ話に来たのかの真意が分からなかったが、きっとあの女と同じで罪悪感に押しつぶされそうだからなのだろう。俺が旅に出たらそれを抱えたまま生きることになるから。と言った所か。
「こちらも聞かせてもらうが、なぜヴァリウスに密告などしたんだ。おかげで俺も精神を擦り減らして戦う事になり、お前もそんな状態になった」
「ヴァリウスにな……言われてたんだ。中央に反逆しそうな奴を見かけたら言えって。そしたら身分を上げてやるってな。おめぇのは反逆かは怪しいが、ヴァリウスにとっては欲しい情報だと思って、伝えたんだ」
身分の為か。
結局、どこまで行ってもその問題にぶち当たっちまうな。
「だがどうだ。ヴァリウスは身分を上げるどころか、ろくに傷の手当てもしてくれねぇ。俺はあの年端もいかねぇ女にやられた左腕の傷がそのままなんだぜ。お前にゃ分かんねぇだろうが、これが根性無しの弱者の人生さ」
きっと自分が弱者である事を実感させるのに、婆さんらとグロムの戦いは十分すぎたのだろう。
この貧困の世界に、そんなのはつきものだ。自分の救われなさや弱さが、どうしようもなくうざったくなったりする。結果妬みや蔑みのような負の感情が生まれて、さらに自己嫌悪に陥ってしまう。
それはきっと優しい人間だからであり、正しくあろうとする気持ちがどこかにあるからだ。俺はそう肯定したいと思うが、それは今俺が前向きに生きる事が出来ているから言える事に他ならない。
自己否定の蟻地獄に堕ちた人間には多分、そんな言葉は届かない。
「少し、聞いちゃくれねぇか。俺の昔の話を。身分を求めてバカをした言い訳にしかならないが、今お前に言わなきゃ、吐き出せる相手が居なくなっちまう」
「……あぁ」
グロムは自分の感情を落ち着かせるように1度大きく息をして、語り出した。
「15の頃、おやじが死んだ。おふくろはもう居なくなってたから1人になっちまってな。内層の隅の方だったが、外層に堕ちる事が恐怖でたまらなくて、その気持ちだけを剣にぶつけた」
「たまに、言っていたな。それで、軍の下部に入ってなんとか内層民にしがみついたって」
「あぁ。その頃は下働きだったからいけすかねぇ上の人間にまぁこき使われたさ。お前は知らないかもしれないが、俺はあの頃からお前が嫌いでたまらなかった。1歳しか違わないのに、なんであいつはあんな才能持ってんだってな。なんで自分は弱者のままなんだろうってな」
俺が16歳の頃は軍の中で信頼を築きはじめ、将来の有望株とそこそこ有名になっていた時期だ。
グロムとは話した事も無かったので考えてもいなかったが、影響を与えていたのか。
「ガキの頃は生まれてきた事を後悔したさ。何度もな。だが、歳をとるにつれて考えが変わってきたんだ。もし子供が出来た時、俺みたいになってほしくねぇってな。子供が出来たら俺も長生きして、揺るがない地位と金を渡してやろうって思ってきたのさ。それが、この人生に意味があったと思ういい方法に思えてきてな。だから俺は地位に溺れて、地位にしがみついちまった。まだガキも女もいねぇが、そうなっちまったんだ」
自分の人生を子供に繰り返させたくない。
まだ生まれていない子供への愛情と、自分の人生を肯定したい劣等感が、こいつを呪いのように縛っていたのだろう。
「俺は弱者だ。昔からずっと、お前が幸せになってくのをチマチマ邪魔する事しかできねぇ、しょうもない人間になっちまった。それはお前に力と根性があって、俺にそれが無かったからだ」
グロムは一呼吸置いて、今にも泣き出しそうな声で言った。
「ずりぃよ……お前。なんでいつも俺を、置いてっちまうんだよ」
それはきっとグロムの心の奥底にあった本心であり、悲痛な叫びだった。
きっとこいつも幸福にならないといけない人間なんだろう。咽び泣く外層民と同じように、こいつにも呪縛がかかっている。俺がかけたと言ってもいい呪縛だ。
さっきからずっと、脳裏によぎっていた事があった。
グロムを旅の仲間に加えるのはどうか。
コロニー003で暮らせば、少なくとも今よりも幸福な人生がそこにはあるはずだ。グロムの自分の子供の人生を守りたいという願望とも合致する。
それにグロムが居てくれれば、魔物と対面した時の生存率も跳ね上がる上に、2人で分担して魔物を狩れば予定日より早く到着できる可能性も高いだろう。こちらとしても有難い。
だが、ついさっきまで憎しみ、恐怖を感じていた相手でもある。それを水に流す事は不可能だろう。実際に今も水の魔術と風の魔術は、解除できていない。
それでも、きっと俺は今こいつに何か手を差し伸べる事は出来ないかと、思ってしまった。
「なぁ。ミリー」
ミリーがうん?と顔を上げる
「グロムを旅の仲間に加えたいと言ったら、どう思う?」
「……!」
何よりも彼女だ。
グロムに誘拐され恐怖を感じていたのなら、彼女がこいつを許すことが出来なければ、グロムを連れていく事はするべきではない。
だがそれに反するように、ミリーはいいと思うと言った。
「あの人ね、私を誘拐したときも凄く足とか震えてたし、落ち込んでる様子だった。カイがそうしたいって思うなら、悪い人じゃないと私も思う」
「グロムは、怖くないか」
「ちょっと怖いけど……多分慣れる」
俺はグロムと向き直った。
唐突すぎるので断られるかもしれないが、手を差し伸べる姿勢を見せる事こそ、彼が救われる唯一の方法な気がして。
「どうだ。一緒に来るか。グロム」
「……」
唐突すぎるだろうか。
「悪いがお前を待ち、出発を遅らせる気はない。だが今ここで決めて旅に同行してくれるというのなら、俺はお前を受け入れたいと思っている」
魔術を解き、グロムの方を見る。
彼に戦闘の意思なんてない事は、もう痛いほど分かった。
「俺を……許してくれんのか」
「違う。過去にした罪は消えない。きっと俺はお前をまだ許せないし、お前も俺が憎い所があるだろう」
こいつは何度もミリーや婆さんらを危険に晒した。それはきっと世間的には、どんな人生だったとしても許されざる事では無い。
だが今は俺とミリーと、こいつの問題だ。
「だからこそ、ミリーを危険に晒したのと同じくらい、ミリーを守ってくれ。もしそれを果たしてくれた時に、俺はお前を許そうと思う」
「そうか……」
グロムは少し考えて、結論を出す。
「分かった。俺も旅に加えてくれ。必ずその子を守り抜くと約束する」
「そうか。本当に大丈夫か?出発は今だぞ」
「あぁ。丁度根性無しな自分とお前に劣等感を抱き続ける自分を、今にも捨てたいと思ってたんだ」
俺はグロムと地上への扉の方に歩み寄る。
後ろをとことことミリーも付いてきて、これで3人だ。
「先陣切れよ。剣士」
「あぁおう、そうだな」
グロムは地上へと繋がる扉を開け、歩みだす。
「ミリーも、本当に大丈夫だったか?」
「うん。グロムさんに何かしてあげたいカイの気持ちは、私も分かるから」
「そうか。じゃあ行こう」
「うん!」
俺達はまだチグハグながらもようやく、魔物の世界である地上へと辿り着いた。
――――――――――――――――――
第2章 コロニー128脱獄計画 -終-
次章
第3章 本物の太陽
――――――――――――――――――
ミリーを背後に隠れさせ、水の球を9つ、目の前に作る。
さらに風の壁を展開しこちらに近づけない状態を作り、水球を人を殺せる程の密度と射出速度に設定して、グロムと向き合った。
「待っていたのか?」
「あぁ。お前と話がしたくなっちまってな」
「遅刻常習犯のお前が早朝出勤だなんて。そんなに俺の邪魔をするのを楽しみにしていたのか?」
「ちげぇって……」
そう言うと、奴はよっと声を出して立ち上がる。
「それ以上近づくな。動けば殺す」
水の魔術に力を込める。
最悪な気分だ。旅の始まりにどちらかが血を流す必要が出てきた。
迷わず殺せない辺りに自分の弱さを痛感する。
「……そうか。そうだよな。あんな事、しちまったんだもんな」
グロムは自分の罪の重さを噛みしめるようにそう言う。
また一緒に隣で話が出来るとでも思っていたのだろうか。
「なぁカイ。お前はどうして地上に行くんだ」
「知っているだろう。この子を、安全な所まで連れて行かなくちゃならない」
「なぜそんな事が出来る?」
ヴァリウスみたいな事を聞いてくる。
グロムは棒立ちで、少し俯きこう続けた。
「俺だって考えた事はあるんだぜ。こんないつ滅びるか分からないようなコロニーは捨てて、どっかに行けたら、もし天国みたな場所に行けたら報われるのかもしれねぇって……。だが、それをする勇気なんか、俺には無かった。あの婆さんらに負けたのもそうだ。結局俺は、人を殺す勇気なんてはなからなかったんだ」
どういう感情で聞いたらいいのか、分からなかった。
奴に対しての感情は、今となっては憎しみや恐怖。いっそそのまま悪漢を気取っていてくれればためらわず殺せたのかもしれないが、こいつも人間であるという事をまざまざと見せつけられている。
「聞いたが、殺せたのにも関わらず峰打ちを狙ったんだろう。お前は根性無しかもしれないが、俺達はそれで助かった。擁護する気はないが、そんなに悲観する事はないんじゃないか」
「それは……ちげぇ、あれはきっかけなだけだ。それがあって、根性無しな今までの人生を思い出しちまったんだ」
「……」
少し無言の時間が流れる。
ミリーは俺の背後で何も言わない。が、きっと恐怖を感じさせてしまっているだろう。
いきなりこんな事になってしまって、申し訳ない気持ちになる。出来れば人を殺す所など見せたくはない。
グロムの顔は俯いていて、常に浮かない表情。
この表情は、最近見た。家に訪ねてきた、あの女の表情によく似ている。
なぜこいつが俺を待ちわざわざ話に来たのかの真意が分からなかったが、きっとあの女と同じで罪悪感に押しつぶされそうだからなのだろう。俺が旅に出たらそれを抱えたまま生きることになるから。と言った所か。
「こちらも聞かせてもらうが、なぜヴァリウスに密告などしたんだ。おかげで俺も精神を擦り減らして戦う事になり、お前もそんな状態になった」
「ヴァリウスにな……言われてたんだ。中央に反逆しそうな奴を見かけたら言えって。そしたら身分を上げてやるってな。おめぇのは反逆かは怪しいが、ヴァリウスにとっては欲しい情報だと思って、伝えたんだ」
身分の為か。
結局、どこまで行ってもその問題にぶち当たっちまうな。
「だがどうだ。ヴァリウスは身分を上げるどころか、ろくに傷の手当てもしてくれねぇ。俺はあの年端もいかねぇ女にやられた左腕の傷がそのままなんだぜ。お前にゃ分かんねぇだろうが、これが根性無しの弱者の人生さ」
きっと自分が弱者である事を実感させるのに、婆さんらとグロムの戦いは十分すぎたのだろう。
この貧困の世界に、そんなのはつきものだ。自分の救われなさや弱さが、どうしようもなくうざったくなったりする。結果妬みや蔑みのような負の感情が生まれて、さらに自己嫌悪に陥ってしまう。
それはきっと優しい人間だからであり、正しくあろうとする気持ちがどこかにあるからだ。俺はそう肯定したいと思うが、それは今俺が前向きに生きる事が出来ているから言える事に他ならない。
自己否定の蟻地獄に堕ちた人間には多分、そんな言葉は届かない。
「少し、聞いちゃくれねぇか。俺の昔の話を。身分を求めてバカをした言い訳にしかならないが、今お前に言わなきゃ、吐き出せる相手が居なくなっちまう」
「……あぁ」
グロムは自分の感情を落ち着かせるように1度大きく息をして、語り出した。
「15の頃、おやじが死んだ。おふくろはもう居なくなってたから1人になっちまってな。内層の隅の方だったが、外層に堕ちる事が恐怖でたまらなくて、その気持ちだけを剣にぶつけた」
「たまに、言っていたな。それで、軍の下部に入ってなんとか内層民にしがみついたって」
「あぁ。その頃は下働きだったからいけすかねぇ上の人間にまぁこき使われたさ。お前は知らないかもしれないが、俺はあの頃からお前が嫌いでたまらなかった。1歳しか違わないのに、なんであいつはあんな才能持ってんだってな。なんで自分は弱者のままなんだろうってな」
俺が16歳の頃は軍の中で信頼を築きはじめ、将来の有望株とそこそこ有名になっていた時期だ。
グロムとは話した事も無かったので考えてもいなかったが、影響を与えていたのか。
「ガキの頃は生まれてきた事を後悔したさ。何度もな。だが、歳をとるにつれて考えが変わってきたんだ。もし子供が出来た時、俺みたいになってほしくねぇってな。子供が出来たら俺も長生きして、揺るがない地位と金を渡してやろうって思ってきたのさ。それが、この人生に意味があったと思ういい方法に思えてきてな。だから俺は地位に溺れて、地位にしがみついちまった。まだガキも女もいねぇが、そうなっちまったんだ」
自分の人生を子供に繰り返させたくない。
まだ生まれていない子供への愛情と、自分の人生を肯定したい劣等感が、こいつを呪いのように縛っていたのだろう。
「俺は弱者だ。昔からずっと、お前が幸せになってくのをチマチマ邪魔する事しかできねぇ、しょうもない人間になっちまった。それはお前に力と根性があって、俺にそれが無かったからだ」
グロムは一呼吸置いて、今にも泣き出しそうな声で言った。
「ずりぃよ……お前。なんでいつも俺を、置いてっちまうんだよ」
それはきっとグロムの心の奥底にあった本心であり、悲痛な叫びだった。
きっとこいつも幸福にならないといけない人間なんだろう。咽び泣く外層民と同じように、こいつにも呪縛がかかっている。俺がかけたと言ってもいい呪縛だ。
さっきからずっと、脳裏によぎっていた事があった。
グロムを旅の仲間に加えるのはどうか。
コロニー003で暮らせば、少なくとも今よりも幸福な人生がそこにはあるはずだ。グロムの自分の子供の人生を守りたいという願望とも合致する。
それにグロムが居てくれれば、魔物と対面した時の生存率も跳ね上がる上に、2人で分担して魔物を狩れば予定日より早く到着できる可能性も高いだろう。こちらとしても有難い。
だが、ついさっきまで憎しみ、恐怖を感じていた相手でもある。それを水に流す事は不可能だろう。実際に今も水の魔術と風の魔術は、解除できていない。
それでも、きっと俺は今こいつに何か手を差し伸べる事は出来ないかと、思ってしまった。
「なぁ。ミリー」
ミリーがうん?と顔を上げる
「グロムを旅の仲間に加えたいと言ったら、どう思う?」
「……!」
何よりも彼女だ。
グロムに誘拐され恐怖を感じていたのなら、彼女がこいつを許すことが出来なければ、グロムを連れていく事はするべきではない。
だがそれに反するように、ミリーはいいと思うと言った。
「あの人ね、私を誘拐したときも凄く足とか震えてたし、落ち込んでる様子だった。カイがそうしたいって思うなら、悪い人じゃないと私も思う」
「グロムは、怖くないか」
「ちょっと怖いけど……多分慣れる」
俺はグロムと向き直った。
唐突すぎるので断られるかもしれないが、手を差し伸べる姿勢を見せる事こそ、彼が救われる唯一の方法な気がして。
「どうだ。一緒に来るか。グロム」
「……」
唐突すぎるだろうか。
「悪いがお前を待ち、出発を遅らせる気はない。だが今ここで決めて旅に同行してくれるというのなら、俺はお前を受け入れたいと思っている」
魔術を解き、グロムの方を見る。
彼に戦闘の意思なんてない事は、もう痛いほど分かった。
「俺を……許してくれんのか」
「違う。過去にした罪は消えない。きっと俺はお前をまだ許せないし、お前も俺が憎い所があるだろう」
こいつは何度もミリーや婆さんらを危険に晒した。それはきっと世間的には、どんな人生だったとしても許されざる事では無い。
だが今は俺とミリーと、こいつの問題だ。
「だからこそ、ミリーを危険に晒したのと同じくらい、ミリーを守ってくれ。もしそれを果たしてくれた時に、俺はお前を許そうと思う」
「そうか……」
グロムは少し考えて、結論を出す。
「分かった。俺も旅に加えてくれ。必ずその子を守り抜くと約束する」
「そうか。本当に大丈夫か?出発は今だぞ」
「あぁ。丁度根性無しな自分とお前に劣等感を抱き続ける自分を、今にも捨てたいと思ってたんだ」
俺はグロムと地上への扉の方に歩み寄る。
後ろをとことことミリーも付いてきて、これで3人だ。
「先陣切れよ。剣士」
「あぁおう、そうだな」
グロムは地上へと繋がる扉を開け、歩みだす。
「ミリーも、本当に大丈夫だったか?」
「うん。グロムさんに何かしてあげたいカイの気持ちは、私も分かるから」
「そうか。じゃあ行こう」
「うん!」
俺達はまだチグハグながらもようやく、魔物の世界である地上へと辿り着いた。
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第2章 コロニー128脱獄計画 -終-
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