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アルヴァニア戦役
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しおりを挟む放たれた無慈悲な猛火は、
人類に慈悲を乞う暇も与えず、
全てを紅蓮の猛火の中に飲み込んでいった。
これにより人類のエルフと人間の混合部隊、
約1500は全滅した。
全体から見れば敵の1割に満たない部隊だが、
このとき魔王は最大の驚異を排除していた。
中世の戦闘においてもっとも恐れるべきは、
刀だろうか?
槍だろうか?
火縄銃だろうか?
いな、弓である。
火縄銃を銃だと認識する現代人は、
火縄銃が一番強いと思いがちだがそうではない。
火縄銃の威力は、ダイリーガーが、
大きな鉄球をぶつけた程度。
そして弱点はそれだけでは無い。
火縄銃は雨が降れば使えず、
一発打つのに3分(名人でも1分)かかる為、
有効的に使うには、
敵を火縄銃の前まで誘導しなければならない。
そのうえ照準がバラバラで、
どこに飛ぶか分からない弾丸を当てるには、
敵が密集する地点を狙い撃ち、
その中の誰かに当たる様に工夫する
必要がある。
ではなぜ真っ直ぐ飛ばないか?
その原理は野球のナックルボールと同じである。
無回転のナックルボールは前後左右に揺れ、
どこに飛んで行くか分からない。
空気抵抗による揺れである。
現在の銃は、
銃身に螺旋(バネ状)の溝(ライフリング)を掘り、
飛び出す時に弾丸に回転をかけているために、
真っ直ぐに飛ぶのである。
そう昔の火縄銃は、
最強の武器ではないのだ。
戦国時代の文献にこうある。
戦闘で死んだ要因を分析した結果、
弓で死亡した数がもっとも多く、
それは全体の7割に及ぶ。
そう弓の得意なエルフは、
もっとも警戒し恐れるべき、
敵の主力部隊だったのだ。
それが事実上壊滅したのである。
俺は遠くで上がった炎を眺めながら、
ほくそ笑むとつぶやいた。
「焔は放たれた」
目前の敵の前衛は既に瓦解し、
敗走を始めていた。
一度敗走を始めた兵ほど脆いものは無い。
もし勝てると思った者がいても、
見方が逃げるなかその場に止まれば、
確実に死ぬ。
逃げ遅れれば死と言う現実が、
兵の逃走に拍車をかけていた。
戦場において、
守るものがいなくなったその背ほど、
無防備なものは無い。
一度敗走しだした軍は壊滅的な打撃を受ける。
そうならない為には殿と呼ばれる、
その場に止まり死んで盾となって、
敵を足止めする兵がいる。
だが勝ち戦だと気の弛んだ敵に、
それ程の気概のある者はいなかった。
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