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「兄さん、卒業おめでとう。今日は大変だったみたいだね」
「アダム…お前か…」
卒業パーティーの後、あまりに色々な事があり頭の中が整理できないでいた。
その頭を冷やす為、何十種類もの薔薇が咲く、この城自慢の庭園で休んでいた。
私にはイヴリンという美しい婚約者がいた。
一見、その見た目からは冷たそうに見えるが、話すと物腰の柔らかい穏やかな女性だった。
貴族特有の偉そうな態度は見せず、学園での人気も高かった。おまけに頭も賢く、デキの悪い生徒に嫌な顔せず勉学に付き合っていた。
そんな優しい女性だった。
それなのに何故?私はイヴリンを愛していた。だがあの日から全てがおかしくなったのだ。
子爵家ティティトリティス家の娘、マイラが現れてから…。
マイラが学園に転入してきた日、私は彼女に恋をしてしまった。堕ちるという事はこういうことなのか?と身を持って知ってしまったのだ。
「イヴリンとの婚約を破棄したって聞いたけど本当?」
「もう…知っているのか」
私を労るような優しい目でそう訪ねてきたのは、私の弟、そしてこの国の第二王子アダム・ムーアだ。
わが弟ながら、美しい男だ。こんなにも薔薇が似合う男はいるのだろうか?
キメ細かい肌は透き通る程白く美しい。
綺麗に整った顔に細身の身体。だが適度に着いた筋肉が更にスタイルをよく見せた。
「マイラ・ティティトリティスを愛している?」
「…それが、分からないんだ…。イヴリンがパーティーから帰ったあと、マイラは気がおかしくなったように暴れだしてどこかに行ってしまうし…だがよく考えると私が間違っていたんだ。」
「どういう事?」
「イヴリンという婚約者がいながら、他の女性に恋をしてしまった。イヴリンが嫉妬でおかしくなるのも無理はない。
あの時は、マイラが裏でイヴリンに傷つけられていると知って、頭に血が上ってしまったんだ。
イヴリンのやった事は、私の責任だ。
マイラを傷つけた事はこれからイヴリンと償っていきたい。
今はイヴリンを許し、支えていきたいと思っている」
そうだ、それこそが今の私の思いだ。頭が妙にスッキリしてきた。
「ぷっ…くくっ」
ふと、笑いを堪える声が聞こえた。
「おい、どーし…」
「あーごめんね、兄さん。あんまり兄さんが面白い事言言うもんだから。」
あー、涙でちゃった。と長くしなやかな指で目尻を拭く。
「面白いとは何だ、お前どうしたんだ?」
私はいぶかしげにアダムの様子を伺った。
「だってそうでしょう?卒業パーティー中にイヴリンをみんなの前で吊し上げ、婚約破棄までした。
もうこの国はその噂で一色なのに今更イヴリンを許し、支える?
それって婚約破棄を無かったことにしようとしているよね?」
「それ…は、そうだが、何故かあの時は、イヴリンとはやっていけないと思ったのだ。何故マイラにそのような虐めなどするのかと理解出来なかった。だがそれは私を愛するがゆえの」
「ほんっとーにおめでたいね兄さんは。まあいいや、まず証拠は?イヴリンがマイラを虐めてたって証拠」
「それは…」
「どうせマイラ・ティティトリティスに泣きつかれたんだろ?」
そうだ、涙を流しながら気にしないでと言われ、それでもまだ泣き続ける彼女を放っておけなかった。
それにイヴリンも否定しなかったじゃないか!
それよりこれは誰だ?私に蔑んだ目を向けるこの男は!
私の弟はどこにいったのだ?
「それに、大勢の前でマイラと婚約宣言もしたらしいね」
「そっそれは!」
「あっいいよ別に。兄さんが誰と結婚しようが興味ない。
ただ、イヴリンとの婚約破棄を無かったことにはさせない」
「お前に何の権限が!」
「まあ、変な女に変な魔法をかけられた事は同情するよ」
「は…?」
「そろそろ気付いてるんじゃないの?だーいぶ頭もスッキリしてきただろうからさ。だけどさ」
魔法?そんな…まさか。
アダムはぐいっとその美しい顔を歪めて近づけて言った。
「魅了は、強い想いがある者には効かない」
「断言できる。オレだったらあんなクソみたいな魔法にはかからない」
「あんたはイヴリンに相応しくない」
私は何も言えなかった。アダムの目をただただ見返す事しか出来ない。
もうめちゃくちゃだ。
なにもかも。
ふっと優しい目に戻るアダム。
「最後にもう一度問うよ、兄さん。マイラ・ティティトリティスを愛している?」
「…ああ」
「良かった。幸せになってね、兄さん」
ニッコリ笑う、私の弟アダム。
なあアダム、どこからどこまでがお前の仕業なのだ?
「アダム…お前か…」
卒業パーティーの後、あまりに色々な事があり頭の中が整理できないでいた。
その頭を冷やす為、何十種類もの薔薇が咲く、この城自慢の庭園で休んでいた。
私にはイヴリンという美しい婚約者がいた。
一見、その見た目からは冷たそうに見えるが、話すと物腰の柔らかい穏やかな女性だった。
貴族特有の偉そうな態度は見せず、学園での人気も高かった。おまけに頭も賢く、デキの悪い生徒に嫌な顔せず勉学に付き合っていた。
そんな優しい女性だった。
それなのに何故?私はイヴリンを愛していた。だがあの日から全てがおかしくなったのだ。
子爵家ティティトリティス家の娘、マイラが現れてから…。
マイラが学園に転入してきた日、私は彼女に恋をしてしまった。堕ちるという事はこういうことなのか?と身を持って知ってしまったのだ。
「イヴリンとの婚約を破棄したって聞いたけど本当?」
「もう…知っているのか」
私を労るような優しい目でそう訪ねてきたのは、私の弟、そしてこの国の第二王子アダム・ムーアだ。
わが弟ながら、美しい男だ。こんなにも薔薇が似合う男はいるのだろうか?
キメ細かい肌は透き通る程白く美しい。
綺麗に整った顔に細身の身体。だが適度に着いた筋肉が更にスタイルをよく見せた。
「マイラ・ティティトリティスを愛している?」
「…それが、分からないんだ…。イヴリンがパーティーから帰ったあと、マイラは気がおかしくなったように暴れだしてどこかに行ってしまうし…だがよく考えると私が間違っていたんだ。」
「どういう事?」
「イヴリンという婚約者がいながら、他の女性に恋をしてしまった。イヴリンが嫉妬でおかしくなるのも無理はない。
あの時は、マイラが裏でイヴリンに傷つけられていると知って、頭に血が上ってしまったんだ。
イヴリンのやった事は、私の責任だ。
マイラを傷つけた事はこれからイヴリンと償っていきたい。
今はイヴリンを許し、支えていきたいと思っている」
そうだ、それこそが今の私の思いだ。頭が妙にスッキリしてきた。
「ぷっ…くくっ」
ふと、笑いを堪える声が聞こえた。
「おい、どーし…」
「あーごめんね、兄さん。あんまり兄さんが面白い事言言うもんだから。」
あー、涙でちゃった。と長くしなやかな指で目尻を拭く。
「面白いとは何だ、お前どうしたんだ?」
私はいぶかしげにアダムの様子を伺った。
「だってそうでしょう?卒業パーティー中にイヴリンをみんなの前で吊し上げ、婚約破棄までした。
もうこの国はその噂で一色なのに今更イヴリンを許し、支える?
それって婚約破棄を無かったことにしようとしているよね?」
「それ…は、そうだが、何故かあの時は、イヴリンとはやっていけないと思ったのだ。何故マイラにそのような虐めなどするのかと理解出来なかった。だがそれは私を愛するがゆえの」
「ほんっとーにおめでたいね兄さんは。まあいいや、まず証拠は?イヴリンがマイラを虐めてたって証拠」
「それは…」
「どうせマイラ・ティティトリティスに泣きつかれたんだろ?」
そうだ、涙を流しながら気にしないでと言われ、それでもまだ泣き続ける彼女を放っておけなかった。
それにイヴリンも否定しなかったじゃないか!
それよりこれは誰だ?私に蔑んだ目を向けるこの男は!
私の弟はどこにいったのだ?
「それに、大勢の前でマイラと婚約宣言もしたらしいね」
「そっそれは!」
「あっいいよ別に。兄さんが誰と結婚しようが興味ない。
ただ、イヴリンとの婚約破棄を無かったことにはさせない」
「お前に何の権限が!」
「まあ、変な女に変な魔法をかけられた事は同情するよ」
「は…?」
「そろそろ気付いてるんじゃないの?だーいぶ頭もスッキリしてきただろうからさ。だけどさ」
魔法?そんな…まさか。
アダムはぐいっとその美しい顔を歪めて近づけて言った。
「魅了は、強い想いがある者には効かない」
「断言できる。オレだったらあんなクソみたいな魔法にはかからない」
「あんたはイヴリンに相応しくない」
私は何も言えなかった。アダムの目をただただ見返す事しか出来ない。
もうめちゃくちゃだ。
なにもかも。
ふっと優しい目に戻るアダム。
「最後にもう一度問うよ、兄さん。マイラ・ティティトリティスを愛している?」
「…ああ」
「良かった。幸せになってね、兄さん」
ニッコリ笑う、私の弟アダム。
なあアダム、どこからどこまでがお前の仕業なのだ?
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