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「お嬢様、起きてください」
いや、無理だわ。だってさっき倒れるように意識を失い眠ったばかりだもの。
「わりとお昼前ですよ。起きてください」
そうね。だって3、4時間前まで、この屋敷はどんちゃん騒ぎを繰り広げていた。
そう、お父様は本当に宴を開催した。
私の卒業パーティーのお祝い、殿下に婚約破棄をされたことへのお祝い。
そして国外追放となれば、次いつ会えるかわからない。
なので、お別れの会といった意味合いも含めた宴だった。
使用人達や使用人たちの家族も呼び、皆で盛り上がった。
「…ハリエット、今日は皆、一斉休暇にするとお父様がおっしゃっていたでしょう?
私もお父様も、1日くらい自分のことは自分でできるわ」
私は目も開けずに話した。
頼むから寝かせてほしい。
「私もそうしたいのはやまやまですが、つい先程こちらに殿下が参られました」
「はあっ!!?」
私はカッと目を開け、ガバリと身体を起こした。
「なっなんで?もうこれからの話をしないといけないの?
せめて明日にしてほしかったんだけどっ!
今日ぜんっぜん頭まわんないんだけどっ!」
「いえ、いらっしゃったのは第二王子殿下にございます」
「え…アダム…殿下?」
「はい、屋敷の庭でお待ちです」
「アダム!」
公爵邸にある広い庭には、真っ白なティーテーブルがある。
そこで優雅に紅茶を飲んでいるのは、私の婚約者だった第一王子殿下の弟で、第二王子のアダム・ムーアだ。
そして、私の大切な親友だ。
私の声に振り向き、一度目を瞬かせ優しく微笑んだ。
「イヴリン」
「ごめんなさい、アダム。昨日はみんなでどんちゃん騒ぎ…じゃなかった、泣きつかれて朝も寝坊してしまったの」
駄目ね、わたしったら。とアダムの側に近づいた。
親友といえど、アダムは第一王子殿下の弟ぎみ。さすがに全てを本音で話せない。特にこの件については。
私はあれから考えた。まず、第一王子との婚約破棄は決定した。
そして私がマイラを虐めていたという事で、おそらく話は落ちつくのだろう。
だとしたらこの国では生きづらい。後ろ指を指されながら生きていくようなものだ。
お父様のためにも、私を勘当し見放したという方が、むしろ同情の目がお父様にいくだろう。
そしてなによりワクワクするのだ。
新しい場所での可能性を私は感じていた。
さあ何しよう?と。
そう、だからわたしはこの嘘を突き通す。マイラの嘘にのってあげるわ。
アダムは立ち上がり、私の顔を覗きこんだ。
そして私の目尻に優しく触れた。
「可哀想に、こんなに目が腫れて…」
心配そうな表情で、そのまま私の頬を両手で包む。
決して朝まで、飲めや食えやの大宴会で寝不足だったなどと言えない。絶対に言えない。
「いいえ、私が悪いの。殿下を失うのが恐くてマイラに嫉妬し、あげくの果てにマイラを傷つけてしまった。
自分の醜さに涙が止まらないわ…」
出ない涙の変わりに、すんすんと鼻をすすった。
やばい、新しい場所での生活にトキメキすぎて、全く感傷的になれない。
止まらないはずの涙が一向にでない。
誰か隣で玉ねぎでも刻んでくれないかな?
「そう…。イヴリン、君はそっちを選んだんだね?」
「へ?」
「ううん、少し歩こうか」
そう言ってアダムは私の手をとり、ゆっくりと歩きだした。
いや、無理だわ。だってさっき倒れるように意識を失い眠ったばかりだもの。
「わりとお昼前ですよ。起きてください」
そうね。だって3、4時間前まで、この屋敷はどんちゃん騒ぎを繰り広げていた。
そう、お父様は本当に宴を開催した。
私の卒業パーティーのお祝い、殿下に婚約破棄をされたことへのお祝い。
そして国外追放となれば、次いつ会えるかわからない。
なので、お別れの会といった意味合いも含めた宴だった。
使用人達や使用人たちの家族も呼び、皆で盛り上がった。
「…ハリエット、今日は皆、一斉休暇にするとお父様がおっしゃっていたでしょう?
私もお父様も、1日くらい自分のことは自分でできるわ」
私は目も開けずに話した。
頼むから寝かせてほしい。
「私もそうしたいのはやまやまですが、つい先程こちらに殿下が参られました」
「はあっ!!?」
私はカッと目を開け、ガバリと身体を起こした。
「なっなんで?もうこれからの話をしないといけないの?
せめて明日にしてほしかったんだけどっ!
今日ぜんっぜん頭まわんないんだけどっ!」
「いえ、いらっしゃったのは第二王子殿下にございます」
「え…アダム…殿下?」
「はい、屋敷の庭でお待ちです」
「アダム!」
公爵邸にある広い庭には、真っ白なティーテーブルがある。
そこで優雅に紅茶を飲んでいるのは、私の婚約者だった第一王子殿下の弟で、第二王子のアダム・ムーアだ。
そして、私の大切な親友だ。
私の声に振り向き、一度目を瞬かせ優しく微笑んだ。
「イヴリン」
「ごめんなさい、アダム。昨日はみんなでどんちゃん騒ぎ…じゃなかった、泣きつかれて朝も寝坊してしまったの」
駄目ね、わたしったら。とアダムの側に近づいた。
親友といえど、アダムは第一王子殿下の弟ぎみ。さすがに全てを本音で話せない。特にこの件については。
私はあれから考えた。まず、第一王子との婚約破棄は決定した。
そして私がマイラを虐めていたという事で、おそらく話は落ちつくのだろう。
だとしたらこの国では生きづらい。後ろ指を指されながら生きていくようなものだ。
お父様のためにも、私を勘当し見放したという方が、むしろ同情の目がお父様にいくだろう。
そしてなによりワクワクするのだ。
新しい場所での可能性を私は感じていた。
さあ何しよう?と。
そう、だからわたしはこの嘘を突き通す。マイラの嘘にのってあげるわ。
アダムは立ち上がり、私の顔を覗きこんだ。
そして私の目尻に優しく触れた。
「可哀想に、こんなに目が腫れて…」
心配そうな表情で、そのまま私の頬を両手で包む。
決して朝まで、飲めや食えやの大宴会で寝不足だったなどと言えない。絶対に言えない。
「いいえ、私が悪いの。殿下を失うのが恐くてマイラに嫉妬し、あげくの果てにマイラを傷つけてしまった。
自分の醜さに涙が止まらないわ…」
出ない涙の変わりに、すんすんと鼻をすすった。
やばい、新しい場所での生活にトキメキすぎて、全く感傷的になれない。
止まらないはずの涙が一向にでない。
誰か隣で玉ねぎでも刻んでくれないかな?
「そう…。イヴリン、君はそっちを選んだんだね?」
「へ?」
「ううん、少し歩こうか」
そう言ってアダムは私の手をとり、ゆっくりと歩きだした。
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