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マイラとイヴリン 後編
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「ほら、涙を拭きなさいな」
さっとハンカチをマイラに渡す私。本当に出来た淑女だわ。私ったら。
「…これ、イヴリン様のハンカチ?」
「きゃあぁぁああっ!!!」
私はマイラからハンカチを奪い取る!と思ったが奪い取れていないだとっ?!!
ギリッとマイラを睨み付ける。マイラはにへらと笑い、更にハンカチの端を握りしめる。
「イヴリン様、これ何ですの?」
「くぅっ…!!」
何て馬鹿力を隠していたの?それとも色々ありすぎて覚醒してしまったの??!恐すぎるわ!!
敵わない力に敗北し、ハンカチから手を離す。
「犬と猫…の刺繍?」
「そうよ。それが?」
ふんっと私はマイラから視線を外す。
「この手の込んだ刺繍、とても可愛らしいですわ。イヴリン様のイメージではないですけれど」
「…そうかしら?私は大好きだけれども。そういったファンシーなモノが」
「手作りですのね」
「そう…ね」
「アダム様ですか?」
「んなっなっなな、ななぜ?」
「勘です。アダム様なのですね」
そう、これはアダムが私にプレゼントしてくれた物だ。
シルクの生地に亡くなった愛犬デイジーちゃんと、小さな黒猫がちょこんとお座りした状態で、刺繍されている。
最近猫ちゃんも気になるんだ~と軽く言った一言を覚えており、一緒に刺繍してくれたのだと思う。そしてそのハンカチを、私はとても気に入り大事に使っているのだ。
「イヴリン様、このハンカチは使えませんわ」
といつの間にか綺麗に畳まれたハンカチを渡された。
「アダム様の真っ直ぐな想いが、このハンカチには込められていますもの」
自虐めいた小さな笑いを溢しながら、遠くを見つめるマイラ。
「…あなたは?あなたは殿下をどう思っているの?」
「…初めは、第一王子の妻の座が欲しいだけでした。
でも、薄っぺらくて中身のない方に見えるでしょうが、わりと努力する所もあって、そこが可愛いなとも思いましたわ。出来る弟を持つのも辛い時があるんだよと、おっしゃる時もありましたのよ?」
クスリと笑うマイラ。
そう…殿下はあなたに弱いところを、お見せになっていたのね。そんな事、私には一度もなかったし、殿下の努力や良い所をあまり探そうとはしなかった。
「マイラ、察しているとは思うけれど私は殿下を愛してなかったし、殿下も私を愛してなかった。まああなたのやり方は相当汚なかったけど水に流してあげる」
だって殿下と結婚せずにすんだのはマイラのおかげでもある。
眉根を寄せて、迷子のような目で私を見るマイラ。
「私はアダムと婚約出来て、今とても幸せなの。…じゃあもう気にする事は何もないわよね?」
マイラの目から涙がぽろぽろと溢れる。
「殿下と一度、ちゃんとお話ししなさい」
私はそう言って、マイラの部屋を出ようとした。
「…めんなさい」
「…」
「ご…めんなさい。イヴリン様…」
私は小さく微笑み、今度こそ本当にマイラの部屋に出た。
「いかがでしたか?マイラ様のご様子は」
「だいぶ反省したのではないかしら。痩せて目の下にクマを作っていたわ」
はぁっとため息をつき、ハリエットが窓の外を見る。
「対価の猫でいた時の方が、幸せでしたかね」
ふふっと私は小さく笑った。
アダムから貰ったハンカチを取り出し、小さな黒猫を指でなぞる。
転入したてのマイラは、私にとても懐いて慕ってくれていた。
それが演技だったとしても…本当は少しだけ、マイラの事を妹のように思っていたのは内緒の話。
さっとハンカチをマイラに渡す私。本当に出来た淑女だわ。私ったら。
「…これ、イヴリン様のハンカチ?」
「きゃあぁぁああっ!!!」
私はマイラからハンカチを奪い取る!と思ったが奪い取れていないだとっ?!!
ギリッとマイラを睨み付ける。マイラはにへらと笑い、更にハンカチの端を握りしめる。
「イヴリン様、これ何ですの?」
「くぅっ…!!」
何て馬鹿力を隠していたの?それとも色々ありすぎて覚醒してしまったの??!恐すぎるわ!!
敵わない力に敗北し、ハンカチから手を離す。
「犬と猫…の刺繍?」
「そうよ。それが?」
ふんっと私はマイラから視線を外す。
「この手の込んだ刺繍、とても可愛らしいですわ。イヴリン様のイメージではないですけれど」
「…そうかしら?私は大好きだけれども。そういったファンシーなモノが」
「手作りですのね」
「そう…ね」
「アダム様ですか?」
「んなっなっなな、ななぜ?」
「勘です。アダム様なのですね」
そう、これはアダムが私にプレゼントしてくれた物だ。
シルクの生地に亡くなった愛犬デイジーちゃんと、小さな黒猫がちょこんとお座りした状態で、刺繍されている。
最近猫ちゃんも気になるんだ~と軽く言った一言を覚えており、一緒に刺繍してくれたのだと思う。そしてそのハンカチを、私はとても気に入り大事に使っているのだ。
「イヴリン様、このハンカチは使えませんわ」
といつの間にか綺麗に畳まれたハンカチを渡された。
「アダム様の真っ直ぐな想いが、このハンカチには込められていますもの」
自虐めいた小さな笑いを溢しながら、遠くを見つめるマイラ。
「…あなたは?あなたは殿下をどう思っているの?」
「…初めは、第一王子の妻の座が欲しいだけでした。
でも、薄っぺらくて中身のない方に見えるでしょうが、わりと努力する所もあって、そこが可愛いなとも思いましたわ。出来る弟を持つのも辛い時があるんだよと、おっしゃる時もありましたのよ?」
クスリと笑うマイラ。
そう…殿下はあなたに弱いところを、お見せになっていたのね。そんな事、私には一度もなかったし、殿下の努力や良い所をあまり探そうとはしなかった。
「マイラ、察しているとは思うけれど私は殿下を愛してなかったし、殿下も私を愛してなかった。まああなたのやり方は相当汚なかったけど水に流してあげる」
だって殿下と結婚せずにすんだのはマイラのおかげでもある。
眉根を寄せて、迷子のような目で私を見るマイラ。
「私はアダムと婚約出来て、今とても幸せなの。…じゃあもう気にする事は何もないわよね?」
マイラの目から涙がぽろぽろと溢れる。
「殿下と一度、ちゃんとお話ししなさい」
私はそう言って、マイラの部屋を出ようとした。
「…めんなさい」
「…」
「ご…めんなさい。イヴリン様…」
私は小さく微笑み、今度こそ本当にマイラの部屋に出た。
「いかがでしたか?マイラ様のご様子は」
「だいぶ反省したのではないかしら。痩せて目の下にクマを作っていたわ」
はぁっとため息をつき、ハリエットが窓の外を見る。
「対価の猫でいた時の方が、幸せでしたかね」
ふふっと私は小さく笑った。
アダムから貰ったハンカチを取り出し、小さな黒猫を指でなぞる。
転入したてのマイラは、私にとても懐いて慕ってくれていた。
それが演技だったとしても…本当は少しだけ、マイラの事を妹のように思っていたのは内緒の話。
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