目が覚めたらBLゲームの悪役令息になったけど、山に引き籠もりたいので全力で主人公を応援しますっ!

mana.

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【16歳】

【16歳】10 クロバイver.

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「さて………」

精霊王として約1000年……
私の愛し子はローズウッド家初代の者だったが……愛し子は別の者を選んだ。
選んだ者は…唯一の…私の「友」だった。
友はローズウッド家に婿入した。
そして私は別の者を選んだからといって離れる事も出来ず、私の大切な友と愛し子の子どもが誕生し「祝福をしたお前の子でもある」と、言われて赤子に手を握られた時……あまりの愛しさに精霊の森へ帰る事をやめる決心をした。
別に…ここでも精霊王としての役目が出来ない訳ではなかったしな。

子は愛する者を選んで新しい子を生し、いくつも歳を重ねて友は先に逝った。

そしてまた更に歳を重ね……目の前で消えゆく愛し子の魂に…身体に触れて囁いた。


「私はお前だけでなく……ローズウッド家を…愛していくよ………」


愛し子はポツリと最後に涙をこぼして声になるかならないかの言葉を遺して目を綴じた…


___僕は……貴方も…愛していたよ…クロバイ……___


残酷な告白だ。
今思えば当時は跡取りを残すのは必須だ。
精霊王との子は未知のものと考えたのだろう。

代々当主と、精霊の力を持つ者には私の存在を伝えている。
精霊を見ている者ばかりのこの家に、拒否反応を示す者はいない。
使用人は口の堅い者で最低限にして執事として働き、見た目を段々歳を取らせて引退しては親戚・家族、遠縁だと言って若い姿で戻ってきた。

そして16年前、精霊王が生まれる樹の下で次代の精霊王が生まれた。
次代の精霊王が生まれると、いつかは分からないが徐々に力を失い今の精霊王はいずれ消滅する。

___あぁ…やっと…アイツらの元へ行けるのか……___

精霊王にはあまり感情が無い。
無いのだが、私は友と愛し子に沢山の事を学んだ。

だが………この次代の精霊王は何だ?
生まれた時から感情が身体の中で渦巻いてる。
そして…今のローズウッド家の者達だけではない…私も…この精霊王に引きずられて更なる感情が引き出された。

面白い。
次代の精霊王はどんな精霊の国を作ってくれるのだろう?

皮肉な事に、次代の精霊王も私同様愛し子に運命の紐が増えてしまった。
選ぶのは愛し子だ。
あの愛し子も…愛しく…面白い。
流石あの2人の血を引く者だ。
ポーロウニアも愛らしく意地っ張りだが、良い母親に育った。

精霊達が眠っている間、私も全知全能ではない。
出来る限り行動でも導かねば………

取り敢えず……運命の紐が絡まらない様に牽制はしておかないとな………

___コンコン___

「失礼します、カヤです。」

「入れ。オーク様は…」

「ご一緒です。では、失礼致します。」

カヤとオークが入ってきた。

2人が入って来たのを確認し、周りに結界を張る。
エンジュとカイエには連絡済なので、外は2人が警護してくれているはずだ。

「この度は足をお運び頂き感謝申し上げます。これからの事は……どうかご内密にお願い致します。」

そしてオークとカヤを精霊の森へと連れてきた。
ここでは自分のあるべき姿へと戻す。

「………あっ……ぁ…!!……ウソだろっ?!お前っ!!…っ……精霊…王…か?!」

「あぁ……王国へ献上した本、まだ残ってましたか?結構そっくりに挿絵も描いて頂いて、私もお気に入りでした。」

大昔、私の話を後世に伝えると友と愛し子が絵師に描かせ、子ども向けの話を書いている者に依頼して童話の本を出したら国内で評判となり、当時の幼い王子にと献上されたのだ。
まだ…残っていたか。

「あれは特殊な魔術で残しているから………俺っ…あの話大好きで……お前だったのか…!」

王宮にも精霊の樹があり、今は眠っているが精霊が生まれているのを教えられてるせいか私への拒否感はないな。

「えぇ、私です。精霊王として……はじめまして…第3王子オーク……失礼、執事としてでなく、精霊王として対等にお話をさせて頂く。」

「分かった。」

「そして……こちらのカヤは………次代の精霊王だ。これから貴方とは長い付き合いとなるだろう。」

「っ!!そう………なのか?!」

「そして………シオンは…カヤの、次代の精霊王の愛し子だ。」

「えっ?!」

オークの顔がショックで顔色がみるみる悪くなる。

「精霊王の愛し子は精霊王が生まれて最初の願いで生まれてくる。運命の紐が結ばれ、それは誰にも解けない。しかし……貴方にも結ばれた…」

オークがバッと、カヤの顔を見ると今度はカヤが苦渋に満ちた表情をしていた。

「………シオンは………現代で言う所の『天然』だ。2人の恋の駆け引きは全く通じないだろう。」

「「はい。」」

2人で即答し、2人で睨み合う。

………ハァ………2人共…色々しでかしているからな…特にカヤだが……

「んんっ!……でだ。オークは本を読んだのなら分かるだろう。2人の運命の紐がどちらを引くのか…それは…」

「「愛し子が選ぶ…」」

「そうだ。選ぶのは愛し子、シオンだ。」

人間を選ぶのか、精霊を選ぶのか…
この1000年、色々と見てきた。
妖精とのハーフはいるが精霊は基本身体が無いものが多い。
未知な者だ。

子は……祝福で与えはしても自分の子は…精霊の樹が生むので分からない。
アイツは……愛し子が生んだ子は…俺の子でもあると言ったが……俺を慰める為に言ったのだろう。

「シオンは長子とはいえ、ユズもいる。それに現在の恋愛は自由だ………それは王族でもな。」

「………あ…」

「今の王は若い頃に俺の姿を一度見ている。良い王に育ったな。そして……良い子を生んだ。」

「シオンには私から話すが…運命の紐を引くのは愛し子だ。無体をさせないように。………それから……オーク。」

「はい。」

「近々、お前に一度愛し子との閨の日を設ける。ただし婚約者で無い者との深い睦み合いは良くない事とされているな。幸いお前はこちらへ頻繁に泊りがけで剣術や魔術の訓練に来ているからその関係として非公式の閨の講義として行う。………カヤ……お前はその日、別室にて隔離だ。」

「しかし!」

「これは…精霊王として…命令だ…」

「………はい…」

ギリ……ッと、音がするのではないかと言う程強く手を握るカヤを見つめた……

その気持ち……痛い程分かるがな……だが……シオンの為だ……選ばせてやってくれ。

そして、戸惑うオークに少し話をした後………屋敷での姿に戻り、2人を執務室に戻した。
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