目が覚めたらBLゲームの悪役令息になったけど、山に引き籠もりたいので全力で主人公を応援しますっ!

mana.

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【番外編】普通な日々 ユズver.

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「………で、俺に頼みに来たと…」

…と、言う訳で、兄様達が僻地の仕事で動けない日と父上の王宮での仕事を狙ってついてきてオリーブと庭で本を読みながら相談していた。
本はほとんど読んでないけどね。

「…うん。君ならもう閨の講義も始まってるし…復習のつもりで僕に教えてくれたら…」

『……誰のために練習してると思ってんだよっ。』

「ん、何?」

「いやっ、何でもない…でも…何だ…その………閨は…俺…まだ…………」

ん?顔を真っ赤にしてゴニョゴニョ言い出した。
…そうだよね、やっぱり幼馴染相手に無理だよね。

「…ハァ…分かった…じゃぁアベリアにでも「いやっ!それは止めてくれっっ‼︎!」」

「えっ…う…ん…分かった。」

ガッシリと肩を掴まれて真剣に付き合うって言ってくれた。
良かった…僕…やっぱり怖いからさ…こういうのは……オリーブが良いな…って思ったんだ。

「…分かった…じゃぁ、まずは…キ……キス…から、練習だなっ。」

「……ん…分かった。」

「……ユズ…目を…瞑って…」

「……ん…」

___……サァァァ……___

オリーブに肩を抱かれた時、どこからか気持ち良い風が吹いてきた。
樹の影がカサカサと優しく動いて、風も優しく頬を撫でる。

「………ユズ……チュ…」
「…っ……」

初めて自分の唇に触れるオリーブの柔らかい唇は、ずっと重ねていたくなるような…甘い果物を食べているような感覚だった。

「フフッ……何だか…くすぐったいね。」

唇がゆっくり離れていったけど…何だか離れるのが寂しいや。

___ギュッ!___

「………っ!……ユズ…あのさ…」

僕の腰に回したオリーブの手が僕を引き寄せて何か言おうとした時。

___ガシィッッ!___

「はぁぁぁあい…そこまでぇぇ……」

「あれ、フジ兄様?」

笑ってるけど、今まで見たことのない怖い目をしたフジ兄様がオリーブの頭を掴んでいた。

「痛い痛い痛いっ!フジ兄様っ、痛いぃっ‼︎」

___ギリギリギリ…___

「…フジ兄様、オリーブの頭からあり得ない音がするよっ⁈」

「あぁ…大丈夫だよ。それより久し振りだね、ユズ。シオン達は元気かい?いやいや、君が遊びに来てると…ふと風の便りがあってね。来てみたらご覧の通りだ。君に何かあってはシオン達に会わせる顔がない……おっと、オリー…ヘイゼルが呼んでるんだった。一緒に行こうか。」

「痛いよっ…って…えっ、兄様が?何で⁈」

「うん、行けば分かるから……あ、ユズ、土産を御者に渡してあるからみんなで分けると良いよ。」

「ありがとうございます。」

「ユズは本当に良い子だね……ローズウッドの方へは改めて僕が後日伺うと伝えてくれるかな?」

ん、改めて?何を改めるんだろう?

「オリーに関してはちょっとヘイゼルから仕事を任されそうだから、数日会えないと思うけど…何、次に会う時は少しは精悍な顔になってるかな。楽しみに待っててね~。」

「兄様っ!俺はまだユズとっ…続きがっ‼︎ユズ~ッ!」

ズルズルとフジ兄様に引き摺られてオリーブは行ってしまった。

「……行っちゃった……」

どうしよう…僕も帰ろっかな…

「…やぁ、こんにちは。」

「ハルニレ王。あれ?今日は温室で何か研究をする日でしたっけ?」

父の元へ戻ろうとしたら、オーク兄様とオリーブの父、ハルレニ王がフジ兄様とオリーブが行った反対側からのんびりとやってきた。

「君にはハル父様って呼んでって言ってんのになぁ。今日は研究する日じゃないよ。」

「そうですか、それは良かったけど…お名前…ハルニレ父上じゃ…ダメですか?」

「それじゃ、言いにくいじゃないか。それに、アイツとは分けて呼んでほしいしな。…ホントは、アイツも『父様』って、可愛く呼んでほしいんだぞっ?」

小さな頃、父に連れられてこの王に謁見した時、両手を広げて歓迎してくれた。
その日からずっと「ハル父様」と呼んでくれと言われて、最初は何も分からず王命だと思って呼んでいたけど…大きくなるにつれ、やっぱり違うと最近直したら会う度に言うので根負けした。
こんな僕にでも気さくに話してくれる、尊敬出来る王様。

「……もうっ…しょうがないなぁ……どうしたんですか?ハル…父様。」

「可愛いなぁ♡ウチのヤツらには無い可愛さだ。お前が来てると聞いてな、公務を抜け出した☆」

ウィンクして笑う王。
下々にそんな顔しちゃ駄目なんだけどなぁ。

「ヘイゼル兄様に叱られますよ?」

「良いの良いの、俺はほぼ隠居なんだから。それよりユズ…」

「はい。」

___ザァァァアッ!___

「わぁっ!」
「ユズッ!」

いきなり何でも無かったのに強い風が吹き、僕が飛ばされるのを心配してか、ハル父様が僕を抱き締めてくれた。

「………ビックリしましたね…」

「大丈夫か?」

「はい、父様のお陰で何とも…で、お話は何でしょう?」

「あ~………まっ…どうやら今のはって、メッセージっぽいから止めておく。近々屋敷に使いを出すから家にいてくれ。」

「…分かりました。」

何だろ、シオン兄様絡みかな?

___ユズ~ッ!………っ…ハルッッ!お前~っっっ!___

「…あ…ヤベッ…」

遠くから父の声と、隣のハル父様に気付いて声が荒くなる。

「ハル父様?」

「スマン、ユズッ。アッシュに無理な調査を振ったみたいでさ、ポゥとのサプライズ旅行が延期になったらしくて………じゃあな!」

___あ゛っ、ハルゥゥ~ッ!___

軽やかに飛行の魔法で逃げる王に魔法が使えるのに思いつかないのか律儀に走る家臣の父…

「ハァ…ハァ……全く…覚えてろよ。」

家臣が言うセリフじゃないよ、父上。

「…帰りましょうか?」

「…そうだね…」

僕、頑張って早くお手伝い出来るように頑張るね。
帰りの馬車で落ち込んでいる父を見ながら決心した。
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