可愛くなりたい訳じゃない!

mana.

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ガーネットの帰宅でパールは使用人の顔に戻り、パタパタと玄関へ走っていった。
嵐のようだった…

「リオ、お客さんだ。」

部屋に戻ってくつろいでいた俺が顔を上げると、休んだ俺より心配しすぎて顔色の悪いベリルがいた。

「リオ、大丈夫か?」

「ベリル、来てくれたんだ。」

「今日はロードが用事でこちらに行くと話していたから一緒に来たんだ。今、ガーネット嬢と話をしているよ。」

「…俺は席を外すよ…ベリル様……、ですからね。」

「分かってるよ。」

肩に手を置いてジルコンは忠告した後、部屋を出ていく。
俺はどう顔を合わせて良いのか分からずにベッドに腰を掛けて少し下を向いていた。

「…隣に座っても?」

「うん、良いよ。」

___ギシッ___

目の端にベリルの腰を掛ける姿が見える…
何だろう?意識すると何でもドキドキするもんなのかなぁ…

「身体は…大丈夫なのか?」

「…うん…昨日のは…睡眠不足もあったみたいだから…」

「俺のせいだな。」

「いや…それは違う…いや…違わないのか?」

「返事はゆっくりで良い。学園生活も始まったばかりだし。俺は…待つよ。」

そう言うと、ベリルが俺の指を絡めて自分の膝に乗せた。

「な…なぁ…何で……俺…なんだよ?お前も令嬢の方が良かったんだろ?」

「あぁ、確かにそうだった。でも…パーティーでお前と出会って、変装した令嬢と勘違いして惚れて…男と分かっても嫌な感じはしなかった。そしてこないだのデートだ。」

こいつもデートと思ってたのか。

「可愛いものに目を輝かせて喜ぶお前や、一生懸命人のために動くお前を見てると俺も楽しくて…国では令嬢の要求のままに従って、笑顔でいたけど何の感動も無かった。俺は…」

ベリルの握る手に熱が籠もる。

「…一緒に観光した楽しさ…夕日に照らされたお前の笑顔…俺は確信したんだ…一緒に生涯を共に出来るのはお前だと。」

「……っ…それって…」

「あぁ…プロポーズとして受け取ってくれても良い。いや、正式な言葉は結婚式まで取って置いといて…ただ、この気持ちはお前が俺にも向けないと意味が無いと思っている。」

顔を上げると、握る掌以上に熱い眼差しがあった。

「…っ…恥ずかしいっ…」

「フフッ、俺もまさかこんな言葉が出るなんて思わなかった。」

「そういうキャラじゃないのか?」

「元々俺は、恋愛には淡白だと思ってた。」

そうか⁉初対面のあの全力疾走鬼ごっこはなんだったんだ?

「アハハ、お前のお陰で俺も驚いてるよ。ロードとガーネット嬢を見て『俺はあぁはなれない』と、思っていたが、まさか俺も同じタイプの人間とは。お前と少し離れただけで……」

手をベリルの胸に寄せる。

「告白したあの日…俺も眠れなくて、翌日は顔もなかなか見れなかった…そして日に日に、こんなにもお前を思うとドキドキして…切なくなる…」

凄い…服越しなのにドキドキが伝わって…

「…んっ…」

「どうした?」

まただ…腰の奥辺りがゾクゾクする。

「いやっ、何でも。」

「今まで、令嬢と可愛いものや美しいものを見ても心が動かされなかった。でも、俺はお前と一緒に可愛いものを見ていると、可愛いものを持っているお前が更に可愛く見えるんだ。」

「俺は、可愛いものは好きだけど、なりたいんだっ。」

「フフッ…カッコ良く?」

「そう。でも…可愛いもの好きなせいで、俺が可愛いと言われるなら…可愛いもの収集を…諦め…る…」

クソッ、やっぱり諦めたくねぇ!

「そのままで良いんじゃないか?俺なら、可愛いものが好きなお前も、甘いものが好きなお前も…全てが好きだ。一緒に行くのも楽しいしな。」

「…でも…カッコ良くない。」

「それは、この3年間で変わるんじゃないのか?」

「変わるかな?」

「俺達はまだ成長の段階だ。身長も伸びるし授業で筋力も付くだろう。結論を出すのはまだ早いんじゃないか?」

「…そうかなぁ…」

「あぁ…それに、変わらないなら…俺を選んでくれ…」

「ベリル…」

ベリルの熱い目が近付いてくる…息も…熱い…

「は~い、そこまでぇっ!」

「「…っ!」」

「ハァ…ハァ……リオも…まだ、本調子じゃないだろ?」

唇が合いそうになった所で、息の荒いジルコンに止められた。



*****************



「ウフフ、凄い勢いで走るジルコン、初めて見たわ。」

「ガーネット様にもこうでしたよ?」

「クスクス、ベリルも大変ね。」

ジルコンに遅れてやって来たロード・ガーネット・パールもやって来た。

「……お前もそうだったのか?」

「まぁ…最近は解禁だ。お前も頑張れ。」

パールの言葉にベリルが反応し、ロードが応援する。
ジルコンは…ジルコンセキュリティ発動中なのか、俺達の前で仁王立ちだ。

「……申し訳…ございません…」
「当たり前です。」

王子が従者に敬語。
王家もへったくれもねぇな、ウチのセキュリティ。

…さっきのは…キス…だよな、俺…嫌じゃ…なかったかも…

「今日はお2人とも、夕食を食べていって下さいませ。」

ニッコリと笑ってロードとベリルに声を掛けるパールは、腐女子の「腐」の字も感じさせない。
う~ん…プロだ。

「喜んで。」
「あぁ、それならガーネットと更に一緒にいる時間が増える。じゃぁ、俺はガーネットと一緒にいるよ。」

「えぇ、それじゃぁ温室で育てた花がもうすぐ咲きそうなの。是非見て頂きたいわ♪」

「そうだね、君の花のような微笑みには負けるだろうけど…じゃあ、行こうか?」

「えぇ…」

優雅な2人が優雅に退場…
いつ見ても凄いな。単体になると面白…いや、楽しいのに。

「じゃぁ、俺達は…」

「バルコニーで、ティータイムだ。」

うん、ウチの親より目が光ってる。

「はぁぁぁ……幸せすぎて死にそう…♡」

……パールが違う目で光ってるぅぅ……

「パール…ステイッ。」
「イエッサ!」

この世界にも軍隊用語ってあるのか?
何か日本が懐かしいな。
ベリルと2人でバルコニーへ行くと、ジルコンが買ってきた色とりどりの果物が小さく刻まれたゼリー、小さなマフィンの上に色とりどりの生クリームが巻かれ、デコレーションのように散りばめられた可愛いカラフルなアラザン。

「可愛い~♪」

「そうだろ、元気になったか?」

「ありがと、ジルコン。大好き。」

「ありがとう、俺もだよ。」

「……」

あれ、何か空気が重い。

「大事なウチの令嬢と令息は、俺の目の黒いうちは泣かせたらただじゃおかないから、覚悟して下さいね。」

「分かってるよ。」

「ちなみに…先日頂いたリオのとんぼ玉ですが…」

「あ、これだよね。」

俺はジルコンが作ってくれたブレスをジルコンに見せた。

「…貴方がリオに無体を働かないよう防御の加護を込めときましたんで……嫌がることをしたら…フフッ、雷が落ちるかも。」

「……そのつもりはないが、肝に銘じておくよ。」

何だろう…この父と彼氏の一騎打ちみたいな光景…その前に俺達付き合ってないよね?

「まぁまぁ、ジルコン。俺達まだそこまで行ってないし。なっ、ベリル♪」

「……そう…だな…ハハハ…」

あれ、何かベリルが気落ちしている。
俺は気にせず目の前の可愛いお菓子を楽しんで夕食もみんなで楽しんだ後、次の日には元気になっていた。
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