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mana.

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高校2年生

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3年の先輩達はあっという間に引退したからあまり覚えてはいない。
ただみんなイケメンだったのは覚えてる。

___ガバッ!___

「おはよっ…竜ちゃん♪」

朝の電車登校で駅の構内のパン屋から出てきた所で先輩に抱き着かれた。

「うおっ!……っ…おはようございます……拓海…先輩……」

「アハッ♪やっと言えた。おはよっ♡」

2年になって、ずっと言っていた呼び名合戦は俺の負けとなった。

「拓海、何やってんの?竜ちゃん困ってんじゃん。」

たくさんの生徒が俺達の姿を見事にスルーしていく中、聞き心地の良い声が背後からした。

「あ、桜田先輩。おはようございます。」

学校へ向かいながら3人で他愛もない事を話す。
桜田先輩は1匹狼の人であまり後輩と絡むことは無いけど、親しくなると話してくれるようになった。

「……圭佑…」

「…え?」

「拓海は拓海先輩なのに…俺はって名字なの……ズルい。」

「じゃぁ……圭佑……先輩…」

「……ん、良い子……竜ちゃん。」

ポンポンと、頭を撫でて圭佑先輩は自分の学年の靴箱へと向かって行った。

「おはよ、竜哉!何?お前、桜田先輩とも仲良いの?」

「あ…うん。何か分かんないけど最近よく話してくれる。」

クラスメイトに声を掛けられて話を聞くと、圭佑先輩は普段は口数が少なく人とつるむことは殆どないという。
……こないだ映画に誘われたんだけどなぁ……映画の趣味が近いせいかな?
チャイムが鳴って俺達は慌てて教室へと向かった。

男子校は女子がいない世界。
なので教室の中は………

「なぁなぁ……この女子の中で誰が好み?」

「あ~……俺、この子。」

「俺はこの子かな?」

「なぁなぁ…尻派?胸派??」

「俺、脚派~♪」

女子がいないから結構開放的だった。
一応…伝統ある男子校で昔は文武両道の学校だったみたいなんだけどなぁ。

高校2年。
俺は相変わらず人間観察をしているが、友達も一応出来た。
結構漫研じゃなくても、隠れ腐男子はいるもんだ。
廊下に出ると大きな窓ガラスから見える中庭の樹が日向ぼっこをしたくなるほど温かく、木陰も良い感じに照らされている。
この学校は設計が珍しく、真ん中の中庭に囲う形で上から見ると八角形の形の校舎になっていた。

「この校舎…本当に珍しいよな。」

「うん。俺…ここに来るの嫌だったけど、この景色は大好きなんだよなぁ。」

春夏秋冬……デザイン設計ならではの光を取り入れる為に出来た大きなガラス窓から見えるこの景色は、ここの学生でなければ味わえない。
俺は少しずつこの学校が好きになっていた。

「……あ、藤本。そういやさっき1年からこれ預かった。」

手紙を渡されてうんざりする……

「あぁ……ありがとう。」

___放課後、時間を下さい___

「……1年……誰だよ……この子……」

手紙を開けてやっぱり…と、溜息を付く。
2年になってから告白される事が何度かあった。
BL読んでるし…男でも好きなら抵抗はない……とは…思う。
ただ俺自身、恋愛がよく分かってない。
男でも女でも関係なく可愛い子は可愛いと思うけど……正直本当にそれ以上で何かしたい…とか…よく分からない。
付き合ってキスして……エッチ…するんだよな……想像できないんだよなぁ……
だからこそ、自分が知らない相手は尚更だ。

「モテるよな~藤本♪」

「知らんヤツにモテてもなぁ……」

俺は放課後、教室で待っていたら1年生がやって来た。

「……先輩……あの……好きです……」

「…ありがとう…でも…ゴメンね…俺……別に男同士でも抵抗は無いとは思うんだけど……知らない子といきなり付き合うのは……」

と、お断りをしたかと思えば……後日。

___ダンッ!___

「…先輩っ…誰のものにもならないでくれっ!」

おわっ!壁ドンッ⁉

「………俺は誰のものでもねぇよっ。」

って、告白もあった。
いや……告白してくれんのは嬉しいよ?
有り難いよね、こんなブサ男にさ。
ここだけだよ?可愛いとか言われんの。
男子校ってみんなこうなのか?と、中学時代の別の男子校に行った友達に聞いたら「んな訳あるか。」と、ネタと勘違いされて鼻で笑われた。
何度か告白を断っていたら、やっと落ち着いて来た。
合コンしないかと友達に誘われてカラオケに行ってみたが……やっぱりそこからお付き合いへの発展もなく、お友達すら出来なかった。
そんなもんだよね。

この時期から圭佑先輩と学校外でもよく会うようになった。

「圭佑先輩~!」

「おぅ。」

拓海先輩とも遊ぶことはあるが、服や映画の時は圭佑先輩だ。

「俺、着てみたい服があるんですけど……ちょっと悩んでて。」

「どんなの?」

先輩はいつも丁寧に俺の話を聞いてくれる。
当時コミュ力の弱さを悩んでいた俺にアドバイスをくれたりして、コミュ力が少し上って友達も増えた。
中学時代は沈黙が怖くて友達と一緒だと無理に明るくしすぎてから回ったりしていたが、先輩とは沈黙でもそれすら楽しかった。

春になり先輩達が卒業する日、俺は正門で別れを惜しむ生徒に混じって圭佑先輩と話していた。
拓海先輩は瑞希先輩と2人でファンに囲まれて早々にどこかへ行ってしまい、俺と圭佑先輩が残された。

「……なぁ…竜ちゃん…これ、あげる。」

「……ん?」

先輩の握り拳が俺の手の平の上に乗り、その手が開いて無くなると制服のボタンがあった。

「俺の制服の第2ボタン。竜ちゃんにあげる。」

「……え、だってこれ……」

この学校の制服のボタンは特注でよく見ると学校の校章が入っている。
先輩を好きな子が欲しいとさっき言ってたし、あげるもんだと思ってたのに。

「竜ちゃんが持ってて。」

「う~ん…良いのかなぁ…これ…先輩を好きな子に悪いでしょ?」

「俺は好きじゃないから良いよ。竜ちゃん、持ってて。記念♪」

そう言われると……だんだんと明日から先輩がこの学校にいなくなるんだという実感が湧いてきたら涙が出てきた。

「あぁ……もう……泣くなっ。」

フワッ……っと、優しい先輩の香りがした。


___おはよ、竜ちゃん……___


拓海先輩だけでなく、最近圭佑先輩も朝に抱き着いてくる事が増えてたんだよな。


……そっか……明日からもう無いんだ……


そう思ったら、俺の涙は止まらなくなり…
拓海先輩が俺と写真を撮ろうと戻ってきた頃には、目がパンパンに腫れた俺がいた。
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