12 / 75
第11話 デート
しおりを挟む
***
「葵ちゃん帰るよ」
授業が終わり放課後、日向が隣に座る葵に声をかけた。
「あ、うん」
「(今日も倉庫に行かないとか……違う毎日か。まあ、家に帰っても誰もいないしいいか)」
「今日はちょっと寄り道しよっか」
「寄り道?」
「そう。デート」
眩しいくらいの笑顔を見せた日向はカバンを手に葵をデートに誘った。
蓮と柚佑は先に帰ったようで教室にその姿はなかった。
「デートって……まあ、いいけど、どこ行くの?」
「どこってその辺をぶらぶらと?」
「ふーん」
小首を傾げる日向を他所に葵は教室を出る。
単車に跨り、走らせること数分。
「到着! ここのパンケーキがすっごい美味しいみたいで行ってみたかったんだけど、あいつらと行くのはね……」
日向はヘルメットを外しながら言葉を濁した。
単車が止まったのは白を基調としたシンプルなお店。
だが、窓から店内を覗けばそこはまるで絵本の中のようだ。
「たしかに、日向は似合いそうだけど他は絶対浮くね。甘いの好きって印象もないしな……」
葵はお店を眺めながら、先日会ったばかりの白狼のことを思い起こしていた。
「あ、でも楓さんは甘党だよ。ここ教えてくれたのも楓さんだし」
「へぇ。なんか意外だね」
「そうだね。さあ、行こう!」
「うん」
「(わぁ、めっちゃくちゃ可愛いカフェじゃん。私ひとりじゃ絶対来ないな)」
ドアを開け一歩踏み出す。
白と黒を基調としたインテリアや壁は絵本のおとぎ話の中に入り込んだかのような錯覚を覚える。
「どれ頼む?」
店員に案内され、席に着くなりメニューを開く日向。
「どれも美味しそう」
「んーあ、僕これにする」
「決めるの早っ! じゃあ、あたしはこれで」
「りょーかい」
日向は席に設置されているベルを押すと店員に2人分の注文内容を伝えた。
しばらくすると──
「お待たせしました」
先程、注文を受けた店員が顔程の大きさの皿を両手に持ちやってきた。
その皿の上にはまん丸のパンケーキが3枚とパンケーキが隠れるほどの生クリームが乗っていた。
「美味しそう!」
「美味しそー」
日向はそう言うと携帯を取り出し写真を撮り始めた。
日向が注文したのはチョコバナナパンケーキ。
たっぷりの生クリームの上にはチョコソースがかけられ、生クリームを囲うようにスライスしたバナナが散りばめられていた。
「葵ちゃんは撮らなくていいの?」
「あたしはいいかな」
「そっか。これね、後で楓さんに自慢するんだ」
日向はいたずらっ子のような笑みを浮かべていた。
「今日、日向とあたしがここに来てること楓は知ってるの?」
「ん? 知らないよ」
「そうなんだ……」
「(楓可哀想に。行きたいカフェだったらきっと拗ねるだろうね)」
葵は憐れむような目でパンケーキを見つめた。
注文したのはベリーベリーパンケーキ。
たっぷりの生クリームの上には、いちごソースがかけられ、生クリームとパンケーキの上にはいちごとブルーベリーがふんだんに乗せられていた。
「美味しかったー!」
「久しぶりにパンケーキ食べたけど、すっごい美味しかった。今日はありがとう。この後はどうするの?」
葵は満腹になった腹を擦りながら問いかける。
「この後は……そろそろ大丈夫かな」
携帯で時間を確認した日向は呟く。
「大丈夫? 何が?」
「あ、ううん。何でもないっ! そろそろ行こっか」
日向は慌てた様子で立ち上がると会計を済ませ、そそくさと駐車場へ向かった。
「日向待って。お金は?」
「ごめんごめん。僕が誘ったからお金はいらないよ。じゃあ後ろ乗ってね」
「ありがとう」
葵が単車に跨ったのを確認すると日向はエンジンをかけ走らせた。
「葵ちゃん帰るよ」
授業が終わり放課後、日向が隣に座る葵に声をかけた。
「あ、うん」
「(今日も倉庫に行かないとか……違う毎日か。まあ、家に帰っても誰もいないしいいか)」
「今日はちょっと寄り道しよっか」
「寄り道?」
「そう。デート」
眩しいくらいの笑顔を見せた日向はカバンを手に葵をデートに誘った。
蓮と柚佑は先に帰ったようで教室にその姿はなかった。
「デートって……まあ、いいけど、どこ行くの?」
「どこってその辺をぶらぶらと?」
「ふーん」
小首を傾げる日向を他所に葵は教室を出る。
単車に跨り、走らせること数分。
「到着! ここのパンケーキがすっごい美味しいみたいで行ってみたかったんだけど、あいつらと行くのはね……」
日向はヘルメットを外しながら言葉を濁した。
単車が止まったのは白を基調としたシンプルなお店。
だが、窓から店内を覗けばそこはまるで絵本の中のようだ。
「たしかに、日向は似合いそうだけど他は絶対浮くね。甘いの好きって印象もないしな……」
葵はお店を眺めながら、先日会ったばかりの白狼のことを思い起こしていた。
「あ、でも楓さんは甘党だよ。ここ教えてくれたのも楓さんだし」
「へぇ。なんか意外だね」
「そうだね。さあ、行こう!」
「うん」
「(わぁ、めっちゃくちゃ可愛いカフェじゃん。私ひとりじゃ絶対来ないな)」
ドアを開け一歩踏み出す。
白と黒を基調としたインテリアや壁は絵本のおとぎ話の中に入り込んだかのような錯覚を覚える。
「どれ頼む?」
店員に案内され、席に着くなりメニューを開く日向。
「どれも美味しそう」
「んーあ、僕これにする」
「決めるの早っ! じゃあ、あたしはこれで」
「りょーかい」
日向は席に設置されているベルを押すと店員に2人分の注文内容を伝えた。
しばらくすると──
「お待たせしました」
先程、注文を受けた店員が顔程の大きさの皿を両手に持ちやってきた。
その皿の上にはまん丸のパンケーキが3枚とパンケーキが隠れるほどの生クリームが乗っていた。
「美味しそう!」
「美味しそー」
日向はそう言うと携帯を取り出し写真を撮り始めた。
日向が注文したのはチョコバナナパンケーキ。
たっぷりの生クリームの上にはチョコソースがかけられ、生クリームを囲うようにスライスしたバナナが散りばめられていた。
「葵ちゃんは撮らなくていいの?」
「あたしはいいかな」
「そっか。これね、後で楓さんに自慢するんだ」
日向はいたずらっ子のような笑みを浮かべていた。
「今日、日向とあたしがここに来てること楓は知ってるの?」
「ん? 知らないよ」
「そうなんだ……」
「(楓可哀想に。行きたいカフェだったらきっと拗ねるだろうね)」
葵は憐れむような目でパンケーキを見つめた。
注文したのはベリーベリーパンケーキ。
たっぷりの生クリームの上には、いちごソースがかけられ、生クリームとパンケーキの上にはいちごとブルーベリーがふんだんに乗せられていた。
「美味しかったー!」
「久しぶりにパンケーキ食べたけど、すっごい美味しかった。今日はありがとう。この後はどうするの?」
葵は満腹になった腹を擦りながら問いかける。
「この後は……そろそろ大丈夫かな」
携帯で時間を確認した日向は呟く。
「大丈夫? 何が?」
「あ、ううん。何でもないっ! そろそろ行こっか」
日向は慌てた様子で立ち上がると会計を済ませ、そそくさと駐車場へ向かった。
「日向待って。お金は?」
「ごめんごめん。僕が誘ったからお金はいらないよ。じゃあ後ろ乗ってね」
「ありがとう」
葵が単車に跨ったのを確認すると日向はエンジンをかけ走らせた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
【完結】逃がすわけがないよね?
春風由実
恋愛
寝室の窓から逃げようとして捕まったシャーロット。
それは二人の結婚式の夜のことだった。
何故新妻であるシャーロットは窓から逃げようとしたのか。
理由を聞いたルーカスは決断する。
「もうあの家、いらないよね?」
※完結まで作成済み。短いです。
※ちょこっとホラー?いいえ恋愛話です。
※カクヨムにも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる