舞桜~龍華10代目総長~

織山青沙

文字の大きさ
66 / 75

第65話 朔と柑太の思い

しおりを挟む
***

「今の葵? どうだった?」

菖人と葵が電話している途中、部屋に入って来た桃李。

ソファーに腰掛ける桃李は菖人の電話が終わると問いかけた。

「あー龍華には戻れないって。でも、ちゃんと話せた。あと……朔と柑太のことやっぱり自分のせいだって思ってた」

菖人は言いにくそうに目を伏せると口を開いた。

「やっぱり……。菖人の反応からしてそうなんだろうなって思ったけど。でも、あれはどう考えても葵のせいじゃないだろ!」

菖人の言葉を聞いた桃李は感情的に言い放つ。

「ああ。あおを殴ろうとした黒猫が鉄パイプに突っ込んで崩れて来たんだからな……」
「うん。葵が巻き込まれそうだったのを助けたのが朔だったね……」

桃李とは裏腹に落ち着いた口調の菖人。

それの影響か桃李は静かに口を開いた。

その唇は僅かに震え、膝に置かれた拳はきつく握りしめられていた。

そう、あの日──葵は積まれた鉄パイプを背に黒猫の1人と向き合っていた。

男が葵に殴りかかった瞬間葵は避けた。

すると、殴る対象がいなくなった男はそのまま積まれた鉄パイプに突っ込んだ。

鉄パイプが崩れた瞬間、朔は走り出し、近くにいた葵を手で押しのけた。

押された葵は鉄パイプの下敷きなることはなかったが━━そこには朔の姿があった。

「ああ。下敷きになった朔にあおが寄り添ってたら黒猫が……あおを刺そうとした」
「うん。葵の前に飛び出したのが柑太。2人とも、ただ葵を助けたかっただけなんだよ……。だから葵のせいじゃないのに……!」
「ああ」

俯いていた菖人は桃李に視線を移す。

その視線の先には静かに涙を流す桃李の姿があった。

鉄パイプが崩れ落ちた後━━

ナイフを持った男が走りだす。

その視線の先には鉄パイプの下敷きになった朔に寄り添う葵の姿があった。

そんな無防備な所を狙うのが黒猫だ。

気が動転して周りが見えていなかった葵。

柑太に呼ばれ葵が振り向くと、そこには刺された柑太の姿があった。

倉庫には葵の泣き叫ぶ声が響いていた。

すぐに病院へ行ったが柑太は出血量が多く助からなかった。

朔は10ヶ月経った今も目が覚めないままだ。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

【完結】逃がすわけがないよね?

春風由実
恋愛
寝室の窓から逃げようとして捕まったシャーロット。 それは二人の結婚式の夜のことだった。 何故新妻であるシャーロットは窓から逃げようとしたのか。 理由を聞いたルーカスは決断する。 「もうあの家、いらないよね?」 ※完結まで作成済み。短いです。 ※ちょこっとホラー?いいえ恋愛話です。 ※カクヨムにも掲載。

王子が好みじゃなさすぎる

藤田菜
恋愛
魔法使いの呪いによって眠り続けていた私は、王子の手によって眠りから覚めた。けれどこの王子ーー全然私の好みじゃない。この人が私の運命の相手なの……?

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

処理中です...