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長らくお待たせしてしまいました。
時間が取れなさ過ぎて思っていた以上に間が空いてしまっていて申し訳ないとしか……。
お待ち下さっていた方々本当に有難うございます。
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 撤退は『セラス国側からの要望』だそうだ。



 昨日の夕食後すぐに部屋に戻ったライアスが、一夜明けて朝食時に持って来た情報はこれだった。
 顔色からすると寝てないっぽい。目の下のクマ……。ごめん。

「要望なあ……? そんな要望出たから受け入れるとかってそんなもんでいいの?」

 ライアスが紙にまとめてくれていた資料に目を通しながらごくごく当たり前な疑問を口にする。

「勿論、そういう物ではないと思うが……」

 俺の疑問を聞いてソランツェも言っているけど、うん。勿論そういう物でもないんだろう。判っているが口から出るっていう。

 ざっと目を通すと、セラス国は兎に角お金が用意出来ないという事。
 昔と比べ貧しくなっているとは昨日聞いた通りだけど、目に見えて貧しくなり始めたのは約七~八〇年くらい前らしい。その頃より貴族・平民と区別なく人は絶えず流出し、打ち捨てられた町や村は多く税収も何もっていう状態に……。
 だから、現在危うくはあるがまともに存在しているのは王都、ロイトダシェーン・ファンディオ側の国境の街、その周辺の小さな農村数個ずつと細々ながらも採掘が続いている鉱山周辺の町のみ。あとは人が居るという点で言えばルトゥスア国との国境の砦に兵士がいる。
 まあ、吹けば軽く地の果てまでも飛ぶくらいの国力の無さ。

 ライアスの心配していた通り、昨年は元々の不作に加えて、庶民の主食となっている芋類までも原因不明の病害でうまく育たないものが多く凶作と言える出来だったそうで、配給分だったり今年不足するであろう分の食料を輸入したいが、その十分な資金が無いという状況に陥ったそうだ。
 そこで苦肉の策として、寄進分をそちらへ回せば大丈夫だと考えた、らしい。

「うーん、”最小限”しかなかった分までもねえ……」

 今まで幾ら出していたかは知らないが大丈夫と思えるものなのか。
 貧しくなり始めてからここに至るまでに、言っちゃ悪いが面白いくらいの勢いで傾いている気がする。アクセルめっちゃくちゃ踏んでるなってくらい。
 負の連鎖と簡単に言っていいものか判らないが怖い物だなと思いながら続きに目を通す。



 セラス支部の担当神官はセラス国側から撤退の要望を受け取った後すぐさま教会側へ相談。
 そういう理由があるのならば、

 ”寄進の事は気にせず、それこそ撤退云々はするにしろ、しないにしろ追々にした方が良い。先ずはこの苦難を乗り越える事が肝要であり、その為にも我々は変わらずあなた方に寄り添い、お手伝いさせていただく”
 
 と、ヴァルオム総教会として話をし、それとは別に総教国として資金・食料支援を持ち掛けたが―――

「え? セラス国は断った?」
「はい。我が国からの支援も、教会の寄り添いも」
「なぜ断る?」
「訳判らんぞ、おいおい」

 くれるっつうんだからもらっておけよ。いや、そういう物でもないかもだけど。でも。

「支援を受け入れると借りを作る事になるだとか、それならば寄進分を回せばいいだけの話だから、などという意味合いの言葉で断って来たそうです」
「はぁ?」

 なんだそれ。いやいや……はぁ????

「えーっと、借りだとか言ってる場合じゃなくない? みんな食べ物なくなっちゃうだろ?」
「そうなのですが、何を提案してもセラス国側が頑なで」
「諦めた?」
「いえ、諦めたといいますか……」
「ん?」

 どう考えても”無謀”としか思えない言い分に、協議を重ねつつも色々調べた結果、どうやら不安が残る部分についてはルトゥスア国が援助する様だという事が判った。

「それで手を引く事にしたと?」
「いや、おかしくね? 総教国のは借りを作る事になるって断ったくせに? つーか、たしかルトゥスア国って例の『喧嘩別れ』した隣国じゃないのか?」
「先にリヒト様が疑問に思われている事からお答えしますが――」

 独立後数十年はルトゥスア国から仕掛けてくる小競り合いもあった様だがしばらくするとそれも止み、膠着状態というか、お互い”無視状態”となったそう。
 それから長い年月の間、二国間はそんな状態にあったが、約百年ほど前にルトゥスア国から”自分達には渡す手段がないのでお願いしたい”と、ある内容の書状が総教会に託された事がきっかけで関係が変わった。
『そろそろ互いに過去に縛られず、手を取り合い同じものをまた見たいと思っている。私達は一つだったはずだ』
 そして、そのまま国交を結んでからは互いを最上の友好国とした。簡単にまとめればその一言らしい。

「だから、最上の友好国の支援受けるって?」
「そうですね」
「えー……」

 つーか、あっさり国交結びすぎだろとか思っていたら、ライアスがそこに至る経緯まで説明してくれた。

 セラス国側は当初その書状を快く思っていなかったらしいが、ルトゥスアが言う様に、既にから長い年月が経っていた事から国交を結びたいというルトゥスアの提案を考えてみる事にしたらしい。

 南北を山地に蓋をされ東側は河を挟んでロイトダシェーン、西側は全面ルトゥスアとの国境。
 国交を結びルトゥスア国内を通れるようになれば、行こうとするならば東側から数ヵ国にも渡り迂回して行かねばならなかった西側の国とも簡単にやり取り出来る様になる。それはとても魅力的に思えた。
 自国の商隊など国民同士の自由な行き来は自国の更なる発展にも繋がるだろう。

 しかし、そう考えもするがセラス国はまだ迷う気持ちがありそのままを伝えたところ、離れていた間のお互いを知る為に一先ずはこちらからの特使団を受け入れてもらえないかと返答があり、それを受け入れた。
 そして、その時にルトゥスア国特使団の一員として来ていた儚げな美貌の持ち主であったルトゥスア国第三王子と婚約者と結婚を間近に控えていたセラス国の王太子が――

「恋に落ちた?」





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