3 / 21
2.
しおりを挟む
「こいつは信用出来ないが、水は大丈夫だ」
オースティンが屈んで目を合わせて、背中を支えてくれた。
「ゆっくり飲みなさい」
「水を出したの私なんだけど。なんでオースティンが偉そうなの」
「うるさいぞ」
また言い合いを始める2人を見ながらグラスに口をつける。イリヤが出してくれた水は、ほどよく冷えていて飲みやすい。
魔法で出した水なんて初めて飲んだけど、水道水みたいな匂いもなく普通に美味しかった。
ごくごくと飲み干すと、2人はホッとした顔を見合わせている。
仲悪そうに見えたけど、本当は悪くないのかな。
飲み干して息を吐くと、イリヤがおかわりは?と聞いてくれたのでもう1杯もらった。
2杯目を半分まで飲んだところで、やっと喉が落ち着く。
「お水、ありがとうございました」
「どういたしまして」
お礼を伝えるとイリヤが嬉しそうに頷いて、グラスを受け取りグラスを戻してくれた。それを見ていたオースティンに背中を撫でられ、優しく問われる。
「他に何か欲しいものはないか?」
「大丈夫です」
「そうか……」
申し訳なく思って首を振ると、オースティンは少しだけ目を見開いて形の良い眉をひそめた。
「あの、すみません。何か悪いこと言ってしまいましたか……?」
「いや、そんなことは……」
何か気に触ることを言ってしまったのかと思って訊くと、オースティンに言葉を濁されてしまった。
何が悪かったんだろう。
俯く僕の頭に手が置かれ、優しく撫でられた。
「え?」
顔を上げると、可笑しくて堪らないって表情のイリヤと目が合う。
「気にしないで。オースティンはきみに頼られた私が羨ましかっただけだよー」
「イリヤ!!」
揶揄うような言葉にオースティンは頬を赤くして声を荒げるが、イリヤは笑うだけで取り合わない。
「本当のことでしょ。きみ、えーと、そう言えばまだ名前聞いてなかったね。私はイリヤ。イリヤ・シルフィード。よろしくね! こっちの男はオースティン・ギュブラー。私に嫉妬するような見た目の割に可愛い男だから仲良くしてあげて」
そう言いながら、イリヤは隣で何か言いたげな顔をするオースティンの背中を叩いた。さっきまで僕の頭を撫でていた時とは違い、遠慮のない手つきに気の置けなさを感じる。
僕にはもうそんなふうにふざけ合える人がいないから少しだけ羨ましい。
「僕は、葵。アオイ・タカヤマです。こちらこそ、よろしくお願いします」
「アオイくんね。きみには色々話したいことやーー訊きたいことがあるんだけど、大丈夫かな?」
訊きたいことと言った時、イリヤはそれまでの柔和な笑顔を引っ込め、紅い瞳を探るように細めたーー
オースティンが屈んで目を合わせて、背中を支えてくれた。
「ゆっくり飲みなさい」
「水を出したの私なんだけど。なんでオースティンが偉そうなの」
「うるさいぞ」
また言い合いを始める2人を見ながらグラスに口をつける。イリヤが出してくれた水は、ほどよく冷えていて飲みやすい。
魔法で出した水なんて初めて飲んだけど、水道水みたいな匂いもなく普通に美味しかった。
ごくごくと飲み干すと、2人はホッとした顔を見合わせている。
仲悪そうに見えたけど、本当は悪くないのかな。
飲み干して息を吐くと、イリヤがおかわりは?と聞いてくれたのでもう1杯もらった。
2杯目を半分まで飲んだところで、やっと喉が落ち着く。
「お水、ありがとうございました」
「どういたしまして」
お礼を伝えるとイリヤが嬉しそうに頷いて、グラスを受け取りグラスを戻してくれた。それを見ていたオースティンに背中を撫でられ、優しく問われる。
「他に何か欲しいものはないか?」
「大丈夫です」
「そうか……」
申し訳なく思って首を振ると、オースティンは少しだけ目を見開いて形の良い眉をひそめた。
「あの、すみません。何か悪いこと言ってしまいましたか……?」
「いや、そんなことは……」
何か気に触ることを言ってしまったのかと思って訊くと、オースティンに言葉を濁されてしまった。
何が悪かったんだろう。
俯く僕の頭に手が置かれ、優しく撫でられた。
「え?」
顔を上げると、可笑しくて堪らないって表情のイリヤと目が合う。
「気にしないで。オースティンはきみに頼られた私が羨ましかっただけだよー」
「イリヤ!!」
揶揄うような言葉にオースティンは頬を赤くして声を荒げるが、イリヤは笑うだけで取り合わない。
「本当のことでしょ。きみ、えーと、そう言えばまだ名前聞いてなかったね。私はイリヤ。イリヤ・シルフィード。よろしくね! こっちの男はオースティン・ギュブラー。私に嫉妬するような見た目の割に可愛い男だから仲良くしてあげて」
そう言いながら、イリヤは隣で何か言いたげな顔をするオースティンの背中を叩いた。さっきまで僕の頭を撫でていた時とは違い、遠慮のない手つきに気の置けなさを感じる。
僕にはもうそんなふうにふざけ合える人がいないから少しだけ羨ましい。
「僕は、葵。アオイ・タカヤマです。こちらこそ、よろしくお願いします」
「アオイくんね。きみには色々話したいことやーー訊きたいことがあるんだけど、大丈夫かな?」
訊きたいことと言った時、イリヤはそれまでの柔和な笑顔を引っ込め、紅い瞳を探るように細めたーー
26
あなたにおすすめの小説
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
身代わりの出来損ない令息ですが冷酷無比な次期公爵閣下に「離さない」と極上の愛で溶かされています~今更戻ってこいと言われてももう遅いです〜
たら昆布
BL
冷酷無比な死神公爵 × 虐げられた身代わり令息
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
狂わせたのは君なのに
一寸光陰
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。
完結保証
番外編あり
魔王様と元 村人Aは一つ屋根の下
くろねこや
BL
橋の上で絶望してたらトラックが突っ込んできて、そのまま異世界へ落ちたオレ。
村人Aとしてスローライフを始めたものの、やはり元の世界に戻ることを諦めきれない。
ドラゴンも魔族も魔王もいるこの世界。
「あ、魔王を倒せば元の世界に帰れるんじゃね?」
ところが、倒すために探し出した魔王様はオレの記憶に興味津々で…。
「私もそなたと共に行く。そちらの世界はとても興味深い」
この時のオレは想像すらしていなかった。
そう遠くない未来、その“魔王様”と出会ったオレが、日本家屋で一つ屋根の下、一緒にのんびり暮らすことになるなんて。
※こちらは『イライラしてますか?こちらへどうぞ』の世界と繋がっています。
※『横書き』設定にてお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる