不憫な青年は異世界で愛される

久村トノ

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「こいつは信用出来ないが、水は大丈夫だ」

オースティンが屈んで目を合わせて、背中を支えてくれた。

「ゆっくり飲みなさい」

「水を出したの私なんだけど。なんでオースティンが偉そうなの」

「うるさいぞ」

また言い合いを始める2人を見ながらグラスに口をつける。イリヤが出してくれた水は、ほどよく冷えていて飲みやすい。
魔法で出した水なんて初めて飲んだけど、水道水みたいな匂いもなく普通に美味しかった。

ごくごくと飲み干すと、2人はホッとした顔を見合わせている。
仲悪そうに見えたけど、本当は悪くないのかな。

飲み干して息を吐くと、イリヤがおかわりは?と聞いてくれたのでもう1杯もらった。
2杯目を半分まで飲んだところで、やっと喉が落ち着く。

「お水、ありがとうございました」

「どういたしまして」

お礼を伝えるとイリヤが嬉しそうに頷いて、グラスを受け取りグラスを戻してくれた。それを見ていたオースティンに背中を撫でられ、優しく問われる。

「他に何か欲しいものはないか?」

「大丈夫です」

「そうか……」

申し訳なく思って首を振ると、オースティンは少しだけ目を見開いて形の良い眉をひそめた。

「あの、すみません。何か悪いこと言ってしまいましたか……?」

「いや、そんなことは……」

何か気に触ることを言ってしまったのかと思って訊くと、オースティンに言葉を濁されてしまった。
何が悪かったんだろう。
俯く僕の頭に手が置かれ、優しく撫でられた。

「え?」

顔を上げると、可笑しくて堪らないって表情のイリヤと目が合う。

「気にしないで。オースティンはきみに頼られた私が羨ましかっただけだよー」

「イリヤ!!」

揶揄うような言葉にオースティンは頬を赤くして声を荒げるが、イリヤは笑うだけで取り合わない。

「本当のことでしょ。きみ、えーと、そう言えばまだ名前聞いてなかったね。私はイリヤ。イリヤ・シルフィード。よろしくね! こっちの男はオースティン・ギュブラー。私に嫉妬するような見た目の割に可愛い男だから仲良くしてあげて」

そう言いながら、イリヤは隣で何か言いたげな顔をするオースティンの背中を叩いた。さっきまで僕の頭を撫でていた時とは違い、遠慮のない手つきに気の置けなさを感じる。

僕にはもうそんなふうにふざけ合える人がいないから少しだけ羨ましい。

「僕は、葵。アオイ・タカヤマです。こちらこそ、よろしくお願いします」

「アオイくんね。きみには色々話したいことやーー訊きたいことがあるんだけど、大丈夫かな?」

訊きたいことと言った時、イリヤはそれまでの柔和な笑顔を引っ込め、紅い瞳を探るように細めたーー


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