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01 リサです
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夜半に降り出した雪は眠るように横たわる一人の女の上へ、まるで薄衣を掛けたようにうっすらと積もった。
一面の白に反射した光が彼女の黒髪を照らしている。
音すらも包み込む静かな雪の中、一人の男が近づきそのまま彼女の脇に屈み込んだ。それに合わせ装身具が冷たい音をかすかに鳴らす。
男は剣をしまうと目を閉じたままの女の息を確認し、彼女を抱え上げた。青白い頬に血の気はないが、少なくとも生きている。急がなければ――。
力強く雪を踏みしめ、男は足早に来た道を戻っていった。
◆◇◆◇
「……リサです」
女は男にそう名乗り、目を伏せる。
長いまつげが頬に影を作った。
肩に毛布をかけ、男の作ったスープがはいっているカップを両手で包み、フゥ、フゥと息を吹きかけている。
男は改めて、リサと名乗った女の姿をみた。
男の住む城の中に女を運び、ベッドに寝かせ、火の支度をしている時に女は目覚めた。
ゆっくりと上半身を起こしながら、ゆっくりと目を開けた女は、しばらく動きをとめた後、男に気付き、そのまま固まったのだ。
男は、火を起こしながらこれまでの経緯を女に説明する。
そして、女は言った。
「……リサです」
「……」
女の名前はストンと男におちる。
珍しい事だった。男は自分以外には興味がないのだから。
今は毛布に隠された、女の華奢な肩を目でなぞりつつ、その下を思い出していた。
今宵 雪の降るには奇妙な。袖のない上着に、短すぎる履物。
雪の中で見た、女の白い、雪の白よりも美しい肉。左足首には銀色の細いアンクレットがキラリと光り警告をはなつ。それに男は慌てて目を逸らした。
毒だ。
男はそう思った。
女は男の視線を感じつつ、ゆっくりとカップに口をつけ、ちょうどよい温度になったスープを一気にあおった。
その時に露わになった首に口許から零れ垂れたスープがゆっくりと鎖骨を受け皿にして、男を誘う。
シンシンと耳が痛くなる静寂の中、女が口を開いた。
「お腹は空いていませんか?」
一瞬、何をいっているのかわからず、目を丸くした男は、女が、お腹を空かせていると判断した。
そして、もう一杯スープをいれてやろうと、女のカップを受け取ろうとしたが、女は首を振って「私じゃありません。貴方の事です」と真剣な眼を向けた。
男は少しムっとする。
後ろの鍋を首でしめし、俺はもう食べたと。
雪で倒れていた女。さっきまで死にそうだった女になぜ、自分の飯の心配をされなきゃならない。
もう遅いからもう寝ろ。今夜は泊めてやるし、余計な気をまわすな。
明日には森の入り口まで送ってやると女に伝えようと立ち上がって、自分の今夜の寝床の支度にたちあがった。
シャラン
細かな金属の擦れる音。
カップをテーブルに置いた女は、肩にかけてあった毛布を落とす。
そして白い腕を交差させ、ぱさり、ぱさりと身にまとっていた服を脱ぎ落した。
女の身には左足首の細い装身具だけ。
外の雪より白い、白い、女の肌が、肉が、男の視界捉える。
ぐあ゛あ゛あ゛っ、、、、、、、
男は苦痛に顔を歪め、自分の腹に爪を喰い込ませた。
腹に喰いこんでいるのは、骨が浮き彫りになった指。
視界に映るのは自身の棒《・》の様に細く角ばった腕。
腹は薄く、骨が浮き出て、足りない。足りないのだ。
スープなどでは、この餓えは解消されない。喰いたい。喰いたい。 何を?
シャラン
……そうだ。
今、
目の前に、
肉が、 肉が、 肉が、 肉が、 肉が、、、、、、、、
一面の白に反射した光が彼女の黒髪を照らしている。
音すらも包み込む静かな雪の中、一人の男が近づきそのまま彼女の脇に屈み込んだ。それに合わせ装身具が冷たい音をかすかに鳴らす。
男は剣をしまうと目を閉じたままの女の息を確認し、彼女を抱え上げた。青白い頬に血の気はないが、少なくとも生きている。急がなければ――。
力強く雪を踏みしめ、男は足早に来た道を戻っていった。
◆◇◆◇
「……リサです」
女は男にそう名乗り、目を伏せる。
長いまつげが頬に影を作った。
肩に毛布をかけ、男の作ったスープがはいっているカップを両手で包み、フゥ、フゥと息を吹きかけている。
男は改めて、リサと名乗った女の姿をみた。
男の住む城の中に女を運び、ベッドに寝かせ、火の支度をしている時に女は目覚めた。
ゆっくりと上半身を起こしながら、ゆっくりと目を開けた女は、しばらく動きをとめた後、男に気付き、そのまま固まったのだ。
男は、火を起こしながらこれまでの経緯を女に説明する。
そして、女は言った。
「……リサです」
「……」
女の名前はストンと男におちる。
珍しい事だった。男は自分以外には興味がないのだから。
今は毛布に隠された、女の華奢な肩を目でなぞりつつ、その下を思い出していた。
今宵 雪の降るには奇妙な。袖のない上着に、短すぎる履物。
雪の中で見た、女の白い、雪の白よりも美しい肉。左足首には銀色の細いアンクレットがキラリと光り警告をはなつ。それに男は慌てて目を逸らした。
毒だ。
男はそう思った。
女は男の視線を感じつつ、ゆっくりとカップに口をつけ、ちょうどよい温度になったスープを一気にあおった。
その時に露わになった首に口許から零れ垂れたスープがゆっくりと鎖骨を受け皿にして、男を誘う。
シンシンと耳が痛くなる静寂の中、女が口を開いた。
「お腹は空いていませんか?」
一瞬、何をいっているのかわからず、目を丸くした男は、女が、お腹を空かせていると判断した。
そして、もう一杯スープをいれてやろうと、女のカップを受け取ろうとしたが、女は首を振って「私じゃありません。貴方の事です」と真剣な眼を向けた。
男は少しムっとする。
後ろの鍋を首でしめし、俺はもう食べたと。
雪で倒れていた女。さっきまで死にそうだった女になぜ、自分の飯の心配をされなきゃならない。
もう遅いからもう寝ろ。今夜は泊めてやるし、余計な気をまわすな。
明日には森の入り口まで送ってやると女に伝えようと立ち上がって、自分の今夜の寝床の支度にたちあがった。
シャラン
細かな金属の擦れる音。
カップをテーブルに置いた女は、肩にかけてあった毛布を落とす。
そして白い腕を交差させ、ぱさり、ぱさりと身にまとっていた服を脱ぎ落した。
女の身には左足首の細い装身具だけ。
外の雪より白い、白い、女の肌が、肉が、男の視界捉える。
ぐあ゛あ゛あ゛っ、、、、、、、
男は苦痛に顔を歪め、自分の腹に爪を喰い込ませた。
腹に喰いこんでいるのは、骨が浮き彫りになった指。
視界に映るのは自身の棒《・》の様に細く角ばった腕。
腹は薄く、骨が浮き出て、足りない。足りないのだ。
スープなどでは、この餓えは解消されない。喰いたい。喰いたい。 何を?
シャラン
……そうだ。
今、
目の前に、
肉が、 肉が、 肉が、 肉が、 肉が、、、、、、、、
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