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第3章

ステータス

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 フェリトとエケルは未だ研究所にいた。それは、衣類や装備を此処を出る前に見ておこうとしていた。鎧やスカート、タキシード等色んな種類の衣類があったが、フェリトは黒いローブを選んだ。エケルは袖が4本ある紫のローブを選んだ。2本袖が余っている為、フェリトは邪魔じゃないのかな?と思ったが、エケルの好みだろうと特に何も言わなかった。その後装備の部屋に入り、物を漁っていた。
 フェリトとエケルには装備の効果がわからない…はずだった。少なくともエケルにはわからなかった。だが、フェリトは違った。
『ッ!?』
「フェリト?どうしたの?」
『いや…初めて見た装備なのに…名前と効果が分かる…』
「え!マァマァすごい!でもどうしてだろう?」
『…多分白衣の者達を食べたから…記憶を貰った…のかも。』
「…マァマァ…聞いていい?」
『ママって呼ばないならいい。』
「うぅ…呼ばないよォ…それでさ…人間って美味しいの?」
『急な質問だね…僕はあまり好みではないね。固くて筋が多い。それに酸っぱい匂いもする。』
「そーなんだ…」
『…食べてみたかったの?』
「いやいや、感想を聴きたかったの!美味しかったら話は別だけどw」
『味覚は生物それぞれだから1つの答えとして受け止めてよ。』
 フェリトは自分にどんな能力があるのかあまり理解していなかった。必要な瞬間に閃く…そんな感覚だった。だから、いざ自分の能力を気にした時、わからなかった。
 その時は脳に凄まじい量の情報が映し出された感覚があった。それはゲーム画面のステータス画面の様に様々な情報がそこには載っていた。名前を確認すると〈フェリト・種族???・Lv???〉と書かれていた。その下には力や守り等の数字が映されていた。ただ数字は「?」で記載されていた為、殆ど当てにならない…そしてLvという表記がある事…面倒かもしれない…そう思った。
 能力を確認すると、ここも「?」が多く見られたが、「強欲」「喰種」「能力認識」等数えれる程だが能力が載っていた。フェリトは白衣の者達を喰らった時に「強欲」が発動しのだと、推測した。
(今度生きてる生物からも奪えるのか試してみないとな)
とフェリトは思った。
 そして「能力認識」という能力が気になった。
『エケル、僕からお願いがあるんだけど…』
「まa…フェリトからお願いなんてされたらなんでもするよ!どうしたの?」
『気になる能力があるからエケルで試してみたいんだ。害は無いと思う…』
「全然いいよ~♪」
『ありがとう…早速…』
〈能力認識〉
 その瞬間、〈エケル・種族バジリスク・Lv1〉と書かれていた。(やはりLvがある世界か…)と再認識した。ただエケルも力等の数字は「?」だった為、フェリト自身の能力認識の力が弱いからだと思った。
『エケルの親はバジリスクなんだね。』
「?そうなの?ミーは初めて出会ったのがフェリトだからフェリトがマァマァだよ?」
『僕は育ての親…生みの親の話。…エケルと生まれた時間数時間しか変わらないけど良いの?』
「え!そうなの?ミーは全然良いと思う!」
『そ、そうか…』
 バジリスク…石化魔法使えるはずと記憶が反応してる、能力を確認すると、〈石眼〉と載っていた為、バジリスクの子とフェリトはほぼ確信を持った。
「チュー」
 とネズミが巣穴から出てきた。フェリトは、
『エケル、あのネズミを石化させてみて…』
「え!ミー出来るかな…」
と言いつつもう視線はネズミを捉えていた。そしてエケルの目が深緑色に光り…「ヂゥ!」と短い悲鳴をあげネズミは石化した。
「ミー出来たょ!」
『エケル偉いね…』
「えへへ~♪」
 フェリトは石化したネズミに歩き寄り、割った。
『中身も石化するのか…』
「ミーもやれば出来るんだよ♪」
 フェリトは〈能力認識〉をエケルに発動させた。すると、エケルのLvが1から2に上がっていた。生き物を殺す事で、経験値が得られる…と。ならLv???の僕は…という疑問を持ったフェリトだが、今のフェリトにそれを解決する術はない。
『能力も少しずつ使える様になろう。お互いに…』
「うん!」
『装備を確認しようか。』
 と2人は棚に置かれた装備を見て行った。沢山の装備がどうしてこの研究所にあるのかは謎だが、その中に《擬人化のイヤリング》と言う装備があった。フェリトは片方の耳に《擬人化のイヤリング》を付けてみた。
 すると少し身体が熱く、筋肉や臓器が少し変化するのを感じた。そして鏡に映る自分を見て驚いた。目付きは鋭いが、鼻や口は人間そのもので、手を観ると鋭い爪は指先が丸くなっていた。コアも皮膚で見えなくなっていた。
「ふ、フェリトがフェリトじゃなくなった!?!?」
「僕だよ?」
「声もなんか柔くなってるよ~」
「そうだね…エケルもつけてみたら?」
「う、うん…」
 エケルは恐る恐る片耳にイヤリングを付けてみた。
「うぅ…あつい…」
 エケルも身体に熱を持ち始め、指は5本、皮膚の色も少し褐色肌で、角も無くなりそして…人間の子供…見た事は無いが、その様な姿をしていた。エケルは鏡を観て…
「誰!あ、ミーかwえ?可愛くない?」
「自分で可愛いって言うなよ…」
「えへへ~♪」
「人間の世界に行く時はこれを付けて活動した方がいいかもね…」
「元の姿じゃダメなの?」
「…人間は多分、自分達と違うものは嫌う生き物…そう本能が言ってる。だから…人間という生物のフリをしなきゃいけない…かもしれない…」
「そうなんだ…ミーも人間に会ってみたいな♪」
「1度会ってみるのも経験だからね…。そろそろ元の姿に戻ろうか…」
「うん!あ、フェリト?」
「なに?」
「フェリトは人間も食べてるなら人間になれるんじゃないの?」
「……。」
「……。」
「…そうだね。忘れてた…」
「まぁミーも今思い出したんだけどwww」
「この身体色々あり過ぎて難しい…」
「ミーもフェリトも少しずつだね~」
「…イヤリング、外すか。」
 そう言って2人はイヤリングを外した。そしてゆっくりと元の姿に戻っていった。その後2人は色々装備品を見ては試して…
「そういえばこのものどうやって持っていくの?」
『〈無限袋〉』
と言うと、空中に黒い宇宙の様なものが現れた。
『これはありとあらゆるものを入れられる箱みたいな物…』
「フェリトすごいね!ミーのマァマァはすっごい生物だね!」
『僕は…人間に創られた生かされてる生物。すごく無い…』
「ミーはミーに持ってないものを持ってるフェリトがカッコイイと思うよ!」
『僕は僕が嫌いだ…』
 そう発言するとフェリトのコアは紅くほんのり黒く光を発した。
「うぅ…ミーはフェリトが好きだよぉ…」
 そう言うエケルの目には涙が溜まっていた。それを観てフェリトは歯を食いしばった。
『…エケルの気持ちは嬉しい…。ごめん…』
 2人を静寂が包んだ。それは時間にして数分だが、2人にとっては時間が凍りついた様な時間だった。先に口を開いたのはエケルだった。
「フェリトごめんね…だけどミーはフェリトが好きだよ!フェリトの分もミーが好きになる!!」
『僕もごめん…エケルを悲しませて…僕は…自分を…嫌いにならない様に…。』
 コアの光も徐々に弱まり、ドス黒いコアに戻った。
「フェリトのそのコア?感情を表してるみたいだね」
『僕は何も意識してないんだけどね…精神はここにあると思う。』
「ミーはコアの輝きが綺麗で暖かくなるなぁ~」
『…エケルの言葉は優しいな。』
「えへへ♪」
『…装備の選別続けるよ…』
「うん!」
 2人は会話を終え、エケルがあちこちから装備を運び、フェリトがそれを観ては、〈無限袋〉に入れていく作業を数時間続け、部屋の半分程の装備品を収納した。部屋の時計を観ると、13時20分を指していた。
『…ここにもう、用はない。』
「だね~」
『出よう。外の世界へ…』
「ミーすごく楽しみ!フェリトとならどこへでも行ける気がする♪」

 こうしてフェリトとエケルは研究所を後にした。新しい世界に期待と不安を抱えながら。
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