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第6章

戦争準備

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 ディール達がいなかった間の出来事。それは、武装した1000近い人数の人間達の襲撃。人間達の中には精神支配の魔法を使える奴が居たのか分からないが、オーガを使役していたらしい。オーガが砦を壊し、遠距離から魔法や弓等が飛んでき、近距離では剣やハンマー等の武器を振り回し襲いかかってきたとの事。
 ディールは怒りで尻尾を地面に叩きつけていたが、それで収まる訳もなく、やり場の無い怒りを抱えていた。その時フェリトが口を開いた。
『人間の死骸が見当たらないのはなぜ?』
 その一言に皆顔を埋めた。
「今は少しでも情報が欲しいんだ。何でもいぃ、話してくれ。」
「…そ、それが…何人かアイツらを殺したんだ!なのにそれを人間達が1人残らず回収していったんだ!」
「回収だと?少なくとも戦場で死体の回収なんて意味の分からねぇ事してんだ?」
「俺達もわからねぇよ!こっちが1人に対し10人近くの人数で襲って来やがった!それに加えオーガも数体暴れてやがった!もぅ俺達…」
「俺がいない間に…すまねぇ…」
(それでこの負傷者なら良い方…死体が少ない…挑発?死体も回収?)
 フェリトはそう思いながら話を聞いていた。そしてウルススが声を発した。
「人間たちは笑いながら俺達を襲って来やがった。俺は許さねぇ…今すぐやり返しに行きてぇ…族長の仇も…」
「「「そうだそうだ!」」」
 生物達から一斉に声が上がった。それは雄叫びの様であり悲鳴の様でもあった。
「待て!兄貴は何処にいる!?」
「…それが」
 さっきまでの威勢が消え去る様に、生物達はディールから顔を逸らした。
「今状況を整理しなきゃいけねぇんだ!現実をみろ!」
 そうディールに喝を入れられ、ウルススが声を発した。
「数千の武装した人間達が遠くに見えたんですわ。奴ら遠くから弓矢を打ってきやがって、堤防なんて意味を成さなかったんだ。次にオーガ達が堤防を力でぶち壊しやがった…俺達はこの時点で負傷したやつが何人か居てよぉ…だが、族長が俺たちに活を入れくれたんだが、1匹の鳥族の様な奴が族長に襲いかかったんだ。族長も魔法や剣術で対抗してたが、空からの素早い攻撃に苦戦していた…そんな所に人間達が魔法や弓矢でさらに追撃をしやがった!…族長も膝をついた。そんな姿を見て士気を下げるなって方が無理でっせ…そしてそんな族長を奴ら使役しようと魔法をかけてそのまま奴ら連れて行ったんだ…俺達が弱いばかりに。族長1人を守れない…クソっ!」
『その…鳥族は…?』
「鳥族ぅ?そんなの知るか!族長に襲いかかったやつは全員皆殺しにしてやる!」
「「そうだ!そうだ!!」」
 血塗れた鱗の一族達はもう復讐することに支配されてる様で、あまり好感のないフェリトにもその刃を向けてしまうほどに。
「お前らぁ!気持ちはわかる!俺も今すぐにでも兄貴を取り戻したい気持ちでいっぱいだ!だがこういう時こそ焦るな!頭に血を登らせるな!落ち着け!!負傷した状態で行けると思ってるのかァ!」
 ディールの一言で数箇所から息を飲む音が聞こえ、落ち着きを取り戻した。そしてフェリトが、
『もう一度聞くよ…鳥族は?』
 ウルススがフェリトを睨みつけながら答えた。
「鳥族のやつは俺達の事を襲っていたが、人間達の事も襲っていた。あいつは殺気が並大抵じゃなかったぜぇ…近寄りたくもなかったな。」
『…そうか。』
「うぅ…フェリト…ミー皆が怖いよ…」
『エケル…大丈夫だよ。』
 フェリトはエケルにそう声をかけたが、頭の中は人間の支配されてる中で抗い攻撃を見せた、1人の鳥族の事を考えていた。集落に微かに残っている全ての者に対する憎しみを感じていた。それは話の鳥族の放っていた感情の残りだと。フェリトのコアは濃い青紫色の光を発していた。それを見ていた集落の生物達はコアの発光を凝視し、そして畏怖していた。
『僕は、鳥族に会いに行く…かな…』
「フェリトが行くならミーも行く!…ちょっと怖いけど…」
『エケル…ありがとう…』
「俺も行くぜ?兄貴を取り戻してやるっ!!」
『ディール…死ぬかもしれない。いいのか…?』
「兄貴を救えずに居るくらいだったら、死んでも死にきれねぇ!」
『…そっか…好きにすればいいと…思うよ…』
「ウルスス!」
「おう!ディール副族長!」
「ウルスス、お前には俺が居ない間、血塗れた鱗を頼む!」
「お、俺にですか?いいんですかい?」
「当たり前だ!いいか?俺達が戻るまで何があってもこの集落を守れ!副族長命令だ!」
「その責任!真っ当させていただくぜ!」
『そろそろ…いい?』
「空気ぶち壊すなよ。まぁいいぜ。行こうぜ!」
「うん!フェリト!ディール!行こう!」
『…行こう。』

 そうしてフェリト、エケル、ディールの3人の奪還作戦の幕が上がるのであった。


 その頃、鳥族の子は、人間達に再び拘束され、魔法士達の精神支配されていた。
(憎い…憎い……消えろ…殺す…)
 心と身体は拘束されているが、憎悪と殺意は増す一方であった。
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