狂依存

橘スミレ

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第十一話 Play

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 結局その後、全然授業に集中できなかった。気づけば放課後で、目の前に「play room-B」と書かれた扉がある。
 コンコン、コンコン、とノックする。
「入って」
 いつもと同じ杏さんの声。
「失礼します」
 そう、声をかけてから入室する。
 「P―B」は全面がコンクリートで隅にベッドがあるだけのシンプルで冷たい部屋だ。電気をつけていないせいで部屋全体が薄暗い。光源は部屋の中央にあるライトと、ベッドの近くにある小窓くらいだ。
「佳子、今日はよろしく」
「よ、よろしくお願いします」
「緊張しないで。まずはセーフワードを決めようか。行為中に言いやすいやつ。何が良い?」
 杏さんがリードしてくれるから、ありがたい。私は授業中に考えていたものを言ってみる。
「川上さん、とか?」
「わかった。それでいこう」
 杏さんは後ろを向き、光の当たらない薄暗いところまで下がる。何かを手に取ってから振り返る。
「”Play”を始めます。佳子、”ここに来てください"」
 さっきまではいつもと同じ暖かい声だったのが今は数段トーンの下がった冷たい声になっている。そしてその声の持つ何か見えない強い力に体が動かされる。ライトのあるあたりで力は止まった。少しよろける。
「”いい子”ですね。”どうして欲しいか言ってください?”」
「ぎゅってして」
 口から本能のままの言葉が漏れる。思わず口を押さえる。杏さんを見るとおかしそうにこちらを見つめている。
「いいですよ、佳子。手を開いて」
 言われた通りに手を開くと優しくハグされる。彼女の柔らかな胸があたる。その奥から彼女の鼓動が聞こえ、ドキリとした。
「”いい子。佳子は命令を聞いていい子ですよ”」
 そう言いながら背中を撫でられる。すると体がカッと熱くなる。頭の中がふわふわとする。ちょうど、杏さんと初めて会ったときと同じだ。これがPlayなのか。
「佳子、”座ってください”」
 体に働く力のままに床にへたりこむ。地面の冷たさが制服越しに伝わってくる。
「”いい子”」
今度は片手で頭を撫でられる。
「では、これ着けてください」
 そう言い先ほどから持っていたものを渡される。それは目隠しだった。
 小さくうなずいてからつけようとする。が、なかなか上手くいかない。はずれたり、首まで落ちてきてしまったり。
「やって上げましょう」
 杏さんは私の後ろに周り、器用に目隠しを着ける。これで私の視界は真っ暗だ。
「佳子、”寝そべってください"」
 体から力が抜ける。杏さんにもたれかかると、優しく地面にうつ伏せに寝かされる?
「佳子は痛いの好きですか?」
 その一言と共に背中に激痛が走る。
「いっ!」
「痛いですよね」
 そう言いながらも杏さんは笑っていて。もう一度、空を切る音と共に同じところをは叩かれた。この音はおそらく鞭だろう。視界を遮断されているので確認できないが。
「あは、あはは!あはははは!」
 彼女の手は止まらない。痛みはどちらかといえば好きだ。愛されていると感じられるから。
 だが、ずっと命令され続けるのは怖い。その上視界が遮られているのだ。痛いというか、怖い。
「いっ……! 怖い! やめて! 怖いよ! こんいから」
「怖い? 怖いですよね。そうですよね!怖がる佳子は本当に可愛いですよ!」
 背中が熱を持って痛む。最初は好きが大きかったのをだんだんと恐怖に塗り替えられる。

 怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い

「か、”川上さん” 」
 恐怖のあまりセーフワードを口に出してしまう。杏さんの動きがピタリと止まる。
「あ、うち……ごめん。大丈夫?」
 鞭は止まったがまだ怖くて息ができない。どうやって息をするのかわからない。
「ヒュッ、 ハァッ ハァッ」
 苦しい。頭が痛い。しんどい。
「佳子!大丈夫。ゆっくり呼吸して。落ち着いて呼吸したら治るから。私と一緒に呼吸して」
 杏さんに合わせて呼吸する。だんだんと呼吸が落ち着く。恐怖も収まってくる。やはり杏さんはかっこいい。
「ちょっとは落ち着いたかな」
 杏さんはそう呟くと一度離れて扉を開け、私を抱き抱えて外へ出る。彼女は私を保健室に連れて行ってくれた。
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