フラれた私は旅に出る

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フラれた私は旅に出る

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ああ…私の想いは届かない。



幼馴染の兄妹のような関係からは抜け出せなかったみたい。



だから、私は…



ーーーーーーーーーー



ファルステン王国の王都の下街にある花屋を営む家に産まれた1人娘のフィリカ。

特に不自由なく育ち、近所にある平民向けの学舎で教養を学び先日無事に卒業できた。

今は成人前の14歳で本格的では無いが、家業の花屋を継ぐため懸命に学んでいる所。

そして、私には親にも秘密にしていることがある。

魔法が使えるのだ。

魔法と言っても花を元気にする程度だが、癒しを与えることができる。

5歳の選定の儀をするため近くの教会に行った時は能力無しで帰ってきたのだが、暫くして病いで高熱に魘されること1週間。夢で神様?の声を聴いた。

熱が下がり神様?の声の通りに萎れている花に力を注いだら元気を取り戻した。

まだ子供だった私は怖くなり親に相談したかったが、神様?の『誰にも言ってはいけないよ。争いの原因になるからね』と言う通り誰にも言えなかった。

本当は、人にも癒しを与えることが出来るのだが神様?がいう争いの原因が怖くて今も守っている。

だけど時々、両親が疲れてる時にこっそり癒しをかけてあげたりするのはいいよね。



そして今日も、店番をしながら店頭に並んでいる花に水を与えながら魔法をかけてあげる。



ーカランー

ドアベルが鳴って誰かが入店を知らせる。



「いらっしゃいま …せ」



「フェリカ おはよう。朝から元気だな

この花を包んでもらえるか?
お嬢様が元気が出たと喜んでくれてさ」



「アスク おはよう!私はいつでも元気だよ~

お嬢様が元気になったなら良かった。
この花はね鮮やかな色で眼が楽しめるけど、香りが控えめだからお嬢様の身体にも優しいし良いと思うよ。

どれくらい包む?」



「じゃあ、色違いで3本ずつ頼む」



「わかった。コーヒー飲みながら待ってて?」



今朝癒しの魔法を掛けた花たちを包みながらこっそり癒しの魔法をまた掛ける。

『お嬢様が元気になりますように。』



「ハイ!出来上がり。

アスクも仕事無理しないでね
気をつけて行ってらっしゃい!」



「ああ、行ってくる。」



大きな手で頭をクシャっと撫でてから店を出て行った。

胸がキュッと痛むけど仕方ない。

好きなお嬢様が元気になるのが嬉しいのは当たり前だ。

私の3歳年上のアスクが成人してから地方領に就職して兵士として仕えている。1年の訓練を積んで現在、王都のタウンハウスにお嬢様の話し相手兼護衛として側にいる。

お嬢様は、アスクと同い年で身体も弱く部屋から余り出ないらしい。

貴族の学園には在籍しているが単位を取る為に試験日の登校以外は部屋で学び、来年には卒業するらしい。



これは全てアスクから聴いたお嬢様だ。



伯爵家のご令嬢で表にあまり出ることなく大切に育てられ、白金の艶やかな髪に薄青の瞳透けるような白い肌のいわゆる深窓のご令嬢。



アスクが恍惚とした顔で私に打ち明ける。



私はもちろん傷ついたけれど、病弱で外に滅多に出れないなんて可哀想だと同情してしまう。



もし元気だったのなら、本物の王子様と結婚できるかもしれない身分のご令嬢。



アスクも最初は同情から接してたのかもしれない。でも、お嬢様の側にいて芯の強いところや直向きに頑張る姿を見てるうちに惹かれてしまったみたいだ。



思い通りにならない身体に高い身分。
我儘な人なんじゃ無いかと警戒していたらしいが、実際会ったら物静かで努力家なお嬢様を観たらそりゃあ誰でも惹かれるだろう。



だからお嬢様のために持っていく花には癒しの魔法を強めに掛けて届けて貰う。



「お嬢様が、元気にな~れ!」と。



最近は、お嬢様も学園に通える回数が増えたみたいなので私も嬉しい。



お嬢様に会ったことないけれど幸せになれたらいいなと思う。アスクはどうするのか分からないけれど、お嬢様の側にいつまでもいられるよう護衛として見護り続くけるみたいだ。



平民の護衛と貴族のお嬢様
一生結ばれることはないのだから…



私は、アスクが好き。



子供の頃からの隣近所で兄妹のように育った幼馴染。

積極的にアピールしたこともあったが、困ったような笑顔でクシャっと髪を撫でるだけ。

お嬢様に仕えるようになったら諦めた。



もう、想いは伝えない
私は私で幸せを探そう。



そう思いながら、成人の15歳になり家業の花屋を継ぐための本格的な勉強に入る前に旅に出る許可を貰えるよう両親を説得した。



きちんと自分を見つめアスクを諦めるのと新しい私の価値観を見つけるための旅。



最初、両親は反対をしたが冒険者登録しギルドの信頼のあるパーティに面倒を見てもらうという条件で許しを得た。



父親と同い年の友人でパーティーのリーダーをしているというレックスさん。

奥さんのミキさんと、私と同い年の息子リクも同じパーティーにいる。

ミキさんには会って早々に私の能力に気づかれ癒しの魔法持っていることがバレてしまった。



ミキさんには私の境遇や神様?の件も伝え黙って貰えることを約束した。



私の癒しがパーティーに役立つと思い、こっそり使ってたらミキさんから内緒で報酬という名のお小遣いももらえるようになった。



そのお金で花の種を買い、育てる方法などを学びながら各地を巡った。

その道中も瘴気といわれる穢れのある地にはこれまたこっそりと癒しを与えて村や山や森なども元気にして廻った。

誰にも感謝はされないけれど、レックス親子には褒めてもらえた。




3年が経ち私も18歳になり、漸く旅を終わりにしようとレックス親子と帰宅すると何故か王宮から呼び出しを受けた。



平民の私が?と不思議に思い戸惑っていたが、何故か冷静なレックス夫妻と私の両親に促されながら王宮へと向かった。



王宮の正門からすんなり入ることができ待たされることなく1つの部屋に通された。謁見の間?とか言うらしいスッキリと整えられてる広間みたいだ…



「フィリカ殿 よく来てくれたね」



「はい ありがとうございます国王陛下 …様?

すみません
私は平民なので礼儀とか知りません
ご無礼をお許し下さい。」



「今は公の場では無いから楽にしてくれていいよ」



国王陛下と王妃様が並んで座ってる前に、私と両親が座り、後ろにレックス夫妻が立って謁見しています。私は借りてきた猫のようにカチコチに固まっているのに皆慣れているのか堂々としていて落ち着いている。何故だ…




「フィリカ殿は3年間各地を廻り旅をしながら瘴気の浄化をしてくれたと聞いているよ

民を国を救ってくれて ありがとう」



「へ? なんで…」



私はミキさんに顔を向けて無言で訴えたが、にこやかに頷いているだけ



「実は、神様から御信託があってね
フィリカさんの旅を助けてあげてくれと頼まれていたの。」



「ワシもね 神から知らされていたのだが時が来るまでは他言無用だと釘を刺されていたのだよ

だから、浄化を終えて世界を救ってくれたフィリカ殿に何か出来ないかと呼んだのだ

何か欲しい物はないかの?」



ミキさんだけではなく国王陛下まで知ってたとは…
私はただ、好きな人にフラれて自分を見つめ直すために旅を始めただけなのに。



なんだか後ろめたい…



『フィリカ いいのですよ
3年の旅で人々を癒し森を山を海を癒し
世界を救ったのですから施しを受けることを赦します。』



「っ! 神様ですか?」「神か」「「!」」



皆聴こえたみたいです。



「分かりました
私が欲しいものは…」




ーーーーーーーーーー




ーカランー



「アスク いらっしゃい!

お嬢様は元気にしてる?」



「フィリカ 今日も元気だな

元気元気!
日帰りで領地視察に廻ってきたよ

今日もいつもの花を包んで貰えるか?
あ、これも入れてもらおうか」



「うん りょーかい

コーヒー飲みながら待っててー!」



「おう!」

(やっぱフィリカの淹れたコーヒーを飲むとホッとする

貴族様だと毎回紅茶だからたまにこれが飲みたくなるんだよな)



「ハイ お待たせ

身体無理しないで仕事頑張ってね
気をつけていってらっしゃい!」



「行ってきます またな」



私は国王陛下に願ったのは
今までと変わらない生活を望んだ。

忙しない毎日だけれど花屋の娘として花に癒しを与えながら皆んなに笑顔になって貰いたいから。

なので癒しの魔法は今まで通りこっそりつかっている。




私の好きなアスクは変わらずお嬢様の護衛として仕えており、身体が元気になったお嬢様に毎日振り回されているらしい。



アスクとは相変わらず兄妹のような幼馴染の距離で私はもう吹っ切れた。



そのうち新しい恋とか芽生えちゃうのかなぁ~うふふ



ーカランー



あっ「いらっしゃいませー」














ーおわりー











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