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第二部
※千変万化 ~ドミニクSide~
王宮からの帰りにティナが公爵邸に泊まった翌日――――
ヴァッセル家へ彼女を送り届けた時、チェザーレは驚きと怒りの表情をしていた。
夫人はティナの魔女としての力が覚醒していた事を知っていたようで、公爵邸に泊まった事も苦笑いしながら、とにかくチェザーレをなだめるのに注力している様子だった。
あれほど怒りの表情を見せる親友を初めて見た私は、ティナと離れなければならなくなるかもしれないという焦りのような気持ちに襲われる。
7日後にヴァッセル家に来てほしいという事だけ言われ、様々な事態を想定しながら7日間を過ごした。
しかし結局は彼女と離れるという事は無理な話だという結論になり、その覚悟を持って7日後にヴァッセル家へと訪れたのだった。
この日、私はティナと一緒に住みたいと直談判するつもりでいた。
母上の快気祝の宴が終われば、すぐにでも式を挙げたい。
彼女が隣に眠っていると、驚くほど安心した気持ちで眠る事が出来る。
それはティナが私にとって心の拠り所になっている事にほかならない。
おそらく話し合いは難航するだろう……そう思っていた。
しかし予想外にもチェザーレは、私にティナと一緒に住んでくれと頼んできたのだ。
涙を流しながらではあるが…………親友のこのように乱れる姿に多少なりとも動揺した私だったが、ティナと一緒に住めるようになった事に、チェザーレには心の中で沢山の感謝と謝罪をする。
そうして愛しい婚約者との楽しい生活が始まると子供のように浮かれながら、公爵邸へと帰邸した。
ティナを驚かそうと邸の内装も明るくし、寝室は壁紙から調度品まで全て替え、二人の寝室になるようにティナを迎えに行く5日間で終わらせた。
邸を見て予想通り嬉しそうな反応を見せるティナ…………お礼をさせてほしいというので、一緒に住んだら秘かにしたいと思っていた”二人で入浴”をお願いしてみたのだった。
恥ずかしがりながらも許可がおり、2人で浴槽に浸かった――――
しかし愛する女性と裸で密着していれば、体は反応してしまうし、柔らかな胸が目の前にあれば手を出さずにはいられない。
結局その日はお風呂で愛し合った時にティナがのぼせてしまい、寝室で彼女を寝かせて介抱する事で一日が終わったのだった。
ノエルにも叱られたが、とても申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
今日こそは彼女とゆっくり…………と思っていたのに東の帝国の皇帝陛下から、お礼と港町で帝国の要人が会いに来るという趣旨が書いた手紙が届いてしまう。
「ふむ、どうやら事態が動きそうだ」
フェンデルバーグ公爵の件で動きがあるのは嬉しい事だが、ティナとの時間が奪われてしまったのが悔やまれるな。
私のそんな気持ちを知らないティナは、心配そうな表情で「王太后陛下の件、ですか?」と聞いてきた。
王宮では君との時間を確保したくて頑張っていたのに、今またこの件で君との時間を奪われる事になるとは……でも行かないわけにはいかないだろう。
「君に会えずに走り回ったかいがあったよ。今は全て話すわけにはいかないけど……ごめんね。ただ私を信じていてほしい」
「それはお任せください!」
「はぁ――……っ」
純粋なティナは、元気に私を信じると返事をしてくるので、堪らない気持ちになって彼女を抱きしめた。
次に会えるのは何日後だろうか――――考えただけで気が遠くなりそうだったので、今はひとまずこの件を片づける事だけを考える事にしよう。
何としても早くこの件を解決させたかったので、最愛の婚約者に挨拶をして、公爵邸を颯爽と出て行ったのだった。
~・~・~・~・~
公爵邸を出た後すぐにロイドの邸に行き、この件を話すと一緒に行ってくれるというので共に馬を走らせた。
一人で帝国の要人と会うというのは、何か問題があっても握り潰されてしまう可能性もあり、私の身の危険も案じてくれたのだろう。
言葉には出さないが、そういうところに救われていると感じる事が多々ある。
そうして2日ほどで、西の大陸の東端に位置するヴェライエ国に着いた。
港町もあり、東の国からの旅行者も多く、とても賑わっている。
私はすぐに指定された宿屋へと向かった。
帝国の要人は数人でやってきて、旅行客のような姿で我が国に入り込んでいるらしく、私もロイドも宿屋にチェックインし、お互い旅行客を装って客室にて話し合いが行われたのだった。
そこに現れた要人とは、帝国軍の騎士団の隊長と大臣が2人――――中でも騎士団の隊長は背の高い女性だった。
貴族令嬢でありながら強大な帝国騎士団の隊長まで務めるとは、驚きだな。
騎士団に所属するだけあって、挨拶の仕方も軍人そのもので動きも洗練されていた。
「初めてお目にかかります、私はセリス・オットー。帝国騎士団第二軍事隊長を務める、伯爵家の者です。あなたはオーレンブルク公爵閣下ですね。そちらのお方は……」
手紙は私宛だったので、ロイドの事は知らないのだろうな。
ロイドは女性が来ると思っていなかったのか、突然紳士面になり自己紹介をし始める。
「お初にお目にかかります、ロイド・スターレインと申します。彼の親友であり、伯爵家の者ですので怪しい者ではありません」
そう言いながらウィンクをするので、妻子もいる身で完全に調子に乗っているなと私は呆れ顔になる。
「ふふっ、楽しいご友人をお持ちのようだ」
「挨拶はその辺でよろしいでしょう。皇帝陛下をお待たせするわけにはいきませんので、話し合いを始めましょうぞ」
一人の大臣が我々の会話を遮るように入ってきた……無駄話をするなと言う事か。
何となくセリス嬢への風当たりが強いようにも感じる。
やはり女性で騎士というのは周りからの偏った目もあるのだろうか。
「承知いたしました。では始めましょうか」
申し訳なさそうにするセリス嬢に頷きながら、長い話し合いに入る事となった。
結局話し合いは日をまたぎ、2日間にわたって行われた。
大臣2人はなんとしてもフェンデルバーグ公爵の身柄を皇帝陛下のもとへ連れて行きたいようで、頑として引き下がらなかったからだ。
私も陛下も公爵に関しては譲るつもりはなく、自国であの男に鉄槌を下す事が最優先事項だったので、こちらとしても譲歩する事はなかった。
あまりにも交渉が難航するようならと、兄上からは事前に皇帝陛下への親書を預かっていたので、最終的にその親書を渡し、大臣たちは引き下がったのだった。
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