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ジェスター子爵
大変お待たせいたしました!
ここから最後まで一気に駆け抜けていきたいと思います~~最終章の始まりです。よろしくお願いいたします<(_ _)>
~・~・~・~・~
館内は一気に静まり返り、マリエッタ姐さんが髪を掴まれた私を気遣ってくれる。
「あんた大丈夫かい?」
「はい、大丈夫です……」
「全然大丈夫じゃないだろう?そんなに泣いて」
「え……?」
自分でも気付かない内に涙がとめどなく流れてきていた。
頑張っても止める事ができず、姐さんが肩を貸してくれる。
「思いっきり泣きな。泣いて泣いて泣きまくったら、また頑張ればいいから」
「……ふ、うぅ……~~~っ」
悲しかった。
奥様の事を愛しているのなら、まだその方が良かったかもしれない。
まさか他に愛する人がいて、しかも幼い頃からの……その気持ちを満たす為に、少し似ていた私に声をかけたんだ。
現実はなんて残酷なのだろう。
昼間から出かけた時も、その人とデートのつもりでプレゼントを買い、素敵なホテルを予約したに違いない。
『君が何者であっても関係ない。私が贈りたいんだ』
ペリドットのネックレスをプレゼントしてくれた時に言ってくれた言葉……本当に嬉しかったのに。
全部大切な人に贈る言葉だったのね。
あまりにも甘美で蕩けるような夜に、すっかり勘違いしてしまっていた。
貴族なんて嘘で塗り固められた人々だというのに。
それは自分も同じ。
私は顔を上げ、涙を拭いながらマリエッタ姐さんに「今日からお客を取ります」と伝える。
「で、でもさ、今日来るかもしれないじゃない?」
「いえ、もういいんです。気持ちは固まりました……こんな関係、もう終わらせた方がいいんです」
「でも……」
「お願いします、姐さん。私を娼婦にしてください」
「…………分かったよ。じゃあ準備をしよう」
「はい」
ヴァレリオ様、さようなら。
あなたがくれた数々の素晴らしい日々があったから、私は決意する事ができた。
どんな事があっても私がこの先、愛しているのはあなただけ。
その気持ちだけで、生きていけるから。
「あんたが気にすると嫌だから言っとくけど、あのご夫人にこの店をどうこうする事は出来ないから、安心しなよ」
「そうなのですか?」
「ああ、それだけは本当。今度時間がある時にでも話すよ。だから店の為に娼婦にならないとって思うんじゃないよ」
「ありがとうございます」
姐さんの言葉に安堵と嬉しさで、胸がじんわり温かくなる。
これで心置きなくお客を取ることができるわ。
準備が整い、受付を通り過ぎようとした時、ちょうど入り口から見覚えのある貴族が入ってきた。
そこに現れたのは、前に揉め事を起こしたジェスター子爵だ。
「こんばんは。君はこの前の!」
子爵も覚えていたようで、お互いに少し気まずい空気が流れる。
「こんばんは、ジェスター子爵」
「今も侯爵専属なのかい?」
「……いえ、もうそれは終わりましたわ」
「そうなのかい?じゃあ君を指名しても……?」
「ええ、もちろん大丈夫です」
「そうか!嬉しいよ!!」
ジェスター子爵は満面の笑みでそう言ってくれる。
こんなに喜んでくれるなんて、ちゃんとお客としてお相手しなくては。
心臓が飛び出してきそう……ヴァレリオ様の時もこんな風に緊張して、でも彼が身も心もほぐしてくれたのよね。
今夜私は愛する人以外の人に抱かれる。
覚悟を決め、子爵に導かれながら部屋へと向かった。
お酒なんか飲めないのに、子爵に注いでもらったワインで乾杯し、一気に飲んでいく。
「いい飲みっぷりだね!」
「ありがとうございます」
不味くて仕方ないのに、今はこの不味さが丁度いい。
そして二人でベッドに腰をかけた。
「大丈夫、すぐに好くなるから」
「え?」
次の瞬間、目の前がぐらぐらと回り、自分の力で起きていられなくなってしまう。
なに……?アルコールのせい?
美味しいと感じられないだけで、そこまでお酒に弱いわけじゃ……まさか!
「な、にを……っ」
「君は何も気にしなくていいんだ。目覚めたら分かるからね」
閉じていく瞼の向こうで、子爵が嬉しそうに笑っている。
睡眠薬……?
考えようとしても眠気が増すばかりで、体をベッドへ預けた瞬間、意識は深く沈んでいった。
ヴァレリオ様……こんな事になるのなら、最後に一目お会いしたかった。
そしてあなたを愛していると伝えればよかったのに。
次に私が目覚めた時は港の倉庫内で、目の前には驚くべき人物が立っていたのだった。
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