悪役令嬢になってしまったので準備は万全にしましたが義弟が心配です!

さくら

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1章

こんな思いは(グレイエside)

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誕生日の日頭を打ったって聞いて少しは心配したが見舞いに行くほどでもないと思っていた。しかし次に会った時のあいつは人が変わっていたかのように話かけてきた。急に謝罪なんてしたり後継者の話をしたり俺と本当の家族になりたいなどと言い出した。何かの悪ふざけかと思って最初は真剣には受け止めてはいなかったが、あまりにも必死に俺と口論するあいつが少し可笑しかったのか。最後の方は少しづつそんな変わった…いや変わろうとしているあいつを受け止めはじめていた。ただ引っかかっていたのは、俺の髪色について褒めたこと。以前なら絶対にありえないことで後継者になることも髪色も魔法も全部全否定だったあいつがそんなことを言うなんて考えられなかったからだ。そして『何色に見えると?』あいつの髪色を俺に聞いてきたことだ。もちろん俺は、赤に見えると答えた。嘘ではない。俺にはあいつの髪色も赤色だと思うからだ。
すると、少しだけ切なそうに『ありがとう』
そう言った。
あいつは俺と本当に家族になろうとしているのか。そう考えた。
考え始めたのは学園で。学園はあいつの髪色の陰口ばかりで居心地が悪い。しかもそれをあえて俺に聞かせてくるあたり意地が悪い連中ばかりだ。まるで俺に同意を求めてくるような目線もうざい。なんで貴族っていうのはそう言った人の揚げ足取りたがるんだろうか。

「やはりグレイエ様が次期当主ですわよね。そもそもリリーナルチア様はモンスルト家の血筋ではないと噂されていますし。まぁ髪色も見てくださいまし、ほら全然違うわ。火の属性魔法もリリーナルチア様は使えないですし色々とあの方は怪しいですわよね」
「そうですわね」
「そもそも婚約候補になられたのもモンスルト家の血筋でなく居場所がなかったからなのかしら」
胸糞が悪い連中があいつと俺の髪を見比べて好き勝手言ってる。その日あいつが髪をおろしていたからいつも以上に言われていた。

学園に入学して薄々気づいていた、俺のせいで余計にあいつが髪色のことや魔法のことで比べられて勝手に悪く言われていることに。まるで加害者の気分だ。やっぱり家族なんて無理だ。俺が原因でこのようなことが絶えないから。あいつが俺を嫌わない理由が見当たらないくらい嫌われて当たり前な存在なんだ。そんな俺とあいつが家族になるなんてできない。笑顔を奪ったのも俺の存在そのものかも知れないなのに。
サムドに声をかけられる前はそんなことばかり思っていた。
「グレイエの義姉さん今日髪おろしててかわいいな!!そんで珍しい!!凄く似合ってる!!!」
興奮気味でそう声をかけてくれたサムドのお陰でいつもの俺に戻してくれた。
「サムド」
「元気ないじゃんグレイエ!どうした?義姉さんが可愛すぎて困っているのか?そりゃああんなに可愛ければ困るよな!安心しろ俺はおまえとの約束通り義姉さんにはとびっきり甘い俺の囁きと言うなの声かけ☆しないから!」
サムドの反応を見てハッとする。普通はこれなのではと。
そもそもなんで俺が原因にならなきゃならないんだ!あいつの性格は元々悪いし、こんな髪色とか魔法で俺たちを色々決めつける世界は糞だ。でもこんな糞な世界の一部の糞おかしな連中のせいで俺とあいつが振り回されている。本当に意味がわからない。だけどそんな世界でも一歩あいつが俺に歩み寄るならば少しずつだけど応えようと思った。
「ありがとうなサムド」
「何?代りに俺の思いを義姉さんに届けてくれるきになった?」ニヤニヤと期待した目でサムドが言う。いつもはあいつと関わりたくなかったが今回ばかりは俺から行こう。
「わかった!言ってくる」
「今日はやけに素直だな」
素直なのはいつもだとか言い返す前にあいつのもとに足は向かっていた。
 
するといきなりあいつのライバルであり宿敵ローゼ・マレーに魔法で水で濡らされそうになっている現場に居合わせてしまった。
体は勝手にあいつをその魔法から自分の魔法で守っていた。だけどそれは、俺があいつに一番してはいけないと思っていたことだった。俺の属性魔法で助けられるなんてどんなに嫌かはわかっていたから。あいつが欲しくてたまらないもので見せびらかすように使うことはしたくなかった。自分があいつの代わりにローゼマレーの水の魔法にかけられるには間に合わなかったから仕方がなかったが
その後、普通にお礼も言われたしサムドの伝言を伝えると本当に嬉しそうだったし喜んでいたように思えた。だけど、魔法のこともあって俺はまともにあいつの顔をしばらく見れなかった。いや怖くてあまり見たくなかった。


それなのに。その日どうしてか夕食を食べ損ねた同士一緒に食べることになってしまっていた。
最初は嫌がった。魔法のこともあり気まずさもあったからだ。それに今までだって一緒にいるだけで喧嘩していつも最悪だった。そうお互い嫌いあっていたのだから。
「お前も俺と食べたくないだろう?」と言うと怒って意味がわからないことを言う。
そして『家族になりたい』ともう一度言った。そこでしっかり顔を見て目も見てあいつの言葉を改めて聞き自分の気まずさもバカらしくなった。
魔法のことのお礼も改めて言ってきた。そうだ変わろうとしているんだ。あいつも俺も。この現状を、関係を。まだ俺には今すぐにはできないかもしれない。だけどいつか。少しずつ、そう思っていた。
あいつが魔法省の人間に拘束されるまで。








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