病弱な僕と正反対な君

蒸しケーキ

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仲直り

 僕が目を覚ますと、そこには心配そうにこちらを見つめ、手を握っている彼の姿があった。今はその優しさが、僕を苦しめる。
 
 「また、迷惑かけちゃったね、、ごめんね。ほんとうに。」

 「そんなことねぇよ。無理すんな。」

 「だからっ!!そんな同情もいらないってば!!」

 「唯、、、」

 「今は少し、一人になりたい。」

 「いや。それはダメだ。唯、ちゃんと俺の話聞いてくれるか?」

 「、、、颯君は、あの子と付き合うんだよね、、」

 「は?」

 「いや、何言って「いいんだ。別に、ほんとに思い出をくれただけで。僕は十分だったよ、嬉しかった。」

 「、、、俺前に言ったよな?すぐにそうやって自己完結させて、自分が悪いみたいな考えするのやめろって。」

 どうして今、僕は彼に説教垂れなければならないんだ。怒りたいのは僕の方なのに。

 「なんで颯君が怒るの?あぁ、でもそうか、僕がいるとあの子と付き合いにくいもんね。」

 「っ!だからなんでそうなんだよ、!!」

 彼が声を荒げたのと同時に、電話が鳴る。着信相手はきっと安藤さんだろう。僕は込み上げてくる嗚咽を、涙を必死に堪えた。

 「出てあげなよ。彼女でしょ?僕に気遣う必要なんてないよ。」

 「だから!!何回も違うって言ってるだろ、、そんなに俺のことが信じらんないかよ、、、」

 着信音が途切れる。彼の瞳は僕を映し出し、僕以外の何物も捉えていなかった。なんだか居心地が悪い。ほんとなら嬉しいはずなのに。

 俺のことが信じられない、、、違うんだ。信じられないわけじゃないんだ。颯君が抱きしめてくれた時、キスをしてくれたとき、どうしようもない幸福感に毎回包まれるんだ。だからこそ僕は怖いんだ。自分自身を信じることが。

 「やっぱり僕がいると、ダメだね。」

 「またそれかよ、、、なぁ唯、いい加減にしろよ。」

 「またそれってなに!?颯君に僕の何が分かるの!!」

 珍しく僕は頭に血が昇り、言葉を連ねる。

 「唯、そんなに興奮すると身体に負担が、!」

 「うるさいっ!!、、、はぁ。颯君にとって僕は何??僕が惨めに思えてるから構うんだよね?」

 「今日だってそう。過呼吸なんて僕が起こさなきゃ、今頃、安藤さんのところに行ってるはずだったんでしょ。」

 「体育祭が終わってから、帰りが遅かったのもそれでしょ??」

 「でも僕が可哀そうで、見捨てられないからこんな茶番に付き合ってくれてるんだよね、?」

 彼のこめかみには青筋が立っている。だから、なんで君がそんなに怒るのさ!

 「別れたいなら別れたいって早く言ってよ!!はぁはぁ、、、バカみたいじゃないか、」

 僕は布団を握りしめ、涙が落ちないように顔を背ける。

 「ほんとにいい加減に!!「いっそのこと、あのときも!あのときも、ぼ、僕が死んじゃえば、消えちゃえばよかったんだ!!」

 バチンッと音がしたかと思うと、僕の頬が次第にヒリヒリと熱を帯びてくる。気づくと目からは涙が止められなくなっていた。ぼやけた視界で颯君の方を見ると苦しそうな表情をしている。

 「ふざけんなよ、、、さっきから黙って聞いてりゃ人の話まともに聞かねぇで、茶番だの、惨め?そんで別れろだ?ふざけんなよ。端からこっちは半端な気持ちで付き合ってねぇよ!」

 「終いには、死んだ方がいい?馬鹿げたこと言ってんじゃねぇよ!!俺だけじゃねぇ。唯の家族や、周りの友達はそれ聞いてどう思うか考えたことあんのか!?」

 僕はハッとする。そういえば星谷先輩にも同じようなこと言われた気がする。

 「俺が毎日どんな気持ちで唯といるかわかんねぇだろ!?それと同じように俺も唯が過去にどんなことがあったかも、その辛さもわかんねぇ。だからそれ以上に唯を愛そうと思った。唯にちゃんと伝わるように。」

 「唯に初めて会ったときから惨めとか、そんなこと一度も思ったことねぇよ。」

 そんな風に思ってくれていたのか。僕は自分を守っているようで、ほんとはたくさんの人を傷つけていたんだなと実感した。

 「わりぃ。ちょっと熱くなりすぎた。」

 「ううん。大丈夫。ごめんほんとうに、、僕も熱くなっちゃって、嫌なこと、たくさん言った。」

 「颯君。安藤さんとの話、聞かせて、くれないかな、、」

 「おう。大丈夫。」

 それから颯君は保健室まで運んだのは本当のことだが、キスしているように見えたあれは、実は「ゴミがついてるよ。」と安藤さんがゴミを取ってくれたところを偶然誰かが見かけたらしく、後ろから見たらキスしてる角度に見えたのだろうということだった。それと、なぜ連絡先を交換し通話するような仲になったのかというと、どうやら恋愛の相談をしていたらしい。なにを相談していたのかは、はぐらかされてしまった。そもそも安藤さんは、他校に通っている幼馴染と付き合っているらしい。

 以上がざっくりとした、事の全貌であり、噂が盛りに盛られ、膨らんだ結果、付き合っているという判定になったらしい。完全に僕の早とちりだ。

 「、、、ごめん颯君ほんとに、はぁ、余計にめんどくさくなったよね。」

 また目が潤んでくる。今度こそ愛想を尽かされると。しかし颯君は、僕の目に溜まった今にも流れてしまいそうな涙をぺろりと舐めとると、そのまま重なるだけのキスを落とす。

 「めんどくさいなんて思わねぇよ。ただ、あんま伝わってなかったのがちょっとショックだったけどよ。」

 「それは~、僕のせいでもあるし。」

 「だからこれからはもっと分かりやすくアピールしてくわ。唯がこれで超絶鈍感だって分かったし。俺ももう加減しねぇから。」

 「う、うん。が、がんばる、」

 「今、体育祭のご褒美もらってもいい?」

 「え、いいけど、僕なにも用意してない、、」

 「いや、唯がいれば、それでいいから。」

 「そ、そっか。」

 僕でいいってなんだろうか??颯君は少し悩んだかと思うと、よし。というようにうなずき

 「唯に触れたい。それが体育祭のご褒美。」

 「触れ、、??分かった、、?」

 僕は触れたいとは??となっているとやっぱ伝わんねぇか。と苦笑いをすると

 「こういうことしたいってこと、、嫌だったらすぐ言って。」

 そういうとまたキスをされるが、今回は重なるだけのキスではなかった。僕の閉じている口を舌で強引に割って入ってきたかと思うと、甘美な音を奏でながら、舌と舌が絡み合う。僕はやはり息苦しくなってしまい、颯君の胸元をギュッと強く掴む。

 一度唇が離れると、二人を繋ぐように、銀糸がつーーっと伝っている。

 「唯、鼻で息して?そしたら長くできるから。」

 そう言われるともう一度、濃密なキスを交わす。

 「ふっ、、んんっっ、、」

 と声が漏れてしまうが、確かに息はできると納得した。しかし困ったことに、腹の奥がジクリと熱を持ち、僕の分身が次第に主張を始めてしまう。どうしよう、はしたないと思われちゃう、隠さないと、と思い、身体をよじる。すると颯君の手が僕の服の中に入ってくるのが分かった。肌を優しく労わるように、すすすっと手が伸びてくる。

 僕は思わず、身体がビクッとなるが、依然として颯君のキスは止まらなかった。そして手が僕の胸の粒に辿り着くと、ふにっと触られる。思わず

 「んっ、あっ”」

 と甘い声が漏れてしまう。慌てて僕は口を両手で塞ぐ。恥ずかしさで顔が爆散してしまいそうだ。颯君はその声を聴くと、にやりといたずらを思いついた子どものような顔をした。その後ポンポンと頭を撫でると、僕の肩に颯君が寄りかかる。

 「今日はここまで、な?初めてだし。このままいくと俺も止めらんなくなる。」

 僕はこの先もあるのか、、、ぽわぽわした頭で考える。

 「良かった。唯もちゃんと感じてくれて。」

 唯”も”ってことは颯君も気持ちよくなってくれてたのかなと少し安心する。

 「これからはもう我慢しないから。嫌って言うほどちゃんと好きだって伝えるからな。唯が安心できるまで。」

 いつのまにか、僕の心に存在していたはずの黒いドロドロしたものは消滅していた。暗闇にいた僕を颯君が光となって救い上げてくれたのだ。まさに太陽のような存在だ。いつだって僕を明るく照らしてくれる。時には優しく包み込んでくれる。

 ほんとに僕なんかにはもったいない人だなといまだに思う。だけど、こんな僕でも好きになってくれる人がいる。だからそれにできる限り応えようと思った。

 「うん。ありがとう。僕もなるべく、我慢しないようにするね。」

 「ちょっとずつでいいから。慣れていこうな。一緒に。」

 自然と二人に笑みが零れ落ちる。颯君との距離がぐっと縮まり、少しでも対等になれたような、そんな気がした。しかし、この時の僕は知る由もなかった。加減をしなくなった颯君の愛の重さがどれほどなのかを。

 
 

 
 




 

 
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