独り身オメガに幸せを

蒸しケーキ

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番外編

結婚式

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 今日はとうとう迎えた結婚式当日。

 やばい、めちゃくちゃ緊張する......。はぁぁぁぁ、俺こんなんで大丈夫かな。さっきから生まれたての小鹿のように足の震えがずっと止まらない。

「母さん、リラックス。新婦さんが今からそんなガチガチでどうすんの??」

「そうよ、葵。そんなに緊張することないわよ。堂々としてなさい。」

「なんで二人ともそんな緊張してないのさ。瑠夏はともかく、母さんも一緒に入場するんだよ?」

「あんたみたいに自分より緊張してる人を見ると、自然とほぐれてくるものよ。」

「でも......葵が結婚なんてね。お父さんにも葵の晴れ姿、見て欲しかったわね。」

 母さんは父さんの遺影を見つめながら、少し寂しそうにぽつりと呟いた。それもそうだよな。俺は大学生の時に瑠夏を妊娠した。だから、もちろん成人式にも出ているわけがなく、父さんに俺の晴れ姿なんて見せる機会は無かった。

 俺もできることなら見せてあげたかったな。

「何言ってんの?今見せてんじゃん。たぶん母さんとばあちゃんのこと見ててくれてるよ。」

「もうやだ、泣いちゃうじゃない、瑠夏!あんたって子は!!」

「いてっ!いたっ!ばあちゃん痛いって!!」

 母さんは泣きながら瑠夏の背中をバシバシ叩いていた。その微笑ましい光景に俺はくすっと笑った。すると扉が軽くノックされた。

「誰かしら??」

 母さんが扉を開けると、蓮のご両親が俺のところに来てくれたようだった。

「あらっ!麗華さんと慎一郎さん!どうも。」

「美智子さん、どうも。あら~!!葵君!!キレイで素敵よ。蓮も見惚れるに違いないわ!!ねぇあなた!?」

「そうだな。葵君、改めて結婚おめでとう。」

 立ち上がってお礼を言おうとすると、「いいのよ!座ったままで!」と気遣ってくれた。

「ありがとうございます。」

 そこでふと気づいた。そういえば蓮の姿が見えないな??

「蓮はまだ準備中ですか??」

 俺が尋ねると麗華さんは、にこやかな笑顔を浮かべていた。

「うふふ、とっくに準備なんて終わってるわよ。今頃、控室でソワソワしながら待ってるんじゃないかしら。」

「それにね、今日の結婚式は挙式中に初めて葵君と会いたいんですって。」

 あれ?この前の打ち合わせのときは、確か支度部屋で一度合流する予定で話を進めていたような......。まぁ蓮もずっと悩んでいたし、当日に変更とかありそうだなとは思っていたから、そこまでの驚きはなかった。

「あの子、葵君の晴れ姿を見るのが楽しみで仕方ないみたいなのよ。だから会うのは挙式が始まってからがいいんですって。本当は一緒に連れてくる予定だったのだけれど、急な変更でごめんなさいね。」

「いえ、大丈夫です。実は俺もその方がいいと思っていたので。」

「まぁ、気遣わせて申し訳ないわ。」

「じゃあ、俺らは一旦外に出ましょうか。そろそろ受付も始めないとですし。またね、母さん。」

「瑠夏君、奇遇ね。ちょうど私もそう思っていたのよ。じゃあ葵君またあとで会いましょうね。」

 瑠夏と麗華さんはみんなを連れて控室を出て行ってしまった。......あぁ急に心細い。てか受付が終わったらもう本番!?えぇどうしよう。やばい動悸もしてきた。落ち着け、深呼吸、深呼吸...。

「美園様。まもなく入場のお時間です。」

「はっ、はい!!行きます!!」

 スタッフに案内され、バージンロードにつながる扉の前へと向かう。この扉を開けたら蓮がいるんだ。ちらっと母さんの方を見ると、母さんは胸の前で父さんの遺影を抱え、目に涙を浮かべていた。

「新婦の入場です!!」

 司会者の声が響いた。重々しく、静かにゆっくりと目の前の扉が開いていく。俺は視線を少し落としたまま、バージンロードを一歩ずつ進んだ。決して多人数というわけではないけれど、その視線が一気に集まるのは想像以上に緊張した。

 賛美歌、オルガンやバイオリンなどの音色がチャペルに響き渡り、まるで俺たちのことを華々しく祝福してくれているようだった。

 バージンロードの途中で母さんが道から外れて席へと向かう。そして俺は蓮と牧師の立つ場所へと辿り着いた。

 牧師は使い古された福音書を手に持ちながら、俺たち二人に優しい声色で言葉を読み上げていく。

「心健やかなるときも、心安らかなるときも、心病めるときも共に生涯、愛し合うと誓いますか?」

「「誓います。」」

「では、誓いの印としてキスを。」

 蓮がそっと手を伸ばし、俺のベールを優しく上げる。

 視線を上げた瞬間、蓮と目が合った。差し込む陽光によって、七色に輝くステンドグラスの光が蓮の瞳に映り込み、鮮やかな虹色が揺らめいて見えた。ぱちっと視線が絡んだあと、蓮はふっと柔らかく微笑んだ。

「今日も綺麗だね、葵」

「ありがと、蓮も今日は一段とかっこいいよ。見惚れちゃった。」

 白のタキシードを身にまとった蓮の姿は、まるで童話に登場する王子様みたいでかっこよかった。俺も蓮と同じ白基調のタキシードを着ているはずなのに、どうしてこんなにも違って見えるのだろう。......これは見惚れてしまうのも仕方なかった。

 蓮を見ると、頬がほんのり赤く染まっていた。あぁ、よかった。緊張してるのは俺だけじゃなかったんだ。

「ふふ、蓮、顔赤いよ」

 小声で俺が囁くと、蓮も同じぐらいの声量で

「葵もね」

 と返してきた。

 蓮の手が俺の顎をそっと支え、俺はゆっくりと目を閉じて唇を委ねた。

 ーー唇が触れた瞬間、式場にいた人たちからは拍手が湧き、涙をこらえきれず鼻をすする音が聞こえてきた。

「一生かけて、幸せにするよ。」

「うん......。」

 溢れ出した涙はもう止めることができなかった。

「神の祝福が、あなた方お二人にありますように。今日ここに立つお二人の愛が、永遠に続くことを願っております。」

 こうして、俺たちの結婚式は幕を閉じた。

 ーーちなみにブーケトスはというと

「あっ、俺??」

 瑠夏があっさりキャッチしたのだった。
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