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はじまり
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朝、目が覚めるといつも以上に頭が重い。体もだるい。
「あ、これきたかも」咄嗟にそう思い、寝室の机の上にある引き出しから抑制剤を取り出し口にする。「さすがに恭ちゃんには、ばれてないよね~?」薬の苦さを舌で感じながら佐伯淳太は考える。「恭ちゃん今日から研究の発表でいないって言ってたっけ。一人で乗り切るかぁ~」
少しおぼつかない足取りでリビングに向かうと恋人の成瀬恭弥がスーツに着替え、家を出る準備をしていた。
「うん。俺の彼氏は今日もかっこいい」そんなことを考えていると、俺に気付いた恭ちゃんが「おはよ。起こしちゃった?」と少し困った顔で聞いてくる。俺もそれに続いて「おはよ、全然そんなんじゃないよ。今日から研究の発表だよね?」と笑って返す。恭ちゃんは「そうなんだよね、でもあんまり人前に立ちたくはないし気乗りしてないよ。朝は早いしさ~」と少しムスッとして不満を垂れる。「それにそろそろ淳太、発情期の周期じゃない?だからあんまり離れたくないんだよね」と付け加えた。まさか恭ちゃんが俺の発情期の周期を覚えていてくれたなんてと歓喜した目で見つめると、忘れるわけないじゃんとにっこり微笑んだ。しかし!俺は大人だ。ここまで研究の調査やら論文やらを読んでデータを集計するだの倫理審査に引っかからないかなどたくさん頑張ってきた姿をこの目で見てきた。俺の発情期のせいでその大事な研究の成果の発表をできないなんて申し訳ない。
だから俺は「うーんそれがまだ大丈夫そうなんだよねー。もしかしたら周期が1週間ずれてるのかも。だから安心して行ってきな」と恭ちゃんの額にキスをする。それに応えるように恭ちゃんも「ほんと?でも体調が悪くなったらすぐに言うこと。分かった?」と言い頬にキスをしぎゅっとしてくれる。俺の大好きなシトラスのような爽やかな香りが鼻を抜け、一瞬、発情期特有のビリっとした感覚が背中に走った。俺は分かってるよ、ほら飛行機間に合わなくなるよ!と言い恭ちゃんを急かしつつ見送った。パタパタと音がしなくなるのを確認してから、うん。ばれてなさそうだなと一安心した。きっと、恭ちゃんが帰ってくるのは5日後とかになるだろうなとぼんやり考えていた。
俺は元々体質的にフェロモンの匂いが薄いらしい。そのため発情期のときでも匂いが感知されにくいようだ。
子どもができにくいとかだったらどうしようと悲観していた時期もあったがどうやら生殖機能にはなんら問題はないらしい。俺の体質こういうときだけ便利なんだよなぁ~とそんなことを考えながら、夕方には本格的に始まるであろう発情期に備え、寝室にはスポドリや簡単に栄養が取ることができる栄養食などを置いておく。今朝飲んだ抑制剤の副作用か、はたまた発情期によるものか分からないが、強い眠気に襲われ俺は深い眠りに落ちた。
「あ、これきたかも」咄嗟にそう思い、寝室の机の上にある引き出しから抑制剤を取り出し口にする。「さすがに恭ちゃんには、ばれてないよね~?」薬の苦さを舌で感じながら佐伯淳太は考える。「恭ちゃん今日から研究の発表でいないって言ってたっけ。一人で乗り切るかぁ~」
少しおぼつかない足取りでリビングに向かうと恋人の成瀬恭弥がスーツに着替え、家を出る準備をしていた。
「うん。俺の彼氏は今日もかっこいい」そんなことを考えていると、俺に気付いた恭ちゃんが「おはよ。起こしちゃった?」と少し困った顔で聞いてくる。俺もそれに続いて「おはよ、全然そんなんじゃないよ。今日から研究の発表だよね?」と笑って返す。恭ちゃんは「そうなんだよね、でもあんまり人前に立ちたくはないし気乗りしてないよ。朝は早いしさ~」と少しムスッとして不満を垂れる。「それにそろそろ淳太、発情期の周期じゃない?だからあんまり離れたくないんだよね」と付け加えた。まさか恭ちゃんが俺の発情期の周期を覚えていてくれたなんてと歓喜した目で見つめると、忘れるわけないじゃんとにっこり微笑んだ。しかし!俺は大人だ。ここまで研究の調査やら論文やらを読んでデータを集計するだの倫理審査に引っかからないかなどたくさん頑張ってきた姿をこの目で見てきた。俺の発情期のせいでその大事な研究の成果の発表をできないなんて申し訳ない。
だから俺は「うーんそれがまだ大丈夫そうなんだよねー。もしかしたら周期が1週間ずれてるのかも。だから安心して行ってきな」と恭ちゃんの額にキスをする。それに応えるように恭ちゃんも「ほんと?でも体調が悪くなったらすぐに言うこと。分かった?」と言い頬にキスをしぎゅっとしてくれる。俺の大好きなシトラスのような爽やかな香りが鼻を抜け、一瞬、発情期特有のビリっとした感覚が背中に走った。俺は分かってるよ、ほら飛行機間に合わなくなるよ!と言い恭ちゃんを急かしつつ見送った。パタパタと音がしなくなるのを確認してから、うん。ばれてなさそうだなと一安心した。きっと、恭ちゃんが帰ってくるのは5日後とかになるだろうなとぼんやり考えていた。
俺は元々体質的にフェロモンの匂いが薄いらしい。そのため発情期のときでも匂いが感知されにくいようだ。
子どもができにくいとかだったらどうしようと悲観していた時期もあったがどうやら生殖機能にはなんら問題はないらしい。俺の体質こういうときだけ便利なんだよなぁ~とそんなことを考えながら、夕方には本格的に始まるであろう発情期に備え、寝室にはスポドリや簡単に栄養が取ることができる栄養食などを置いておく。今朝飲んだ抑制剤の副作用か、はたまた発情期によるものか分からないが、強い眠気に襲われ俺は深い眠りに落ちた。
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