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番外編:橘大樹の受難
キスの効用
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目を覚ましたら、ここ最近いつもいるはずの傍らのぬくもりがいなかった。
寝惚け眼でぱたぱたと手探りするのだが、やはりいない。
「んん……ロウヤ?」
薄目を開けてぼんやり彼の姿を探すと、彼はベッドの端にちょこんと座ってこちらを見ていた。
「ふわぁぁ、そんなとこで何してんの?」
「うわぅ、おうぅ!」
「あぁ、うん、おはようさん」
俺の言葉に彼は不満気に「わうん! わうぅ!」と、何か抗議をして寄こすのだが、その姿の時には何喋ってんのか分かんねぇって分かってるだろ?
「んん? 何? ちょっと待てよ……ったく……」
俺は荷物を漁りナイフを取り出す。ホント、毎朝の事だけど好きでやってんじゃないんだからな、ちったぁ感謝しろよ。
俺がナイフを腕にあてがい引こうとした瞬間、ロウヤが動き、そのナイフを咥えて放り投げた。
「あん? 何だよ? 何してんだ?」
「わぅ! わうう!」
たぶん何かを伝えようとしているのは分かる、だがその言葉までは分からない。一体何がしたいんだ? こっちは寝起きで頭も回らないってのに、いい加減にしろよ。
「だ~か~ら、その姿の時には何言ってんのか分かんねぇんだから吠えんな、やかましい」
「わうあ! うぁん!」
「っつ! もう何なんだよ! 分かんねぇって言ってんだろ!」
思わず俺が怒鳴りつけると、ロウヤの耳がしゅんと下がった。ちゃんと元に戻れば普通に会話できるんだから、その姿で会話をしようとする意味が分からん。
ベッドからのそりと這い出て、放り投げられたナイフを拾う。ホント何なんだ……
「ほら来いよ」
「ううう……」
「何だよ、来ないのか? いつもは止めろって言ってもべろべろ舐め回す癖に」
何を躊躇うのか、ロウヤがじとりとした瞳をこちらへと向ける。やれやれ……と思って、再び腕にナイフをあてがうと、今度は思い切りよく押し倒されナイフが何処かへ飛んで行った。
「ちょ……! お前何なんだよっ!」
「うぁう! わうう!」
首を振るようにしてロウヤが俺を抑え込む。獣人サイズではない彼だがその姿の時も大型犬程度の大きさの彼に伸し掛かられると俺も身動きが取れなくなる。ったく、本当に何がしたいんだかさっぱり分からん!
「だからそれじゃ分からないって何度も言ってるだろう! くどい!!」
「ううぅ……おんっ!」
一声鳴いてロウヤが俺の顔中を舐め回し始めた。ちょ、お前、よだれ……
「っ、こらっ! やめって、ロウヤ……むぐっ」
鼻面を口の中へ突っ込まれ、そのまま口の中にまで舌が入り込んできたのだが、さすがに狼とディープキスはいただけない。やりたい放題にも程がある。
「んむっ、んんんっ!」
どうにか渾身の力でロウヤを払いのける。
「お前どういうつもりだ! 何がしたいのかさっぱり分かんねぇんだよ! ふざけんなよ、クソがっ!!」
べたべたになった顔を腕で拭う。ったく、朝から気分悪いな。
俺は、苛々と彼を放置したままシャワー室へと向かう。こんなべたべたな状態では顔を洗わないとやってられない。
「うぁう……」
「うるさい、ロウヤ!」
「うぐぅっ……」
服を脱ぎ捨てシャワー室に入る。寝起きはそこまで悪くはないと思っていたのだが、温いシャワーを浴びていたら、少し頭が冷えてくる。ロウヤが何を言いたかったのかは分からないのだが、最初から頭ごなしに分からないと怒りをぶつけるのも大人げなかったか、と少し反省の気持ちが湧いてきた。
分からないなら分からないなりに少しは理解しようと努めてやるべきだったか……けれど、獣人に戻りさえすれば意思の疎通は図れる訳で、だったらいつも通りに血を舐めればいいのに、ロウヤはそれを拒否したのだ。
「あぁ、もうホント分かんねぇ……」
ここまで俺達うまくやって来たと思ってたんだけどな。こういう時に恋愛感情が入り込んでくると人間関係ってのは途端に複雑になる。こういう面倒くさいの嫌いなんだけどな。
「ダイキ……」
シャワー室の向こう側、大人しいロウヤの声が聞こえた。なんとなく気恥ずかしい俺はお湯を出したまま「なんだよ?」とぶっきらぼうに返事を返す。
「俺はダイキを傷付けるのはもう嫌だ」
「そんな事言ったってしょうがねぇだろ、それしか方法が……」
そこまで言いかけて、あれ? と首を傾げた。なんで俺達普通に喋ってんだ?
シャワーを止めて部屋の外を窺う、たぶんその扉の向こう側にロウヤがいる、だけど今日俺はまだロウヤに血をやってない。
タオルを掴んで腰回りを覆い、俺は慌てて扉を開けた。
「なんでお前獣人に戻ってんの?」
そこには所在なさげにロウヤが立ち、こちらも慌てたように視線を彷徨わせた。
「それがよく分からない。だけど、戻った。もしかしたら元に戻るのには血でなくてもいいのかもしれん」
「んん?」
「これもあくまで仮定なんだが、これはダイキの体液自体に何かしらの力があるのだと俺は考える。だからもしそれが確定すれば、もうお前を傷付ける必要がなくなる」
「俺の体液……」
髪から水滴が滴って床を濡らす。それにしても俺の体液にロウヤを元に戻す力があるってどういう事なんだろうな……そんでもって血じゃない体液って……
そこまで考えてはたと気付く、さっき俺は確かにこいつとキスをしたのだ、それも口の中に舌を突っ込まれたディープキス。
「もしかして唾液で戻った?」
「恐らく」
キスで戻るってお前は呪われた王子様か? はたまた眠りのお姫様か? それで言ったらそれを元に戻している俺自身も姫か王子かって感じだけど。
キスで狼から獣人の姿に戻るのなら俺ももう痛い思いはしなくて済む、だけどその為に毎回ディープキス? そりゃ初めてってほどウブじゃないが、それにしても……
「どうせキスするなら可愛い女の子がいい」
「つっ……分かった」
そう言うが早いかロウヤの姿が美鈴の姿に変わる。
「これでいいか?」
「お前はいいと思うのか? 美鈴は俺の妹だぞ? 常識的に考えてそれはないだろ?」
「ダイキはわがままだ!」
「それ以前の問題だろ、他にバリエーションないのかよ?」
「俺は今まで人とほとんど関わってこなかった、化けられるほど知っている人がいない」
要するにロウヤは知ってる人間にしか化けられないのか、使えるかと思いきや意外と使えない魔法だったな……なんてぼんやり思っていたら、ロウヤが「だったらこれでいいか?」と、またあの美形の姿に変化する。まぁ、これなら許容範囲かなぁ。
俺が「いいんじゃね?」と返事を返すとロウヤは少し悔しそうに「分かった」と頷いた。
「これから俺はこの姿でいる事にする、だから元に戻りそうになったらキスしてくれるな?」
「あぁ、そういう事か……」
まぁ、この顔は好みだし、痛い思いをする事がなくなるならそれでもいいか。
俺が「分かった」と頷くと、少しだけ複雑そうな表情のロウヤは「ありがとう」と、そう言った。
「んんぅ、んっ~~っ……もぅ、いい加減にしろ!」
俺は目の前でにやりと笑った男の頭を叩く。俺の唇を執拗に食んでいたその男は「しょうがないだろ、こうしないと俺は何も出来ない狼に戻っちまうんだから」と口では不平を述べるが、その表情は楽し気で、こいつ絶対この状況を楽しんでやがると……俺は眉を顰めた。
目の前に立つのは『人』の姿の男、だが実はそれは獣人ロウヤの仮の姿だったりする。何故俺達がこんな事になっているのかと言えば話は数日前にまで遡る。
たびたび獣人の姿から狼の姿に戻ってしまうロウヤ、その原因はよく分からないのだが、どうやら俺にはそんな彼を獣人に戻す力が備わっていたらしい。 そして、その方法と言うのが彼に俺の体液を分け与えるという方法だった。
最初は俺の血を舐めて元に戻っていた彼だったのだが、毎度毎度腕を傷付け、血を舐められる俺の方はたまった物ではない、どうにか他に方法は……と模索している中で見付けたのがこの方法『キス』だった。
血でないと駄目なのかと思っていたら、どうやら俺の体液なら何でも良かったらしく、こうして現在俺は彼に唾液を分け与えていた訳なのだが、これもこれでどうかと思うのだ。
しかも唾液だと血よりも元に戻ってられる時間が短いんだよ、だから俺達はこうやって毎日頻繁にキスする羽目に陥っている。なんてこった!
「ダイキが嫌だって言うからわざわざ人の姿にまで化けてるのに、わがままだな」
「俺は可愛い女の子が良いって言ったのに、化けれないくせによく言う!」
「しょうがないだろっ! 人なんて今までほぼ見た事ないんだから! 見本があれば俺だって化けれる!」
ロウヤはそう言って少し不機嫌そうに髪を掻き上げるのだが、その姿はすらりと長身の超絶美形だ。どうやらその姿は自分の母親を模した姿らしく、美形なのだが男らしすぎる。どういう事だ、こいつの母親は女なんじゃないのか? あ……そういえば、こいつの世界は人なら男でも妊娠する世界だったわ、という事はこいつの母親も男なのかもな、そういえば獣人顔負けの美丈夫とかなんとか言ってたの聞いたわ。あ~……
「それにしても人いないな……」
俺は辺りを見回して溜息を零す。俺達は最初に目覚めた森を抜け出し、現在人通りのない道路を歩いている。ちなみにコンクリート道路、慣れ親しんだ俺の世界のコンクリート、もうとっくに俺の暮らしていた県の隣県××県に入っているし、普通に人里に出ても不思議ではないのだが、どうもちょっと様子がおかしい。
時々見かける道の表札はやはりどう見ても日本語で、ここが日本国内なのは間違いないっぽい。だがどれだけ歩いても誰にも遭遇しないというのはどう考えてもおかしいと思うのだ。時々建物のある場所もあるのだが、そのほとんどが廃墟で土地は荒れ放題に荒れている。
日本に果たしてこんな場所があるだろうか? いや、ないとも言い切れないけれど。
何にせよスマホが壊れているのが何より痛い、情報収集しようにも使えないのだからもうどうしようもない。今がいつで、ここがどの辺なのか、その情報を手にする術がない。本当に困った。
ちなみにロウヤが人の姿に化けているのは、ここが日本だと分かったからというのもある。さすがにその辺の道をあんなデカい獣人が闊歩していたら化け物だと思われるのは必至だからな。
どうせキスをするのなら可愛い女の子が良いという俺の要望を彼は聞いてはくれなかったのだが、それでも人の姿になっているだけまだマシ……いや、キスするなら獣人の姿の方が気持ち的には楽なのかな。犬に噛まれたと思って忘れろってか、もう忘れられる回数じゃねぇけども。
俺がちらりと横目でロウヤを見やると彼はそれに気付いてにかっと笑う。本当に顔面の無駄遣いというか、美形はそんな子供みたいな笑い方しない方がいいと思う。もういっそ狼の姿のままでいてくれたら俺の心も休まるのだけど、こいつが狼のままだと各種魔法が使えないのでそれもそれで不便なんだよなぁ。
あぁ~あ、俺も魔法が使えたらいいのに。
ロウヤは完全に俺に懐ききっている、というか、どうやら俺はこいつに惚れられているらしい。色々ごちゃごちゃあった後、しばらくの間気まずい空気が漂って、それ以来ロウヤはあまりそう言った事を口にはしないが俺への好意はあからさまだ。
そして、俺の方はといえば『よく分からない』というのが正直な所。別に嫌いじゃないんだが、恋愛対象としては首を傾げる。
なにせ俺は今まで自分は男性役、つまりはタチであるという自負があった。男女どちらでも恋愛対象になる緩い倫理観で生きてきたので性別的にはどうでもいいのだが、攻めるか受けるか、そこは非常に重要な問題だ。
恐らくロウヤは俺の事を抱きたいと思っているだろうし、自分の嫁にしたいと思っていると思うのだが、俺にはそれがしっくりこない。だったら逆ならいいのか? という話になるのだが、正直『人』の姿のロウヤは好みの顔だが獣人ロウヤはペットのような感覚で恋とか愛とかそういうんじゃない気がするんだよなぁ。
「なに? ダイキ?」
俺の視線に気付いたのかロウヤがにぱっと笑みを見せた。彼の尻にぶんぶん振られる尻尾が見えるようだよ。
「いや、なんでもない……それよりもさっきからまたこっちを覗いてる奴がいるな」
「あぁ、そうだな。備蓄量的には今は別に狩らなくてもいいけど、どうしよっか。蓄えは多い方が良いって言うなら狩ってくるけど」
ロウヤの収納魔術はとても便利だ。荷物は何でもかんでも彼専用の収納空間に放り込む事が出来るし、食べ物などに関しては冷蔵庫のような役割もはたして腐らないようにちゃんと保存もしてくれる。
これがさほど役に立たない魔法だなんて一体誰が言ったのだろうと思うほどに、その収納魔法は便利な代物だった。お陰で俺達はこれと言った荷物を持たずに身軽に旅が出来ている。寝る時は雨風しのげるテントの中だし、はっきり言ってサバイバルと言うには快適過ぎる旅である。
ひとつ難を言うのならば食料の主食が魔物肉という所か。俺達は道すがらちょっかいをかけてくる魔物を狩って食料にしているのだが、やはり肉を食うなら米も食いたいと思うのは日本人のさがだと思う。
ところで、ここ最近俺が気付いた事、魔物は種類によって肉質が異なる。翼の生えたモノは鶏肉のような味わいだし、その辺を転がっているようなのは豚肉に近い。どうせなら、どの魔物が美味しいのか吟味してみたいところだ。
森の中を彷徨っていたお陰で野草という名の食料は十分に確保してある、調味料は元々ロウヤの四次元ポケットの中に入っていたのでそこそこ満足な食生活だ。
それでも調味料は使えば減っていくもので、そろそろ何処かで調達したい所ではある。
現在ストックされているのは鶏肉系の魔物肉、そして俺は牛が喰いたい。
「いつものあの変な鳥みたいなのならもういらない。他のだったらちょっと味見くらいしたいかな」
「そっか、分かった行ってくる!」
ロウヤはやはりにぱっと笑って、何事か唱えると身体がむくむくと膨らんでいく。言ってしまえば狼男のように身体が人から獣人の姿に変化していくんだよな。最初は驚いたし、今でもすごいなと思うのだが、そのメタモルフォーゼはまるでテレビアニメでも見ているようだ。
「っっ……! ひぃぃ、化け物っっ!!」
突然上がった叫び声、耳に届いたその悲鳴ははっきり日本語で俺は驚く。
「え!? 人!?」
「うわぁぁ、ひぃぃ……」
声の主は慌てふためいたように踵を返し逃げ出そうとしたのだが、それよりも早くロウヤがその首根っこを捕まえた。
寝惚け眼でぱたぱたと手探りするのだが、やはりいない。
「んん……ロウヤ?」
薄目を開けてぼんやり彼の姿を探すと、彼はベッドの端にちょこんと座ってこちらを見ていた。
「ふわぁぁ、そんなとこで何してんの?」
「うわぅ、おうぅ!」
「あぁ、うん、おはようさん」
俺の言葉に彼は不満気に「わうん! わうぅ!」と、何か抗議をして寄こすのだが、その姿の時には何喋ってんのか分かんねぇって分かってるだろ?
「んん? 何? ちょっと待てよ……ったく……」
俺は荷物を漁りナイフを取り出す。ホント、毎朝の事だけど好きでやってんじゃないんだからな、ちったぁ感謝しろよ。
俺がナイフを腕にあてがい引こうとした瞬間、ロウヤが動き、そのナイフを咥えて放り投げた。
「あん? 何だよ? 何してんだ?」
「わぅ! わうう!」
たぶん何かを伝えようとしているのは分かる、だがその言葉までは分からない。一体何がしたいんだ? こっちは寝起きで頭も回らないってのに、いい加減にしろよ。
「だ~か~ら、その姿の時には何言ってんのか分かんねぇんだから吠えんな、やかましい」
「わうあ! うぁん!」
「っつ! もう何なんだよ! 分かんねぇって言ってんだろ!」
思わず俺が怒鳴りつけると、ロウヤの耳がしゅんと下がった。ちゃんと元に戻れば普通に会話できるんだから、その姿で会話をしようとする意味が分からん。
ベッドからのそりと這い出て、放り投げられたナイフを拾う。ホント何なんだ……
「ほら来いよ」
「ううう……」
「何だよ、来ないのか? いつもは止めろって言ってもべろべろ舐め回す癖に」
何を躊躇うのか、ロウヤがじとりとした瞳をこちらへと向ける。やれやれ……と思って、再び腕にナイフをあてがうと、今度は思い切りよく押し倒されナイフが何処かへ飛んで行った。
「ちょ……! お前何なんだよっ!」
「うぁう! わうう!」
首を振るようにしてロウヤが俺を抑え込む。獣人サイズではない彼だがその姿の時も大型犬程度の大きさの彼に伸し掛かられると俺も身動きが取れなくなる。ったく、本当に何がしたいんだかさっぱり分からん!
「だからそれじゃ分からないって何度も言ってるだろう! くどい!!」
「ううぅ……おんっ!」
一声鳴いてロウヤが俺の顔中を舐め回し始めた。ちょ、お前、よだれ……
「っ、こらっ! やめって、ロウヤ……むぐっ」
鼻面を口の中へ突っ込まれ、そのまま口の中にまで舌が入り込んできたのだが、さすがに狼とディープキスはいただけない。やりたい放題にも程がある。
「んむっ、んんんっ!」
どうにか渾身の力でロウヤを払いのける。
「お前どういうつもりだ! 何がしたいのかさっぱり分かんねぇんだよ! ふざけんなよ、クソがっ!!」
べたべたになった顔を腕で拭う。ったく、朝から気分悪いな。
俺は、苛々と彼を放置したままシャワー室へと向かう。こんなべたべたな状態では顔を洗わないとやってられない。
「うぁう……」
「うるさい、ロウヤ!」
「うぐぅっ……」
服を脱ぎ捨てシャワー室に入る。寝起きはそこまで悪くはないと思っていたのだが、温いシャワーを浴びていたら、少し頭が冷えてくる。ロウヤが何を言いたかったのかは分からないのだが、最初から頭ごなしに分からないと怒りをぶつけるのも大人げなかったか、と少し反省の気持ちが湧いてきた。
分からないなら分からないなりに少しは理解しようと努めてやるべきだったか……けれど、獣人に戻りさえすれば意思の疎通は図れる訳で、だったらいつも通りに血を舐めればいいのに、ロウヤはそれを拒否したのだ。
「あぁ、もうホント分かんねぇ……」
ここまで俺達うまくやって来たと思ってたんだけどな。こういう時に恋愛感情が入り込んでくると人間関係ってのは途端に複雑になる。こういう面倒くさいの嫌いなんだけどな。
「ダイキ……」
シャワー室の向こう側、大人しいロウヤの声が聞こえた。なんとなく気恥ずかしい俺はお湯を出したまま「なんだよ?」とぶっきらぼうに返事を返す。
「俺はダイキを傷付けるのはもう嫌だ」
「そんな事言ったってしょうがねぇだろ、それしか方法が……」
そこまで言いかけて、あれ? と首を傾げた。なんで俺達普通に喋ってんだ?
シャワーを止めて部屋の外を窺う、たぶんその扉の向こう側にロウヤがいる、だけど今日俺はまだロウヤに血をやってない。
タオルを掴んで腰回りを覆い、俺は慌てて扉を開けた。
「なんでお前獣人に戻ってんの?」
そこには所在なさげにロウヤが立ち、こちらも慌てたように視線を彷徨わせた。
「それがよく分からない。だけど、戻った。もしかしたら元に戻るのには血でなくてもいいのかもしれん」
「んん?」
「これもあくまで仮定なんだが、これはダイキの体液自体に何かしらの力があるのだと俺は考える。だからもしそれが確定すれば、もうお前を傷付ける必要がなくなる」
「俺の体液……」
髪から水滴が滴って床を濡らす。それにしても俺の体液にロウヤを元に戻す力があるってどういう事なんだろうな……そんでもって血じゃない体液って……
そこまで考えてはたと気付く、さっき俺は確かにこいつとキスをしたのだ、それも口の中に舌を突っ込まれたディープキス。
「もしかして唾液で戻った?」
「恐らく」
キスで戻るってお前は呪われた王子様か? はたまた眠りのお姫様か? それで言ったらそれを元に戻している俺自身も姫か王子かって感じだけど。
キスで狼から獣人の姿に戻るのなら俺ももう痛い思いはしなくて済む、だけどその為に毎回ディープキス? そりゃ初めてってほどウブじゃないが、それにしても……
「どうせキスするなら可愛い女の子がいい」
「つっ……分かった」
そう言うが早いかロウヤの姿が美鈴の姿に変わる。
「これでいいか?」
「お前はいいと思うのか? 美鈴は俺の妹だぞ? 常識的に考えてそれはないだろ?」
「ダイキはわがままだ!」
「それ以前の問題だろ、他にバリエーションないのかよ?」
「俺は今まで人とほとんど関わってこなかった、化けられるほど知っている人がいない」
要するにロウヤは知ってる人間にしか化けられないのか、使えるかと思いきや意外と使えない魔法だったな……なんてぼんやり思っていたら、ロウヤが「だったらこれでいいか?」と、またあの美形の姿に変化する。まぁ、これなら許容範囲かなぁ。
俺が「いいんじゃね?」と返事を返すとロウヤは少し悔しそうに「分かった」と頷いた。
「これから俺はこの姿でいる事にする、だから元に戻りそうになったらキスしてくれるな?」
「あぁ、そういう事か……」
まぁ、この顔は好みだし、痛い思いをする事がなくなるならそれでもいいか。
俺が「分かった」と頷くと、少しだけ複雑そうな表情のロウヤは「ありがとう」と、そう言った。
「んんぅ、んっ~~っ……もぅ、いい加減にしろ!」
俺は目の前でにやりと笑った男の頭を叩く。俺の唇を執拗に食んでいたその男は「しょうがないだろ、こうしないと俺は何も出来ない狼に戻っちまうんだから」と口では不平を述べるが、その表情は楽し気で、こいつ絶対この状況を楽しんでやがると……俺は眉を顰めた。
目の前に立つのは『人』の姿の男、だが実はそれは獣人ロウヤの仮の姿だったりする。何故俺達がこんな事になっているのかと言えば話は数日前にまで遡る。
たびたび獣人の姿から狼の姿に戻ってしまうロウヤ、その原因はよく分からないのだが、どうやら俺にはそんな彼を獣人に戻す力が備わっていたらしい。 そして、その方法と言うのが彼に俺の体液を分け与えるという方法だった。
最初は俺の血を舐めて元に戻っていた彼だったのだが、毎度毎度腕を傷付け、血を舐められる俺の方はたまった物ではない、どうにか他に方法は……と模索している中で見付けたのがこの方法『キス』だった。
血でないと駄目なのかと思っていたら、どうやら俺の体液なら何でも良かったらしく、こうして現在俺は彼に唾液を分け与えていた訳なのだが、これもこれでどうかと思うのだ。
しかも唾液だと血よりも元に戻ってられる時間が短いんだよ、だから俺達はこうやって毎日頻繁にキスする羽目に陥っている。なんてこった!
「ダイキが嫌だって言うからわざわざ人の姿にまで化けてるのに、わがままだな」
「俺は可愛い女の子が良いって言ったのに、化けれないくせによく言う!」
「しょうがないだろっ! 人なんて今までほぼ見た事ないんだから! 見本があれば俺だって化けれる!」
ロウヤはそう言って少し不機嫌そうに髪を掻き上げるのだが、その姿はすらりと長身の超絶美形だ。どうやらその姿は自分の母親を模した姿らしく、美形なのだが男らしすぎる。どういう事だ、こいつの母親は女なんじゃないのか? あ……そういえば、こいつの世界は人なら男でも妊娠する世界だったわ、という事はこいつの母親も男なのかもな、そういえば獣人顔負けの美丈夫とかなんとか言ってたの聞いたわ。あ~……
「それにしても人いないな……」
俺は辺りを見回して溜息を零す。俺達は最初に目覚めた森を抜け出し、現在人通りのない道路を歩いている。ちなみにコンクリート道路、慣れ親しんだ俺の世界のコンクリート、もうとっくに俺の暮らしていた県の隣県××県に入っているし、普通に人里に出ても不思議ではないのだが、どうもちょっと様子がおかしい。
時々見かける道の表札はやはりどう見ても日本語で、ここが日本国内なのは間違いないっぽい。だがどれだけ歩いても誰にも遭遇しないというのはどう考えてもおかしいと思うのだ。時々建物のある場所もあるのだが、そのほとんどが廃墟で土地は荒れ放題に荒れている。
日本に果たしてこんな場所があるだろうか? いや、ないとも言い切れないけれど。
何にせよスマホが壊れているのが何より痛い、情報収集しようにも使えないのだからもうどうしようもない。今がいつで、ここがどの辺なのか、その情報を手にする術がない。本当に困った。
ちなみにロウヤが人の姿に化けているのは、ここが日本だと分かったからというのもある。さすがにその辺の道をあんなデカい獣人が闊歩していたら化け物だと思われるのは必至だからな。
どうせキスをするのなら可愛い女の子が良いという俺の要望を彼は聞いてはくれなかったのだが、それでも人の姿になっているだけまだマシ……いや、キスするなら獣人の姿の方が気持ち的には楽なのかな。犬に噛まれたと思って忘れろってか、もう忘れられる回数じゃねぇけども。
俺がちらりと横目でロウヤを見やると彼はそれに気付いてにかっと笑う。本当に顔面の無駄遣いというか、美形はそんな子供みたいな笑い方しない方がいいと思う。もういっそ狼の姿のままでいてくれたら俺の心も休まるのだけど、こいつが狼のままだと各種魔法が使えないのでそれもそれで不便なんだよなぁ。
あぁ~あ、俺も魔法が使えたらいいのに。
ロウヤは完全に俺に懐ききっている、というか、どうやら俺はこいつに惚れられているらしい。色々ごちゃごちゃあった後、しばらくの間気まずい空気が漂って、それ以来ロウヤはあまりそう言った事を口にはしないが俺への好意はあからさまだ。
そして、俺の方はといえば『よく分からない』というのが正直な所。別に嫌いじゃないんだが、恋愛対象としては首を傾げる。
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恐らくロウヤは俺の事を抱きたいと思っているだろうし、自分の嫁にしたいと思っていると思うのだが、俺にはそれがしっくりこない。だったら逆ならいいのか? という話になるのだが、正直『人』の姿のロウヤは好みの顔だが獣人ロウヤはペットのような感覚で恋とか愛とかそういうんじゃない気がするんだよなぁ。
「なに? ダイキ?」
俺の視線に気付いたのかロウヤがにぱっと笑みを見せた。彼の尻にぶんぶん振られる尻尾が見えるようだよ。
「いや、なんでもない……それよりもさっきからまたこっちを覗いてる奴がいるな」
「あぁ、そうだな。備蓄量的には今は別に狩らなくてもいいけど、どうしよっか。蓄えは多い方が良いって言うなら狩ってくるけど」
ロウヤの収納魔術はとても便利だ。荷物は何でもかんでも彼専用の収納空間に放り込む事が出来るし、食べ物などに関しては冷蔵庫のような役割もはたして腐らないようにちゃんと保存もしてくれる。
これがさほど役に立たない魔法だなんて一体誰が言ったのだろうと思うほどに、その収納魔法は便利な代物だった。お陰で俺達はこれと言った荷物を持たずに身軽に旅が出来ている。寝る時は雨風しのげるテントの中だし、はっきり言ってサバイバルと言うには快適過ぎる旅である。
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ところで、ここ最近俺が気付いた事、魔物は種類によって肉質が異なる。翼の生えたモノは鶏肉のような味わいだし、その辺を転がっているようなのは豚肉に近い。どうせなら、どの魔物が美味しいのか吟味してみたいところだ。
森の中を彷徨っていたお陰で野草という名の食料は十分に確保してある、調味料は元々ロウヤの四次元ポケットの中に入っていたのでそこそこ満足な食生活だ。
それでも調味料は使えば減っていくもので、そろそろ何処かで調達したい所ではある。
現在ストックされているのは鶏肉系の魔物肉、そして俺は牛が喰いたい。
「いつものあの変な鳥みたいなのならもういらない。他のだったらちょっと味見くらいしたいかな」
「そっか、分かった行ってくる!」
ロウヤはやはりにぱっと笑って、何事か唱えると身体がむくむくと膨らんでいく。言ってしまえば狼男のように身体が人から獣人の姿に変化していくんだよな。最初は驚いたし、今でもすごいなと思うのだが、そのメタモルフォーゼはまるでテレビアニメでも見ているようだ。
「っっ……! ひぃぃ、化け物っっ!!」
突然上がった叫び声、耳に届いたその悲鳴ははっきり日本語で俺は驚く。
「え!? 人!?」
「うわぁぁ、ひぃぃ……」
声の主は慌てふためいたように踵を返し逃げ出そうとしたのだが、それよりも早くロウヤがその首根っこを捕まえた。
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甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
欲にまみれた楽しい冒険者生活
小狸日
BL
大量の魔獣によって国が襲われていた。
最後の手段として行った召喚の儀式。
儀式に巻き込まれ、別世界に迷い込んだ拓。
剣と魔法の世界で、魔法が使える様になった拓は冒険者となり、
鍛えられた体、体、身体の逞しい漢達の中で欲望まみれて生きていく。
マッチョ、ガチムチな男の絡みが多く出て来る予定です。
苦手な方はご注意ください。
触手生物に溺愛されていたら、氷の騎士様(天然)の心を掴んでしまいました?
雪 いつき
BL
仕事帰りにマンホールに落ちた森川 碧葉(もりかわ あおば)は、気付けばヌメヌメの触手生物に宙吊りにされていた。
「ちょっとそこのお兄さん! 助けて!」
通りすがりの銀髪美青年に助けを求めたことから、回らなくてもいい運命の歯車が回り始めてしまう。
異世界からきた聖女……ではなく聖者として、神聖力を目覚めさせるためにドラゴン討伐へと向かうことに。王様は胡散臭い。討伐仲間の騎士様たちはいい奴。そして触手生物には、愛されすぎて喘がされる日々。
どうしてこんなに触手生物に愛されるのか。ピィピィ鳴いて懐く触手が、ちょっと可愛い……?
更には国家的に深刻な問題まで起こってしまって……。異世界に来たなら悠々自適に過ごしたかったのに!
異色の触手と氷の(天然)騎士様に溺愛されすぎる生活が、今、始まる―――
※昔書いていたものを加筆修正して、小説家になろうサイト様にも上げているお話です。
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