僕のもふもふ異世界生活(仮)

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番外編:友達のその先へ

指輪が欲しい

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 僕は職についていない。言ってしまえば「家事手伝い」というやつだ。この獣人世界では「人」は子供を生むために生かされているような所があって、人が就ける職というのがあまりないのだ。
 僕は半分獣人のようなものだから、職を探そうと思えば探せない事もなかったのだけど、もうずっと昔からグレイのお嫁さんになるって決めていたから就職活動はしなかった。
 僕が生まれた頃は僕みたいな「人」がほとんどで、愛されるためだけに「人」は存在していたのだけど、最近はそんな情勢も少し変わってきている。
 というのも中央都市セントラルシティから解放された人は大陸全土に自由を求め一気に出て行ったものだから、あちこちで社会に変革が起きたんだよね。それと同時に起きたのが「人」の人口爆発。
 元々「人」はとても繁殖力が高く、その一方で「獣人」はとても繁殖力が低かった。それでも経済が普通に回っていたのは人が一か所で暮らしていた事と、獣人の寿命がとても長くて人口が減っていかなかったからなんだ。
 だけど、ある時事件が起こってこの世界の獣人の数は激減、代わりに中央都市から解放された人々は自由に子供を生んで一気に人口増加、今では完全に人口割合が逆転してしまったのだとか。
 そんな訳で今まで獣人達が人を養っていくという社会だったのが人口逆転によって社会は変革を余儀なくされた。
 元々獣人は人と番う事でしか子を成せない、けれど人は人同士で子を成せる、現在ではそんな人だけのコミュニティが各地に出来上がっているという話もあって人は自分達の食いぶちを稼ぐために働かざるを得なくなった、だから最近は人の社会進出も活発化してきてるんだよね。
 まぁ、それでも人は人とだけ暮らすより、獣人と番った方が生活が安定するので、数の減った獣人達は人からモテモテだ。お金持ちな獣人は最近では何人もの人と番って侍らせている者もいるのだとか聞いている。
 そんな社会で僕の恋人であるグレイは稼ぎも安定しているし、見た目も若くて格好いいのだ、そんな彼が人にモテない訳もなく僕はいつだって気が気じゃない。

「あのっ、もし良かったら私とお付き合いしていただけませんか!?」

 今日も今日とてグレイはモテる。街の自警隊員として働く彼は、最近とても増えている「人」が巻き込まれる事件現場にかり出される事も多いのだとか。
 獣人よりも小さく非力な「人」は丈夫さでも獣人には遥かに劣る、事件に巻き込まれ怖い思いをした人を颯爽と助けに来る自警団はほっといてもそりゃあもうモテるらしい。
 そりゃあね、まるでヒーローみたいに自分を助けに来てくれる王子様なんて格好いいに決まってる。おかげで不埒な獣人が番相手を求めて自警団に入団希望なんて事もよくあるらしくて、最近は入団には厳しい試験があるらしいよ。

「ごめんね、グレイは僕の恋人だから!」

 僕はグレイの腕に抱きついて色目を使う人を牽制して追い払う。もうこんなの日常茶飯事だ。
 僕に牽制された人は「そうですか」と悲しそうな表情で名残惜しそうに去って行く。そんな顔をされると少し心が痛まないでもないけど、僕はグレイを譲る気ないから。
 まぁ、今日みたいにすぐに引き下がってくれる人ならいい方で、中には「それでもいい、浮気相手でも構わない」みたいにグイグイくる人もいるから本当に油断ならないんだよね。

「ミオ、お前はまたこんな所で何してる?」
「恋人の浮気現場を抑えてましたよ、ホント相変らずよくモテるよね」
「俺は浮気なんてしない」

 はいはい分かってるよ、グレイは浮気なんてしない。言ってしまえばそこまでの甲斐性もない朴念仁だからね。それでもモテまくる恋人が他の人から粉をかけられる姿なんて見ていていい気がしない僕の気持ちも察して欲しい。

「家に居たくないから、グレイを迎えに来たんだよ、悪い?」
「別に悪くはないが、一人でいたら危ないんだぞ。それでなくてもミオは可愛いんだから」

 さらっと僕のこと可愛いとか言った! 普段朴念仁のくせに、そういう事はさらっと言うの反則だよね。

「だったら早く僕をグレイだけのものにしてよ」
「お前は既に俺だけのものだろう?」
「うぅ……」

 僕はグレイの言葉に顔が赤くなるのを感じる。
 そうだけど、そうじゃない! そういう独占欲は隠さないくせに、いつまでも僕に手を出さないの何でなのさって言ってんだよ!

「グレイの馬鹿!」
「あ? 何でだ?」

 全く意味が分からないという表情のグレイに僕は両腕を差し出した。それは幼い頃からの僕の習慣で、グレイは何も言わず普通に僕を抱き上げる。
 獣人に比べて体格の小さな人の移動手段は獣人に抱かれてという事が昔は多かったらしくて、番相手のいる獣人は大体番相手を抱いている。それは昔は人自体の数が少なく攫われる危険性が高かったせいでもあるのだけど、今となっては獣人の数より人の数の方が多いのだから、その習慣も段々に廃れつつある。
 だけどそれでも僕はグレイに腕を差し出すのをやめる気はない。だって僕を抱き上げるこの腕は僕だけのもので、他の誰にも譲る気はないのだから。


  ※ ※ ※

「そういえば、ミオ。誕生日プレゼントは何が欲しい?」

 間もなく僕の誕生日という頃グレイが僕に問う。それ僕に聞いちゃうんだ? 確かに適当なプレゼントを選ばれるより本人に聞いてくれた方が親切ではあるけれど、僕は僕を想ってグレイが選んでくれた物なら何だって嬉しいんだけどな。
 僕はグレイの膝に入り込んで「ん~じゃあ、指輪」と、掌をグレイの前に差し出した。

「指輪? ミオはアクセサリーになんて興味ないだろう?」

 まぁ、確かにね。僕は基本的にアクセサリーなんて付けない。自分の番相手の財力を誇るみたいにジャラジャラ付けてる人を見かける事もあるけど、僕はそれを悪趣味だなとしか思わないし、自分がしたいとも思わない。
 だから僕が欲しいのはそういうのじゃないんだ、僕が欲しいのはグレイからの束縛の証。

「ママが昔住んでたとこでは好きな人には指輪を贈るんだって、だから僕は指輪が欲しい」

 ママの指にはあまり目立たない細い指輪が嵌っている。それは装飾品というほど華美ではなく、毎日つけていても違和感もなくママの指で煌めいている。
 それはパパがママに贈ったもので、大事なものだとママは言った。だから僕はそんな指輪をグレイから僕に贈って欲しいんだ。

「指輪か……」

 グレイが考え込んでいる。僕はグレイの膝の中でグレイの大きな手に自分の手を重ねて「どうせならお揃いにしない?」と提案してみる。

「お互いの指輪にお互いの名前彫ったりしてさ、そういうの素敵だと思わない?」
「ミオはそういうのが好きか?」
「うん、好き」

 だってそうしたらグレイはその指輪を見るたびに僕のことを思い出すだろう? それは僕だって同じで、見るたびにグレイの存在を感じられて嬉しい。

「分かった、指輪だな」

 グレイはこくりと頷いて僕の頭に自分の顎を乗せてぐりぐりと僕を撫で回す、まぁ、それでもそれ以上の事はしてこないんだけど。

「あと少し」
「ん?」
「前から何度も言っているが誕生日にはお前の家に行くから、ちゃんと両親に話を通しておけよ。準備も忘れずにな」
「うん?」

 ? 話を通すってなに? パパとママにグレイが来る事を伝えておけばいいのかな? それに準備? 誕生日パーティーの準備を自分でしろって? この歳で家で誕生パーティーってどうなのさ? 僕はやっぱり誕生日には二人きりで過ごしたいんだけどなぁ……

「グレイ本当に家来るの? うち、チビ達滅茶苦茶喧しいよ?」
「知ってる。それでもしっかり筋は通さなければな」

 筋? グレイの言ってる意味が分からない。まぁ、来るというのだから仕方がない、僕も久しぶりの家族団らんだ。たぶんママは張り切ってパーティーの準備をしてくれる事だろう。
 嗚呼、だけどホント我が家はうるさいんだよ、気が重いなぁ。

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