童貞のまま40を超えた僕が魔法使いから○○になった話

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第二章

試験を受ける事になりました

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 僕の脳内マップを頼りに、アイテムと収集・討伐依頼を回収しながら歩く事数時間、僕達は大きな扉の前に立っていた。
 その扉は押しても引いても開かなくて、何か仕掛けがあるのかと思ったら「まだ前の挑戦者が戦闘中なんだろ」とアランが言った。

「他の人が戦闘してると入れないんですか?」
「ここの階層はそうらしいな。ガイドブックにも書いてある」

 ガイドブック、それはこのダンジョン城に入る時、初めての挑戦だと告げたら転移魔法陣ゲートの前で渡された物だ。
 それにはこのダンジョンの中での注意事項などが記されていて、本当にこのダンジョン城は街の観光資源なのだなと改めて実感させられる。
 けれど、そのガイドブックに記載されている諸々の情報も20階層までで、それより下はスタッフもおらず、何か事故があって怪我をしても自己責任になるらしい。要するに20階層まではスタッフが常駐していて、困ったら助けてもらえるシステムになっているみたいだ。商業ダンジョン、面白いな。

「ここのダンジョンボスを倒したら討伐証明書を発行してもらえるらしいぞ。ん? 単独討伐でEランク冒険者資格授与って書いてあるぞ。これ、冒険者ギルド公認なのか?」
「はいはいはい、そこの迷える冒険者の皆さん、何かお困りごとですか!?」

 唐突にハイテンションに声をかけられ僕達は驚いて声のした方を向く。そこに立っていたのは満面の笑みを浮かべた一人の男性。見た目はひょろりとしていて、ビン底眼鏡が特徴的なその男性はあまりにもこの場には不似合いで、僕は思わず怪訝な表情してしまう。
 とっさにロイドが僕の前に出てきて「おっさん、なんか用!?」と喧嘩腰に答えたのだけど、そんな僕達を前に彼は「何かお困りごとがあるのならばと声をかけただけですよ。私はこのダンジョンのガイドを務めておりますスラッパーと申します」と、笑みを崩さずそう告げた。

「ガイド?」
「はい。そのガイドブックを読んでいるという事は、お客様はダンジョン城初心者の方ですよね、何か分からない事がありましたらお答えいたしますよ」

「このダンジョンはガイドまで常駐しているのですか、どこまでも至れり尽くせりですね」
「これもたくさんの方々に当ダンジョン城を楽しんでいただくための取り組みでございます。ボス戦前にアイテムが不足しているようでしたら販売もございますよ」

 ニコニコと告げるスラッパー、この街の人は商魂逞しいとは思っていたけど、ここまでするのかと僕は思わず苦笑してしまう。

「購入は間に合ってるが買取もしてるのか?」
「それは勿論! 何かアイテムをお持ちですか?」
「落ちてたアイテムで用途が分からない物を引き取って欲しいんだが」

 そう言ってアランが差し出したのは中身が分からない薬瓶。確かに落ちてる薬なんて中身が分からなきゃ胡散臭くて利用できないもんな。
 僕はこっそり鑑定スキルでその薬の中身を確認してたりするんだけど、回復薬にしても解毒薬にしてもあんまり効果の期待できない粗悪品だったからたぶん高値はつかないだろう。
 案の定、薬瓶を見たスラッパーの査定額は薬瓶5本纏めて銅貨一枚だったので、まぁ、そんなものかと思うのだが、拾った物でお金が稼げるのだから願ったり叶ったりだ。

「良いダンジョンアイテムがありましたら、また是非お売りくださいね」

 胡散臭い薬瓶でも商売的には全く構わないのか、スラッパーはご機嫌だ。たぶん、こうやって仕入れて少し色を付けて売ったりするんだろうな。なにせ一度ダンジョンに入ってしまったら外に出るまではこういった形でしかアイテム補充ができないのだからいざとなったら粗悪品でも買うしかない。
 これは彼ら的にも良い商売なのかもしれないな。

「さて、他に何かお困りごとはございませんか? そういえば先程資格がどうとか言っているのが聞こえた気もするのですが」
「ああ、それな。ガイドブックにこの階層のダンジョンボスを単独討伐でEランク資格授与となっているんだが、これは事前に冒険者ギルドに申請しなくても大丈夫なのか?」
「はい。討伐の暁には私が責任をもって討伐証明書を発行させていただきますので、その証明書を持ってギルドに提出していただければ問題ございませんよ」

 おお、そうなんだ。という事はこのスラッパーさんは昇格試験の試験官のようなものなのかな? もしかして冒険者ギルドの関係者か?

「そうか、ちょうどこの二人がFランクなんだが……どうだ、挑戦してみるか?」
「アランはまたそう行き当たりばったりな事を……まぁ、止めませんけどね。恐らくタケルなら既にEランクの魔物も余裕で倒せるでしょうし」

 ロイドの存在は軽く無視してるのが気にならないでもないが意外な事にルーファウスが反対しない。アランが僕とロイドを見やって「どうする?」と問うてくる。なんの事前知識もないまま来てしまったけれど、試験か……

「俺は構わないけど、タケルは?」
「えっと、もし万が一やられそうな時には助けてくれます?」
「それは勿論。当ダンジョンは20階層までは冒険者の皆様もお客様とみなし安心安全をモットーに運営させていただいておりますので、その辺は安心していただいて大丈夫ですよ」

 どこまでも商売! いや、ここまで徹底してくれたら逆に安心感半端ないな。下手に事故でも起こったら商売あがったりだから、全力で助けてくれそうだ。

「それじゃあ、お願いします」

 僕が頷いた事でその場でスラッパーの説明が始まる。この階層のダンジョンボスは骸骨騎士スケルトンナイト、同時に屍人グールも数体同時に出てくるらしい。内容は至ってシンプルで、それを全部倒せば試験合格だ。

「余裕ですね」

 試験を受ける僕を差し置いて何故かルーファウスが既に僕の合格を確信しているような表情だ。ダンジョン内を歩いていて屍人は何体か遭遇したので、そこは何とかなりそうな気がするけど、骸骨騎士なんて戦った事ないし過大評価されても困るんだけどな。

「ですが……」

 そう言って、ルーファウスは屈むようにして僕の耳元に唇を寄せる。僕はそんなルーファウスの行動にびくりと身体を硬直させた。

「骸骨騎士はタケルの回復魔法で一撃で倒せますが、今回は使わない方が良さそうです」
「え、そうなんですか?」

 一撃で倒せると言われた事にもビックリだが、それは使わない方がいいと言われた事にも僕は首を傾げる。

「あのスラッパーという方、ただ者ではありません。私の目から見ても全く隙が見当たらない。彼は恐らく商売人ではなく高ランクの冒険者です。聖魔法を使う冒険者はとても少ない、目を付けられると厄介です」

 !? え? どこからどう見てもただの商売人にしか見えない彼がそんな人物だとは思ってもいなくて僕は戸惑う。スラッパーは相変らず商売人然としてニコニコと愛想のいい笑みを浮かべているのだけれど、これでいて本当に冒険者なのか……? でも、Aランク冒険者のルーファウスの言う事だから信憑性は高いな。

「アンデット系の魔物は火魔法でも対処可能なので、今回はそれで倒しましょう」

 うわぁ、縛りプレイか! 火魔法なんてまだ火球ファイアーボールと、道々教えてもらった火炎放射くらいなもので、それだって完全マスターは出来てないのに!

「僕、自信無くなってきました……」
「何言ってるんですか、私は師匠としてあなたに勝てない勝負は挑ませません。タケルならできると分かっているので許可したのです。自信を持って行ってきなさい」
「う、うん。頑張る」

 僕とルーファウスが会話をしている横ではアランがロイドに声をかけている。この旅の間、僕がルーファウスに魔術を教わっている一方でロイドの方はアランが師匠のような立ち位置になっていて、指導を受け戦闘術を学んでいる。
 ロイドは剣士から転向した訳ではないので基本的には剣で戦うのだが、そこに体術や少しの魔術も加えて戦闘のバリエーションは出会った当初に比べてずいぶんと広がっているように見える。
 ロイドもアランからアドバイスを貰ったのだろう、拳を握って頷いて「俺から先に行っていいか?」と言うので、僕はそれに頷いた。

「年長のお二人はお子様たちの保護者でしたか。見たところランクも高そうですが、ダンジョン攻略に興味がおありで?」
「私は弟子のスキルアップに付き合っているだけですので、弟子の成長次第ですね」

 スラッパーの問いかけに相変らずルーファウスはにべもない。

「はは、俺は時間があったら挑戦したいと思っているぞ。このダンジョンの核はまだ見付かっていないんだろう?」
「ええ、ダンジョンも大きく成長していくばかりで管理に手こずっている所です。これ以上のダンジョンの拡張は望むところではありませんので成長抑制の為にも是非攻略にチャレンジしてみてください」

 どこまでも商売にしてしまう彼等を商魂逞しいと思っていたが、やはりダンジョンの拡大には頭を抱えているようで、スラッパーは困ったような笑みを浮かべてそう言った。ダンジョンの攻略かぁ。確か現在は50階層まであるんだったか? なかなか先は長そうだ。

「おや、扉が開きましたね。それでは中へお進みください」

 スラッパーに促され僕達は扉の向こう側を覗き込む。そこには大きな闘技場ような場所が広がっていた。
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