童貞のまま40を超えた僕が魔法使いから○○になった話

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第四章

素直じゃないなぁ

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 オロチが何故か言葉を喋った。魔物の中だけで生きてきたオロチが何故僕達の言葉を覚えようと思ったのかが分からなくてオロチに聞いてみると『ただの気まぐれだ』という返事が返ってきた。

『そもそもお前等が俺様の言葉を解さないのが悪い! だから俺様がお前等の言葉を習得してやっているのだ、ありがたく思え!』

 と、とても上からモノ申されたのだが、要は自分も皆と話してみたかったというだけの話なのだろう、素直じゃないな。
 ちなみに、言葉は魔物の楽園にいる時に古老から少しずつ発声法を習っていたらしい。
 オロチは僕にだけ声をかけてくる時は僕のことを『あるじ』と呼ぶけど、声に出す時には『タケル』と呼ぶ。僕は別にどちらでも構わないのだけど、皆の前で僕のことを主と呼ぶのは彼の矜持が許さないみたい。ドラゴンはどこまでいってもプライドが高い生き物なんだな。

「タケル、メシ、マダ、か?」
「オロチはそればっかりだね」
「オレ、シゴト、ナイ、クウ、ネル」

 オロチの仕事は食べて寝るだけだって? いや、この場合は仕事がないから食べる事と寝る事しかできないとでも言っているのか? 単語だけだとまだ意思の疎通は難しいな。

「僕と話す時はドラゴン語でも大丈夫だよ」
『ああ、そう言えばそうだったな。というか、主は何故もっと俺様を従魔として有効活用しない? 何処に行くのか知らないが、こんなちんたらした乗り物に揺られておらずとも俺様の背に乗って行けばひとっ飛びだろうに』
「それは確かにそうなんだけど……」

 オロチの背に乗せてもらえば、この世界の何処へだってあっという間に辿り着ける気がする。けれどそんな事をすればそれだけで、世界各地でオロチの存在は大きく注目されるだろう。ついでに言うなら、そのオロチを従魔にしている僕の存在そのものがたくさんの人に注目されてしまう訳で、それはできれば避けたいところ。

「人の世界って意外と面倒くさいんだよ」
『まぁ、主を見ていればその辺は俺様でも察する事はできる。他の人間の事までは分からんが、主は周りにばかり気を遣って自分の事は二の次だからな』
「え!? 僕ってそんなかな?」
『俺達魔物は基本的に仲間意識というのがとても希薄だ。同種族で群れを成し生活をしている小物もいるが、それは己の生活が己一人では成り立たないと分かっているから群れているのであって、皆が仲良くと暮らしている訳ではない。己が危機に陥れば仲間が残っていても見捨てて逃げるし、不要とあらば殺して食らう、けれどどうやら主にはそれができないようだ』

 あ~確かに僕にはそういう生き方はできないな。人と魔物の感性が違うのも勿論だけど困っている人がいれば出来る限り助けたいし、僕にできる事ならそれが自分に不利益な事でも、場合によっては受け入れてしまうだろうな……

『現在俺様は主の従魔であるからな、己を邪魔する者が現れたら俺様に排除しろと一言命ずるだけでだけでいいはずなのに、それすらしようとせずに俺様を遊ばせておくのだから、こちらとしても拍子抜けだ。もっとこき使われることを覚悟して従魔となったのにこれでは俺様の無駄遣いだ、もっと俺様に仕事を寄越せ、退屈で仕方がない』

 ワーカホリック!

『なんなら今から街のひとつでも壊滅させてくるか?』

 物騒だから止めて!

「僕はそんな事をさせるためにオロチを従魔にした訳じゃないからね。最初から言ってるけど、僕は君と友達になりたいだけで、屈服させて従わせたい訳じゃない。従魔にしたのだって、その方がオロチの安全の為だって言われたから契約しただけで、こうやって仲良くしてくれるなら従魔契約だってしなくてもいいくらいなんだから」
『むぅ。主は本当に変わり者だな』
「それで言うならオロチだって充分変わり者だと僕は思うけど? オロチが言葉を覚えようとしてくれてるのって、こっちの世界に触れてみて、もっと色んな人と交流がしてみたいと思ったからなんじゃないの?」
『なっ! そんな訳あるか! 俺様はあいつ等が俺様の言葉を解さないから仕方なく……』
「はいはい、そうだよね。仕方なく僕達の言葉を喋ろうと頑張ってくれてるんだよね、ありがとう。オロチは頑張り屋さんだ」

 ぐぬぅ、と苦虫を嚙み潰したよう顔でオロチはふいっとそっぽを向く。オロチの真意はどうであれ、僕達ともっと交流を持とうとしてくれている彼のその姿勢が僕は嬉しい。

『まぁ、何はともあれ! 仕事がないのなら飯と酒! それが無いのなら俺は寝る!』

 そう言って馬車の荷台にごろりと横になったオロチは、たぶん寝たふりだ。恐らく本当にここに居るのが嫌ならば僕に魔物の楽園へ返せと上から目線で命令してくるだろし、少なからずオロチがこちらの世界に興味を惹かれているのは分かっている。

「今僕達が向かっている街は食べ物が美味しいので有名なんだ。オロチも一緒に美味しい物食べて楽しもうな」

 僕がかけた言葉にオロチは返事をしなかったけれど、そんな彼の尻尾が嬉しそうに揺れていたので、僕はそれを返事と受け取った。

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