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第六章
エルフの生態
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魔王を目指して魔王城までやって来たら、いつの間にか見知らぬ森へと迷い込んでいた僕は、現在檻の中で小汚いおじさんエルフに詰め寄られている。
「あの、すみません、僕が知っている事は何でも教えますので、あまり近寄らないでもらえます?」
目の前のおじさんエルフは最初から小汚いと思っていたのだけれど、近寄ると更にすえたような匂いがする。たぶんはっきりと汚いのだ。
エルフは美形で綺麗なものだと頭から信じていた僕は戸惑いを隠せない。
ルーファウスと共に生活をして数年、さすがに美形はトイレに行かないし何もしなくても良い匂いがするものだ、なんてお花畑な事は考えていないが、それにしても酷い。
「ああ、そういえば最近水浴びもしていなかったな。臭う?」
「まぁ、それなりに。洗浄魔法くらいここに居たって使えますよね?」
「洗浄魔法……俺、使えないんだよなぁ」
え? 嘘だろ? 確か洗浄は生活魔法で四属性魔術の適性がなくても、魔力が少しでもあれば使えるって聞いてたんだけど!?
ああ、でもそういえばこの世界に来た当初「洗浄魔法が使えない奴は洗濯の洗い場で水浴びだ」とアランに言われた事があったな……やはりどう頑張っても使えない人ってのは一定数いるって事か。
自分はこの世界に来てすぐに難なく使えるようになってしまったし、周りに洗浄魔法を使えない人はいなかった。魔力量の少ないアランでさえ使えていたから想定外すぎてビックリだ。
「洗浄!」
僕は問答無用でおじさんに洗浄魔法をかける。だって本当に臭いのだ、こんな狭い空間でこれは耐えられない。
僕の魔法発動と共におじさんの服の汚れは消え、髭面はそのままなのだけれど、ぺったりしていた髪の毛も少しふんわりと小綺麗になった。
まるで生ごみのような匂いだった体臭も消えて、僕はホッと息を吐く。
「おお! これは凄いな! 汚れがまるで最初から無かったみたいに消えたぞ!」
「それが洗浄魔法ですから」
「君はまだ幼いのに本当に凄い魔術師なんだな!」
もう幼くはないのだけれどな、と思いつつも1000歳オーバーのおじいちゃんから見たら13歳なんて赤ん坊同然なのだろうなと僕は苦笑する。
そもそもエルフの1300歳なんてまだ中年の域で、老人ではない可能性すらあるからおじいちゃん呼びも失礼かもしれない。
「僕なんか全然凄くないですよ、僕の師匠の方がもっと凄い魔術師ですし」
「君より更に上がいるのか! 人族っていうのは凄いな!」
「僕の師匠は人族じゃなくてエルフですよ」
「え?」
「あ、でも人族との間に生まれた人だからハーフエルフですけど」
またしてもおじさんは目を丸くして僕を見る。僕、何かそんなに驚くような事言ったかな?
「君のお師匠はハーフエルフなのに君に魔法を教えられるほどの魔術師なのか?」
ハーフエルフなのにって、どういう意味だ? エルフとハーフエルフの違いなんて寿命の長さが多少違うだけなんじゃないのか?
「僕の師匠は凄い魔術師ですよ。僕なんて足元にも及ばないような高位魔術を簡単に操ってますから」
僕の返答に何故かおじさんが少し考え込んでしまう。何故だ?
「それは君の師匠の母親がエルフ……いや、もしかしたらハイエルフだから、とかなのかな?」
「? 確か父親がハイエルフだと言っていましたよ」
「!?」
またしてもビックリ顔のおじさん。何でだ?
「ハイエルフの男が外で子作りなんてあり得ない、許される訳がない!」
いや、なんでだよ!? 全く意味が分からないんだけど!?
そういえばルーファウスはエルフの里が閉鎖的だと言っていた事があるような気がする。そんな閉鎖的な空気、更にハーフエルフは差別もされるような事を言っていたような? それに嫌気がさして一族から抜け出し、ただのルーファウスとして冒険者になったとか。
「君の師匠はあまり君にエルフの生態の話はしなかったようだね」
「そうですね、里は嫌いだと言っていました」
「さもありなん、と言った所か。女王の子だと言うならともかく、女王の僕でしかないはずの男が、外で作った子供など歓迎される訳がない」
女王……ここのエルフの集落のトップは女性なのか。だとしたら、少し事情が変わってくるような?
「確かルーファウスのいたエルフの里の族長は男性ですよ」
「ルーファウス、それが君の師匠の名か? そういえば、まだ君の名前も聞いていなかったな。俺の名はペリトス、君の名は?」
「僕の名前はタケルです」
「ふむ、タケル、君の情報は間違っている。エルフの社会は女性優位の社会だ、男が族長になる事なんてあり得ない」
今度は僕が絶句してしまう番だ、だって僕は確かにルーファウスにそう聞いたのだ。族長はルーファウスの伯父で、二人いるルーファウスの腹違いの兄の片方が族長の補佐に付いていると確かに聞いた。
「それはその集落によって違うのでは?」
「いや、違わない。そもそもエルフは数が少ない、この世界のエルフは全て元を辿れば同じ血脈で繋がっている、これは血に刻まれた本能のようなもので女性優位は覆らない」
えっと、そんなモノなのか? 僕はルーファウスからエルフの女王の話なんて聞いた事もないのだけど……
おじさん、もといペリトスさんは懇々と僕にエルフ社会の生態を語ってくれる。曰く、男性と女性は女王蜂と働き蜂のような関係性で、長を継ぐのも代々女性なのだそうだ。それというのもエルフというのは長命で、元々種の保存という観点からはとてもそう言った本能が弱いらしい。要するに性に対してとても淡白なのだそうだ。
それに加えて子を成すのは女性にしかできない、女性に気に入られなければ子を成す事もできないという力関係が働いて、集落の中では男性は女性の忠実な僕という上下関係が出来上がっているらしい。
まぁ、確かに長命な種であるエルフが子供をポコポコ無尽蔵に増やしていてはこの世はエルフで溢れてしまうし、そういう事もあるのだろう。
それに比べて他の種族は本能のままに子孫を増やし繫栄していくので、そういう意味でもエルフは他種族と価値観が合わず基本的には他種族とは交わらないように生活しているのだとか。
「それにエルフの中でもハイエルフの数は極端に少ないんだ、その優秀な血を残す為にハイエルフの男児は生まれた時から女王に囲われるようにして生活している事が多い。そもそも集落の外には出られないはずだ」
「そう、なんですか」
う~ん、そう断言されてしまうと僕は何も言えなくなってしまうな。そもそも僕は当事者ではないし、聞かされた話をそのまま語ったに過ぎないのだから。
「それにタケルの師匠はハーフエルフだと言うが、ハーフエルフは魔力量が少ないだろう? 魔術師にはなれないと……」
「ルーファウスの魔力量は僕より上でしたけど?」
まぁ、今現在の魔力量がどうなっているかまでは確認していないので分からないけれど、少なくとも僕がこの世界に来た当初は僕の魔力量よりルーファウスの魔力量の方が多かったはずだ。
「人族はエルフに比べて保有する魔力量が少ないと聞くが……」
「僕の魔力量、今は四万ありますよ。ルーファウスの魔力量は前に聞いた時には五万あると聞いてます」
「五万……化け物か」
化け物とは失礼な。魔術師としては割と普通、というか少し多い程度だと聞いているその数字、使えば使うほど魔力量は増えるという事だし(限界値はあるらしいけど)そんな風に言われるのは心外だ。
「そいつ、絶対ハーフエルフじゃないだろう? 父親がハイエルフとか言っていたが、そっちの血が濃く出たのか?」
「僕には詳しい事は分かりませんけど、そうなんじゃないですか? お姉さんはどちらかと言えば人に近かったって聞いてますし」
「そのハイエルフ、人との間に二人も子を儲けたのか!?」
「そうですね、エルフの本妻さんとの間にも二人子供がいるらしいので子沢山ですね」
「子供が四人!? そのハイエルフ、とんでもない種馬だな!」
言い方……
先程からペリトスさんはエルフは繁殖力が低いような事を言っていたのだけど、実際ルーファウスは四人兄弟の末っ子なんだよな。子供が多すぎるという事もないが、少ない訳でもないその数を知っているだけに首を傾げていたのだけど、ここでは女性優位で子供を作るから子供が増えていかないだけなのかもしれないな。
「それにしても、同じハーフエルフだってのにこの差、やっぱりハイエルフの血が入ってるのは大きいんだな」
ペリトスさんが息を吐きだすように大きく溜息を吐いた。あれ、これってもしかして?
「もしかしてペリトスさんもハーフエルフなんですか?」
「そう、母親がエルフで父親が人族、俺には弟が一人いるんだが、こっちは父親が下賜された元王配でなぁ、滅茶苦茶優秀な訳だ、もうこちとら肩身が狭いこと狭いこと。弟は時期王配に決定済みなもんだから、余計に肩身が狭く……はぁぁぁ」
またしても大きな溜息を吐くペリトスさん。なにやら御苦労がある様子だけれど、僕は一体どういう反応を返してあげればよいのやら……自分は一人っ子で、一人っ子には一人っ子なりの苦労もあったけれど、兄弟で優劣がはっきりしすぎているのも気苦労が絶えないのだろうなと想像はつく。
それにしても、王配って何だったか? 王の配偶者? この集落のトップは女王だとの事なので、ペリトスさんの弟は女王の婚約者という事か。
「兄弟仲が悪いんですか?」
「え? いや、それはない。何せ歳が離れすぎていてそもそも弟という感覚も乏しいくらいなんで俺自身は然程、なんだが周りが何かとうるさくてな。このまま俺自身が弟の足を引っ張るような存在にしかならないようなら今後は自分の身の振り方も考えないとなと考えている所だ」
兄として弟の迷惑になるようなら身を引こうなんて、彼は弟想いなんだなと少し兄弟愛に感動しかけた所で「一人で逃げ出そうなんて許さないからな、兄さん」と檻の外から声をかけられた。
声のした方に顔を向けてみれば、そこに居たのは先程の仏頂面の青年だ。確か次代様とか呼ばれていた人。
「おお、アル、迎えに来てくれたのか?」
「違う。そっちの小僧を連れて来いってフレデリカ様が言うから」
フレデリカ様……さっきもその名前聞いたな。彼は僕のことをその人に報告してくると言っていたから、その報告の結果「連れて来い」と言われたのだろう。
次代様……ペリトスさんには『アル』と呼ばれているので、それが彼の名前なのだろうけれど、そうかこの人が優秀過ぎると噂のペリトスさんの弟さんだったのか。
「兄さんは家の壁を破壊した事、そこでもうしばらく反省して」
次代様は冷たい瞳でにべもない。彼は最初から仏頂面で気難しい感じの人だけど、あまり兄の事を好いていない感じなのかと僕は思う。けれど「怪我とかしてないな? 夕飯は後で届ける」と続いた台詞でツンデレか!? と、心の中で思わず突っ込んでしまった。
「ありがと、アル~、俺は全然平気だから大丈夫。タケル、有意義な時間だった、また今度色んな話聞かせてな」
ペリトスさんはにへらと笑ってこちらに向かって手を振り、僕は次代様に連れられて檻の中から連れ出された。
「あの、すみません、僕が知っている事は何でも教えますので、あまり近寄らないでもらえます?」
目の前のおじさんエルフは最初から小汚いと思っていたのだけれど、近寄ると更にすえたような匂いがする。たぶんはっきりと汚いのだ。
エルフは美形で綺麗なものだと頭から信じていた僕は戸惑いを隠せない。
ルーファウスと共に生活をして数年、さすがに美形はトイレに行かないし何もしなくても良い匂いがするものだ、なんてお花畑な事は考えていないが、それにしても酷い。
「ああ、そういえば最近水浴びもしていなかったな。臭う?」
「まぁ、それなりに。洗浄魔法くらいここに居たって使えますよね?」
「洗浄魔法……俺、使えないんだよなぁ」
え? 嘘だろ? 確か洗浄は生活魔法で四属性魔術の適性がなくても、魔力が少しでもあれば使えるって聞いてたんだけど!?
ああ、でもそういえばこの世界に来た当初「洗浄魔法が使えない奴は洗濯の洗い場で水浴びだ」とアランに言われた事があったな……やはりどう頑張っても使えない人ってのは一定数いるって事か。
自分はこの世界に来てすぐに難なく使えるようになってしまったし、周りに洗浄魔法を使えない人はいなかった。魔力量の少ないアランでさえ使えていたから想定外すぎてビックリだ。
「洗浄!」
僕は問答無用でおじさんに洗浄魔法をかける。だって本当に臭いのだ、こんな狭い空間でこれは耐えられない。
僕の魔法発動と共におじさんの服の汚れは消え、髭面はそのままなのだけれど、ぺったりしていた髪の毛も少しふんわりと小綺麗になった。
まるで生ごみのような匂いだった体臭も消えて、僕はホッと息を吐く。
「おお! これは凄いな! 汚れがまるで最初から無かったみたいに消えたぞ!」
「それが洗浄魔法ですから」
「君はまだ幼いのに本当に凄い魔術師なんだな!」
もう幼くはないのだけれどな、と思いつつも1000歳オーバーのおじいちゃんから見たら13歳なんて赤ん坊同然なのだろうなと僕は苦笑する。
そもそもエルフの1300歳なんてまだ中年の域で、老人ではない可能性すらあるからおじいちゃん呼びも失礼かもしれない。
「僕なんか全然凄くないですよ、僕の師匠の方がもっと凄い魔術師ですし」
「君より更に上がいるのか! 人族っていうのは凄いな!」
「僕の師匠は人族じゃなくてエルフですよ」
「え?」
「あ、でも人族との間に生まれた人だからハーフエルフですけど」
またしてもおじさんは目を丸くして僕を見る。僕、何かそんなに驚くような事言ったかな?
「君のお師匠はハーフエルフなのに君に魔法を教えられるほどの魔術師なのか?」
ハーフエルフなのにって、どういう意味だ? エルフとハーフエルフの違いなんて寿命の長さが多少違うだけなんじゃないのか?
「僕の師匠は凄い魔術師ですよ。僕なんて足元にも及ばないような高位魔術を簡単に操ってますから」
僕の返答に何故かおじさんが少し考え込んでしまう。何故だ?
「それは君の師匠の母親がエルフ……いや、もしかしたらハイエルフだから、とかなのかな?」
「? 確か父親がハイエルフだと言っていましたよ」
「!?」
またしてもビックリ顔のおじさん。何でだ?
「ハイエルフの男が外で子作りなんてあり得ない、許される訳がない!」
いや、なんでだよ!? 全く意味が分からないんだけど!?
そういえばルーファウスはエルフの里が閉鎖的だと言っていた事があるような気がする。そんな閉鎖的な空気、更にハーフエルフは差別もされるような事を言っていたような? それに嫌気がさして一族から抜け出し、ただのルーファウスとして冒険者になったとか。
「君の師匠はあまり君にエルフの生態の話はしなかったようだね」
「そうですね、里は嫌いだと言っていました」
「さもありなん、と言った所か。女王の子だと言うならともかく、女王の僕でしかないはずの男が、外で作った子供など歓迎される訳がない」
女王……ここのエルフの集落のトップは女性なのか。だとしたら、少し事情が変わってくるような?
「確かルーファウスのいたエルフの里の族長は男性ですよ」
「ルーファウス、それが君の師匠の名か? そういえば、まだ君の名前も聞いていなかったな。俺の名はペリトス、君の名は?」
「僕の名前はタケルです」
「ふむ、タケル、君の情報は間違っている。エルフの社会は女性優位の社会だ、男が族長になる事なんてあり得ない」
今度は僕が絶句してしまう番だ、だって僕は確かにルーファウスにそう聞いたのだ。族長はルーファウスの伯父で、二人いるルーファウスの腹違いの兄の片方が族長の補佐に付いていると確かに聞いた。
「それはその集落によって違うのでは?」
「いや、違わない。そもそもエルフは数が少ない、この世界のエルフは全て元を辿れば同じ血脈で繋がっている、これは血に刻まれた本能のようなもので女性優位は覆らない」
えっと、そんなモノなのか? 僕はルーファウスからエルフの女王の話なんて聞いた事もないのだけど……
おじさん、もといペリトスさんは懇々と僕にエルフ社会の生態を語ってくれる。曰く、男性と女性は女王蜂と働き蜂のような関係性で、長を継ぐのも代々女性なのだそうだ。それというのもエルフというのは長命で、元々種の保存という観点からはとてもそう言った本能が弱いらしい。要するに性に対してとても淡白なのだそうだ。
それに加えて子を成すのは女性にしかできない、女性に気に入られなければ子を成す事もできないという力関係が働いて、集落の中では男性は女性の忠実な僕という上下関係が出来上がっているらしい。
まぁ、確かに長命な種であるエルフが子供をポコポコ無尽蔵に増やしていてはこの世はエルフで溢れてしまうし、そういう事もあるのだろう。
それに比べて他の種族は本能のままに子孫を増やし繫栄していくので、そういう意味でもエルフは他種族と価値観が合わず基本的には他種族とは交わらないように生活しているのだとか。
「それにエルフの中でもハイエルフの数は極端に少ないんだ、その優秀な血を残す為にハイエルフの男児は生まれた時から女王に囲われるようにして生活している事が多い。そもそも集落の外には出られないはずだ」
「そう、なんですか」
う~ん、そう断言されてしまうと僕は何も言えなくなってしまうな。そもそも僕は当事者ではないし、聞かされた話をそのまま語ったに過ぎないのだから。
「それにタケルの師匠はハーフエルフだと言うが、ハーフエルフは魔力量が少ないだろう? 魔術師にはなれないと……」
「ルーファウスの魔力量は僕より上でしたけど?」
まぁ、今現在の魔力量がどうなっているかまでは確認していないので分からないけれど、少なくとも僕がこの世界に来た当初は僕の魔力量よりルーファウスの魔力量の方が多かったはずだ。
「人族はエルフに比べて保有する魔力量が少ないと聞くが……」
「僕の魔力量、今は四万ありますよ。ルーファウスの魔力量は前に聞いた時には五万あると聞いてます」
「五万……化け物か」
化け物とは失礼な。魔術師としては割と普通、というか少し多い程度だと聞いているその数字、使えば使うほど魔力量は増えるという事だし(限界値はあるらしいけど)そんな風に言われるのは心外だ。
「そいつ、絶対ハーフエルフじゃないだろう? 父親がハイエルフとか言っていたが、そっちの血が濃く出たのか?」
「僕には詳しい事は分かりませんけど、そうなんじゃないですか? お姉さんはどちらかと言えば人に近かったって聞いてますし」
「そのハイエルフ、人との間に二人も子を儲けたのか!?」
「そうですね、エルフの本妻さんとの間にも二人子供がいるらしいので子沢山ですね」
「子供が四人!? そのハイエルフ、とんでもない種馬だな!」
言い方……
先程からペリトスさんはエルフは繁殖力が低いような事を言っていたのだけど、実際ルーファウスは四人兄弟の末っ子なんだよな。子供が多すぎるという事もないが、少ない訳でもないその数を知っているだけに首を傾げていたのだけど、ここでは女性優位で子供を作るから子供が増えていかないだけなのかもしれないな。
「それにしても、同じハーフエルフだってのにこの差、やっぱりハイエルフの血が入ってるのは大きいんだな」
ペリトスさんが息を吐きだすように大きく溜息を吐いた。あれ、これってもしかして?
「もしかしてペリトスさんもハーフエルフなんですか?」
「そう、母親がエルフで父親が人族、俺には弟が一人いるんだが、こっちは父親が下賜された元王配でなぁ、滅茶苦茶優秀な訳だ、もうこちとら肩身が狭いこと狭いこと。弟は時期王配に決定済みなもんだから、余計に肩身が狭く……はぁぁぁ」
またしても大きな溜息を吐くペリトスさん。なにやら御苦労がある様子だけれど、僕は一体どういう反応を返してあげればよいのやら……自分は一人っ子で、一人っ子には一人っ子なりの苦労もあったけれど、兄弟で優劣がはっきりしすぎているのも気苦労が絶えないのだろうなと想像はつく。
それにしても、王配って何だったか? 王の配偶者? この集落のトップは女王だとの事なので、ペリトスさんの弟は女王の婚約者という事か。
「兄弟仲が悪いんですか?」
「え? いや、それはない。何せ歳が離れすぎていてそもそも弟という感覚も乏しいくらいなんで俺自身は然程、なんだが周りが何かとうるさくてな。このまま俺自身が弟の足を引っ張るような存在にしかならないようなら今後は自分の身の振り方も考えないとなと考えている所だ」
兄として弟の迷惑になるようなら身を引こうなんて、彼は弟想いなんだなと少し兄弟愛に感動しかけた所で「一人で逃げ出そうなんて許さないからな、兄さん」と檻の外から声をかけられた。
声のした方に顔を向けてみれば、そこに居たのは先程の仏頂面の青年だ。確か次代様とか呼ばれていた人。
「おお、アル、迎えに来てくれたのか?」
「違う。そっちの小僧を連れて来いってフレデリカ様が言うから」
フレデリカ様……さっきもその名前聞いたな。彼は僕のことをその人に報告してくると言っていたから、その報告の結果「連れて来い」と言われたのだろう。
次代様……ペリトスさんには『アル』と呼ばれているので、それが彼の名前なのだろうけれど、そうかこの人が優秀過ぎると噂のペリトスさんの弟さんだったのか。
「兄さんは家の壁を破壊した事、そこでもうしばらく反省して」
次代様は冷たい瞳でにべもない。彼は最初から仏頂面で気難しい感じの人だけど、あまり兄の事を好いていない感じなのかと僕は思う。けれど「怪我とかしてないな? 夕飯は後で届ける」と続いた台詞でツンデレか!? と、心の中で思わず突っ込んでしまった。
「ありがと、アル~、俺は全然平気だから大丈夫。タケル、有意義な時間だった、また今度色んな話聞かせてな」
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