186 / 222
第六章
聖樹の加護
しおりを挟む
エルフの里にも夕闇が広がり、今日も一日が終わろうとしている。今朝は魔王城に乗り込むという事でやや緊張した出発であったのに、夜になったら宴会の中歓待を受けているだなんて、誰が考えると思う?
文明とは隔絶した場所にあるらしいエルフの集落では「人族」自体がとても珍しいようで、僕は客というよりはまるで珍獣扱いで集落の人達からは遠巻きにされている。
現在僕を歓待してくれているのはこのエルフの集落の長であるフレデリカ様とその付き人達。ちなみに一人を除いて全員女性です。
おかしい、何故かここへ来てハーレムのようになっている。
僕の前には貫禄の美女フレデリカ様が興味深げに僕を眺めている。その手には相変らずワイングラスがあって、その中には昼にも見かけた黄金色のキラキラした液体が満たされていた。
あれはお酒なのだろうか? だとしたら少し飲みすぎなのではないかと他人事ながら心配になってしまう。
まぁ、現在僕は人の心配などしている場合ではないのだけど。
というのも、僕の周りは現在美女で固められていて、その美女達の視線がどうにも居たたまれない僕は居心地が悪く落ち着かない。だって仕方がない、僕は女性との交流経験が前世含めてほぼないと言っていいのだから。
接待以外で女性のいるお店に行った事もないし、いざ対面して女性と何かを話せと言われても気の利いた話題のひとつも出す事ができない僕は、しどろもどろで女性陣に囲まれている。
「それで、お前が暮らしていたというそのグランバルト王国というのは一体どのような国なのだ?」
フレデリカ様に尋ねられて僕は自分の知りうる限りの情報を彼女に伝えたのだけれど、やはり彼女はそのような王国に心当たりはないと首を振った。
まぁ、予想していた事だ。僕の予想が正しければグランバルト王国はまだこの世界に誕生すらしていない、そんな存在しない国の事を知っている人が居ないのは当然の事なのだから。
「アルバートから聞いたが、お前はずいぶんと魔術に精通しているのだそうだな、ここは余興のひとつに何か魔術のひとつもお披露目してはくれぬかの?」
お願いのような体をしているけれど、これはもうやってみろという命令なのだろうな、僕はどうしたものかと思いつつ「分かりました」と頷き立ち上がった。僕は歓待の席を離れて一人前へ進み出る。
魔術を見せるという点で言えば一番派手なのはやはり火魔法なのだけど、現在僕は火魔法を使えない。無属性魔法も使えるけれど、これはあまり人には知られない方がいいと言われているし、水・風・土の三つの属性魔法の中なら何が良いかと考えて、僕は「水球」と短く呟く。
大気の中から溢れ出てくる水分を集め掌の上で大きな水の塊を作っただけで、あちこちから驚嘆の声が上がったのだけどフレデリカ様は口角を僅かに上げただけで何も言わない。
まぁ、水球を作るのなんて水魔法の一番の初歩だからな、この程度でフレデリカ様が満足してくれる訳がない。
「散」
掌の上でくるくる回っていた水球が僕の一声で無数の水滴に変わる。散らばった水滴は微動だにせず空中に留まり、聖樹からもたらされる光を取り込んでキラキラと輝いている。
「この地に揺蕩いし水よ、鏡となりて像を結び、幻の如き夢を見せよ、水鏡幻影!」
詠唱と共にその水滴は辺りを漂い始め、様々な形に変化しつつエルフ達の上空を乱れ飛ぶ。それは飛ぶ鳥のようであり、優雅に舞う蝶のようでもあり、自由に泳ぐ魚のようにも見えたはずだ。
エルフ達の口からは「わぁ」と歓声が上がった。
これは敵に目くらましをする魔術で攻撃力という点ではあまり役には立たないのだけれど、見た目が派手で僕は意外と気に入っている。
僕は数分に渡り幻影を操り、疲れてきたところで幻影を霧散させた。
「なかなか面白い見世物だったぞ小僧」
満足してもらえたと思って笑みを浮かべて女王様に向き直った僕の目に映ったのは口元だけ笑みを浮かべたフレデリカ様。
「だがその力、少々危ういな」
見世物としては上出来だったと思ったのに、フレデリカ様からかけられた言葉はあまり芳しいものではなく僕は戸惑う。
「危うい、ですか?」
「そのように派手な魔力の使い方をしていたら早晩お前は死ぬぞ。ただでさえ人は短命だというのに、若いみそらで生き急ぐ必要もあるまいに」
はて、僕はそんなに生き急いでいるように見えるだろうか? そもそも今見せたのは水魔法の中の中級魔術で初級よりは消費魔力量は大きいとはいえ、僕にとっては大した魔力消費ですらない。
心配してくれるのは有難いけれど、全然大丈夫なんだけどなぁ。
「そういえば、お前は魔術を使う際に何事か呟いていたな、アレは何だ?」
「え? ああ、詠唱ですよ」
先程見せた術の詠唱はルーファウスに教えて貰った通りのものだ。
実際に戦闘中などに使う時はもっと短く『水鏡幻影』の一言だけで術を発動させてしまうのだけど、本来それは正しくないやり方になるらしい。
ルーファウスから人前ではなるべく詠唱を唱えるように口を酸っぱくして言われているので今回はきちんと唱えたのだけれど、何かおかしかっただろうか?
こう言っては何なのだが実際のところ、詠唱の文脈の部分は言っても言わなくても魔術の威力はほとんど変わらない。僕がルーファウスに教えてもらった魔術の基本発動方法は長文詠唱なのだけれど、何というか文脈がいちいち厨二っぽいというか、ぶっちゃけ恥ずかしくて勝手に短くしてしまう事がほとんどだ。そして、やってみたら別段問題なかったので僕の詠唱は非常にシンプルで短いものになっている。
本当は僕は無詠唱でも術の発動が出来る。実際ルーファウスも詠唱の省略をする事がない訳ではない。それは簡単な魔術に対してで、詠唱の有無は個人の判断に任されるらしい。けれど高等魔術に関しては発動に詠唱は必須という決まり事があるので、それをせずに魔術の発動をすると周りからかなり奇異の目で見られてしまう。
僕はその理由をよく分かっていないのだけど、ルーファウスが駄目だと言うので僕は何となく体裁を整えるために詠唱をしているだけだったりするのだ。
「詠唱……それは呪文のようなものか?」
フレデリカ様の問いかけに僕は「え? ああ、まぁそうですね」と言葉を濁す。だけどそう改めて問われると詠唱と呪文の違いってなんだ? 言葉に力を乗せて放つという意味では詠唱も呪文も一緒だけれど、違いって何なんだろうな?
詠唱の『詠』の字は歌うという意味があるし、直訳すると『詠唱』は歌い唱えるという意味になる。思えばルーファウスに教わった長文詠唱は歌に近い気がしなくもない、そう考えると現在の僕の詠唱はただの呪文だと言えるのかもしれないな。
「詠唱、詠唱か……」
フレデリカ様が何事かぶつぶつと呟いている。呪文か詠唱かって、そこまで考え込むような違いはないと思うのだけど、何か違いがあるのだろうか。
こんな時、ルーファウスが傍に居てくれたら「それはこう違うのですよ」と簡潔に説明してくれただろうに、僕は首を捻るばかりだ。
「風を束ねよ幾重にも、空より来るもの、地を這うもの、この地へ来るあまねく害悪を我に教えよ――」
フレデリカ様の詠唱、最後に唱えた術名が聞こえなかった。何故ならフレデリカ様の詠唱と共に彼女の魔力が一気に膨れ上がり、魔力の波動となって僕達の傍らを抜けていったからだ。
魔力は風を孕んでいて僕は風圧に吹き飛びそうになったし、実際に目を丸くして転がっている人もいる。その風はエルフの里を抜けて外までものすごい勢いで広がっていったのだろう、森の樹々からは眠りにつこうとしていただろう鳥が何者かの襲撃かと慌てるように樹から飛び立ち、獣たちも落ち着かない様子であちこちから遠吠えのような獣の鳴き声が聞こえてきた。
ただその風は攻撃するようなモノではなく、あくまで僕達の周りを吹き抜けただけだったので、そんな騒ぎもしばらくすれば落ち着いて、森はまた静寂を取り戻した。
それにしても僕はこの魔術を知っている、というかフレデリカ様の唱えた詠唱を聞いた事がある。けれどその魔術はこれ程の魔力を乗せて放つものではない、これでは攻撃と変わらない。
「これは凄いな……」
唱えて魔術を放った本人であるフレデリカ様自身も何故か驚いたような様子で、どういう事だと僕は混乱するばかりだ。
「あの、フレデリカ様、今のって探索ですよね。術にあんなに多くの魔力を乗せては相手にも気付かれてしまいますし、あそこまでしなくても対象物は探知できるかと……」
いや、でも、あれだけの魔力を乗せれば探知できるエリアは広がるかもしれないし、この森全体を見ようと思ったらあのくらいは普通なのか? だけど、もし本当に侵入者がいた場合これは威嚇にはなっても、こっそりと相手の居場所を掴むという事は難しくなる。
そもそも「探索」は風魔法の中でも初級魔術で、こんな使い方はしないものだ。
フレデリカ様がにこりと笑みを浮かべて困惑している僕を手招き、僕がおずおずとその手招きに応じるとがしっと腕を掴まれ彼女の横に強制的に侍らされた。
嫋やかな容姿とは裏腹に意外と彼女の腕力は力強くて、僕が目を白黒させていると「お前、千里眼を使えるのか?」と耳元で囁かれた。
「え? 千里眼?」
確かそれはフレデリカ様だけが使える特殊能力ではなかったか? 僕が知っているのはあくまで風魔法の初級魔術である「探索」であって千里眼ではない。
けれどフレデリカ様の顔は笑っているのに瞳はじっと僕を見据えたまま微動だにしない。美女が凄むと迫力が増すというか、ぶっちゃけ怖くて逃げ出したい。
「先程の魔術、お前も使えるのだな?」
耳元で妖艶な唇が僕にだけ言葉を紡ぐ、それは傍目には彼女が僕を誘惑しているようにも見えたかもしれないけれど、実際のところはただの詰問だ。
「つ、使えますけど、それが何か?」
「そうか、お前は私が考えていたよりも余程危険人物、という事だな。幼げな容姿に危うく騙される所だったわ」
フレデリカ様の指先が僕の頬を撫でながら顎にかかり、彼女は更に顔を寄せてくる。美人はアップで見ても美人だけど目が笑ってないんだよ、怖いからホントやめてくれ。
「ここでお前を殺しておくべきか、だがお前のその類稀な魔術の知識は得難いものだ」
フレデリカ様の瞳が怪しく光る。魔物の中には『魅了』という技を使ってくるものもいる。それは力の弱い魔物がほとんどで、相手を魅了し惑わす事で敵を捕食する厄介な魔物だ。それは精神攻撃の一種で闇魔法に分類されるのだけれど、フレデリカ様の瞳にはそんな魅了の魔術が宿っている。
「申し訳ないですけど、僕に魅了は効きません」
「な……」
僕の魔法耐性値は高い、ついでに言うなら闇魔法と対になっている聖魔法のスキルレベルが高いので闇魔法の精神攻撃には耐性があるのだ。魅了はかかってしまえば抗い難い魔法であるけれど、気付いてしまえば対抗できる、なにせ僕自身魅了スキルが高いのだ。
僕がにこりと笑みを浮かべればフレデリカ様は眉間に皺を寄せてふいっと瞳を逸らした。
「全く、度し難い。抗わなければ命を縮める事もないものを……」
フレデリカ様が僕の両肩を掴み、押しやるように身を逸らせると同時に彼女の魔力がまたぶわりと膨らむ。しまった、怒らせたかと自身に防御結界を張ろうと思ったのだが、如何せん相手は目の前で間に合わない。
僕の両肩を掴むフレデリカ様の両手から直接攻撃を仕掛けられ、僕の意識が揺らいだその時、フレデリカ様の両手が何かに弾かれたように僕から離れた。
「っ……なに!?」
フレデリカ様が僕から距離を取るように後ろに飛びのいて、異変を察知したのだろう周りの女エルフ達が僕と彼女の間に割り込んでくる。
一方で僕の身体からは何やら眩い程に光る魔力が溢れ出し、僕を包み込んだ。
「え、なにこれ?」
背中が仄かに温かい、まるで誰かの腕の中に包まれているかのように光の魔力が僕を包み込んでいる。
「そんな馬鹿な、これは、聖樹の、加護……?」
『タケル』
何処からかルーファウスが僕を呼ぶ声が聞こえた気がした。
ああそうか、これはまだ一度も発動した事のなかったルーファウスが僕の背中に施した守護印の……
「大変申し訳ございませんでした」
フレデリカ様が僕の目の前に土下座せんばかりの勢いで跪いて首を垂れた。そのフレデリカ様の態度に周りも動揺を隠せないようでおろおろと立ち竦んでいる。
「ちょ、やめてください。皆さん驚いてますよ」
「まさか貴方様が聖樹の加護を受けた神子であったとは、聖樹を祀る一族の長としてそんな事にも気付けなかった己が不甲斐なく、こうなっては我が命を差し出し代償とするしか……」
「待ってください! 命とか要りませんし、そもそも僕は神子ではありません!!」
突然の成り行きに僕だけではなく周りも驚き、フレデリカ様に倣うように周囲の者達も僕に跪き首を垂れる。だけど待って! 僕は本当にただの冒険者で神子なんかじゃないんだよ!
「あの、今のは多分僕の背中に入っている守護印が発動しただけで、僕の力じゃないんです! だから聖樹の加護とかそういうんじゃないと思います!」
「守護、印?」
僕はままよとばかりに髪を持ち上げ服をはだけると背中を晒す。そこには自分ではちゃんと見た事がない守護印が刻まれているはずだ。
フレデリカ様は恐る恐るという感じで顔を上げ、僕の背中に刻まれた紋印をまじまじと見やる。確かそこには白い線で樹のような紋様が描かれているはずだ。
「これは、やはり聖樹ではないですか」
「え?」
「この紋印、一体誰が貴方に刻んだのですか? これは、この紋様は我が一族の紋印です。そしてこの意匠は間違いなく聖樹を模したものに違いありません」
「これを入れたのは僕の魔術の師匠のルーファウスです」
「ルーファウス?」
フレデリカ様が怪訝な表情を見せる。恐らく名前に聞き覚えがないのだろう。ああ、なんかもうこれ完全に詰んだ気がする……この紋様はこのエルフの里の紋印で、これを刻んだのはルーファウス。つまりはルーファウスはこの里に属するエルフだという事だ。
だけどこの里にはルーファウスの痕跡がない、そもそもルーファウス程の魔術師を排出したにしてはこの里の人達の魔術の知識が乏しすぎる。
落ち着いて考えて、もしかしたら僕の早とちりだったらいいのになと思っていたのだけど、うん、これもう間違いようがない。
「あの、フレデリカ様にだけ内密にお話したい事があるのですけど、少しだけ僕のお話聞いていただけますか?」
文明とは隔絶した場所にあるらしいエルフの集落では「人族」自体がとても珍しいようで、僕は客というよりはまるで珍獣扱いで集落の人達からは遠巻きにされている。
現在僕を歓待してくれているのはこのエルフの集落の長であるフレデリカ様とその付き人達。ちなみに一人を除いて全員女性です。
おかしい、何故かここへ来てハーレムのようになっている。
僕の前には貫禄の美女フレデリカ様が興味深げに僕を眺めている。その手には相変らずワイングラスがあって、その中には昼にも見かけた黄金色のキラキラした液体が満たされていた。
あれはお酒なのだろうか? だとしたら少し飲みすぎなのではないかと他人事ながら心配になってしまう。
まぁ、現在僕は人の心配などしている場合ではないのだけど。
というのも、僕の周りは現在美女で固められていて、その美女達の視線がどうにも居たたまれない僕は居心地が悪く落ち着かない。だって仕方がない、僕は女性との交流経験が前世含めてほぼないと言っていいのだから。
接待以外で女性のいるお店に行った事もないし、いざ対面して女性と何かを話せと言われても気の利いた話題のひとつも出す事ができない僕は、しどろもどろで女性陣に囲まれている。
「それで、お前が暮らしていたというそのグランバルト王国というのは一体どのような国なのだ?」
フレデリカ様に尋ねられて僕は自分の知りうる限りの情報を彼女に伝えたのだけれど、やはり彼女はそのような王国に心当たりはないと首を振った。
まぁ、予想していた事だ。僕の予想が正しければグランバルト王国はまだこの世界に誕生すらしていない、そんな存在しない国の事を知っている人が居ないのは当然の事なのだから。
「アルバートから聞いたが、お前はずいぶんと魔術に精通しているのだそうだな、ここは余興のひとつに何か魔術のひとつもお披露目してはくれぬかの?」
お願いのような体をしているけれど、これはもうやってみろという命令なのだろうな、僕はどうしたものかと思いつつ「分かりました」と頷き立ち上がった。僕は歓待の席を離れて一人前へ進み出る。
魔術を見せるという点で言えば一番派手なのはやはり火魔法なのだけど、現在僕は火魔法を使えない。無属性魔法も使えるけれど、これはあまり人には知られない方がいいと言われているし、水・風・土の三つの属性魔法の中なら何が良いかと考えて、僕は「水球」と短く呟く。
大気の中から溢れ出てくる水分を集め掌の上で大きな水の塊を作っただけで、あちこちから驚嘆の声が上がったのだけどフレデリカ様は口角を僅かに上げただけで何も言わない。
まぁ、水球を作るのなんて水魔法の一番の初歩だからな、この程度でフレデリカ様が満足してくれる訳がない。
「散」
掌の上でくるくる回っていた水球が僕の一声で無数の水滴に変わる。散らばった水滴は微動だにせず空中に留まり、聖樹からもたらされる光を取り込んでキラキラと輝いている。
「この地に揺蕩いし水よ、鏡となりて像を結び、幻の如き夢を見せよ、水鏡幻影!」
詠唱と共にその水滴は辺りを漂い始め、様々な形に変化しつつエルフ達の上空を乱れ飛ぶ。それは飛ぶ鳥のようであり、優雅に舞う蝶のようでもあり、自由に泳ぐ魚のようにも見えたはずだ。
エルフ達の口からは「わぁ」と歓声が上がった。
これは敵に目くらましをする魔術で攻撃力という点ではあまり役には立たないのだけれど、見た目が派手で僕は意外と気に入っている。
僕は数分に渡り幻影を操り、疲れてきたところで幻影を霧散させた。
「なかなか面白い見世物だったぞ小僧」
満足してもらえたと思って笑みを浮かべて女王様に向き直った僕の目に映ったのは口元だけ笑みを浮かべたフレデリカ様。
「だがその力、少々危ういな」
見世物としては上出来だったと思ったのに、フレデリカ様からかけられた言葉はあまり芳しいものではなく僕は戸惑う。
「危うい、ですか?」
「そのように派手な魔力の使い方をしていたら早晩お前は死ぬぞ。ただでさえ人は短命だというのに、若いみそらで生き急ぐ必要もあるまいに」
はて、僕はそんなに生き急いでいるように見えるだろうか? そもそも今見せたのは水魔法の中の中級魔術で初級よりは消費魔力量は大きいとはいえ、僕にとっては大した魔力消費ですらない。
心配してくれるのは有難いけれど、全然大丈夫なんだけどなぁ。
「そういえば、お前は魔術を使う際に何事か呟いていたな、アレは何だ?」
「え? ああ、詠唱ですよ」
先程見せた術の詠唱はルーファウスに教えて貰った通りのものだ。
実際に戦闘中などに使う時はもっと短く『水鏡幻影』の一言だけで術を発動させてしまうのだけど、本来それは正しくないやり方になるらしい。
ルーファウスから人前ではなるべく詠唱を唱えるように口を酸っぱくして言われているので今回はきちんと唱えたのだけれど、何かおかしかっただろうか?
こう言っては何なのだが実際のところ、詠唱の文脈の部分は言っても言わなくても魔術の威力はほとんど変わらない。僕がルーファウスに教えてもらった魔術の基本発動方法は長文詠唱なのだけれど、何というか文脈がいちいち厨二っぽいというか、ぶっちゃけ恥ずかしくて勝手に短くしてしまう事がほとんどだ。そして、やってみたら別段問題なかったので僕の詠唱は非常にシンプルで短いものになっている。
本当は僕は無詠唱でも術の発動が出来る。実際ルーファウスも詠唱の省略をする事がない訳ではない。それは簡単な魔術に対してで、詠唱の有無は個人の判断に任されるらしい。けれど高等魔術に関しては発動に詠唱は必須という決まり事があるので、それをせずに魔術の発動をすると周りからかなり奇異の目で見られてしまう。
僕はその理由をよく分かっていないのだけど、ルーファウスが駄目だと言うので僕は何となく体裁を整えるために詠唱をしているだけだったりするのだ。
「詠唱……それは呪文のようなものか?」
フレデリカ様の問いかけに僕は「え? ああ、まぁそうですね」と言葉を濁す。だけどそう改めて問われると詠唱と呪文の違いってなんだ? 言葉に力を乗せて放つという意味では詠唱も呪文も一緒だけれど、違いって何なんだろうな?
詠唱の『詠』の字は歌うという意味があるし、直訳すると『詠唱』は歌い唱えるという意味になる。思えばルーファウスに教わった長文詠唱は歌に近い気がしなくもない、そう考えると現在の僕の詠唱はただの呪文だと言えるのかもしれないな。
「詠唱、詠唱か……」
フレデリカ様が何事かぶつぶつと呟いている。呪文か詠唱かって、そこまで考え込むような違いはないと思うのだけど、何か違いがあるのだろうか。
こんな時、ルーファウスが傍に居てくれたら「それはこう違うのですよ」と簡潔に説明してくれただろうに、僕は首を捻るばかりだ。
「風を束ねよ幾重にも、空より来るもの、地を這うもの、この地へ来るあまねく害悪を我に教えよ――」
フレデリカ様の詠唱、最後に唱えた術名が聞こえなかった。何故ならフレデリカ様の詠唱と共に彼女の魔力が一気に膨れ上がり、魔力の波動となって僕達の傍らを抜けていったからだ。
魔力は風を孕んでいて僕は風圧に吹き飛びそうになったし、実際に目を丸くして転がっている人もいる。その風はエルフの里を抜けて外までものすごい勢いで広がっていったのだろう、森の樹々からは眠りにつこうとしていただろう鳥が何者かの襲撃かと慌てるように樹から飛び立ち、獣たちも落ち着かない様子であちこちから遠吠えのような獣の鳴き声が聞こえてきた。
ただその風は攻撃するようなモノではなく、あくまで僕達の周りを吹き抜けただけだったので、そんな騒ぎもしばらくすれば落ち着いて、森はまた静寂を取り戻した。
それにしても僕はこの魔術を知っている、というかフレデリカ様の唱えた詠唱を聞いた事がある。けれどその魔術はこれ程の魔力を乗せて放つものではない、これでは攻撃と変わらない。
「これは凄いな……」
唱えて魔術を放った本人であるフレデリカ様自身も何故か驚いたような様子で、どういう事だと僕は混乱するばかりだ。
「あの、フレデリカ様、今のって探索ですよね。術にあんなに多くの魔力を乗せては相手にも気付かれてしまいますし、あそこまでしなくても対象物は探知できるかと……」
いや、でも、あれだけの魔力を乗せれば探知できるエリアは広がるかもしれないし、この森全体を見ようと思ったらあのくらいは普通なのか? だけど、もし本当に侵入者がいた場合これは威嚇にはなっても、こっそりと相手の居場所を掴むという事は難しくなる。
そもそも「探索」は風魔法の中でも初級魔術で、こんな使い方はしないものだ。
フレデリカ様がにこりと笑みを浮かべて困惑している僕を手招き、僕がおずおずとその手招きに応じるとがしっと腕を掴まれ彼女の横に強制的に侍らされた。
嫋やかな容姿とは裏腹に意外と彼女の腕力は力強くて、僕が目を白黒させていると「お前、千里眼を使えるのか?」と耳元で囁かれた。
「え? 千里眼?」
確かそれはフレデリカ様だけが使える特殊能力ではなかったか? 僕が知っているのはあくまで風魔法の初級魔術である「探索」であって千里眼ではない。
けれどフレデリカ様の顔は笑っているのに瞳はじっと僕を見据えたまま微動だにしない。美女が凄むと迫力が増すというか、ぶっちゃけ怖くて逃げ出したい。
「先程の魔術、お前も使えるのだな?」
耳元で妖艶な唇が僕にだけ言葉を紡ぐ、それは傍目には彼女が僕を誘惑しているようにも見えたかもしれないけれど、実際のところはただの詰問だ。
「つ、使えますけど、それが何か?」
「そうか、お前は私が考えていたよりも余程危険人物、という事だな。幼げな容姿に危うく騙される所だったわ」
フレデリカ様の指先が僕の頬を撫でながら顎にかかり、彼女は更に顔を寄せてくる。美人はアップで見ても美人だけど目が笑ってないんだよ、怖いからホントやめてくれ。
「ここでお前を殺しておくべきか、だがお前のその類稀な魔術の知識は得難いものだ」
フレデリカ様の瞳が怪しく光る。魔物の中には『魅了』という技を使ってくるものもいる。それは力の弱い魔物がほとんどで、相手を魅了し惑わす事で敵を捕食する厄介な魔物だ。それは精神攻撃の一種で闇魔法に分類されるのだけれど、フレデリカ様の瞳にはそんな魅了の魔術が宿っている。
「申し訳ないですけど、僕に魅了は効きません」
「な……」
僕の魔法耐性値は高い、ついでに言うなら闇魔法と対になっている聖魔法のスキルレベルが高いので闇魔法の精神攻撃には耐性があるのだ。魅了はかかってしまえば抗い難い魔法であるけれど、気付いてしまえば対抗できる、なにせ僕自身魅了スキルが高いのだ。
僕がにこりと笑みを浮かべればフレデリカ様は眉間に皺を寄せてふいっと瞳を逸らした。
「全く、度し難い。抗わなければ命を縮める事もないものを……」
フレデリカ様が僕の両肩を掴み、押しやるように身を逸らせると同時に彼女の魔力がまたぶわりと膨らむ。しまった、怒らせたかと自身に防御結界を張ろうと思ったのだが、如何せん相手は目の前で間に合わない。
僕の両肩を掴むフレデリカ様の両手から直接攻撃を仕掛けられ、僕の意識が揺らいだその時、フレデリカ様の両手が何かに弾かれたように僕から離れた。
「っ……なに!?」
フレデリカ様が僕から距離を取るように後ろに飛びのいて、異変を察知したのだろう周りの女エルフ達が僕と彼女の間に割り込んでくる。
一方で僕の身体からは何やら眩い程に光る魔力が溢れ出し、僕を包み込んだ。
「え、なにこれ?」
背中が仄かに温かい、まるで誰かの腕の中に包まれているかのように光の魔力が僕を包み込んでいる。
「そんな馬鹿な、これは、聖樹の、加護……?」
『タケル』
何処からかルーファウスが僕を呼ぶ声が聞こえた気がした。
ああそうか、これはまだ一度も発動した事のなかったルーファウスが僕の背中に施した守護印の……
「大変申し訳ございませんでした」
フレデリカ様が僕の目の前に土下座せんばかりの勢いで跪いて首を垂れた。そのフレデリカ様の態度に周りも動揺を隠せないようでおろおろと立ち竦んでいる。
「ちょ、やめてください。皆さん驚いてますよ」
「まさか貴方様が聖樹の加護を受けた神子であったとは、聖樹を祀る一族の長としてそんな事にも気付けなかった己が不甲斐なく、こうなっては我が命を差し出し代償とするしか……」
「待ってください! 命とか要りませんし、そもそも僕は神子ではありません!!」
突然の成り行きに僕だけではなく周りも驚き、フレデリカ様に倣うように周囲の者達も僕に跪き首を垂れる。だけど待って! 僕は本当にただの冒険者で神子なんかじゃないんだよ!
「あの、今のは多分僕の背中に入っている守護印が発動しただけで、僕の力じゃないんです! だから聖樹の加護とかそういうんじゃないと思います!」
「守護、印?」
僕はままよとばかりに髪を持ち上げ服をはだけると背中を晒す。そこには自分ではちゃんと見た事がない守護印が刻まれているはずだ。
フレデリカ様は恐る恐るという感じで顔を上げ、僕の背中に刻まれた紋印をまじまじと見やる。確かそこには白い線で樹のような紋様が描かれているはずだ。
「これは、やはり聖樹ではないですか」
「え?」
「この紋印、一体誰が貴方に刻んだのですか? これは、この紋様は我が一族の紋印です。そしてこの意匠は間違いなく聖樹を模したものに違いありません」
「これを入れたのは僕の魔術の師匠のルーファウスです」
「ルーファウス?」
フレデリカ様が怪訝な表情を見せる。恐らく名前に聞き覚えがないのだろう。ああ、なんかもうこれ完全に詰んだ気がする……この紋様はこのエルフの里の紋印で、これを刻んだのはルーファウス。つまりはルーファウスはこの里に属するエルフだという事だ。
だけどこの里にはルーファウスの痕跡がない、そもそもルーファウス程の魔術師を排出したにしてはこの里の人達の魔術の知識が乏しすぎる。
落ち着いて考えて、もしかしたら僕の早とちりだったらいいのになと思っていたのだけど、うん、これもう間違いようがない。
「あの、フレデリカ様にだけ内密にお話したい事があるのですけど、少しだけ僕のお話聞いていただけますか?」
14
あなたにおすすめの小説
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。
彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!
恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする
愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ!
月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました!
えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。
※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです!
※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる