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第五章 アオアイへ
迎え
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優しく手が握られた、そんな感触がした。
◆
ふと目を覚まして咄嗟に上半身を起こし部屋を見渡した。
知らない部屋はそれなりに豪華な設えがあって、ベッドサイドのテーブルには水も用意してあった。
そして、微かに感じるゆるやかな揺れ……
「……まさか……」
嫌な予感が的中したことを示すように、自分の足が縛られていることに気づいた。
「ここまでするのですか……兄上」
窓の外に目をやると、アオアイの港が見える、つまりここはまだアオアイだ。
そして、船の中だ。
兄の乗っていたラハーム王国の船。
まさかこんな扱いを受けるとまでは予想がつかず、自分からこの船に乗ったのだ。
出された茶も、何の疑いも無く口にしてしまった、おそらくあの茶に何か混入されていたのだろう。
愚かな自分を恥じるしかない。
「情けない……」
自由に動く手で、縛られた縄をほどこうと足に手をやる。
そして気づいた。
何かの魔術で繋がれているということに。
捕縛する際に魔術を使うのは、罪人の輸送の時に行うものだ。
私は罪人扱いなのか。
その時、部屋が白い光に照らされて思わず目を瞑った。
「な……なにが」
私はベッドに張り付いたまま逃げようもない。
「玲陽」
その声にハッとなって目を開くと、そこにあの方がいた。
「あ……阿羅彦様」
力を使って私を探しに来てくれた。
そう、咄嗟に理解して、そして……うれしかった。
血のつながった家族には愛してもらえなかった自分だけれど、迎えに来てくれる人がいる……そのことが凍りかけた心を溶かしてくれた。
「これは……」
私の足の縄に触れて首をかしげる阿羅彦様は、月の光に左側の顔が照らされて、この世のものではないようだ。
触れたら壊れてしまうのでは?と恐ろしくなるくらい美しかった。
思わず手を伸ばし、その頬に触れた。
阿羅彦様は苦笑してその手に自分の手を重ね、つぶやいた。
「お前を迎えに来たよ、玲陽。こんなふうに簡単に捕まってしまうお前ではない。これは罠だったのだろう?」
「……はい……おそらく、飲み物に睡眠薬が……」
そう答えて、自分の体から力が抜けていく思いがした。
愛されてはいなかっただろう。
それはもう、十分にわかっていたはずだ。
それにしても……何の意味があってここまでする必要があったのか。
愛していない弟ならば、無視していればいいではないか。
「少し乱暴だが……」
阿羅彦様は縄を両手に持ち力任せに両側に引っ張った。
その瞬間、赤い炎がボウと浮かび、残りの縄も消えた。
「縄自体が魔術ということか……」
阿羅彦様は感心したようにつぶやいた。
「はい、これは罪人を捕縛するための術です。それよりも、大丈夫ですか?熱くはなかったでしょうか?」
「いや、俺は平気だ、それよりお前はどうなのだ?」
「はい」
「そうか……とにかくここを出よう。お前とはじめて出会った時のように、連れて帰るよ」
「はい……」
阿羅彦様は私を抱きしめてくれた。
そして次の瞬間、目を瞑っていてもわかるほどの眩い光が感じられた。
◆
ふと目を覚まして咄嗟に上半身を起こし部屋を見渡した。
知らない部屋はそれなりに豪華な設えがあって、ベッドサイドのテーブルには水も用意してあった。
そして、微かに感じるゆるやかな揺れ……
「……まさか……」
嫌な予感が的中したことを示すように、自分の足が縛られていることに気づいた。
「ここまでするのですか……兄上」
窓の外に目をやると、アオアイの港が見える、つまりここはまだアオアイだ。
そして、船の中だ。
兄の乗っていたラハーム王国の船。
まさかこんな扱いを受けるとまでは予想がつかず、自分からこの船に乗ったのだ。
出された茶も、何の疑いも無く口にしてしまった、おそらくあの茶に何か混入されていたのだろう。
愚かな自分を恥じるしかない。
「情けない……」
自由に動く手で、縛られた縄をほどこうと足に手をやる。
そして気づいた。
何かの魔術で繋がれているということに。
捕縛する際に魔術を使うのは、罪人の輸送の時に行うものだ。
私は罪人扱いなのか。
その時、部屋が白い光に照らされて思わず目を瞑った。
「な……なにが」
私はベッドに張り付いたまま逃げようもない。
「玲陽」
その声にハッとなって目を開くと、そこにあの方がいた。
「あ……阿羅彦様」
力を使って私を探しに来てくれた。
そう、咄嗟に理解して、そして……うれしかった。
血のつながった家族には愛してもらえなかった自分だけれど、迎えに来てくれる人がいる……そのことが凍りかけた心を溶かしてくれた。
「これは……」
私の足の縄に触れて首をかしげる阿羅彦様は、月の光に左側の顔が照らされて、この世のものではないようだ。
触れたら壊れてしまうのでは?と恐ろしくなるくらい美しかった。
思わず手を伸ばし、その頬に触れた。
阿羅彦様は苦笑してその手に自分の手を重ね、つぶやいた。
「お前を迎えに来たよ、玲陽。こんなふうに簡単に捕まってしまうお前ではない。これは罠だったのだろう?」
「……はい……おそらく、飲み物に睡眠薬が……」
そう答えて、自分の体から力が抜けていく思いがした。
愛されてはいなかっただろう。
それはもう、十分にわかっていたはずだ。
それにしても……何の意味があってここまでする必要があったのか。
愛していない弟ならば、無視していればいいではないか。
「少し乱暴だが……」
阿羅彦様は縄を両手に持ち力任せに両側に引っ張った。
その瞬間、赤い炎がボウと浮かび、残りの縄も消えた。
「縄自体が魔術ということか……」
阿羅彦様は感心したようにつぶやいた。
「はい、これは罪人を捕縛するための術です。それよりも、大丈夫ですか?熱くはなかったでしょうか?」
「いや、俺は平気だ、それよりお前はどうなのだ?」
「はい」
「そうか……とにかくここを出よう。お前とはじめて出会った時のように、連れて帰るよ」
「はい……」
阿羅彦様は私を抱きしめてくれた。
そして次の瞬間、目を瞑っていてもわかるほどの眩い光が感じられた。
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