47 / 415
23.教室の死神①(怖さレベル:★★☆)
しおりを挟む
(怖さレベル:★★☆:ふつうに怖い話)
『10代男性 一村さん(仮名)』
あー……、
あまり信じてもらえないんですが、
オレ、小さい頃から霊感を持ってて。
っていったって、
除霊とかそういうたいそうなコトができるわけではなく、
ホント、ただ見えるだけなんですけど。
遊園地に行けば顔の崩れた女がいると泣き、
ショッピングモールに行けば、
天井にクモ男が貼りついていると騒ぐオレに、
親も扱いに苦労したみたいで。
さんざんいろんなお寺やら神社やらへ行って、
お祓いっぽいものを受けさせられました。
実際、それらはまったく効果がなく、
年齢を重ねても周りに見えるものは変わりません。
しかし、親や周囲の反応で、
それを口に出すのは悪いことなのだと気づき、
小学生になるころには、
見えても無視するという術を身に着けていました。
そしてその反動か、
オレはガキ大将のように粗暴にふるまい、
周囲に見える化け物たちへの恐怖を必死で押さえていました。
そうして、
高校生になったころ。
親元から離れたかったオレは、
必死で勉強に励み、
地元から遠く離れた私立高校に入学することにしました。
今まで張っていた虚栄も張らずにすむ、
と気を抜きながら臨んだ入学初日。
あてがわれた教室に入って早々――、
オレは、硬直しました。
四十名の机の立ち並ぶ、
その教室の一番端。
そこに――死神がいたんです。
そう、それはまさに死神というのがもっともふさわしい、
大鎌を片手に濃い黒のローブを羽織った、骸骨。
そんな様相の化け物が、
さも当然のように教室の端に立っているんです。
オレは教室から飛び出したくなる気持ちを必死に抑え、
自分に宛がわれている席に座り、
そちらを見ないように
ペラペラと教科書に意識を集中させていました。
次々に入ってくるクラスメイトたちは、
まったく普通に席についています。
やはり、あの死神まがいの化け物は、
自分にしか見えていないのだ、
と半ば絶望的な気持ちになっていた時でした。
「うわーっ、スゴイ」
突如教室に入ってきた奴が、
朗らかな声を上げてズカズカと教室の端――
その死神もどきがいるところに近づいて行ったのです。
「なんでそんな隅に立ってるのー?」
そいつは全く恐怖の色も見せぬまま、
例の死神もどきに近寄って、
なにやら話しかけているのです。
「……なにアイツ、壁に話しかけてるけど」
「わかんねぇ。変人じゃねぇ?」
教室内では、
そいつに対して皆冷めた視線を送っています。
オレはといえば、混乱と動揺で何を言うこともできず、
ただひたすら早く今日という日が終わってくれることを願っていました。
入学して数日たってわかったことですが、
その死神もどきに話しかけていたヤツの名前は
和田といって、学力上位のこの学校においても、
学年一位の成績で入学してきた者だそうです。
同じ中学から入ってきた同級生によれば、
当時からもかなりの変わり者で通っていたらしく、
奇妙な言動、行動は当たり前なのだと。
オレは遠巻きにその話を聞きながら、
毎日のように化け物と会話している和田に恐怖すら覚えていました。
オレにとって、
奴らは恐怖の象徴です。
その象徴と仲良くするなど、
幼いころから恐怖にさらされ続けていたオレには
とても考えられません。
オレは勉学に励み、クラスメイトと親交を深めつつも、
例の和田とだけは、なるべく会話をしないようにしていたのです。
そして、そんなある日。
授業を終え、自宅に帰ろうと自転車にまたがったオレは、
ペンケース一式を教室に忘れたことに気づきました。
面倒だな、と思ったものの、
自習するにも筆記用具がなければ始まりません。
仕方なしに、自転車を元に戻し、
あの教室へ戻ることにしたのです。
夕方の校舎内はまだ部活動をしている学生も多く、
ざわざわと人の気配が所せましと動いています。
そんな光景の場所場所に、
小さくうごめく赤い目玉だとか、
天井からぶら下がる生首だとかが、
まるで当たり前の顔をして存在している。
オレは極力それらを目に入れないようにして、
そそくさと教室へ入りました。
「ああ、そーなんだぁ。
大変なんだねぇ……って、あれ、一村くん」
「あ……和田」
誰もいないと思っていた教室。
そこには、あの化け物と語り合う和田の姿がありました。
「どうしたの? 忘れ物?」
「あ、ああ……ちょっとな」
声をかけてくる和田の方へ視線を向けないようにしつつ、
ゴソゴゾと机の中を漁ります。
「……あった」
ホッとペンケースを取り出した、
その瞬間。
――視界の端に、
キラリと光る銀の鎌。
「っう、わあっ」
外聞も忘れ、
思わず飛びのくようにして尻もちをつきました。
突如真横に現れた死神は、
ジィっと空洞の目でこちらを見下ろしています。
「な……な……」
「あっ、やっぱり。一村くん、見えてるんだねぇ」
ハッとしましたが、すでに遅し。
和田はニコニコと笑みを浮かべて、
「一村くん、この子のいるあたり、わざと見ないようにしてるでしょ。
変だなぁって思ってたんだけど、やっぱりそうかぁ」
「わ、和田……お前も、見えてんだな」
「もちろん。まさか、他のみんなが見えてないなんて思わなくって。
こんなにカワイイのに」
「……は?」
最後に耳に入った単語に、
オレは思わず固まりました。
「オイ、今……カワイイ、って言ったか」
「え? うん。一村くんにも見えてるんでしょ?」
キョトン、と首を傾げる和田は、
とてもウソをついているようには見えません。
オレは意図してそらしていた目線を、
そっと例のヤツに向けました。
「……ひっ」
しかし、そこに佇むのは、
やはり不気味な死神然としたしゃれこうべのみ。
「あ、一村くんって、見た目に反してシャイなんだね」
「ち、ちが……っ」
つい否定しようと口を開いたものの、
例のアレからの強烈な視線を感じ、
思わず口をつぐんでしまいました。
「あっ、もうこんな時間! 一村くんも帰るんでしょ」
「あ、ああ……」
”これ”と教室で二人っきりなど、
とても耐えられません。
学生カバンを引っ掴み、
慌てて教室を出ていく和田の後に続きました。
>>
『10代男性 一村さん(仮名)』
あー……、
あまり信じてもらえないんですが、
オレ、小さい頃から霊感を持ってて。
っていったって、
除霊とかそういうたいそうなコトができるわけではなく、
ホント、ただ見えるだけなんですけど。
遊園地に行けば顔の崩れた女がいると泣き、
ショッピングモールに行けば、
天井にクモ男が貼りついていると騒ぐオレに、
親も扱いに苦労したみたいで。
さんざんいろんなお寺やら神社やらへ行って、
お祓いっぽいものを受けさせられました。
実際、それらはまったく効果がなく、
年齢を重ねても周りに見えるものは変わりません。
しかし、親や周囲の反応で、
それを口に出すのは悪いことなのだと気づき、
小学生になるころには、
見えても無視するという術を身に着けていました。
そしてその反動か、
オレはガキ大将のように粗暴にふるまい、
周囲に見える化け物たちへの恐怖を必死で押さえていました。
そうして、
高校生になったころ。
親元から離れたかったオレは、
必死で勉強に励み、
地元から遠く離れた私立高校に入学することにしました。
今まで張っていた虚栄も張らずにすむ、
と気を抜きながら臨んだ入学初日。
あてがわれた教室に入って早々――、
オレは、硬直しました。
四十名の机の立ち並ぶ、
その教室の一番端。
そこに――死神がいたんです。
そう、それはまさに死神というのがもっともふさわしい、
大鎌を片手に濃い黒のローブを羽織った、骸骨。
そんな様相の化け物が、
さも当然のように教室の端に立っているんです。
オレは教室から飛び出したくなる気持ちを必死に抑え、
自分に宛がわれている席に座り、
そちらを見ないように
ペラペラと教科書に意識を集中させていました。
次々に入ってくるクラスメイトたちは、
まったく普通に席についています。
やはり、あの死神まがいの化け物は、
自分にしか見えていないのだ、
と半ば絶望的な気持ちになっていた時でした。
「うわーっ、スゴイ」
突如教室に入ってきた奴が、
朗らかな声を上げてズカズカと教室の端――
その死神もどきがいるところに近づいて行ったのです。
「なんでそんな隅に立ってるのー?」
そいつは全く恐怖の色も見せぬまま、
例の死神もどきに近寄って、
なにやら話しかけているのです。
「……なにアイツ、壁に話しかけてるけど」
「わかんねぇ。変人じゃねぇ?」
教室内では、
そいつに対して皆冷めた視線を送っています。
オレはといえば、混乱と動揺で何を言うこともできず、
ただひたすら早く今日という日が終わってくれることを願っていました。
入学して数日たってわかったことですが、
その死神もどきに話しかけていたヤツの名前は
和田といって、学力上位のこの学校においても、
学年一位の成績で入学してきた者だそうです。
同じ中学から入ってきた同級生によれば、
当時からもかなりの変わり者で通っていたらしく、
奇妙な言動、行動は当たり前なのだと。
オレは遠巻きにその話を聞きながら、
毎日のように化け物と会話している和田に恐怖すら覚えていました。
オレにとって、
奴らは恐怖の象徴です。
その象徴と仲良くするなど、
幼いころから恐怖にさらされ続けていたオレには
とても考えられません。
オレは勉学に励み、クラスメイトと親交を深めつつも、
例の和田とだけは、なるべく会話をしないようにしていたのです。
そして、そんなある日。
授業を終え、自宅に帰ろうと自転車にまたがったオレは、
ペンケース一式を教室に忘れたことに気づきました。
面倒だな、と思ったものの、
自習するにも筆記用具がなければ始まりません。
仕方なしに、自転車を元に戻し、
あの教室へ戻ることにしたのです。
夕方の校舎内はまだ部活動をしている学生も多く、
ざわざわと人の気配が所せましと動いています。
そんな光景の場所場所に、
小さくうごめく赤い目玉だとか、
天井からぶら下がる生首だとかが、
まるで当たり前の顔をして存在している。
オレは極力それらを目に入れないようにして、
そそくさと教室へ入りました。
「ああ、そーなんだぁ。
大変なんだねぇ……って、あれ、一村くん」
「あ……和田」
誰もいないと思っていた教室。
そこには、あの化け物と語り合う和田の姿がありました。
「どうしたの? 忘れ物?」
「あ、ああ……ちょっとな」
声をかけてくる和田の方へ視線を向けないようにしつつ、
ゴソゴゾと机の中を漁ります。
「……あった」
ホッとペンケースを取り出した、
その瞬間。
――視界の端に、
キラリと光る銀の鎌。
「っう、わあっ」
外聞も忘れ、
思わず飛びのくようにして尻もちをつきました。
突如真横に現れた死神は、
ジィっと空洞の目でこちらを見下ろしています。
「な……な……」
「あっ、やっぱり。一村くん、見えてるんだねぇ」
ハッとしましたが、すでに遅し。
和田はニコニコと笑みを浮かべて、
「一村くん、この子のいるあたり、わざと見ないようにしてるでしょ。
変だなぁって思ってたんだけど、やっぱりそうかぁ」
「わ、和田……お前も、見えてんだな」
「もちろん。まさか、他のみんなが見えてないなんて思わなくって。
こんなにカワイイのに」
「……は?」
最後に耳に入った単語に、
オレは思わず固まりました。
「オイ、今……カワイイ、って言ったか」
「え? うん。一村くんにも見えてるんでしょ?」
キョトン、と首を傾げる和田は、
とてもウソをついているようには見えません。
オレは意図してそらしていた目線を、
そっと例のヤツに向けました。
「……ひっ」
しかし、そこに佇むのは、
やはり不気味な死神然としたしゃれこうべのみ。
「あ、一村くんって、見た目に反してシャイなんだね」
「ち、ちが……っ」
つい否定しようと口を開いたものの、
例のアレからの強烈な視線を感じ、
思わず口をつぐんでしまいました。
「あっ、もうこんな時間! 一村くんも帰るんでしょ」
「あ、ああ……」
”これ”と教室で二人っきりなど、
とても耐えられません。
学生カバンを引っ掴み、
慌てて教室を出ていく和田の後に続きました。
>>
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2026/1/2:『そうしき』の章を追加。2026/1/9の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/1:『いえい』の章を追加。2026/1/8の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/31:『たこあげ』の章を追加。2026/1/7の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/30:『ねんがじょう』の章を追加。2026/1/6の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/29:『ふるいゆうじん』の章を追加。2026/1/5の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/28:『ふゆやすみ』の章を追加。2026/1/4の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/27:『ことしのえと』の章を追加。2026/1/3の朝8時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
百の話を語り終えたなら
コテット
ホラー
「百の怪談を語り終えると、なにが起こるか——ご存じですか?」
これは、ある町に住む“記録係”が集め続けた百の怪談をめぐる物語。
誰もが語りたがらない話。語った者が姿を消した話。語られていないはずの話。
日常の隙間に、確かに存在した恐怖が静かに記録されていく。
そして百話目の夜、最後の“語り手”の正体が暴かれるとき——
あなたは、もう後戻りできない。
■1話完結の百物語形式
■じわじわ滲む怪異と、ラストで背筋が凍るオチ
■後半から“語られていない怪談”が増えはじめる違和感
最後の一話を読んだとき、
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百物語 厄災
嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。
小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
(ほぼ)1分で読める怖い話
涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話!
【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】
1分で読めないのもあるけどね
主人公はそれぞれ別という設定です
フィクションの話やノンフィクションの話も…。
サクサク読めて楽しい!(矛盾してる)
⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません
⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる