【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~

榊シロ

文字の大きさ
71 / 415

32.屋根裏部屋の不思議な小箱②(怖さレベル:★☆☆)

しおりを挟む
それから、彼のうちで遊ぶときには、
この秘密基地にこもることが多くなりました。

さすがにTVゲームは持ち込めないし、
訪れる時間によっては暗くてとてもいられないこともあって、
毎回というわけにはいきませんでしたが。

そこで遊ぶたびに、オレもコースケ君も、
例の小箱を力ずくで押したり引いたり叩いてみたり、
やれるだけのことはやってみました。

一度、水に濡らしたり、マッチであぶってみたりなど
考えられる手段をいろいろ使ってみましたが、
これがまた、まったく動く気配すらありませんでした。

「片岡ぁ、今日もやるぞ!」
「うん」

その日も彼のうちにお邪魔することになり、
いつものように脚立を伝い、
屋根裏部屋へと移動します。

何度も訪れたそこはすっかりオレたちの
秘密の部屋と化していて、
空っぽだった空間には、マンガ雑誌や持ち込まれた
お菓子などがバラバラと点在していました。

「今日はとっておきのヤツ、持ってきたんだぜ!」

彼が背負ったリュックの中から、
何やらゴソゴソと取り出します。

小さな袋に入った白い粉と、
小粒のガラス玉が連なったリング。

「……塩、と、数珠?」

なぜそんなモノが出てくるのだろう、と
疑問符を飛ばしていると、

「おう! こないだ葬式であんなような箱を
 見たんだ。だからやってみよーと思ってさ」

葬式で、黒い箱?

オレは自分の行ったことのある葬式を思い返しつつ、
首を傾げていましたが、
彼は上機嫌で箱の前に陣取り、
さっそく白い粉を手にとりました。

「えっと……どうやるの?」
「わかんねぇ! 葬式の箱はフツーに開いてたし。
 でもたぶん、こうやって……」

ブツブツと呟きつつ、彼はその小袋を開けて、
中身をすべて箱にぶちまけます。

「えーっと、そんで、えいやっ!」

右手に持っていた数珠を、
バシン! とその箱に叩きつけたのです。

「あっ」

バラバラバラ……。

箱に打ち付けられた数珠は、
無残にも紐がちぎれて崩れ去ってしまいました。

「うへぇ……母ちゃんに怒られる……」
「あ、コースケ君、みてみて!」

あわあわと焦る彼の肩を、
オレは思わずむんずと掴みました。

「開いてる……開いてるよ!!」

今の衝撃のせいでしょうか。

それとも本当に、塩と数珠の効果ゆえか。

何をしても開くことの無かったあの箱の蓋――
それがほんの僅か、動いていたのです。

「うわ、マジか……っ!」

ゴクリ、とコースケ君が息を飲みました。

オレも、いざ開いてしまったそれを前にすれば、
どうにも躊躇してしまって、手を出すことができません。

「……よし。オイ、片岡。
 オレが塩とか数珠とかやったんだからさ、
 お前が開けろよ」
「えっ、ええっ!?」

不意に彼に指名され、オレはおののきました。

「フタ、動かしたんはオレだろ?
 お前もちょっとはコーケンしろよ」

と、彼はあっけらかんと言い放ちました。

確かに、オレは彼のやることをずっと眺めていただけで、
何もしていません、

そう言われてしまえば、オレとて一介の男、
グッと唇を引き結んで、例の小箱の前にしゃがみこみました。

「……。……っ、行くよ」
「……おう」

緊張で震える指先にギュッと力を込めて、
箱の蓋を両手でしっかり握り――
グッ、と上に動かしました。

パカッ。

開けるまでの苦労がウソであったかのごとく、
あまりにあっけなくそれは動きました。

そして、それがどけられたその先には。

「……へ、え?」

紙きれが、一枚。

ふかふかとした銀色のクッションの上に、
土色にしおれた紙が収まっていたのです。

「なんだ……こりゃ?」

後ろから覗きこんでいたコースケ君が、
ひょいっとそれを手にとります。

「うわ、古っ…それに、汚ねぇ」

彼の持つそれをまじまじと見やれば、
なにかシミのようなものまで滲んでいます。

表面には、読めないくらい画数の多い漢字が、
なにごとかびっしりと書き込まれていました。

「あ、それ……お札、じゃないかな」
「お札? ああ、アレか。お化け退治に使うやつか」
「うん、たぶん……」

小学生のお札への認識なんてその程度のものです。

オレはその札を物珍しそうに眺める彼を放置し、
開いた箱の方に目を向けました。

「コースケ君、それ、箱に戻さなくていいの?」
「お札だろ? カッケーから、これ、お守りにする!」

彼はその札を掲げるように持ち上げ、
ウロウロと上機嫌で歩き回っています。

「えーっ、ズルい!」
「あー……じゃ、半分こにするか!」

言うが早いか。

彼はなんの躊躇もなく、
それを真っ二つに引き裂いてしまったのです。

「えっ……こ、コースケ君!?」
「キレーに分かれたな! ほら、半分」

カラリと笑った彼は、悪気もなくその半分をオレに手渡し、
自分もその半分を大事そうにズボンのポケットに差し込みました。

「よし! 目標達成だな!
 あとは下でゲームでもやろうぜ」
「う、うん……」

ニコニコと満面の笑みの彼は、
放られていた箱を屋根裏の隅へ戻し、
いつもの出入り口から下を覗きました。

>>
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

洒落にならない怖い話【短編集】

鍵谷端哉
ホラー
その「ゾワッ」は、あなたのすぐ隣にある。 意味が分かると凍りつく話から、理不尽に追い詰められる怪異まで。 隙間時間に読める短編ながら、読後の静寂が怖くなる。 洒落にならない実話風・創作ホラー短編集。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

霊和怪異譚 野花と野薔薇[改稿前]

野花マリオ
ホラー
その“語り”が始まったとき、世界に異変が芽吹く。 静かな町、ふとした日常、どこにでもあるはずの風景に咲きはじめる、奇妙な花々――。 『霊和怪異譚 野花と野薔薇』は、不思議な力を持つ語り部・八木楓と鐘技友紀以下彼女達が語る怪異を描く、短編連作形式の怪異譚シリーズ。 一話ごとに異なる舞台、異なる登場人物、異なる恐怖。それでも、語りが始まるたび、必ず“何か”が咲く――。 語られる怪談はただの物語ではない。 それを「聞いた者」に忍び寄る異変、染みわたる不安。 やがて読者自身の身にも、“あの花”が咲くかもしれない。 日常にひっそりと紛れ込む、静かで妖しいホラー。 あなたも一席、語りを聞いてみませんか? 完結いたしました。 タイトル変更しました。 旧 彼女の怪異談は不思議な野花を咲かせる ※この物語はフィクションです。実在する人物、企業、団体、名称などは一切関係ありません。 本作は改稿前/改稿後の複数バージョンが存在します 掲載媒体ごとに内容が異なる場合があります。 改稿後小説作品はカイタとネオページで見られます

『ショート怪談』訪れるもの

見崎志念
ホラー
一話完結のお話をぽつぽつとしたためております。ドロッとしたよくわからないものに対しての恐怖をお楽しみください

処理中です...