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64.ダムに潜む黒い影①(怖さレベル:★★☆)
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(怖さレベル:★★☆:ふつうに怖い話)
『20代女性 安田さん(仮)』
ダム巡り、って聞いたことあります?
ほら、寺院でよく御朱印巡りとかあるでしょう。
ダムにも、ダムカードっていうコレクションアイテムがあって、
なにかイベントをやっている時とか、かなりの人が集まるんだそうですよ。
かくいう私も、正直、ダムなんて行ったって、
ただの水がたくさん溜まっているだけで、たいして面白くもないだろう、
って最初は思っていて。
友人に誘われた時も、あまり気乗りしなかったんです。
でも、その日が何年かに一度、
ダムの水を排水する水門の一斉放流をやる、っていうので、
じゃあ、行ってみようか、って誘いに乗ることにしたんです。
「っわ、涼し~」
駐車場に到着してそうそう、そんな感想が口をつきました。
やはりダムが造られるような場所ともなれば、かなりの山の奥地です。
山道をぐるぐると走り、何度もナビを確かめてようやくたどり着いたその駐車場は、
まだ午前中であるにかかわらず、すでにごった返していました。
「うわぁ……これ、みんな例の放流のお客さん?」
「そうそう、すごいでしょ。なんせ一大イベントだからねぇ」
と、私をここまで連れてきた友人の広瀬がケラケラと笑い声を上げ、
かろうじて開いていた端っこの駐車スペースに車を駐車しました。
「歩きやすい靴で、って言ってたのキチンと守ってるね? こっから歩くよ~」
「え、っ?」
「この駐車場から上まで、かなりの距離があるからね!
とうぜん、ダム近くの駐車場なんてとても停められないし。
日々の運動不足をケアするってことで、がんばろ~」
と、まさかの山登りが開始されることとなったのです。
「きっ、つー……」
歩き始めて、しばし。
緑に囲まれ、舗装された道を進むのはたしかに心地よく、
友人に先導される形で、上機嫌で歩いていました。
そう――最初は。
「ほらほら、まだ先は長いよ!」
「う、うぅ……さ、先に行って……」
「もー、なに情けないこと言ってんの。さぁさぁ行くよ!」
慣れているのか、未だ元気はつらつな友人に急かされつつ、
私はゆっくりながら、再び足を動かし始めました。
「あ、ほらほら、ちょっと見えてきたでしょ。あれ、ダムだよ」
「……えー?」
友人が、張り切ったように声を上げます。
その指の示す方向をぼんやりと見上げれば、確かに気の向こう、
鉄の巨大な建造物が目に入ってきました。
「うわぁ、すご……あ、れ?」
その、鈍色の外壁。
横に流れる川の頂点に君臨する壁のてっぺんに、
黒い人影が見えるのです。
(人? でも、あんなところに……?)
いくらイベントとはいえ、どう見ても危険であるそのダムの上。
通常であれば立ち入り禁止間違いなしな、ちょっと足を踏みはずしたら
水面下に真っ逆さまであろうその場所。
そこに、ウロウロと蠢く、三~四人ほどの黒い影がチラついていました。
「ね、今日のイベントってダムの上とか上がれるの?」
思わず傍らの友人に尋ねれば、彼女はキョトンと首を傾げ、
「いちおー、中にエレベーターがあって、上に上ることはできるよ?」
とにべもなく答えました。
(あぁ、なんだ。じゃあ別に変なことじゃないんだ)
てっきり、このイベントにかこつけて、
はしゃいだ一部の人たちがイタズラでもしているのかと思いましたが、
どうやらそういうワケではなさそうです。
「なに? 興味わいた?」
「ま、まぁ、ちょっとはね」
ウキウキと聞いてくる友人に半笑いで答え、
ハァ、とバレぬように小さくため息をつきました。
ダムがあの位置に見えるということは、
まだかなりの距離を歩かねばいけないということです。
重い脚をダラダラと引きずり、私は残りの山道を睨み上げました。
「つ……ついた」
棒のようになった足を引きずり、私は長いため息を吐き出しました。
「っわ、なにこれ……すごい」
たどり着いた水門は、写真で目にした時よりもかなりの圧迫感をもって目前に立ちふさがります。
灰色の足場から見上げるようにして存在する大きな壁のごとき水門のうち、
四つある水弁のうちすでに二つが口を開けており、激流がドバドバとあふれ出していました。
泡立ってまっ白に染まった滝のごとき水流は、轟音と共にこちらを圧倒してきます。
「おーっ、この時点でけっこうスゴいねぇ!」
友人はまだ体力に余裕があるらしく、デジカメを片手にキャイキャイと騒いでいます。
「それにしても、人……多いねぇ」
そして、その滝のふもとに群がるようにして、大勢の人が集っていました。
ダムの下、ある程度広さのある通路沿いにはいくつも屋台が並べられ、
なにか戦隊もののキャラクターに身を扮した人や、
ご当地キャラクターらしき着ぐるみがウロウロと歩き回っています。
意外にも子どもの数も多くみられ、
うろちょろとダムの水面をのぞき込んでいます。
>>
『20代女性 安田さん(仮)』
ダム巡り、って聞いたことあります?
ほら、寺院でよく御朱印巡りとかあるでしょう。
ダムにも、ダムカードっていうコレクションアイテムがあって、
なにかイベントをやっている時とか、かなりの人が集まるんだそうですよ。
かくいう私も、正直、ダムなんて行ったって、
ただの水がたくさん溜まっているだけで、たいして面白くもないだろう、
って最初は思っていて。
友人に誘われた時も、あまり気乗りしなかったんです。
でも、その日が何年かに一度、
ダムの水を排水する水門の一斉放流をやる、っていうので、
じゃあ、行ってみようか、って誘いに乗ることにしたんです。
「っわ、涼し~」
駐車場に到着してそうそう、そんな感想が口をつきました。
やはりダムが造られるような場所ともなれば、かなりの山の奥地です。
山道をぐるぐると走り、何度もナビを確かめてようやくたどり着いたその駐車場は、
まだ午前中であるにかかわらず、すでにごった返していました。
「うわぁ……これ、みんな例の放流のお客さん?」
「そうそう、すごいでしょ。なんせ一大イベントだからねぇ」
と、私をここまで連れてきた友人の広瀬がケラケラと笑い声を上げ、
かろうじて開いていた端っこの駐車スペースに車を駐車しました。
「歩きやすい靴で、って言ってたのキチンと守ってるね? こっから歩くよ~」
「え、っ?」
「この駐車場から上まで、かなりの距離があるからね!
とうぜん、ダム近くの駐車場なんてとても停められないし。
日々の運動不足をケアするってことで、がんばろ~」
と、まさかの山登りが開始されることとなったのです。
「きっ、つー……」
歩き始めて、しばし。
緑に囲まれ、舗装された道を進むのはたしかに心地よく、
友人に先導される形で、上機嫌で歩いていました。
そう――最初は。
「ほらほら、まだ先は長いよ!」
「う、うぅ……さ、先に行って……」
「もー、なに情けないこと言ってんの。さぁさぁ行くよ!」
慣れているのか、未だ元気はつらつな友人に急かされつつ、
私はゆっくりながら、再び足を動かし始めました。
「あ、ほらほら、ちょっと見えてきたでしょ。あれ、ダムだよ」
「……えー?」
友人が、張り切ったように声を上げます。
その指の示す方向をぼんやりと見上げれば、確かに気の向こう、
鉄の巨大な建造物が目に入ってきました。
「うわぁ、すご……あ、れ?」
その、鈍色の外壁。
横に流れる川の頂点に君臨する壁のてっぺんに、
黒い人影が見えるのです。
(人? でも、あんなところに……?)
いくらイベントとはいえ、どう見ても危険であるそのダムの上。
通常であれば立ち入り禁止間違いなしな、ちょっと足を踏みはずしたら
水面下に真っ逆さまであろうその場所。
そこに、ウロウロと蠢く、三~四人ほどの黒い影がチラついていました。
「ね、今日のイベントってダムの上とか上がれるの?」
思わず傍らの友人に尋ねれば、彼女はキョトンと首を傾げ、
「いちおー、中にエレベーターがあって、上に上ることはできるよ?」
とにべもなく答えました。
(あぁ、なんだ。じゃあ別に変なことじゃないんだ)
てっきり、このイベントにかこつけて、
はしゃいだ一部の人たちがイタズラでもしているのかと思いましたが、
どうやらそういうワケではなさそうです。
「なに? 興味わいた?」
「ま、まぁ、ちょっとはね」
ウキウキと聞いてくる友人に半笑いで答え、
ハァ、とバレぬように小さくため息をつきました。
ダムがあの位置に見えるということは、
まだかなりの距離を歩かねばいけないということです。
重い脚をダラダラと引きずり、私は残りの山道を睨み上げました。
「つ……ついた」
棒のようになった足を引きずり、私は長いため息を吐き出しました。
「っわ、なにこれ……すごい」
たどり着いた水門は、写真で目にした時よりもかなりの圧迫感をもって目前に立ちふさがります。
灰色の足場から見上げるようにして存在する大きな壁のごとき水門のうち、
四つある水弁のうちすでに二つが口を開けており、激流がドバドバとあふれ出していました。
泡立ってまっ白に染まった滝のごとき水流は、轟音と共にこちらを圧倒してきます。
「おーっ、この時点でけっこうスゴいねぇ!」
友人はまだ体力に余裕があるらしく、デジカメを片手にキャイキャイと騒いでいます。
「それにしても、人……多いねぇ」
そして、その滝のふもとに群がるようにして、大勢の人が集っていました。
ダムの下、ある程度広さのある通路沿いにはいくつも屋台が並べられ、
なにか戦隊もののキャラクターに身を扮した人や、
ご当地キャラクターらしき着ぐるみがウロウロと歩き回っています。
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うろちょろとダムの水面をのぞき込んでいます。
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