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第三章「レゼンタック」

第三十一話「ピンチヒッター」

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 そうだ、思い出した。
 コビーさんだ。
 ウォロ村に来ていた行商人。

「アレンさん、どうかしましたか?」

「その……、ケイは今、体調不良で……」

「長居はしないので」
「少し顔を見たら帰りますよ」

 俺はコビーさんから簡単に逃げられると思っていたが、あっという間に押され始めている。

 ……どうしよう。
 断るための嘘が思い浮かばない。

 そもそも体調関係なしにケイはコビーさんに会いたいのだろうか。
 たぶん会いたくない。

 ……大ピンチ。



 ふと気づくと、俺はコビーさんと一緒にヒナコの家の宿の前まできていた。
 俺は引き戸を開けて玄関に入る。

「……ちょっとケイに聞いてきますね」

 俺はコビーさんを玄関に待たせてダイニングに早足で向かった。

「あれ?」
「アレンのお客さん?」

「そう、ちょっと戻って」

 俺は物音に気付いてダイニングから廊下に出てこようとしていたヒナコの肩を抱いてダイニングに押し返した。

「え、なに……」

「あの人はコビーさんって名前なんだけど、ケイの知り合い」
「それでケイに会いたいって言ってる」
「だけどケイはあの人の事あんまり好きじゃない」
「助けて」

 俺は顔を赤くするヒナコに早口で淡々と状況を説明する。

「……うん、いいよ」
「その代わり貸し11個
 ヒナコはそう言うと玄関にいるコビーさんをダイニングに招き込んだ。

 俺はコビーさんにケイの様子を見てくると言い訳をして二階に戻る。


「おかえり」

「ただいま」

 ケイは居間でゴロゴロしていた。
 今朝よりも体調は良さそうだ。

「誰かいるの?」

「……コビーさん」

 俺がコビーさんの名前を出すと、ケイはあからさまに嫌な顔をする。

「挨拶しなきゃダメかな?」

「体調わるいんだから寝てな」

「わかった」

 ケイは返事をすると一目散に寝室に行き、既に敷いてあった布団に潜った。

 俺は部屋着に着替えてヒナコとコビーさんの様子を見に一階に戻る。

 ……少し気持ち悪い。


 ダイニングに行くと、キッチンでヒナコが夕食の準備をしていた。

「あれ、コビーさんは?」

「明日またくるって」
「その時は自分でなんとかしてよ」

 俺が着替えている間に、ヒナコはコビーさんを追い返したようだ。

 さすが。

 俺はコップにお茶を注ぎ、椅子に腰を下ろした。

 ケイと二人きりでいるのも気まずい。

「ケイの事でお金が必要になったら言ってね」
「出してもらうのは悪いから」

 俺はキッチンにいるヒナコに少し大きな声で話しかける。

「だったら一緒に買い物にいったら?」

「いや、それはさ……」

「冗談!」
「あとでレシート渡すね!」
「だけどこれで貸し2個目だから!」

 ヒナコの笑い声がキッチンから聞こえてくる。

 なんだかこの宿での俺の立場がどんどん低くなっていく気がするな……
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