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第三部 異世界建築士と思い出の家
第213話:失踪
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リトリィが泣いている。
さめざめと。
俺の言葉を全く受け入れず。
ただ泣き続けるだけなのだ。
「リトリィ、教えてくれ。泣いてるってことは、俺が悪かったんだろ? 教えてくれ、すぐに改める。リトリィを泣かせる俺でいたくないんだ」
彼女が泣くということは、俺に落ち度があったはずなんだ。
ならば、その原因を確かめて、二度と彼女を泣かせない俺になりたい。
なのに、どうして。
リトリィは、家に着いた途端、何かの糸でも切れたのか。
つうと涙をこぼしたかと思ったら、立ちすくんだまま、ただ、ぽろぽろと涙をこぼしはじめたのだ。
もちろん俺は驚いたし、買ってきた食材やら何やらを放り出して彼女をなだめ、とりあえずソファに座らせることはできたのだが。
「リトリィ、泣いてるだけじゃ、俺は分からないんだ。何が辛かったんだ? 俺の何が悪かった? 教えてくれ、……頼む」
どうしていいかわからず、ただ涙をこぼし続ける彼女を抱きすくめる。
彼女は答えてくれない。
俺の問いかけにも、謝罪にも。
ただただ、泣き続けるだけなのだ。
俺が悪かったのだろう。
では、何が悪かったのか。
今日の一日を振り返る。
午前中はリトリィとマイセルの二人を連れてギルドに行き、階級章を手に入れた。
会いたくもなかったリファルとひと悶着はあったが、そう大したことはなかった。
午後はシヴィーさん宅に行き、リフォームの提案をした。話はほとんど進まなかったが、とりあえずゴーティアスさんは寝室の壁に並々ならぬ執心を抱いていたことは分かった。
前に訪問したときには、亡き夫や息子と暮らした家を変えたくない、といったような理由を上げていた。それに比べれば、手を付けてはいけない場所、それ以外の場所の線引きは共有できたのだから、話は進められたと言っていいだろう。
リトリィが泣いているのは、この二つの出来事のうち、どちらか、あるいは両方で、俺が何かやらかしたせいに違いない。
じゃあ、何を?
「リトリィ、教えてくれよ……。俺はどうすればいい? どうすればよかったんだ? 泣くなって言ってるんじゃないんだ、君を泣かせない俺になりたいんだ」
だが、俺の嘆願は、腕の中のリトリィに、届いてくれない。
もどかしい。
こんなにも愛おしい彼女が、理由を教えてくれずに、ひとりで涙にくれている。
なぜだ。なぜ答えてくれない。
どうして俺の想いに応えてくれない。
ああ、もう、いい加減にしてくれ。
――いい加減にしてくれ!
「……抱けば泣き止むって、そう思っていたんですか?」
久々に聞いた気がする言葉が、胸を穿つ。
「……ムラタさんも結局、そういうひとなんですね……」
俺に目を合わせようとせずに、彼女は、淡々と、言葉を吐く。
怒りでもない。
悲しみでもない。
……ただ失望を隠せない、それを、吐き出すように。
「……じゃあ、どうすればよかったんだ!? リトリィ、君はずっと泣くばかりで、俺に何も言わなかっただろ! なにも教えてくれなかっただろ!!」
思わず、腹立ちまぎれに叫んでしまった俺を、リトリィは、虚ろな目で見上げた。
「……だから、わたしを、抱くんですか? 泣いてばかりで、なにもこたえなかったから、抱いたんですか?」
「……それは……」
「あなたも、女の子は抱けば言うことを聞くようになる――そう考えるひとだったんですね……」
――「も」ってなんだよ。
「も」ってなんだよ……!!
「も」ってなんだリトリィ! 俺を、何と一緒だと見なしている!!
思わずもう一度ソファに押し倒し、そして、
うつろに開かれた、
だれもみていない彼女の瞳に、
俺の、
歪んだ顔が映るのを見て、
……俺は。
「……抱かないんですか? 抱けばいいじゃないですか」
俺は確かにあの夜、彼女の初めてを奪った。
彼女が俺以外の誰とも寝たことがないその証を、俺は確かに手に入れた。
それは、分かっているんだ。
分かっているのに、どうしようもなく嫉妬に荒れる俺がいる。
俺も、女は抱けば言うことを聞くようになると思っている――リトリィは確かにそう言ったのだ。
俺「も」って、どういう意味だ。
「わたしは、あなたのリトリィです。あなただけの、女です。お好きになさればいいじゃないですか。いまさら、なにをためらうんですか」
『あなたのリトリィです』
ナリクァンさんの家の庭で聞いた時、これほどまでに彼女を愛おしく思える言葉はなかったように感じた。
なのに、今は、呪詛としか受け取れない。
深々と打ち込まれた楔のように。
「リトリィ、俺は……!」
「どうぞ、お好きになさってください。仔を産めぬ獣臭い体ですけど、あなたのものなのですから」
「リトリィは、俺を、何だと思っているんだ!!」
「わたしの夫となるかたです。仔も産めぬわたしを憐れんでくださって、おそばにおいてくださる、慈悲深いかたです」
逆上というのは、まさにこの時の俺を指す言葉だったのだろう。
どう考えても、皮肉としか受け取れない言葉に、
俺は、彼女にそう言われたことに絶望し、嘆き、悲しみ、憤り、
彼女の長い髪を掴み、引き倒し、
そして、蹂躙した。
彼女は痛いとも、もちろんいいとも、言わなかった。
ただ無言で、暴風をやりすごした――そのようにみえた。
うつろなまなざしで、ただ、無言で。
俺は、終生、悔い続けるだろう。
水がめに水を飲みに行った、その瞬間を。
乱れた髪も整えず、体液に汚れた体を清めようともせず、ただ虚ろに天井を見つめ、うわごとのように「わたしは、ムラタさんの女ですから――」とつぶやき続けるリトリィを置いて。
キッチンから戻ったとき、
リトリィは、
ソファーにいなかった。
二階に上がるための階段は、キッチンのそばにある。
俺は、キッチンの水がめで水を飲んでいた。
だれも、キッチンに来ていなかった。
だから、リトリィは二階になど上がっていない。
そんなことも理解しようとせず、俺はごく単純に、先に彼女が二階に上がったのだと思い込んだ。
あの、俺を呪うかのようにつぶやき続けていたリトリィと眠る。
正直、うんざりとしていた。瀧井さんが、獣人は情が深いと言って笑っていたことを思い出す。
――情が深いって、こういう意味ですか?
あの泣き言を、なんとかなだめながら寝ることになるのか。
そんな、筋違いのいらだちすら覚えながら二階に上り、そして、ベッドが空なことを知ることになる俺を、殴りつけたい。
どうしてあのとき、彼女が出て行った可能性に、考えを巡らせなかったのか。
床にところどころ残る体液のあとは、確かに玄関につづいていたのに。
どうして、見落としてしまったのだろう。
白々と明けてきた夜の底を見て、走り続けて疲労困憊した俺は、とりあえず一度、家に帰ることにした。
彼女が戻っていることを期待して。
――そして、絶望した。
薄明けの空の明かりが、俺の罪を容赦なく責め立てる。
玄関に残る、ひときわ大きな、体液のしみ。
彼女から零れ落ちたそれ、己が彼女の胎内に吐き出した穢れ。
彼女は、戻ってきていなかった。
俺はベンチに座っていた。
早朝の、市場の活気をぼんやりと眺めながら。
どうしてこうなった。
俺は彼女を愛していたし、彼女も俺を愛してくれていたはずだった。
『けんかなんて、今後、いくらでもするだろう。
そのかわり、その分、お互いに話し合い、理解し合えるよう努力する』
ペリシャさんに対して偉そうに言った過去の自分の、その奢った考え方に、頭をかきむしる。
――何が話し合うだ。理解し合うだ。
リトリィは一言も発しなかった、俺に理解を求めなかった。
まるで、そうすることが無駄であるかのように。
あの、うつろな目が、脳裏に焼き付いて離れない。
山で、俺がさせてしまった、あの、死んだ笑顔を思い出す。
リトリィ。
俺は……何を間違ったんだ? どこで間違ったんだ?
「……リトラエイティル様はご一緒じゃないのか?」
聞き覚えのある声に、思わず全力で顔を上げる。
「……門番さん――」
「……フロインドだ」
見慣れた門衛騎士が、目の前に立っていた。
「けんかをした? あの穏やかな女性と?」
信じられないというか、呆れたというか――そんな目で俺を見る門衛騎士に、俺は思わず反論する。
「い、いや……仕事から帰ってきたら、急に泣き出したんだ。理由も教えてくれずに、ただ、泣き続けて――」
「女性が泣いていたならば、ずっとそばに寄り添っているだけでいいだろうに。くどくど質問などするからいかんのだ」
い、いや、普通泣いていたら、理由を聞いて、泣いている原因を何とかしようとするのが人間だろう? そう言うと、フロインドは、ますます呆れた表情になった。
「馬鹿か貴様は。女性が泣いているのは、泣くだけの理由があるからだ。だったら男は、あれこれ聞かずに、ただ寄り添って、話を聞いてやるだけだ。それ以外にできることなどあると思うのが間違っている」
「い、いや、だから! その理由を話してくれなかったから――!」
「聞くからだと言っただろう。話し始めるまで待てばいいものを、あれこれいらぬ世話を焼こうとするからそうなる」
完全に軽蔑されている。
くっそ、こんなクソ真面目を絵に描いたような顔をした奴に、女性の扱いについて説教されるとは。
「なぜ分かる、というような顔をしているが、そんなもの、当たり前のことだろう? むしろなぜ分からないのだ、いい年した男が」
悪かったな!
こちとら、この年になるまで女性と交際した経験なんてない、魔法使いまであと数年の童貞男だったんだよ!
「そう不満そうな顔をするな。貴様の話を聞いて、俺はいま、少々気がかりな案件が頭をもたげてきていてな」
「気がかり?」
「ああ……貴様にも、多少関係のあることだ」
「俺に、関係がある?」
「リトラエイティル様と関わる貴様だから忠告しておくんだからな。むやみに他言するなよ?」
そう言って、フロインドは、険しい表情を向けた。
「最近、獣人族の女性が失踪したという届け出が増えている」
さめざめと。
俺の言葉を全く受け入れず。
ただ泣き続けるだけなのだ。
「リトリィ、教えてくれ。泣いてるってことは、俺が悪かったんだろ? 教えてくれ、すぐに改める。リトリィを泣かせる俺でいたくないんだ」
彼女が泣くということは、俺に落ち度があったはずなんだ。
ならば、その原因を確かめて、二度と彼女を泣かせない俺になりたい。
なのに、どうして。
リトリィは、家に着いた途端、何かの糸でも切れたのか。
つうと涙をこぼしたかと思ったら、立ちすくんだまま、ただ、ぽろぽろと涙をこぼしはじめたのだ。
もちろん俺は驚いたし、買ってきた食材やら何やらを放り出して彼女をなだめ、とりあえずソファに座らせることはできたのだが。
「リトリィ、泣いてるだけじゃ、俺は分からないんだ。何が辛かったんだ? 俺の何が悪かった? 教えてくれ、……頼む」
どうしていいかわからず、ただ涙をこぼし続ける彼女を抱きすくめる。
彼女は答えてくれない。
俺の問いかけにも、謝罪にも。
ただただ、泣き続けるだけなのだ。
俺が悪かったのだろう。
では、何が悪かったのか。
今日の一日を振り返る。
午前中はリトリィとマイセルの二人を連れてギルドに行き、階級章を手に入れた。
会いたくもなかったリファルとひと悶着はあったが、そう大したことはなかった。
午後はシヴィーさん宅に行き、リフォームの提案をした。話はほとんど進まなかったが、とりあえずゴーティアスさんは寝室の壁に並々ならぬ執心を抱いていたことは分かった。
前に訪問したときには、亡き夫や息子と暮らした家を変えたくない、といったような理由を上げていた。それに比べれば、手を付けてはいけない場所、それ以外の場所の線引きは共有できたのだから、話は進められたと言っていいだろう。
リトリィが泣いているのは、この二つの出来事のうち、どちらか、あるいは両方で、俺が何かやらかしたせいに違いない。
じゃあ、何を?
「リトリィ、教えてくれよ……。俺はどうすればいい? どうすればよかったんだ? 泣くなって言ってるんじゃないんだ、君を泣かせない俺になりたいんだ」
だが、俺の嘆願は、腕の中のリトリィに、届いてくれない。
もどかしい。
こんなにも愛おしい彼女が、理由を教えてくれずに、ひとりで涙にくれている。
なぜだ。なぜ答えてくれない。
どうして俺の想いに応えてくれない。
ああ、もう、いい加減にしてくれ。
――いい加減にしてくれ!
「……抱けば泣き止むって、そう思っていたんですか?」
久々に聞いた気がする言葉が、胸を穿つ。
「……ムラタさんも結局、そういうひとなんですね……」
俺に目を合わせようとせずに、彼女は、淡々と、言葉を吐く。
怒りでもない。
悲しみでもない。
……ただ失望を隠せない、それを、吐き出すように。
「……じゃあ、どうすればよかったんだ!? リトリィ、君はずっと泣くばかりで、俺に何も言わなかっただろ! なにも教えてくれなかっただろ!!」
思わず、腹立ちまぎれに叫んでしまった俺を、リトリィは、虚ろな目で見上げた。
「……だから、わたしを、抱くんですか? 泣いてばかりで、なにもこたえなかったから、抱いたんですか?」
「……それは……」
「あなたも、女の子は抱けば言うことを聞くようになる――そう考えるひとだったんですね……」
――「も」ってなんだよ。
「も」ってなんだよ……!!
「も」ってなんだリトリィ! 俺を、何と一緒だと見なしている!!
思わずもう一度ソファに押し倒し、そして、
うつろに開かれた、
だれもみていない彼女の瞳に、
俺の、
歪んだ顔が映るのを見て、
……俺は。
「……抱かないんですか? 抱けばいいじゃないですか」
俺は確かにあの夜、彼女の初めてを奪った。
彼女が俺以外の誰とも寝たことがないその証を、俺は確かに手に入れた。
それは、分かっているんだ。
分かっているのに、どうしようもなく嫉妬に荒れる俺がいる。
俺も、女は抱けば言うことを聞くようになると思っている――リトリィは確かにそう言ったのだ。
俺「も」って、どういう意味だ。
「わたしは、あなたのリトリィです。あなただけの、女です。お好きになさればいいじゃないですか。いまさら、なにをためらうんですか」
『あなたのリトリィです』
ナリクァンさんの家の庭で聞いた時、これほどまでに彼女を愛おしく思える言葉はなかったように感じた。
なのに、今は、呪詛としか受け取れない。
深々と打ち込まれた楔のように。
「リトリィ、俺は……!」
「どうぞ、お好きになさってください。仔を産めぬ獣臭い体ですけど、あなたのものなのですから」
「リトリィは、俺を、何だと思っているんだ!!」
「わたしの夫となるかたです。仔も産めぬわたしを憐れんでくださって、おそばにおいてくださる、慈悲深いかたです」
逆上というのは、まさにこの時の俺を指す言葉だったのだろう。
どう考えても、皮肉としか受け取れない言葉に、
俺は、彼女にそう言われたことに絶望し、嘆き、悲しみ、憤り、
彼女の長い髪を掴み、引き倒し、
そして、蹂躙した。
彼女は痛いとも、もちろんいいとも、言わなかった。
ただ無言で、暴風をやりすごした――そのようにみえた。
うつろなまなざしで、ただ、無言で。
俺は、終生、悔い続けるだろう。
水がめに水を飲みに行った、その瞬間を。
乱れた髪も整えず、体液に汚れた体を清めようともせず、ただ虚ろに天井を見つめ、うわごとのように「わたしは、ムラタさんの女ですから――」とつぶやき続けるリトリィを置いて。
キッチンから戻ったとき、
リトリィは、
ソファーにいなかった。
二階に上がるための階段は、キッチンのそばにある。
俺は、キッチンの水がめで水を飲んでいた。
だれも、キッチンに来ていなかった。
だから、リトリィは二階になど上がっていない。
そんなことも理解しようとせず、俺はごく単純に、先に彼女が二階に上がったのだと思い込んだ。
あの、俺を呪うかのようにつぶやき続けていたリトリィと眠る。
正直、うんざりとしていた。瀧井さんが、獣人は情が深いと言って笑っていたことを思い出す。
――情が深いって、こういう意味ですか?
あの泣き言を、なんとかなだめながら寝ることになるのか。
そんな、筋違いのいらだちすら覚えながら二階に上り、そして、ベッドが空なことを知ることになる俺を、殴りつけたい。
どうしてあのとき、彼女が出て行った可能性に、考えを巡らせなかったのか。
床にところどころ残る体液のあとは、確かに玄関につづいていたのに。
どうして、見落としてしまったのだろう。
白々と明けてきた夜の底を見て、走り続けて疲労困憊した俺は、とりあえず一度、家に帰ることにした。
彼女が戻っていることを期待して。
――そして、絶望した。
薄明けの空の明かりが、俺の罪を容赦なく責め立てる。
玄関に残る、ひときわ大きな、体液のしみ。
彼女から零れ落ちたそれ、己が彼女の胎内に吐き出した穢れ。
彼女は、戻ってきていなかった。
俺はベンチに座っていた。
早朝の、市場の活気をぼんやりと眺めながら。
どうしてこうなった。
俺は彼女を愛していたし、彼女も俺を愛してくれていたはずだった。
『けんかなんて、今後、いくらでもするだろう。
そのかわり、その分、お互いに話し合い、理解し合えるよう努力する』
ペリシャさんに対して偉そうに言った過去の自分の、その奢った考え方に、頭をかきむしる。
――何が話し合うだ。理解し合うだ。
リトリィは一言も発しなかった、俺に理解を求めなかった。
まるで、そうすることが無駄であるかのように。
あの、うつろな目が、脳裏に焼き付いて離れない。
山で、俺がさせてしまった、あの、死んだ笑顔を思い出す。
リトリィ。
俺は……何を間違ったんだ? どこで間違ったんだ?
「……リトラエイティル様はご一緒じゃないのか?」
聞き覚えのある声に、思わず全力で顔を上げる。
「……門番さん――」
「……フロインドだ」
見慣れた門衛騎士が、目の前に立っていた。
「けんかをした? あの穏やかな女性と?」
信じられないというか、呆れたというか――そんな目で俺を見る門衛騎士に、俺は思わず反論する。
「い、いや……仕事から帰ってきたら、急に泣き出したんだ。理由も教えてくれずに、ただ、泣き続けて――」
「女性が泣いていたならば、ずっとそばに寄り添っているだけでいいだろうに。くどくど質問などするからいかんのだ」
い、いや、普通泣いていたら、理由を聞いて、泣いている原因を何とかしようとするのが人間だろう? そう言うと、フロインドは、ますます呆れた表情になった。
「馬鹿か貴様は。女性が泣いているのは、泣くだけの理由があるからだ。だったら男は、あれこれ聞かずに、ただ寄り添って、話を聞いてやるだけだ。それ以外にできることなどあると思うのが間違っている」
「い、いや、だから! その理由を話してくれなかったから――!」
「聞くからだと言っただろう。話し始めるまで待てばいいものを、あれこれいらぬ世話を焼こうとするからそうなる」
完全に軽蔑されている。
くっそ、こんなクソ真面目を絵に描いたような顔をした奴に、女性の扱いについて説教されるとは。
「なぜ分かる、というような顔をしているが、そんなもの、当たり前のことだろう? むしろなぜ分からないのだ、いい年した男が」
悪かったな!
こちとら、この年になるまで女性と交際した経験なんてない、魔法使いまであと数年の童貞男だったんだよ!
「そう不満そうな顔をするな。貴様の話を聞いて、俺はいま、少々気がかりな案件が頭をもたげてきていてな」
「気がかり?」
「ああ……貴様にも、多少関係のあることだ」
「俺に、関係がある?」
「リトラエイティル様と関わる貴様だから忠告しておくんだからな。むやみに他言するなよ?」
そう言って、フロインドは、険しい表情を向けた。
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