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第三部 異世界建築士と思い出の家
第300話:前日準備と騒夜祭(1/2)
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本当に何もかもがバタバタで、何もかもが目まぐるしく過ぎていった。
本当はゴーティアスさんの家のリフォームが完成していたら、俺はきっとさらに胸を張って式を挙げられただろうけれど、もう、時間切れだ。それだけが心残りだ。
中天に昇る月は、ほぼ、垂直にならんでいる。
明日は藍月の夜の日――いよいよ、結婚式。
「ムラタさん……? どうか、されたんですか?」
リトリィが身を起こし、俺の頬にキスをして聞いてくる。
なんでもない、と答えて、その頬にキスを返す。ふわふわの毛がくすぐったい。だが、それがいい。
やや赤紫がかった彼女の瞳が、潤んでいるためか妙になまめかしく感じられる。
さっき気づいたことだが、藍月の夜だけが特別なんじゃなくて、ここ数日のリトリィの貪欲さが、特別の夜が一夜だけではないことを物語っていた。
明日はさらに赤く染まるのだろう。まだ、息が若干上がっているところも艶っぽい。
「いや、ひどい騒ぎだったなって」
「今日の、前夜祭のことですか?」
リトリィがくすりと笑う。
「私も聞いたことがあるだけでしたから、あんなに楽しいとは思いませんでした」
た、楽しかったか?
どう考えても、ひどい目に遭わされたようにしか思えないんだが。
「ふふ、みんなが楽しめていたなら、それでいいんだと思いますよ?」
いや、リトリィも見ただろう? ナリクァンさんの豪快な投げっぷりを!
皿が突き刺さったんだぞ、ドアに!
被害を訴えた俺に、リトリィはその時のことを思い出したのかくすくすと笑う。
「ムラタさん、最初動けなくて、ゆっくりドアを見て、かたまって、指をさして、そのままふるえながらナリクァンさまを見て、どうしてか、両手を上げて……!」
なんとか笑うのを抑えようとしているらしいが、全然抑えられていない。
「ご、ごめんなさい。だってあんなに可愛らしいしぐさ、おもしろくって……!」
笑うのをごまかすように、俺に飛びついてくる。
それでもしばらく喉を鳴らしていたが、やっと落ち着いたところで、首筋をすんすんとかいできて、そしてぺろりと耳の裏を舐めてきた。
背筋がぞわりとする。
負けじと体をひねって彼女の両頬をとらえると、ベッドに押し付けて、そして、しばらく唇を重ねた。
▲ △ ▲ △ ▲
唇を重ねていたときだった、ドアが勢い良く開かれたのは。
朝食の片づけを終えて、キッチンで彼女を後ろから抱きしめながら、エプロンしか身に付けていなかった彼女の、その中身のぬくもりを、もう少しで堪能するところだったのに。
「ムラタさん! お姉さま! おはようございます! 明日の結婚式と前夜祭の準備に来ました!」
リトリィの悲鳴を聞きながら、ああもう、こういうタイミングなのだ、彼女が来るのはと、なかば悟りを開いたような気持ちだった。
マイセルはやっぱりマイセルだった。
準備に来てくれたのは嬉しいんだが、なんでこう、マイセルはこちらの都合の悪い時に限って突撃して来るのだろう。いや、日本と違ってすべてが手作りのこっちの世界、人手は少しでもあってほしいんだけどさ。
ウエディング会場があちこちに建っていて、
専属プランナーが「おすすめプラン」を提示し、
そこから値段と内容をにらめっこしながら進行内容を足し引きして計画を練り、
小道具などを準備しておけば、あとは勝手にやってくれる。
――それが、日本の結婚式、そして披露宴の準備だったように思う。
だが、こっちの世界にはそんなものはなかった。全部自分で準備しなければならない。とりあえずブーケの注文を忘れていたため、今日、慌てて花屋に注文しに行った。いやあ、自分で何もかも整えなければならないというのは大変だ。
でも、逆に言えば、変に気取る必要もないわけで、マイセルの話を聞きながら、なるべくシンプルな披露宴になるように心掛けた。
どうせ俺にはこの世界に友人なんていないし、リトリィも、この街にいる知り合いなど、たかが知れている。
それに、仕事上の上司とかそんなのを呼ぶ風習も無いんだそうだ。親しい友人と身内、それだけしか呼ばないのがこの世界の流儀らしい。
そのかわり、披露宴中は、宴を目にした通行人が勝手に入ってきて勝手に飲み食いして、そのかわり手持ちのいくらかをご祝儀として置いていく、というのがゲストのありようだそうで、なんともフリーダムだ。
そんなスタイルだから、準備した食い物がなくなってしまうこともよくあるらしい。そんなときはどうするかといえば、とにかく酒を振舞えば問題ないのだそうだ。招待客が勝手に持ち寄ってくるものもあるらしい。
実に手作り感あふれる披露宴! それ自体はいいんだが、まさに出たとこ勝負感も満載だ。
日本の、ウエディングプランナーに誘導されて、決められた時間内にあれやこれやと出し物を披露させられ、集合写真を撮ってハイそれまでヨ、なんてない。二時間でお開き、などという概念もない。
ちなみにお開きの概念がないということは、みな、好きな時に勝手に帰るという意味でもある。明日は仕事だ、というひとは早めに帰り、休みを取ってあるぞ、という剛の者は延々と楽しむのだ。
基本的には、文字通り、夜通し飲んで、食って、踊って、騒ぐ。翌朝までずっと。
藍月の日だけは「新婚カップルが、月が中天に差し掛かるころを挟んで数時間ほどいなくなるけど、気にしない」という暗黙の了解があるらしいが、それでも翌朝まで騒ぎ続けるのは変わらないらしい。
要するに、藍月の夜=子作りの夜というわけで、『新婚二人がいなくなったって理由なんて一つしかないから、ほっといて披露宴を楽しみましょう』というわけだ。
いや、もう少し遠慮しろよゲスト!
そんなわけで、料理の準備も大変なのだ。ただ、俺たちの場合は、例の炊き出しボランティアの奥様方が応援に駆けつけてくださって、本当に助かった。
俺はひたすら食材を買いに市場と家を往復させられ、リトリィとマイセルは奥様方に指導されながらひたすらキッチンで食材と格闘し続け、ようやくすべての仕込みの終わりが見えてきたのが九刻――およそ昼の三時ごろ。
ここから二時間がまた地獄で。
「なんですって? ダンスの練習をしていない?」
素っ頓狂な声を上げたのはフォロニアさん。前に建っていた小屋を俺がぶち壊してしまった時、俺と一緒に役所に行きたがったリトリィを引きはがして、笑顔で美容室まで引きずっていったご婦人だ。
切れ長の目に泣きぼくろがセクシーな美女(だったことを想像させるひと)だが、パワフルさもひときわで、すぐさまレッスンが始まった。料理は残りの奥様方に任せ、俺とマイセルを組ませて手拍子とラララ口伴奏で、ときに俺の手を掴んで文字通り振り回すように。
いや、披露宴で新婚夫婦がダンスを披露するのは必須、というのは、聞いてはいたんだよ。
でもダンスなんて面倒くさいし、俺は仕事があるし、リトリィも俺と一緒に仕事場に来てくれていたから練習する時間もないしと、適当に誤魔化す、なんなら無しでもいいかなと勝手に思っていたのだ。
そんな俺の『暴論』に、マイセルは顔に絶望的な色を浮かべ、リトリィも絶句。「何もおっしゃられないから、自信があるんだと思っていました」と、二人が口をそろえるものだから、フォロニアさんにめちゃくちゃ叱られながら仕込まれた。
とはいっても、ダンスなんて中学時代の宿泊研修でマイムマイムを踊ったくらいで、あとは体育の授業の創作ダンスくらいしか経験がない。最終的にはため息とともに、最低限のステップを踏めるようになったことで解放された。
死ぬほどヘロヘロになったけど、驚いたのはリトリィの心得だった。マイセルは一通り、無難にできる感じで、これは母親のネイジェルさんによる仕込みらしい。リトリィはというと、なんと俺とマイセルの練習を見て覚え、その場でできるようになってしまった。
「いま、覚えましたから」
そう言って、俺の手を取り振り回すようにしながら、危なげなくステップを踏む彼女に、俺は心底驚いた。
「操り人形と人形繰り、そのものね」
フォロニアさんをはじめ、奥様方に笑われながら、ひょっとして俺、何も覚えなくていいんじゃないか、と思ってしまったくらいに。
ドカッ!
「あら、どうしてよけたのかしら?」
死ぬ! 死にますって!
まだ真新しい家のドアの前で、
ドアに突き刺さった皿を見て、
俺は嫌な汗を首に流しながら、
ぎぎぎっと音を立てるように、
ゆっくりと投げた主を見やる。
「さ、刺さってますけど……?」
フライングディスクを投げるが如く、深く捻られた体勢からの見事なサイドスローによって放たれた真っ白な皿が、ドアに刺さっているのである。
一応、半分ほどに割れているし、その半分はドアに当たって粉々に割れているんだが、その残りの半分が、ものの見事に、木製のドアに突き刺さっているのだ。
「大丈夫よ。きちんと割れていますから。ああよかった、割れていなかったら縁起が悪かったところですわね」
そういう問題か!?
ていうかお集まりの皆さん、指をさして笑うところなんですかね!?
っておいマイセル! 君まで笑うのかよ!
そんな、家のドアに豪快に突き刺さった皿に戦慄するところから、結婚前夜のお祭り――騒夜祭が始まった。
何をやるかといったら、陶磁器の皿を割る。
ひとんちの前で、ひたすら割る。
それだけ。
そりゃあもう、ご近所さんやマイセルの知り合いたちが、めいめい持ち寄った皿を、家の前の道路にぶちまけて割りまくるのだ。何なんだこの騒ぎ!
皿に限らず、壺なんか持ってくる人もいる。オイちょっとまてよ! そんな一抱えもあるような壺を持ってくるんじゃないって!
さらに、ナリクァンさんがなぜか馬車から大量の皿を下ろさせ、通行人に配ってかち割らせるのだ! ちょっと! やり過ぎじゃありませんかね!?
足の踏み場がないどころじゃないよ! 皿とかカップとか壺とか花瓶とか、好き放題にかち割りやがって!
ていうか名も知らぬそこのオッサン! その形、絶対に尿瓶だろ!
本当はゴーティアスさんの家のリフォームが完成していたら、俺はきっとさらに胸を張って式を挙げられただろうけれど、もう、時間切れだ。それだけが心残りだ。
中天に昇る月は、ほぼ、垂直にならんでいる。
明日は藍月の夜の日――いよいよ、結婚式。
「ムラタさん……? どうか、されたんですか?」
リトリィが身を起こし、俺の頬にキスをして聞いてくる。
なんでもない、と答えて、その頬にキスを返す。ふわふわの毛がくすぐったい。だが、それがいい。
やや赤紫がかった彼女の瞳が、潤んでいるためか妙になまめかしく感じられる。
さっき気づいたことだが、藍月の夜だけが特別なんじゃなくて、ここ数日のリトリィの貪欲さが、特別の夜が一夜だけではないことを物語っていた。
明日はさらに赤く染まるのだろう。まだ、息が若干上がっているところも艶っぽい。
「いや、ひどい騒ぎだったなって」
「今日の、前夜祭のことですか?」
リトリィがくすりと笑う。
「私も聞いたことがあるだけでしたから、あんなに楽しいとは思いませんでした」
た、楽しかったか?
どう考えても、ひどい目に遭わされたようにしか思えないんだが。
「ふふ、みんなが楽しめていたなら、それでいいんだと思いますよ?」
いや、リトリィも見ただろう? ナリクァンさんの豪快な投げっぷりを!
皿が突き刺さったんだぞ、ドアに!
被害を訴えた俺に、リトリィはその時のことを思い出したのかくすくすと笑う。
「ムラタさん、最初動けなくて、ゆっくりドアを見て、かたまって、指をさして、そのままふるえながらナリクァンさまを見て、どうしてか、両手を上げて……!」
なんとか笑うのを抑えようとしているらしいが、全然抑えられていない。
「ご、ごめんなさい。だってあんなに可愛らしいしぐさ、おもしろくって……!」
笑うのをごまかすように、俺に飛びついてくる。
それでもしばらく喉を鳴らしていたが、やっと落ち着いたところで、首筋をすんすんとかいできて、そしてぺろりと耳の裏を舐めてきた。
背筋がぞわりとする。
負けじと体をひねって彼女の両頬をとらえると、ベッドに押し付けて、そして、しばらく唇を重ねた。
▲ △ ▲ △ ▲
唇を重ねていたときだった、ドアが勢い良く開かれたのは。
朝食の片づけを終えて、キッチンで彼女を後ろから抱きしめながら、エプロンしか身に付けていなかった彼女の、その中身のぬくもりを、もう少しで堪能するところだったのに。
「ムラタさん! お姉さま! おはようございます! 明日の結婚式と前夜祭の準備に来ました!」
リトリィの悲鳴を聞きながら、ああもう、こういうタイミングなのだ、彼女が来るのはと、なかば悟りを開いたような気持ちだった。
マイセルはやっぱりマイセルだった。
準備に来てくれたのは嬉しいんだが、なんでこう、マイセルはこちらの都合の悪い時に限って突撃して来るのだろう。いや、日本と違ってすべてが手作りのこっちの世界、人手は少しでもあってほしいんだけどさ。
ウエディング会場があちこちに建っていて、
専属プランナーが「おすすめプラン」を提示し、
そこから値段と内容をにらめっこしながら進行内容を足し引きして計画を練り、
小道具などを準備しておけば、あとは勝手にやってくれる。
――それが、日本の結婚式、そして披露宴の準備だったように思う。
だが、こっちの世界にはそんなものはなかった。全部自分で準備しなければならない。とりあえずブーケの注文を忘れていたため、今日、慌てて花屋に注文しに行った。いやあ、自分で何もかも整えなければならないというのは大変だ。
でも、逆に言えば、変に気取る必要もないわけで、マイセルの話を聞きながら、なるべくシンプルな披露宴になるように心掛けた。
どうせ俺にはこの世界に友人なんていないし、リトリィも、この街にいる知り合いなど、たかが知れている。
それに、仕事上の上司とかそんなのを呼ぶ風習も無いんだそうだ。親しい友人と身内、それだけしか呼ばないのがこの世界の流儀らしい。
そのかわり、披露宴中は、宴を目にした通行人が勝手に入ってきて勝手に飲み食いして、そのかわり手持ちのいくらかをご祝儀として置いていく、というのがゲストのありようだそうで、なんともフリーダムだ。
そんなスタイルだから、準備した食い物がなくなってしまうこともよくあるらしい。そんなときはどうするかといえば、とにかく酒を振舞えば問題ないのだそうだ。招待客が勝手に持ち寄ってくるものもあるらしい。
実に手作り感あふれる披露宴! それ自体はいいんだが、まさに出たとこ勝負感も満載だ。
日本の、ウエディングプランナーに誘導されて、決められた時間内にあれやこれやと出し物を披露させられ、集合写真を撮ってハイそれまでヨ、なんてない。二時間でお開き、などという概念もない。
ちなみにお開きの概念がないということは、みな、好きな時に勝手に帰るという意味でもある。明日は仕事だ、というひとは早めに帰り、休みを取ってあるぞ、という剛の者は延々と楽しむのだ。
基本的には、文字通り、夜通し飲んで、食って、踊って、騒ぐ。翌朝までずっと。
藍月の日だけは「新婚カップルが、月が中天に差し掛かるころを挟んで数時間ほどいなくなるけど、気にしない」という暗黙の了解があるらしいが、それでも翌朝まで騒ぎ続けるのは変わらないらしい。
要するに、藍月の夜=子作りの夜というわけで、『新婚二人がいなくなったって理由なんて一つしかないから、ほっといて披露宴を楽しみましょう』というわけだ。
いや、もう少し遠慮しろよゲスト!
そんなわけで、料理の準備も大変なのだ。ただ、俺たちの場合は、例の炊き出しボランティアの奥様方が応援に駆けつけてくださって、本当に助かった。
俺はひたすら食材を買いに市場と家を往復させられ、リトリィとマイセルは奥様方に指導されながらひたすらキッチンで食材と格闘し続け、ようやくすべての仕込みの終わりが見えてきたのが九刻――およそ昼の三時ごろ。
ここから二時間がまた地獄で。
「なんですって? ダンスの練習をしていない?」
素っ頓狂な声を上げたのはフォロニアさん。前に建っていた小屋を俺がぶち壊してしまった時、俺と一緒に役所に行きたがったリトリィを引きはがして、笑顔で美容室まで引きずっていったご婦人だ。
切れ長の目に泣きぼくろがセクシーな美女(だったことを想像させるひと)だが、パワフルさもひときわで、すぐさまレッスンが始まった。料理は残りの奥様方に任せ、俺とマイセルを組ませて手拍子とラララ口伴奏で、ときに俺の手を掴んで文字通り振り回すように。
いや、披露宴で新婚夫婦がダンスを披露するのは必須、というのは、聞いてはいたんだよ。
でもダンスなんて面倒くさいし、俺は仕事があるし、リトリィも俺と一緒に仕事場に来てくれていたから練習する時間もないしと、適当に誤魔化す、なんなら無しでもいいかなと勝手に思っていたのだ。
そんな俺の『暴論』に、マイセルは顔に絶望的な色を浮かべ、リトリィも絶句。「何もおっしゃられないから、自信があるんだと思っていました」と、二人が口をそろえるものだから、フォロニアさんにめちゃくちゃ叱られながら仕込まれた。
とはいっても、ダンスなんて中学時代の宿泊研修でマイムマイムを踊ったくらいで、あとは体育の授業の創作ダンスくらいしか経験がない。最終的にはため息とともに、最低限のステップを踏めるようになったことで解放された。
死ぬほどヘロヘロになったけど、驚いたのはリトリィの心得だった。マイセルは一通り、無難にできる感じで、これは母親のネイジェルさんによる仕込みらしい。リトリィはというと、なんと俺とマイセルの練習を見て覚え、その場でできるようになってしまった。
「いま、覚えましたから」
そう言って、俺の手を取り振り回すようにしながら、危なげなくステップを踏む彼女に、俺は心底驚いた。
「操り人形と人形繰り、そのものね」
フォロニアさんをはじめ、奥様方に笑われながら、ひょっとして俺、何も覚えなくていいんじゃないか、と思ってしまったくらいに。
ドカッ!
「あら、どうしてよけたのかしら?」
死ぬ! 死にますって!
まだ真新しい家のドアの前で、
ドアに突き刺さった皿を見て、
俺は嫌な汗を首に流しながら、
ぎぎぎっと音を立てるように、
ゆっくりと投げた主を見やる。
「さ、刺さってますけど……?」
フライングディスクを投げるが如く、深く捻られた体勢からの見事なサイドスローによって放たれた真っ白な皿が、ドアに刺さっているのである。
一応、半分ほどに割れているし、その半分はドアに当たって粉々に割れているんだが、その残りの半分が、ものの見事に、木製のドアに突き刺さっているのだ。
「大丈夫よ。きちんと割れていますから。ああよかった、割れていなかったら縁起が悪かったところですわね」
そういう問題か!?
ていうかお集まりの皆さん、指をさして笑うところなんですかね!?
っておいマイセル! 君まで笑うのかよ!
そんな、家のドアに豪快に突き刺さった皿に戦慄するところから、結婚前夜のお祭り――騒夜祭が始まった。
何をやるかといったら、陶磁器の皿を割る。
ひとんちの前で、ひたすら割る。
それだけ。
そりゃあもう、ご近所さんやマイセルの知り合いたちが、めいめい持ち寄った皿を、家の前の道路にぶちまけて割りまくるのだ。何なんだこの騒ぎ!
皿に限らず、壺なんか持ってくる人もいる。オイちょっとまてよ! そんな一抱えもあるような壺を持ってくるんじゃないって!
さらに、ナリクァンさんがなぜか馬車から大量の皿を下ろさせ、通行人に配ってかち割らせるのだ! ちょっと! やり過ぎじゃありませんかね!?
足の踏み場がないどころじゃないよ! 皿とかカップとか壺とか花瓶とか、好き放題にかち割りやがって!
ていうか名も知らぬそこのオッサン! その形、絶対に尿瓶だろ!
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