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第三部 異世界建築士と思い出の家
第308話:愛の宣誓
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結婚式ってほら、神の御前で、荘厳な雰囲気で、粛々と進む。
賛美歌を歌い、神父様だか牧師様だかの言葉に頭を垂れて聞き入り、新しい夫婦となる二人を静かに見守り、誓いのキスが終わったら「おめでとーう!」となる。
そんなイメージがあるよな。
いや、ね?
最初のうちまでは、確かにそんな感じだったんだよ?
ヒヨッコたちが突貫作業でこしらえてくれた、白木のベンチに座る人々。
その間を、俺を挟んで二人の美女が、共にしずしずと歩く。
満開のシェクラの木の下にしつらえられた真っ白な台と、たぶん神様を象徴する、幾何学模様の不思議なオブジェ。
例の生臭坊主――女神官が待つ、宣誓台に、三人で並ぶ。
リトリィが憧れ、思い描いた夢である、シェクラの花の下で、永久の愛を誓うために。
「高き天原に坐します、天なるいと高き男神と地なるいと広き女神。
御二柱の神よりお出でになられた、すべての御親の神たるザイケルハイトの、瑞穂の原の日向かう丘にて、世の禍事罪穢れを祓い清めた祈りに応え、出でませるザイネフとレテュンレイベの御二柱《ふたはしら》の神たち、共に……」
朗々と謡われる、神を讃えるうた。言ってる意味はよく分からないが、まあ、ありがたいものなんだろう。リトリィもマイセルも、そしてギャラリーたちも、一言も発せず、ただ、頭を垂れて聞き入っている。
やけに長く感じた神々への讃歌がおわったあとは、いよいよ俺たちの出番。
豊穣の男神「ザイネフ」と、同じく豊穣の女神「レテュンレイベ」、この二柱の神々に誓うんだ。
でもさ、これがなんというか、「自分はいかにこのひとを愛しているか、このヒトのどこに惹かれたのか」を、声高に叫ばなきゃならないんだよ。
政略結婚の貴族とか、どうしてるんだろうね? まあ、そういう人たちにはそういう人たち用のテンプレートがあるんだろうけどさ。
でだ。
「私はこの女性に自信をいただきました! 男として、いち人間として! 私が間違っていたときには、真正面から叱咤し、私がくじけそうなときには、全身で励まし受け入れてくれました! このひとは、世界で一番美しく、気高く、素晴らしい女性です!
私は彼女から受けた愛以上の愛を、この生涯をかけて注ぐことを誓います!」
「私はこの女性に、誇りを持つことの大切さを学びました! 偉大な父の後を追い、誰もが挑戦しなかった道を志し、情熱的にその道を歩み出しています! リトリィを姉と慕い、よく助け、そして己の力を信じて邁進しようとする、世界一の大工の卵です!
私は彼女と共に建築の道を歩み、愛と情熱を彼女に捧げることを誓います!」
まだ二人控えてるし、ギャラリーの皆さんも料理を待ちかねてるだろうし、野郎の言葉なんてどうでもいいだろうと思って短めに言ったんだけどさ。
リトリィが、マイセルになにやら頼み込んでたのは知ってた。
だからだろう、本来なら先に宣誓する、第一夫人たるリトリィよりも先にマイセルが宣誓を始めたとき、頼んでたのはそれか、というくらいにしか考えていなかった。
で、マイセルが、「父にも理解してもらえなかった自分の想いを受け止め、励まし、共に歩んでくれることを決意してくれたムラタ」の魅力とやらを一分ほど語って、むずかゆい思いをしたあとだ。
最後にリトリィが、五分以上、延々と俺とのエピソードを語ったんだよ。
神官の顔がヒクついて、笑顔ながら口の端が歪むくらいに。
何をしゃべるのか、今までに相当考えてきたんだろう。
内容をまったく重複させることなく、いかに俺が素晴らしい人物で、どんなところに惚れたのか。
それをしゃべり続けたわけだ。じつに長々と。
その破壊力は以前、山で体験したけど、その時には、聴衆は俺一人だった。
まさかここで、公開処刑にされるとは。
ゴーティアスさんのときには聞かれて答えていたんだが、ここでは自ら大暴露。
出会いから、すれ違いから、仲直りから。
井戸作りから、小屋づくりから、リフォームから。
初めての夜の話から、情熱的な藍月の夜の話から、自分を寝かさないくらいのタフネスぶりの話から。――いや最後に関しては俺が搾り取られてるだけだから。
そして、奴隷商人にさらわれたときの、ガルフ改めガロウとの大立ち回り。
などなど、すこし……いやかなり美化されてたけど、ギャラリーのほうは大盛り上がりだった。
マイセルなんか顔を真っ赤にして両手で頬を押さえて、うつむき加減に、でも決して聞き漏らさないように――特に夜の生活編を、食い入るように聞いていた。
プライバシーなんてどこの世界線の話といったくらいに。
ああもう、丸裸状態だよ俺!!
その後、俺たちの職業柄、守護神と崇めるべきキーファウンタへの祈りを捧げたあと、いよいよヴェールを外す。
そう。ここでもやるのだ、アレを。
神々の照覧のもとで、二人は俺のものだと、周知するために。
一回、二回……三回。丹塗りの櫛で、二人の髪を三回ずつ梳く。
次に丹塗りの盃で、三回ずつ、蜂蜜酒を口に含む。
ただし俺は二人とやらなきゃいけないから、合わせて六回、飲まなきゃいけないんだがな。
そして、「三夜の臥所」代わりの、口づけ。
そう、日本でやってた結婚式の、最後の「誓いのキス」みたいなことを、ここでやるんだ。
ただし、そりゃもう、情熱的にやらねばならないしきたりらしい。唇と唇を触れさせる程度では、納得してもらえないそうだ。主にギャラリーに。
ああもう、やってやるよ! 毎晩やってることだ、さっきは毎晩激しくて眠らせてもらえないとか言われた俺だ、いまさらどうってことはない!
というわけで、思いっきりリトリィの体をかき抱いて、これまた音を立てる勢いでティープキスをかましてやりましたよ、ええ!
公開処刑ここに極まれり。
ギャラリーが沸きに沸いたよ、このときは。
しまいにはリトリィが目をとろけさせ、キスの最中に零れ落ちてしまった胸に俺の頭をひしと抱き抱えて収拾がつかなくなるくらいまでに!
「あらあら、これでは旦那様も大変ね」
原初に近い狐人族のフィネスさん、同じ獣人族として、感じるものがあったらしい。
「いっちゃいなさい、そのまま押し倒して!」
……などと、リトリィを煽っていたフォロニアさんとは、まるで違いました。
でもフィネスさん、見てるだけでなく、できれば双丘から助け出してくださると、とってもありがたかったです。俺、窒息しそうでした。
そんなリトリィと俺の口づけ+αを、ひきつった笑顔でまじまじと見ていたマイセル。
「あ、あの……やさしく、して、ください……ね?」
真っ赤になってうつむいて、上目遣いに言うものだから、可愛くてつい、思いきり唇をむさぼってしまった。
考えてみれば、彼女とのディープキスは、これが初めてだったというのに。
そんな大切なことも忘れて、リトリィと同じようなノリで、思いっきり舌を絡めてしまった。
身をよじるマイセルを力いっぱい抱きしめ、体を弓なりに反らせて逃れようとする彼女を追うように。
なんと彼女、はじめは口づけをしている間、ずっと息を止めていたようだった。というよりも、キスをしている最中の息継ぎの仕方を知らない、といった様子だった。角度を変えたりするときに口を軽く離すたび、ひどくあえぐように息をしていた。
だが、そんな彼女もしばらく舌を絡めているうちに、息継ぎに慣れてきた様子だったし、鼻で息をすることへの抵抗もなくなったようだった。まあ、俺が鼻で呼吸してるし、それで学んだんだろう。
それと同時に、観念した様子で、それまで所在なさげにしていた腕を、おずおずと俺の首に巻き付けてきた。
その瞬間の、ギャラリーの盛り上がり方といったら。
こういうイベントというのは、もちろん本人のために行われるものではあるんだけど、間違いなく、街に住む人々にとっての数少ない娯楽の一つとして機能しているんだろうなあ。
誓いの口づけが終わったあとは、神々への感謝の言葉と、そして末永い加護を求める祈りを捧げる。
イグダラッスルと呼ばれているらしい木の、葉がみずみずしく茂る枝を手に持ち、その枝を神像に捧げて、ひざまずいて神像に口づけをする。
三人がそれぞれ枝を捧げ終わると、ひざまずいている俺たちの前に女神官が出てきて、俺、リトリィ、そしてマイセルの順番で、それぞれの肩を、持っている杖で軽く打ってゆく。
「このふた――三人の誓約は神も照覧、いまここに集ったすべてのものの目のうち耳のうちにあり。ゆめゆめ誓約をたがえることなきよう」
杖で打たれてもこれといった痛みがあったわけではないが、それまでの騒動で浮かれていた気持ちを引き締めることには役立った。
「はい、捧げた誓約は朝に夕に胸に刻み、いつか来たる休息の日――」
最後の、誓いの言葉。
ここは、アレンジをしたんだ。三人で示し合わせて。
定型句である『今と変わらぬ愛をたずさえて』――ではなく。
「今よりもなお、共に深め合った愛をたずさえて――」
リトリィの声が、かすかに震えたのを感じる。
ああ。
この言葉、この誓いのために。
俺たちは、帰りの馬車の中で何度も練習したのだ。
「――神の御元に参ることを、誓います」
ぽろぽろと涙をこぼすリトリィの、その胸の内を思う。
ありがとう、神官さん。
この誓いを、シェクラの花の下で行えるよう、取り計らってくれて。
あまり多くを望んでこなかった彼女の、ささやかな夢を叶えてくれて。
生臭坊主なんて腹の中で思ってごめんなさい。さっき二人と言い間違えかけたのも、リトリィの感涙で全部、チャラだ。
賛美歌を歌い、神父様だか牧師様だかの言葉に頭を垂れて聞き入り、新しい夫婦となる二人を静かに見守り、誓いのキスが終わったら「おめでとーう!」となる。
そんなイメージがあるよな。
いや、ね?
最初のうちまでは、確かにそんな感じだったんだよ?
ヒヨッコたちが突貫作業でこしらえてくれた、白木のベンチに座る人々。
その間を、俺を挟んで二人の美女が、共にしずしずと歩く。
満開のシェクラの木の下にしつらえられた真っ白な台と、たぶん神様を象徴する、幾何学模様の不思議なオブジェ。
例の生臭坊主――女神官が待つ、宣誓台に、三人で並ぶ。
リトリィが憧れ、思い描いた夢である、シェクラの花の下で、永久の愛を誓うために。
「高き天原に坐します、天なるいと高き男神と地なるいと広き女神。
御二柱の神よりお出でになられた、すべての御親の神たるザイケルハイトの、瑞穂の原の日向かう丘にて、世の禍事罪穢れを祓い清めた祈りに応え、出でませるザイネフとレテュンレイベの御二柱《ふたはしら》の神たち、共に……」
朗々と謡われる、神を讃えるうた。言ってる意味はよく分からないが、まあ、ありがたいものなんだろう。リトリィもマイセルも、そしてギャラリーたちも、一言も発せず、ただ、頭を垂れて聞き入っている。
やけに長く感じた神々への讃歌がおわったあとは、いよいよ俺たちの出番。
豊穣の男神「ザイネフ」と、同じく豊穣の女神「レテュンレイベ」、この二柱の神々に誓うんだ。
でもさ、これがなんというか、「自分はいかにこのひとを愛しているか、このヒトのどこに惹かれたのか」を、声高に叫ばなきゃならないんだよ。
政略結婚の貴族とか、どうしてるんだろうね? まあ、そういう人たちにはそういう人たち用のテンプレートがあるんだろうけどさ。
でだ。
「私はこの女性に自信をいただきました! 男として、いち人間として! 私が間違っていたときには、真正面から叱咤し、私がくじけそうなときには、全身で励まし受け入れてくれました! このひとは、世界で一番美しく、気高く、素晴らしい女性です!
私は彼女から受けた愛以上の愛を、この生涯をかけて注ぐことを誓います!」
「私はこの女性に、誇りを持つことの大切さを学びました! 偉大な父の後を追い、誰もが挑戦しなかった道を志し、情熱的にその道を歩み出しています! リトリィを姉と慕い、よく助け、そして己の力を信じて邁進しようとする、世界一の大工の卵です!
私は彼女と共に建築の道を歩み、愛と情熱を彼女に捧げることを誓います!」
まだ二人控えてるし、ギャラリーの皆さんも料理を待ちかねてるだろうし、野郎の言葉なんてどうでもいいだろうと思って短めに言ったんだけどさ。
リトリィが、マイセルになにやら頼み込んでたのは知ってた。
だからだろう、本来なら先に宣誓する、第一夫人たるリトリィよりも先にマイセルが宣誓を始めたとき、頼んでたのはそれか、というくらいにしか考えていなかった。
で、マイセルが、「父にも理解してもらえなかった自分の想いを受け止め、励まし、共に歩んでくれることを決意してくれたムラタ」の魅力とやらを一分ほど語って、むずかゆい思いをしたあとだ。
最後にリトリィが、五分以上、延々と俺とのエピソードを語ったんだよ。
神官の顔がヒクついて、笑顔ながら口の端が歪むくらいに。
何をしゃべるのか、今までに相当考えてきたんだろう。
内容をまったく重複させることなく、いかに俺が素晴らしい人物で、どんなところに惚れたのか。
それをしゃべり続けたわけだ。じつに長々と。
その破壊力は以前、山で体験したけど、その時には、聴衆は俺一人だった。
まさかここで、公開処刑にされるとは。
ゴーティアスさんのときには聞かれて答えていたんだが、ここでは自ら大暴露。
出会いから、すれ違いから、仲直りから。
井戸作りから、小屋づくりから、リフォームから。
初めての夜の話から、情熱的な藍月の夜の話から、自分を寝かさないくらいのタフネスぶりの話から。――いや最後に関しては俺が搾り取られてるだけだから。
そして、奴隷商人にさらわれたときの、ガルフ改めガロウとの大立ち回り。
などなど、すこし……いやかなり美化されてたけど、ギャラリーのほうは大盛り上がりだった。
マイセルなんか顔を真っ赤にして両手で頬を押さえて、うつむき加減に、でも決して聞き漏らさないように――特に夜の生活編を、食い入るように聞いていた。
プライバシーなんてどこの世界線の話といったくらいに。
ああもう、丸裸状態だよ俺!!
その後、俺たちの職業柄、守護神と崇めるべきキーファウンタへの祈りを捧げたあと、いよいよヴェールを外す。
そう。ここでもやるのだ、アレを。
神々の照覧のもとで、二人は俺のものだと、周知するために。
一回、二回……三回。丹塗りの櫛で、二人の髪を三回ずつ梳く。
次に丹塗りの盃で、三回ずつ、蜂蜜酒を口に含む。
ただし俺は二人とやらなきゃいけないから、合わせて六回、飲まなきゃいけないんだがな。
そして、「三夜の臥所」代わりの、口づけ。
そう、日本でやってた結婚式の、最後の「誓いのキス」みたいなことを、ここでやるんだ。
ただし、そりゃもう、情熱的にやらねばならないしきたりらしい。唇と唇を触れさせる程度では、納得してもらえないそうだ。主にギャラリーに。
ああもう、やってやるよ! 毎晩やってることだ、さっきは毎晩激しくて眠らせてもらえないとか言われた俺だ、いまさらどうってことはない!
というわけで、思いっきりリトリィの体をかき抱いて、これまた音を立てる勢いでティープキスをかましてやりましたよ、ええ!
公開処刑ここに極まれり。
ギャラリーが沸きに沸いたよ、このときは。
しまいにはリトリィが目をとろけさせ、キスの最中に零れ落ちてしまった胸に俺の頭をひしと抱き抱えて収拾がつかなくなるくらいまでに!
「あらあら、これでは旦那様も大変ね」
原初に近い狐人族のフィネスさん、同じ獣人族として、感じるものがあったらしい。
「いっちゃいなさい、そのまま押し倒して!」
……などと、リトリィを煽っていたフォロニアさんとは、まるで違いました。
でもフィネスさん、見てるだけでなく、できれば双丘から助け出してくださると、とってもありがたかったです。俺、窒息しそうでした。
そんなリトリィと俺の口づけ+αを、ひきつった笑顔でまじまじと見ていたマイセル。
「あ、あの……やさしく、して、ください……ね?」
真っ赤になってうつむいて、上目遣いに言うものだから、可愛くてつい、思いきり唇をむさぼってしまった。
考えてみれば、彼女とのディープキスは、これが初めてだったというのに。
そんな大切なことも忘れて、リトリィと同じようなノリで、思いっきり舌を絡めてしまった。
身をよじるマイセルを力いっぱい抱きしめ、体を弓なりに反らせて逃れようとする彼女を追うように。
なんと彼女、はじめは口づけをしている間、ずっと息を止めていたようだった。というよりも、キスをしている最中の息継ぎの仕方を知らない、といった様子だった。角度を変えたりするときに口を軽く離すたび、ひどくあえぐように息をしていた。
だが、そんな彼女もしばらく舌を絡めているうちに、息継ぎに慣れてきた様子だったし、鼻で息をすることへの抵抗もなくなったようだった。まあ、俺が鼻で呼吸してるし、それで学んだんだろう。
それと同時に、観念した様子で、それまで所在なさげにしていた腕を、おずおずと俺の首に巻き付けてきた。
その瞬間の、ギャラリーの盛り上がり方といったら。
こういうイベントというのは、もちろん本人のために行われるものではあるんだけど、間違いなく、街に住む人々にとっての数少ない娯楽の一つとして機能しているんだろうなあ。
誓いの口づけが終わったあとは、神々への感謝の言葉と、そして末永い加護を求める祈りを捧げる。
イグダラッスルと呼ばれているらしい木の、葉がみずみずしく茂る枝を手に持ち、その枝を神像に捧げて、ひざまずいて神像に口づけをする。
三人がそれぞれ枝を捧げ終わると、ひざまずいている俺たちの前に女神官が出てきて、俺、リトリィ、そしてマイセルの順番で、それぞれの肩を、持っている杖で軽く打ってゆく。
「このふた――三人の誓約は神も照覧、いまここに集ったすべてのものの目のうち耳のうちにあり。ゆめゆめ誓約をたがえることなきよう」
杖で打たれてもこれといった痛みがあったわけではないが、それまでの騒動で浮かれていた気持ちを引き締めることには役立った。
「はい、捧げた誓約は朝に夕に胸に刻み、いつか来たる休息の日――」
最後の、誓いの言葉。
ここは、アレンジをしたんだ。三人で示し合わせて。
定型句である『今と変わらぬ愛をたずさえて』――ではなく。
「今よりもなお、共に深め合った愛をたずさえて――」
リトリィの声が、かすかに震えたのを感じる。
ああ。
この言葉、この誓いのために。
俺たちは、帰りの馬車の中で何度も練習したのだ。
「――神の御元に参ることを、誓います」
ぽろぽろと涙をこぼすリトリィの、その胸の内を思う。
ありがとう、神官さん。
この誓いを、シェクラの花の下で行えるよう、取り計らってくれて。
あまり多くを望んでこなかった彼女の、ささやかな夢を叶えてくれて。
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