455 / 785
第四部 異世界建築士と幸せの鐘塔
第428話:神は自ら求むる者を
しおりを挟む
俺の額の汗を拭きながら、青い月を見上げてリトリィが言う。
「それにしても、最近はマイセルちゃんもずいぶん、すすんでおねだりをするようになりましたね?」
「……マレットさんあたりにせっつかれてるんだろ」
「ふふ、おつかれさまです」
笑ってみせるリトリィだが、君は以前からマイセルが求めるよりも何倍もおねだりしてきてるんだからな?
「だって、早くあなたの仔がほしいですから」
「君は藍月の夜があるだろ? その夜だって、まだしばらく先で――」
「そんなことないですよ? 藍月までにいっぱい愛していただけると、そのぶん、いい仔が生まれるっていいますから。だから最初のひと月は、お仕事を休んでまで、みなさん励むんですよ?」
――そんな都合のいい話があるわけないだろ、と一瞬突っ込みそうになって、踏みとどまる。
俺の常識で判断してはいけない。それを言うなら、獣人と異世界人の俺では遺伝子が全く違うはずだから、子供ができると考える時点で無理があるはずなのだ。
けれど瀧井さん夫妻はちゃんと子供ができているらしい。この世界にはこの世界の常識がある。リトリィの話も、事実かもしれない。
「あなたは、男の子と女の子、どちらをお望みですか?」
「俺はどっちでもいい。リトリィが産んでくれるなら」
「わたしもどちらでもいいですけど、できれば男の子がいいです。あなたにそっくりの、黒髪の、黒い瞳がきれいな男の子――」
そう言って、彼女は再び手を伸ばす。
もう出ない――そう思っても、彼女の手にかかれば……
「ふふ、おやんちゃさんが、また起きてくださいました」
彼女にはおそらく、俺は永遠に勝てない。
リトリィはじつに嬉しそうに微笑むと、俺に背を向けてまたがった。まだ勃ち上がりきっていないそれを、ゆっくりと胎内に飲み込む。
「それに、仔ができる、できないだけではないんです。……あなたがほしいんです。おなかの奥で、あなたを感じさせてください。いっぱい、いっぱい、わたしをかわいがってください。あなたのお望みのままに、わたしを鳴かせてください」
そう言うと枕に顔をうずめ、しっぽを持ち上げ腰を揺らす。
求められるというのは、正直、嬉しい。ましてそれが、愛する女性からならば。
俺は体を起こすと、彼女のしっぽをつかんだ。愛らしい小さな悲鳴を上がるのを合図に、俺は安産型の大きな尻に指を食いこませて、彼女の望むとおりにしてやる。
大きな水音と共に、彼女の背が弓なりに曲がり、歓喜にふるえた。
「まあ座れ。話はそれからだ」
ギルドに呼び出された俺が指定された部屋に入ると、ちょうど髭面の爺さんが、自分で淹れた茶をあおるところだった。顔の左半分にひどい傷跡があり、左目に眼帯をしている。事故で大怪我をしたのかもしれない。
だが、その特徴的な顔から、彼が誰なのか、すぐに分かった。
この塔の改修工事に関わる施工管理者――クオーク親方だ。彼は俺を見やりつつ茶を飲み干すと、愛想のかけらもない顔で言った。
「新しいギルド長から聞いている。お前さんが、例の塔の、本当の改修工事の立案者だって?」
クオーク親方は、傷跡だらけの顔をしかめてみせる。
「よく分からんが、今回の仕事はわしが前のギルド長から直々に任された仕事だったんだ。それがよく分からんままにギルド長がすげ替わって、今度はお前さんがわしの部下に入った。いったい何があった、一言で状況を言ってみろ」
一言とはずいぶん無茶なことを。だがこれで分かった。このクオークという男、おそらく気が短いのだろう。
「実は、この塔の改修の図面のことなんですが、先代ギルド長が私の設計図を手に入れ、それを自分が描いたと偽って――」
「なげぇ! 一言っつっただろ!」
爺さん気が短すぎだって!
「……先代ギルド長が不正でクビになり、図面を描いた私が採用されました!」
「さっさとそう言え、日が暮れちまわァ!」
そう。
塔の工事の責任者――というか、施工管理者自体がすげ替わることはなかった。引継ぎやら考え方の違いやらによって、全体の進行に大きな遅滞が発生する恐れがあると判断されたからだろう。
そもそも、一軒家ならともかく、俺はまだこの街でこんな大きな事業を任されるほど、信用があるわけでもない。ついでに言うなら、こういう仕事はたいていコネがものを言う。
そんないきさつで、俺はこの気の短いクオーク親方の下に配置されたのだろう。この爺さん、この塔の現場監督に任ぜられたからには有能な大工なんだろうが、気が短くて実にやりにくそうだ。少しでももたもたすると、すぐに罵声が飛んできそうな勢いだ。
だが、仕方がない。適度に機嫌を取りながら、可能な限りキビキビ動いて進めるしかない、そう割り切るしかなかった。
とはいっても、俺は現場に混じって一緒に作業をするわけではない。あくまで補佐の立場なので、俺が前に立つわけでもない。なんとも微妙な立ち位置だ。そう思っていたら、さっそく罵声が飛んできた。
「そんなところに突っ立って何やってんだ! そんな暇があったら現場を見て回るぞ、さっさとついてこい!」
言い分はもっともだが、しかし突然、何の前触れもなく怒鳴られても――頭をかきながら、それでもクオーク親方と、まずは現場に向かうしかなかった。
クオーク親方は、現場に着くと「あとは自分で見て回りな」と、俺を放り出してどこかへ行ってしまった。
仕方なく塔に近づいてみると、瓦礫に囲まれるようにして、巨大な鐘がそこにあった。粉砕された木箱の残骸を下敷きにして。
あのフェクトールの屋敷を襲撃した夜、鐘を落とすときのクッションとして積み上げた木箱は、うまい具合に機能してくれたようだ。
「……壊れてしまったかと思っていたよ」
感慨に浸っていると、後ろから声をかけられた。
「なんだ、鐘が落っこちた騒動、知ってんのか?」
振り返ると、手ぬぐいを肩にかけた赤髪の男がそこにいた。
「あのぶら下がっていたところから落ちたんだ。だが、誰がやったか知らねえが、下に木の空き箱をたんまり積み上げていたみたいでな。さすがに無傷ってわけにはいかなかったが、ちっとばかり凹んで、ヒビが入っちまっただけだ。なに、そこをぶっ叩かないようにすればいいだけだろ」
あの夜。
簡易投石機にしようとした起重機に、おもりの如くぶら下がっていたのが、降ろす予定だった、この鐘。
この鐘を落下させることで、鐘につながるロープにくくりつけた石のブロックを投げ飛ばし、屋敷の警備を撹乱した上で突入するという計画だった。その際、落下させた鐘はおそらく壊れてしまうだろうと思っていた。
ところがこの鐘、投げ飛ばすはずだった石のブロックが起重機に引っかかってしまったことで、一度落下が止まったのだ。
その引っかかったときの衝撃で、木製の起重機は地上三十メートルの高さから勢いをつけて落下。フェクトール公の屋敷までカッ飛んでいって、屋敷の屋根をぶち抜いたんだ。
そのおかげで、鐘は落下の衝撃を最小限にまで殺すことができ、あらかじめ下に積み上げておいた木箱の効果もあってか、損傷はわずかなへこみとヒビだけで済ませることができたらしい。
あの日からずっと確認していなくて壊してしまったと思い込んでいたから、あらためてほっと胸をなでおろす。
「オレはあの朝来て知ったクチなんだがな? あの時はみんな、どんなお咎めを食らうかって青くなったもんだ。けどよ、さすがフェクトール様だ、なんともなかったぜ。懐が広い御仁で助かった」
獣人の娘たちを集めて監禁していたことは、獣人の娘たちを保護していたのだというフェクトールの主張が、表向きそのまま通って広がっていた。おかげで奴は、慈悲深い青年貴族という評判のままだ。
俺の伝手で集まったメンバーは本当のことを知っているだろうが、広まっていない以上、おそらくあの場に駆けつけた力ある人間――つまりはナリクァンさんが、何らかの手を打ったのだろう。
それに、集められていた当の女性たちが屋敷から出たがらない以上、奴の言い分は完全に間違っていた、とは言えないわけで。釈然としないが、女性たちの多くが今の生活の継続を望んでいるのだから、外野の俺たちが騒ぎ立てるのは筋違いだろう。
「とにかく、鐘は一応無事、塔も起重機がぶっ壊れた以外は変化なしだ。フェクトール様のお屋敷が直らなきゃ話は進まねえが、なに、話がなくなっちまったわけじゃねえからな。いずれは工事も再開する。今、ここにいるってことは、あんたもでっかい仕事を求めて来た大工なんだろ?」
「……そう、だな」
俺の答えに、男は腕を組んだまま塔を見上げた。
「長いこと壊れたままだった塔がよみがえる、ここ最近で一番の大仕事だからな! オレたちが積み上げた石が、百年二百年、ここに残るんだぜ! 大工冥利に尽きるってもんだ、やるしかねえ。そんときはあんたもぜひ来るといいぜ!」
「ああ、そのときはまた、よろしく頼む」
「おう! オレは石組み長のバリオンだ。おめえは?」
「ムラタだ」
「変わった名だな? まあいい、オレの班に入ったときにはまた声をかけてくれ」
そう言って、バリオンは俺の背中をぶっ叩いた。
痛い! この世界の職人は、人間と出会ったら肩や背中をぶっ叩くって礼法でもあるのかよ!
「あんた、見た感じチカラはなさそうだが、なあに、オレの下に来た奴は、どこでだって通じる一人前の石組み屋に仕込んでやるからよ! ああ、そうだ。フェクトール様のお屋敷の修理も人手不足だ。『神は自ら求むる者を助く』。日当もメシも出るから、あんたも来な!」
バリオンはそう言って豪快に笑うと、俺の肩をつかんで屋敷のほうに引っ張る。
一瞬迷ったが、ついていくことにした。屋敷の様子を見ておくのもいい。なにせ肝心のクオーク親方が行方知らずだ。
俺が石組みをすることはないだろうけど、こんなふうに自身の仕事に誇りを持っている大工がいるっていうのは、素直に嬉しいと思う。
「それにしても、最近はマイセルちゃんもずいぶん、すすんでおねだりをするようになりましたね?」
「……マレットさんあたりにせっつかれてるんだろ」
「ふふ、おつかれさまです」
笑ってみせるリトリィだが、君は以前からマイセルが求めるよりも何倍もおねだりしてきてるんだからな?
「だって、早くあなたの仔がほしいですから」
「君は藍月の夜があるだろ? その夜だって、まだしばらく先で――」
「そんなことないですよ? 藍月までにいっぱい愛していただけると、そのぶん、いい仔が生まれるっていいますから。だから最初のひと月は、お仕事を休んでまで、みなさん励むんですよ?」
――そんな都合のいい話があるわけないだろ、と一瞬突っ込みそうになって、踏みとどまる。
俺の常識で判断してはいけない。それを言うなら、獣人と異世界人の俺では遺伝子が全く違うはずだから、子供ができると考える時点で無理があるはずなのだ。
けれど瀧井さん夫妻はちゃんと子供ができているらしい。この世界にはこの世界の常識がある。リトリィの話も、事実かもしれない。
「あなたは、男の子と女の子、どちらをお望みですか?」
「俺はどっちでもいい。リトリィが産んでくれるなら」
「わたしもどちらでもいいですけど、できれば男の子がいいです。あなたにそっくりの、黒髪の、黒い瞳がきれいな男の子――」
そう言って、彼女は再び手を伸ばす。
もう出ない――そう思っても、彼女の手にかかれば……
「ふふ、おやんちゃさんが、また起きてくださいました」
彼女にはおそらく、俺は永遠に勝てない。
リトリィはじつに嬉しそうに微笑むと、俺に背を向けてまたがった。まだ勃ち上がりきっていないそれを、ゆっくりと胎内に飲み込む。
「それに、仔ができる、できないだけではないんです。……あなたがほしいんです。おなかの奥で、あなたを感じさせてください。いっぱい、いっぱい、わたしをかわいがってください。あなたのお望みのままに、わたしを鳴かせてください」
そう言うと枕に顔をうずめ、しっぽを持ち上げ腰を揺らす。
求められるというのは、正直、嬉しい。ましてそれが、愛する女性からならば。
俺は体を起こすと、彼女のしっぽをつかんだ。愛らしい小さな悲鳴を上がるのを合図に、俺は安産型の大きな尻に指を食いこませて、彼女の望むとおりにしてやる。
大きな水音と共に、彼女の背が弓なりに曲がり、歓喜にふるえた。
「まあ座れ。話はそれからだ」
ギルドに呼び出された俺が指定された部屋に入ると、ちょうど髭面の爺さんが、自分で淹れた茶をあおるところだった。顔の左半分にひどい傷跡があり、左目に眼帯をしている。事故で大怪我をしたのかもしれない。
だが、その特徴的な顔から、彼が誰なのか、すぐに分かった。
この塔の改修工事に関わる施工管理者――クオーク親方だ。彼は俺を見やりつつ茶を飲み干すと、愛想のかけらもない顔で言った。
「新しいギルド長から聞いている。お前さんが、例の塔の、本当の改修工事の立案者だって?」
クオーク親方は、傷跡だらけの顔をしかめてみせる。
「よく分からんが、今回の仕事はわしが前のギルド長から直々に任された仕事だったんだ。それがよく分からんままにギルド長がすげ替わって、今度はお前さんがわしの部下に入った。いったい何があった、一言で状況を言ってみろ」
一言とはずいぶん無茶なことを。だがこれで分かった。このクオークという男、おそらく気が短いのだろう。
「実は、この塔の改修の図面のことなんですが、先代ギルド長が私の設計図を手に入れ、それを自分が描いたと偽って――」
「なげぇ! 一言っつっただろ!」
爺さん気が短すぎだって!
「……先代ギルド長が不正でクビになり、図面を描いた私が採用されました!」
「さっさとそう言え、日が暮れちまわァ!」
そう。
塔の工事の責任者――というか、施工管理者自体がすげ替わることはなかった。引継ぎやら考え方の違いやらによって、全体の進行に大きな遅滞が発生する恐れがあると判断されたからだろう。
そもそも、一軒家ならともかく、俺はまだこの街でこんな大きな事業を任されるほど、信用があるわけでもない。ついでに言うなら、こういう仕事はたいていコネがものを言う。
そんないきさつで、俺はこの気の短いクオーク親方の下に配置されたのだろう。この爺さん、この塔の現場監督に任ぜられたからには有能な大工なんだろうが、気が短くて実にやりにくそうだ。少しでももたもたすると、すぐに罵声が飛んできそうな勢いだ。
だが、仕方がない。適度に機嫌を取りながら、可能な限りキビキビ動いて進めるしかない、そう割り切るしかなかった。
とはいっても、俺は現場に混じって一緒に作業をするわけではない。あくまで補佐の立場なので、俺が前に立つわけでもない。なんとも微妙な立ち位置だ。そう思っていたら、さっそく罵声が飛んできた。
「そんなところに突っ立って何やってんだ! そんな暇があったら現場を見て回るぞ、さっさとついてこい!」
言い分はもっともだが、しかし突然、何の前触れもなく怒鳴られても――頭をかきながら、それでもクオーク親方と、まずは現場に向かうしかなかった。
クオーク親方は、現場に着くと「あとは自分で見て回りな」と、俺を放り出してどこかへ行ってしまった。
仕方なく塔に近づいてみると、瓦礫に囲まれるようにして、巨大な鐘がそこにあった。粉砕された木箱の残骸を下敷きにして。
あのフェクトールの屋敷を襲撃した夜、鐘を落とすときのクッションとして積み上げた木箱は、うまい具合に機能してくれたようだ。
「……壊れてしまったかと思っていたよ」
感慨に浸っていると、後ろから声をかけられた。
「なんだ、鐘が落っこちた騒動、知ってんのか?」
振り返ると、手ぬぐいを肩にかけた赤髪の男がそこにいた。
「あのぶら下がっていたところから落ちたんだ。だが、誰がやったか知らねえが、下に木の空き箱をたんまり積み上げていたみたいでな。さすがに無傷ってわけにはいかなかったが、ちっとばかり凹んで、ヒビが入っちまっただけだ。なに、そこをぶっ叩かないようにすればいいだけだろ」
あの夜。
簡易投石機にしようとした起重機に、おもりの如くぶら下がっていたのが、降ろす予定だった、この鐘。
この鐘を落下させることで、鐘につながるロープにくくりつけた石のブロックを投げ飛ばし、屋敷の警備を撹乱した上で突入するという計画だった。その際、落下させた鐘はおそらく壊れてしまうだろうと思っていた。
ところがこの鐘、投げ飛ばすはずだった石のブロックが起重機に引っかかってしまったことで、一度落下が止まったのだ。
その引っかかったときの衝撃で、木製の起重機は地上三十メートルの高さから勢いをつけて落下。フェクトール公の屋敷までカッ飛んでいって、屋敷の屋根をぶち抜いたんだ。
そのおかげで、鐘は落下の衝撃を最小限にまで殺すことができ、あらかじめ下に積み上げておいた木箱の効果もあってか、損傷はわずかなへこみとヒビだけで済ませることができたらしい。
あの日からずっと確認していなくて壊してしまったと思い込んでいたから、あらためてほっと胸をなでおろす。
「オレはあの朝来て知ったクチなんだがな? あの時はみんな、どんなお咎めを食らうかって青くなったもんだ。けどよ、さすがフェクトール様だ、なんともなかったぜ。懐が広い御仁で助かった」
獣人の娘たちを集めて監禁していたことは、獣人の娘たちを保護していたのだというフェクトールの主張が、表向きそのまま通って広がっていた。おかげで奴は、慈悲深い青年貴族という評判のままだ。
俺の伝手で集まったメンバーは本当のことを知っているだろうが、広まっていない以上、おそらくあの場に駆けつけた力ある人間――つまりはナリクァンさんが、何らかの手を打ったのだろう。
それに、集められていた当の女性たちが屋敷から出たがらない以上、奴の言い分は完全に間違っていた、とは言えないわけで。釈然としないが、女性たちの多くが今の生活の継続を望んでいるのだから、外野の俺たちが騒ぎ立てるのは筋違いだろう。
「とにかく、鐘は一応無事、塔も起重機がぶっ壊れた以外は変化なしだ。フェクトール様のお屋敷が直らなきゃ話は進まねえが、なに、話がなくなっちまったわけじゃねえからな。いずれは工事も再開する。今、ここにいるってことは、あんたもでっかい仕事を求めて来た大工なんだろ?」
「……そう、だな」
俺の答えに、男は腕を組んだまま塔を見上げた。
「長いこと壊れたままだった塔がよみがえる、ここ最近で一番の大仕事だからな! オレたちが積み上げた石が、百年二百年、ここに残るんだぜ! 大工冥利に尽きるってもんだ、やるしかねえ。そんときはあんたもぜひ来るといいぜ!」
「ああ、そのときはまた、よろしく頼む」
「おう! オレは石組み長のバリオンだ。おめえは?」
「ムラタだ」
「変わった名だな? まあいい、オレの班に入ったときにはまた声をかけてくれ」
そう言って、バリオンは俺の背中をぶっ叩いた。
痛い! この世界の職人は、人間と出会ったら肩や背中をぶっ叩くって礼法でもあるのかよ!
「あんた、見た感じチカラはなさそうだが、なあに、オレの下に来た奴は、どこでだって通じる一人前の石組み屋に仕込んでやるからよ! ああ、そうだ。フェクトール様のお屋敷の修理も人手不足だ。『神は自ら求むる者を助く』。日当もメシも出るから、あんたも来な!」
バリオンはそう言って豪快に笑うと、俺の肩をつかんで屋敷のほうに引っ張る。
一瞬迷ったが、ついていくことにした。屋敷の様子を見ておくのもいい。なにせ肝心のクオーク親方が行方知らずだ。
俺が石組みをすることはないだろうけど、こんなふうに自身の仕事に誇りを持っている大工がいるっていうのは、素直に嬉しいと思う。
0
あなたにおすすめの小説
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
#密売じゃありません!ミツバイギフトで最高に美味しい果物作ったら、領主令息が夫になった件について
国府知里
ファンタジー
「がんばっても報われなかったあなたに」“スローライフ成り上がりファンタジー”
人生に疲れ果てた北村めぐみは、目覚めると異世界の農村で少女グレイスとして転生していた。この世界では6歳で神から“ギフト”を授かるという。グレイスが得た謎の力「ミツバイ」は、果物を蜜のように甘くするという奇跡の力だった!村を、領地を、やがて王国までも変えていく果樹栽培の物語がいま始まる――。美味しさが未来を育てる、異世界農業×スローライフ・ファンタジー!
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
異世界カフェ食堂で皿洗いをしますと思ったら日本料理を創造する力が与えられていた!(もふもふ聖獣猫のモフにゃーと楽しく日本料理を創造します)
なかじまあゆこ
ファンタジー
可愛いもふもふ達とアリナは異世界でスローライフをします。
異世界召喚された安莉奈は幼女の姿になっていた。神様に与えられた能力を使い眷属聖獣猫モフにゃーや魔獣のライオン魔獣鳥に魔獣の日焼けとお料理を創造します!
熊元安莉奈(くまもとありな)は黄色のバスに乗せられ異世界召喚された。 そして、なぜだか幼女の姿になっていた。しかも、日本の地球人だったことを忘れていたのだ。 優しいモリーナ夫妻に養子として引き取れた安莉奈はアリナになった。 モリーナ夫妻はカフェ食堂を経営していたが繁盛しておらず貧乏だった。料理が出来ないアリナはお皿洗いなどのお手伝いを小さな体ながらしていたのだけど。 神様から日本料理を創造する力が与えられていた! その力を使うと。
地球では辛い生活を送っていた安莉奈が異世界ではアリナとしてお父さんに激愛され幸せに生きている。
エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる