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第五部 異世界建築士と子供たちの楽園
第499話:考える正しさと現実の環境と
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四番門前の市場の朝。
たくさんの人でにぎわっているそこを、俺たちは人をよけながら歩いていた。
「……なあ、ムラタ。お前さ……」
リファルが、芋の串揚げを食いながら、小さい子の手を引いている母親らしき人物を指差した。
「子供には、親がいた方がいいと思うか?」
「いいに決まってるだろ」
俺は中学生の時に母を亡くした。
親父は家のことをなんにもしない人だったから、俺が立ち直るまで家の中はゴミ屋敷の地獄だった。
もっとも、親父は多分、自分の妻を亡くした衝撃と悲しみを、仕事で紛らわしたかったんだろう。
その気持ちは、今なら分かる気がする。当時の俺だって、放課後の部活動の時間が、少しでも長くあって欲しかった。母を失い、父もなかなか帰ってこない家で一人で過ごす時間は、気が狂いそうだった。
まして今の俺には、リトリィをはじめ、愛する女性たちがいる。差をつけるつもりはないけれど、ことにリトリィを失うなど、想像もしたくない。
「……そう、だったな。お前は、オレと違って母親を亡くしてたんだっけか」
すまねえ、と頭を下げたリファルに、俺はあえて笑ってみせた。
「事実だからな。それに俺が伝えたことだ、気にしていない。そんなことより、なんで急に、そんな話をするんだ?」
「いや、大したことじゃねえんだけどさ」
リファルは、串から揚げ芋を引き抜いて頬張ると、くず拾いをしていた少年に串を渡した。少年は顔を輝かせてそれを受け取ると、大切そうに、抱えているずだ袋ではなく、腰に下げた袋に入れた。
「……なんであの子は、お前の串を、あんなにも大事そうにしまい込んだんだろう」
「なんだ、知らないのか?」
リファルは、少年の方を振り返りながら続けた。
「あの串、ちょっと焦げてるだけで、綺麗なものだっただろう?」
「……ああ、そうだったかもしれないな」
「あれを集めて、綺麗に洗って串物屋にもってけば、小遣い稼ぎになるんだよ。……浮浪児にとっては、程度の額だけどな」
そんなこと、初めて聞いたぞ?
浮浪児と言えば、うちにいるヒッグスとニューとリノ。この三人が該当する。だが、そんな話、していたことがあっただろうか?
「言っとくが、くず拾いにも縄張りがあるからな。あのチビたちがそもそも市場で稼ぐ縄張りを持ってなけりゃ、聞いても分からんかもしれないってことだけは覚えといてくれよ?」
そうか、結局は生きるための場所の確保と奪い合いか。世知辛い。
「だろう? 親のいないガキは、そうやってどこかにすがりついて、なんとか生きていくしかねえんだよ。まあ、だれかにすがって生きるしかねえってのは、ガキだけに限ったことでもねえんだけどな?」
そう言って、リファルが目を向けたのは、城壁付近にある薄暗い安宿群だった。
大路沿いにある宿とは違う、安宿。そして、高い城壁のために常に日陰となるその薄暗い路地には、ぽつぽつと、肌もあらわな女性たちがいる。
……ああ、考えるまでもない。
リトリィも、もしもジルンディール親方に拾われていなければ、ああなっていたかもしれないのだ。食えなければ死ぬだけなのだから。
それだけじゃない。
「幸せの塔」の最大スポンサーとなっている貴族、フェクトール公。
彼が「集めた」獣人族の人たち――特に、後宮にも似た館に集められた女性たちは、結局、その多くがフェクトール公に依存して生きる道を選んだ。
それをとやかく言うつもりはない。彼に一度は奪われたリトリィは、しかし俺のもとで生きることを選んでくれた。そして残った女性たちは、貴族のもとで養われることを選んだ。それだけだ。
そうやって生きる術を持たなければ、子ができても育てることはできない。健康を害するような生き方をしていても、病や事故に倒れても、同じ。
「ムラタ、お前そこまで分かってるなら、どうして孤児院の院長を目の敵にするような真似をしたんだ? ガキは生き方を選べねえんだ。特に赤ん坊は、育てられねえって親に判断されて捨てられちまったら、もう死ぬしかねえんだぞ?」
「いや、だからって、引き取った赤ん坊が簡単に死んでも、『どうせほっといたら死んでたんだし死んでも仕方ない』で済ませるのはどう考えたっておかしいだろ」
「誰がそこまで言ったんだよ……」
リファルは俺の肩をつかむと、あきれたように言った。
「前も言ったが、赤ん坊なんてちょっとしたこと――事故とか流行り病とか……とにかく、よく死ぬもんだ。別に院長だって、赤ん坊を殺して回ってるわけじゃねえ。仕方ねえことなんだ。なのに、なんでお前はそんな、ことさら問題視しようとするんだ?」
「何言ってんだ、赤ん坊だぞ?」
俺は逆に、リファルがなぜそんなにも達観できるのかが分からない。確かに、ちょっとしたことで赤ん坊は死ぬだろう。か弱い存在だ。でも――
「でも、だからこそみんなで守るべきものだろ?」
「言いたいことは分かるって。だけどな、それにしたって仕方のないことだってあるだろうが」
「赤ん坊だぞ? 可哀想だろ。仕方ないで済ませていいわけがない」
「だからムラタ。さっきも言ったけどな、孤児院の赤ん坊は、みんな親に捨てられた子供たちなんだぜ? 死んで当然とは言わないけどな、ほっとけば確実に死んでいた命だ。親元にいたって、いずれは死んでいたかもしれない」
彼の肩をつかんでいた俺の手をはらうと、リファルは首を振った。
「孤児院は、そんな死ぬはずだったガキどもを拾って、なんとか助けようとしているんだぜ? むしろ、よくやってると思わないのか?」
「そうかもしれないが、それにしたってあの環境は酷すぎると思わないか? あれを何とかすれば絶対に救える命があるはずなんだ」
「酷すぎる? どこがどう酷いんだ、言ってみろよ」
リファルが首をかしげてみせた。
なるほど、俺に問題点を指摘させて、その切り分けと、まずできそうなことを俺に確認させようっていうのか。リファルのくせに、やけに論理的じゃないか。いいさ、付き合ってやる。
「まず一番の問題は、赤ん坊の扱い方だ。お前も見ただろう、イモムシかサナギみたいなあの赤ん坊たちを! あんな、布で硬くぐるぐる巻きにしてほっといて!」
思い出すだけで腹が立つ。
赤ん坊といえば、柔らかな毛布のような布で優しくくるまれて、温かくしておくのが基本だろう。子育ての経験こそないけど、それくらいは分かるさ。
「その布だって、じっとりと湿っていた。濡れたおむつを、長い時間、そのままにしてあるに違いない。あれで健康に成長するなんて、どう考えたって無理だ」
リファルは下の兄弟がいると言っていた。だったら、その異常さを分かってくれるはずだ――そう思ったのに。
「ナニ言ってんだお前? 普通じゃないか」
彼は、肩をすくめて首を振った。
いま聞いたばかりの自分の耳が、信じられなかった。
「普通……? あれが、普通って……おいリファル、どういうことだ?」
「孤児院の修繕の依頼っていうのは、いくつか経験したことがある。どこも、あんなもんだぞ? 別にあそこが特別悪いようには思わねえな」
……嘘だろう?
あの、どう見ても劣悪な環境が、……普通?
「おしめも、一日に三回変えてるって話だっただろ? しかも一人で。むしろよく頑張ってるんじゃねえのか?」
「そ、そんなバカな! マイセルだってフェルミだって、必要になるからって、五枚や十枚どころじゃなく、たくさんのオムツを作っているぞ? それも、よく水を吸うようになった、それなりに古くなった布を見繕って」
「それは実の母親だからに決まってるじゃねえか。孤児院なんだし、人手も足りてねえんだぜ? おむつ替えなんて、そんなもんだろう?」
そう言って、リファルはある屋台を指差した。
そこでは俺よりすこし年下くらいだと思われる女性が、大きなお腹を抱えて呼び込みをしていた。
その奥には、木箱の中に、孤児院で見たような、グルグル巻きにされた赤ん坊が転がされていた。
「なんなら、機織り小屋とか畑仕事とかで赤ん坊に手がかけられない時は、あのまま木の枝にでも半日くらいぶら下げとくことだってあるぜ?」
「は、半日⁉ 木の枝からぶら下げる⁉」
「仕方ないだろ、面倒見てられねえんだから」
「だ、脱水とかで死んじゃうだろうが! それにぶら下げるって、そんな……!」
「……そりゃ、たまに乳は飲ませに行くだろうさ。だが、それだけだ。地面に寝かせとくと、ケモノに食われちまう恐れもあるしな。仕方ねえだろ」
「仕方ないで済むかっ‼」
思わずリファルの両肩を声を荒げてしまった俺は、慌てて手を引っ込めた。
周りからの視線が突き刺さってくる、それが理解できたからだ。
だが、どうしてもそれがまともなやり方だとは思えなかった。
どう考えても児童虐待じゃないか。
リファルは、自分の両肩を少しぐるぐる回し、肩をすくめてみせると、改めて俺に向き直った。
「なあ、ムラタ。お前、子育ての経験、ねえって言ってたよな?」
「……ない」
「じゃあさ、逆に聞きてえんだけどさ。なんでそう、お前はオレの話を間違ってるみたいに言うんだ? お前は、一体何が正しいと思ってんだ?」
「そりゃもちろん――」
言いかけて、言いよどむ。
俺自身、別に育児書を呼んだわけじゃない。
学校で勉強したのも、あくまで生命の発生と誕生、発達と成長の概要くらいだ。授業で、本物の赤ん坊と同じ重さの人形を抱っこするとかもしたけど、実際に赤ん坊の世話をする経験はなかった。
――でも、それでもだ。
孤児院のあの赤ん坊たち……天井を見上げたまま泣きもせずにいたあの赤ん坊たちの姿が、正しいはずがないだろう!
それだけは、それだけは断言できるんだ!
たくさんの人でにぎわっているそこを、俺たちは人をよけながら歩いていた。
「……なあ、ムラタ。お前さ……」
リファルが、芋の串揚げを食いながら、小さい子の手を引いている母親らしき人物を指差した。
「子供には、親がいた方がいいと思うか?」
「いいに決まってるだろ」
俺は中学生の時に母を亡くした。
親父は家のことをなんにもしない人だったから、俺が立ち直るまで家の中はゴミ屋敷の地獄だった。
もっとも、親父は多分、自分の妻を亡くした衝撃と悲しみを、仕事で紛らわしたかったんだろう。
その気持ちは、今なら分かる気がする。当時の俺だって、放課後の部活動の時間が、少しでも長くあって欲しかった。母を失い、父もなかなか帰ってこない家で一人で過ごす時間は、気が狂いそうだった。
まして今の俺には、リトリィをはじめ、愛する女性たちがいる。差をつけるつもりはないけれど、ことにリトリィを失うなど、想像もしたくない。
「……そう、だったな。お前は、オレと違って母親を亡くしてたんだっけか」
すまねえ、と頭を下げたリファルに、俺はあえて笑ってみせた。
「事実だからな。それに俺が伝えたことだ、気にしていない。そんなことより、なんで急に、そんな話をするんだ?」
「いや、大したことじゃねえんだけどさ」
リファルは、串から揚げ芋を引き抜いて頬張ると、くず拾いをしていた少年に串を渡した。少年は顔を輝かせてそれを受け取ると、大切そうに、抱えているずだ袋ではなく、腰に下げた袋に入れた。
「……なんであの子は、お前の串を、あんなにも大事そうにしまい込んだんだろう」
「なんだ、知らないのか?」
リファルは、少年の方を振り返りながら続けた。
「あの串、ちょっと焦げてるだけで、綺麗なものだっただろう?」
「……ああ、そうだったかもしれないな」
「あれを集めて、綺麗に洗って串物屋にもってけば、小遣い稼ぎになるんだよ。……浮浪児にとっては、程度の額だけどな」
そんなこと、初めて聞いたぞ?
浮浪児と言えば、うちにいるヒッグスとニューとリノ。この三人が該当する。だが、そんな話、していたことがあっただろうか?
「言っとくが、くず拾いにも縄張りがあるからな。あのチビたちがそもそも市場で稼ぐ縄張りを持ってなけりゃ、聞いても分からんかもしれないってことだけは覚えといてくれよ?」
そうか、結局は生きるための場所の確保と奪い合いか。世知辛い。
「だろう? 親のいないガキは、そうやってどこかにすがりついて、なんとか生きていくしかねえんだよ。まあ、だれかにすがって生きるしかねえってのは、ガキだけに限ったことでもねえんだけどな?」
そう言って、リファルが目を向けたのは、城壁付近にある薄暗い安宿群だった。
大路沿いにある宿とは違う、安宿。そして、高い城壁のために常に日陰となるその薄暗い路地には、ぽつぽつと、肌もあらわな女性たちがいる。
……ああ、考えるまでもない。
リトリィも、もしもジルンディール親方に拾われていなければ、ああなっていたかもしれないのだ。食えなければ死ぬだけなのだから。
それだけじゃない。
「幸せの塔」の最大スポンサーとなっている貴族、フェクトール公。
彼が「集めた」獣人族の人たち――特に、後宮にも似た館に集められた女性たちは、結局、その多くがフェクトール公に依存して生きる道を選んだ。
それをとやかく言うつもりはない。彼に一度は奪われたリトリィは、しかし俺のもとで生きることを選んでくれた。そして残った女性たちは、貴族のもとで養われることを選んだ。それだけだ。
そうやって生きる術を持たなければ、子ができても育てることはできない。健康を害するような生き方をしていても、病や事故に倒れても、同じ。
「ムラタ、お前そこまで分かってるなら、どうして孤児院の院長を目の敵にするような真似をしたんだ? ガキは生き方を選べねえんだ。特に赤ん坊は、育てられねえって親に判断されて捨てられちまったら、もう死ぬしかねえんだぞ?」
「いや、だからって、引き取った赤ん坊が簡単に死んでも、『どうせほっといたら死んでたんだし死んでも仕方ない』で済ませるのはどう考えたっておかしいだろ」
「誰がそこまで言ったんだよ……」
リファルは俺の肩をつかむと、あきれたように言った。
「前も言ったが、赤ん坊なんてちょっとしたこと――事故とか流行り病とか……とにかく、よく死ぬもんだ。別に院長だって、赤ん坊を殺して回ってるわけじゃねえ。仕方ねえことなんだ。なのに、なんでお前はそんな、ことさら問題視しようとするんだ?」
「何言ってんだ、赤ん坊だぞ?」
俺は逆に、リファルがなぜそんなにも達観できるのかが分からない。確かに、ちょっとしたことで赤ん坊は死ぬだろう。か弱い存在だ。でも――
「でも、だからこそみんなで守るべきものだろ?」
「言いたいことは分かるって。だけどな、それにしたって仕方のないことだってあるだろうが」
「赤ん坊だぞ? 可哀想だろ。仕方ないで済ませていいわけがない」
「だからムラタ。さっきも言ったけどな、孤児院の赤ん坊は、みんな親に捨てられた子供たちなんだぜ? 死んで当然とは言わないけどな、ほっとけば確実に死んでいた命だ。親元にいたって、いずれは死んでいたかもしれない」
彼の肩をつかんでいた俺の手をはらうと、リファルは首を振った。
「孤児院は、そんな死ぬはずだったガキどもを拾って、なんとか助けようとしているんだぜ? むしろ、よくやってると思わないのか?」
「そうかもしれないが、それにしたってあの環境は酷すぎると思わないか? あれを何とかすれば絶対に救える命があるはずなんだ」
「酷すぎる? どこがどう酷いんだ、言ってみろよ」
リファルが首をかしげてみせた。
なるほど、俺に問題点を指摘させて、その切り分けと、まずできそうなことを俺に確認させようっていうのか。リファルのくせに、やけに論理的じゃないか。いいさ、付き合ってやる。
「まず一番の問題は、赤ん坊の扱い方だ。お前も見ただろう、イモムシかサナギみたいなあの赤ん坊たちを! あんな、布で硬くぐるぐる巻きにしてほっといて!」
思い出すだけで腹が立つ。
赤ん坊といえば、柔らかな毛布のような布で優しくくるまれて、温かくしておくのが基本だろう。子育ての経験こそないけど、それくらいは分かるさ。
「その布だって、じっとりと湿っていた。濡れたおむつを、長い時間、そのままにしてあるに違いない。あれで健康に成長するなんて、どう考えたって無理だ」
リファルは下の兄弟がいると言っていた。だったら、その異常さを分かってくれるはずだ――そう思ったのに。
「ナニ言ってんだお前? 普通じゃないか」
彼は、肩をすくめて首を振った。
いま聞いたばかりの自分の耳が、信じられなかった。
「普通……? あれが、普通って……おいリファル、どういうことだ?」
「孤児院の修繕の依頼っていうのは、いくつか経験したことがある。どこも、あんなもんだぞ? 別にあそこが特別悪いようには思わねえな」
……嘘だろう?
あの、どう見ても劣悪な環境が、……普通?
「おしめも、一日に三回変えてるって話だっただろ? しかも一人で。むしろよく頑張ってるんじゃねえのか?」
「そ、そんなバカな! マイセルだってフェルミだって、必要になるからって、五枚や十枚どころじゃなく、たくさんのオムツを作っているぞ? それも、よく水を吸うようになった、それなりに古くなった布を見繕って」
「それは実の母親だからに決まってるじゃねえか。孤児院なんだし、人手も足りてねえんだぜ? おむつ替えなんて、そんなもんだろう?」
そう言って、リファルはある屋台を指差した。
そこでは俺よりすこし年下くらいだと思われる女性が、大きなお腹を抱えて呼び込みをしていた。
その奥には、木箱の中に、孤児院で見たような、グルグル巻きにされた赤ん坊が転がされていた。
「なんなら、機織り小屋とか畑仕事とかで赤ん坊に手がかけられない時は、あのまま木の枝にでも半日くらいぶら下げとくことだってあるぜ?」
「は、半日⁉ 木の枝からぶら下げる⁉」
「仕方ないだろ、面倒見てられねえんだから」
「だ、脱水とかで死んじゃうだろうが! それにぶら下げるって、そんな……!」
「……そりゃ、たまに乳は飲ませに行くだろうさ。だが、それだけだ。地面に寝かせとくと、ケモノに食われちまう恐れもあるしな。仕方ねえだろ」
「仕方ないで済むかっ‼」
思わずリファルの両肩を声を荒げてしまった俺は、慌てて手を引っ込めた。
周りからの視線が突き刺さってくる、それが理解できたからだ。
だが、どうしてもそれがまともなやり方だとは思えなかった。
どう考えても児童虐待じゃないか。
リファルは、自分の両肩を少しぐるぐる回し、肩をすくめてみせると、改めて俺に向き直った。
「なあ、ムラタ。お前、子育ての経験、ねえって言ってたよな?」
「……ない」
「じゃあさ、逆に聞きてえんだけどさ。なんでそう、お前はオレの話を間違ってるみたいに言うんだ? お前は、一体何が正しいと思ってんだ?」
「そりゃもちろん――」
言いかけて、言いよどむ。
俺自身、別に育児書を呼んだわけじゃない。
学校で勉強したのも、あくまで生命の発生と誕生、発達と成長の概要くらいだ。授業で、本物の赤ん坊と同じ重さの人形を抱っこするとかもしたけど、実際に赤ん坊の世話をする経験はなかった。
――でも、それでもだ。
孤児院のあの赤ん坊たち……天井を見上げたまま泣きもせずにいたあの赤ん坊たちの姿が、正しいはずがないだろう!
それだけは、それだけは断言できるんだ!
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