Toward a dream 〜とあるお嬢様の挑戦〜

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第二章 勝負の三年間 一年生編

第十六話 綾乃にピッタリの人

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 五月六日。


 
 「おはようございます」


 
 教室に入った綾乃は潤に挨拶をする。席に着いてた潤は綾乃の声で立ち上がり、目を合わせる。


 
 「おはよう!」


 
 笑顔で応えた潤。




 「あはは!真希ちゃんらしいね」

 「本心で仰ってるのかは分かりませんけどね」


 綾乃は四月の真希との会話について潤に話した。しかし潤は赤面などすることなく、笑って応えた。


 「真希ちゃん、そういう冗談言うの上手いから。ムードメーカーみたいなところあるでしょ?」

 「ええ、まあ…」

 「きっと、綾乃ちゃんとあまり話したことがない部員が声を掛けやすくするためにそうしたんだと思うよ」

 「そ、そうでしょうか?」

 「きっとそうだよ」


 潤の言葉と同時に、一人の女子生徒が教室へ。自身の席へバッグを置くと、二人の元へ。


 「おはよう!」


 真希だった。


 「丁度、真希ちゃんの話をしてたんだよ」


 笑顔の潤。


 「彼氏ならいるよ?」


 冗談を言うように笑顔でそう言う真希。


 「え、初めて知った!」

 「知ってるでしょ」


 冗談を言う潤に呆れたような笑顔でツッコむ真希。

 綾乃は真希を見つめる。その姿を見て、潤がこう話す。


 「真希ちゃんに恋人がいることは本当だよ。この学校にね。部活終わりに後姿をよく見るから。凄く仲良さそうでね。幸せそのものって感じだよ」

 「本当にそう思ってる?」

 「うん!」

 「まあ、信じるとしよう」


 真希が言うと、潤はやさしい笑みを浮かべる。


 自身には恋人はいない。しかし、羨ましいという気持ちを抱くことはなかった綾乃。

 自身が好きになった男性とお付き合いし、結婚できる保証はない。最終的に決断を下すのは浩平。彼が「ノー」サインを出したらそれまでだ。

 恋愛に興味がないわけではない。しかし、この時はサッカーが優先。恋愛は二の次だ。

 
 真希はじゃれ合うように順と言葉を交わすと、視線を綾乃へ。


 「綾乃ちゃんはどんな人がいいのかな…」


 そう言葉を漏らした真希は視線を再び潤へ。しかし、潤は特に動じることなく、真希を見つめる。


 「俺なんか真希ちゃんには勿体無いよ」


 笑顔の潤。


 「そういうことじゃなくて」


 笑って応える真希。

 すると、潤は綾乃へやさしい視線を送る。




 「真希ちゃん、冗談言うの上手いから。表情で分かっちゃうよ、俺は」

 「おお、言うね。さすが、選手心理を見抜くプロ」

 「おいおい」

 
 呆れるように応える潤。しかし、その表情はどこか嬉しそうだった。

 それからすぐに、潤の視線は綾乃へ。まるで「だから言ったろ?」と言うように。


 「まあ、潤に綾乃ちゃんは勿体無いもんね」

 「おお、そう言われるとちょっと悔しいな。でも、その通りだからな」


 綾乃はどう反応してよいか分からず、じっと潤を見つめる。

 その姿を見て、真希が言う。


 「綾乃ちゃんにピッタリの人は絶対見つかる。私達、綾乃ちゃんの恋、応援するから。困ったことがあったら言ってね」


 笑顔でそう言い残し、真希はクラスメイトの女子生徒の元へ。

 彼女の背中を見つめ、潤が言う。


 「綾乃ちゃんが誰かとお付き合いしたら俺はどんな気持ちになるんだろう…」

 「ちょ、ちょっと、宮本さん…!」

 「まあ、どっちにしろ応援するけどね」


 綾乃の赤くなりかけた表情は一気に元に戻る。そして、潤にこう尋ねる。


 「宮本さんはどのような女性が好みなんですか?」


 潤は「うーん…」と唸りながら腕を組む。そして、数秒間天井を見つめた後、綾乃へ視線を向ける。


 「よく分かんないや」


 笑顔の潤。綾乃も。


 やさしい風で揺れる木の葉の音を聞きながら二人は楽しそうに会話する真希の姿を微笑みながら見つめていた。
 
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