隣に住んでいた年上のお姉さん

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ゴールイン

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 時は過ぎ、四年生の十二月。僕は無事就職先が決まった。希望していたバスケットボールのクラブチームを運営する会社だ。僕はユキに連絡した。

 「おめでとう!お祝いしなきゃね」「えっ!そんな。いいよ、何か恥ずかしいから」「いいじゃん!お祝いさせてよ!」

 僕はその週の土曜日に会う約束をした。

 そして土曜日。僕はユキの住む隣町へ向かった。ユキとは駅で待ち合わせ。僕は駅でユキを待った。

 待っていると一人の女性が手を振って僕の元へ駆け寄った。

 「ケイスケくん!」

 ユキだ。その表情には笑顔が見えた。

 「おめでとう!就職」「ありがとう!ユキちゃんのアドバイスもあって内定貰えたよ」

 僕達は寿司屋へ入った。この日はユキが僕の就職を祝ってご馳走してくれた。

 「好きなだけ食べなよ?」「いただきます!」

 僕は回っている皿をどんどん取った。気付くと十五皿を超えていた。

 満腹になり、お茶を飲んだ。

 「就職決まったからあとは卒業だね。単位は足りてるんだもんね」「あとは卒論とかを取れば卒業できるよ」「ちゃんと取るんだよ?」「大丈夫だよ!」

 僕は笑顔でそう返した。お茶を飲む僕の横顔をユキはやさしい表情で見つめていた。

 寿司屋を出て二人で道を歩いた。

 「四月から一人暮らしするの?」「うん。会社の近くのマンションでね。今から楽しみと不安でいっぱいだよ」「すぐ慣れるよ!」

 卒業したら社会人。そして…。

 「ちゃんと迎えに行くからね…」

 僕は小さい声で呟いた。ユキは聞こえていたようだがあえて聞こえないふりをしていた。微笑みながら前を向いて歩いた。

 (まずは卒業しないとな…。よし!)

 雪がちらつく街中を二人で歩いた。

 四月。僕は社会人としてのスタートを切った。僕は会社が運営するスポーツスクールのコーチ部門に配属された。研修を受け、本格的に業務を開始した。最初は覚えることが多いが、慣れてくればスムーズにこなせるだろう。会社、クラブチーム、スクールの子ども達、僕自身のために。そして…。

 「ユキちゃん!迎えに来たよ」「待ってたよ」

 ユキのために。

 僕とユキは交際を始め、休日に楽しい時間を過ごしている。

 僕はユキの両親に認めてもらえるほどの男になれただろうか。

 数年後。僕はユキの実家へ挨拶に訪れた。

 「幸せにしてやってくれよ」

 僕はユキと結婚した。

 「はい、お父さん」「ありがとう。行ってくるね」「行ってらしゃい!」

 僕は表札を見た。

 (夢じゃないんだよな…)

 表札に手を置き、幸せを噛み締めていた。

 (今日も頑張るぞ!)

 そう意気込み、職場の体育館へ向かう僕の後姿をユキが笑顔で見つめていた。
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