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婚約破棄!?
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今夜は王宮の舞踏会。
国中の貴族が集まる時期に開催される、1年の中でも特に大きな舞踏会だ。
この国の第二王子の婚約者である私は隣に立つ殿下に恥をかかせないよう、朝から湯浴みをして侍女達からマッサージを受け、美しく化粧を施し新しく仕立てた華やかなドレスを着る。今日のために用意したジュエリーをつけてこれで完璧! というところで今日はエスコートできなくなったと殿下から連絡が来た時から嫌な予感はしていたのだ。
「オレリア・アールグレーン、お前との婚約を破棄する!
私がシャルロッテと想い合っていることに嫉妬し嫌がらせをしていたことは知っている! 今までは心優しいシャルロッテが大事にしたくないと言うので黙っていたが、毒を盛りシャルロッテを殺そうとするなど今回は許せん!」
そう私に言い放った殿下の腕には、ウェーブのかかった薄茶の髪にぱっちりとした薄紅の瞳の可愛らしい少女がしなだれかかっている。
彼女が殿下の言うシャルロッテだろう。何度か学園で殿下の横にいるのを見た覚えがある。
私と殿下は幼い頃に親が決めた婚約者同士だ。
うちは公爵家で王家に嫁いでも問題ない身分があるし、元々アデライト・アールグレーンという有名な魔法使いが魔法による功で興した家で、昔から魔力が多く魔法が得意な者が多いので王家に望まれて決まった婚約だと聞いている。
残念ながら公爵家の人間には珍しく私は魔法が使えないんだけれどね。
そんな殿下の婚約者である私がいても殿下に擦り寄って来る令嬢は多い。
私と殿下の婚約が政略的だということも、アールグレーン家なら魔力が多く魔法も得意になるだろうと期待されて婚約者になったのに魔法が使えないということも周りに知られているからだ。
今殿下の横にいるシャルロッテという令嬢もよく学園で殿下の周りにいた令嬢の1人だったと思う。
だけれど、毒? そもそも毒どころか嫌がらせさえした覚えもない。
この騒ぎを一目見ようと、会場中から好奇の視線が突き刺さる。
こんなところでアールグレーン公爵令嬢たる私が弱った姿を見せるわけにはいかない。ピンと背筋を伸ばし、出来る限り優雅に、殿下をしっかりと見つめ言う。
「待ってください、殿下。私は毒など盛っておりませんし嫌がらせもしておりません」
そう伝えるが殿下にとってはシャルロッテという令嬢と一緒になることが重要で、私の言うことなどはなから聞くつもりもないようだ。
「シャルロッテに、私に近づくな、親しくするな、私の近くにいられる身分ではないと言ったと聞いている。他にもシャルロッテの悪口を言ったり物を隠したりしていたのだろう」
「私、ずっと怖くてっ! アンドレ様とお話ししただけでいつもオレリア様に怒られてしまうし、私の物は気が付かないうちになくなるし……」
シャルロッテという令嬢は瞳をうるうるとさせ、涙を流しながら殿下に言う。
自分よりも身分の高い人同士の話に割って入るなんてどんな教育を受けてきたのよ! それにさっきから人前で殿下にベタベタとしなだれかかって、こんな大勢の前で貴族女性が涙を見せるなんてマナーもへったくれもない。
私はこの令嬢に、殿下とあまり親しくしすぎないように、と、話す時に距離が近いのではないか、とは確かに言った。
でもそれは婚約者のいる異性への態度として相応しくないと思ったからだ。
身分についても彼女は男爵令嬢だったはず。
男爵は世襲貴族の中でも1番下。だがとても男爵令嬢だとは思えないような態度で殿下に接していたので注意をした。
シャルロッテという令嬢に言った覚えがあるのはそれだけだ。
それに注意をしたのはシャルロッテという令嬢だけではなく殿下の周りにいた他の令嬢にもだ。
これは嫌がらせなどではなく殿下の婚約者である私には言う権利があると思っている。
そう殿下にも説明したが、シャルロッテには私が気安い態度でよいと許可を出していたからよいのだ! 親に言われて婚約しただけのお前にそんなこと言う権利などない! と全く聞く耳を持たない。
「それに、毒など身に覚えがございません。私がそのシャルロッテさんと関わったのは先ほども説明した殿下への態度を注意したときだけでございます」
そう殿下をしっかりと見つめキッパリ言う。
「嘘をつくな! ここにその毒の入っていた瓶も見つかっている! この瓶も魔法省に調べてもらったがお前の触れた形跡が残っている!」
そう言う殿下の手には10センチほどの小さな小瓶が握られている。
魔法省には、時間が経っていなければ物に残ったわずかな魔力から触れた者を割り出す魔法を使う者がいると聞いたことがある。
そして殿下の持つあの瓶は、何日か前にあったパーティーの化粧室ですれ違った令嬢が落とした物を拾った覚えがある。
もしかしてあの時すれ違った令嬢はこのシャルロッテという令嬢だったの!?
嵌められた!
そう思い何度も説明したが殿下は全く聞く話を聞いてくれない。
「こんな証拠まであると言うのにシャルロッテに謝罪するわけでもなく、さらにはシャルロッテに嵌められただと!? 恥を知れ! こんな悪辣な者をこの国に置いておくわけにはいかない。オレリア・アールグレーン、お前を国外追放とする」
「そ、そんな……」
あぁ、目が回る。
あまりのことに頭が痛くなり足元がフラフラとふらついてくる。
うぅっ、目の前景色がぐるぐるして気持ち悪い。
・・・あれ、私、誰だっけ?
アデライト・アールグレーン。
いや、違う違う! それはうちを興した伝説の魔法使いの名前じゃない。
えーっと、私は、えっと。
私、誰だっけ? 名前は? そんなことを考えていると急に膨大な記憶が頭に流れ込み、オレリアの意識は途切れた。
国中の貴族が集まる時期に開催される、1年の中でも特に大きな舞踏会だ。
この国の第二王子の婚約者である私は隣に立つ殿下に恥をかかせないよう、朝から湯浴みをして侍女達からマッサージを受け、美しく化粧を施し新しく仕立てた華やかなドレスを着る。今日のために用意したジュエリーをつけてこれで完璧! というところで今日はエスコートできなくなったと殿下から連絡が来た時から嫌な予感はしていたのだ。
「オレリア・アールグレーン、お前との婚約を破棄する!
私がシャルロッテと想い合っていることに嫉妬し嫌がらせをしていたことは知っている! 今までは心優しいシャルロッテが大事にしたくないと言うので黙っていたが、毒を盛りシャルロッテを殺そうとするなど今回は許せん!」
そう私に言い放った殿下の腕には、ウェーブのかかった薄茶の髪にぱっちりとした薄紅の瞳の可愛らしい少女がしなだれかかっている。
彼女が殿下の言うシャルロッテだろう。何度か学園で殿下の横にいるのを見た覚えがある。
私と殿下は幼い頃に親が決めた婚約者同士だ。
うちは公爵家で王家に嫁いでも問題ない身分があるし、元々アデライト・アールグレーンという有名な魔法使いが魔法による功で興した家で、昔から魔力が多く魔法が得意な者が多いので王家に望まれて決まった婚約だと聞いている。
残念ながら公爵家の人間には珍しく私は魔法が使えないんだけれどね。
そんな殿下の婚約者である私がいても殿下に擦り寄って来る令嬢は多い。
私と殿下の婚約が政略的だということも、アールグレーン家なら魔力が多く魔法も得意になるだろうと期待されて婚約者になったのに魔法が使えないということも周りに知られているからだ。
今殿下の横にいるシャルロッテという令嬢もよく学園で殿下の周りにいた令嬢の1人だったと思う。
だけれど、毒? そもそも毒どころか嫌がらせさえした覚えもない。
この騒ぎを一目見ようと、会場中から好奇の視線が突き刺さる。
こんなところでアールグレーン公爵令嬢たる私が弱った姿を見せるわけにはいかない。ピンと背筋を伸ばし、出来る限り優雅に、殿下をしっかりと見つめ言う。
「待ってください、殿下。私は毒など盛っておりませんし嫌がらせもしておりません」
そう伝えるが殿下にとってはシャルロッテという令嬢と一緒になることが重要で、私の言うことなどはなから聞くつもりもないようだ。
「シャルロッテに、私に近づくな、親しくするな、私の近くにいられる身分ではないと言ったと聞いている。他にもシャルロッテの悪口を言ったり物を隠したりしていたのだろう」
「私、ずっと怖くてっ! アンドレ様とお話ししただけでいつもオレリア様に怒られてしまうし、私の物は気が付かないうちになくなるし……」
シャルロッテという令嬢は瞳をうるうるとさせ、涙を流しながら殿下に言う。
自分よりも身分の高い人同士の話に割って入るなんてどんな教育を受けてきたのよ! それにさっきから人前で殿下にベタベタとしなだれかかって、こんな大勢の前で貴族女性が涙を見せるなんてマナーもへったくれもない。
私はこの令嬢に、殿下とあまり親しくしすぎないように、と、話す時に距離が近いのではないか、とは確かに言った。
でもそれは婚約者のいる異性への態度として相応しくないと思ったからだ。
身分についても彼女は男爵令嬢だったはず。
男爵は世襲貴族の中でも1番下。だがとても男爵令嬢だとは思えないような態度で殿下に接していたので注意をした。
シャルロッテという令嬢に言った覚えがあるのはそれだけだ。
それに注意をしたのはシャルロッテという令嬢だけではなく殿下の周りにいた他の令嬢にもだ。
これは嫌がらせなどではなく殿下の婚約者である私には言う権利があると思っている。
そう殿下にも説明したが、シャルロッテには私が気安い態度でよいと許可を出していたからよいのだ! 親に言われて婚約しただけのお前にそんなこと言う権利などない! と全く聞く耳を持たない。
「それに、毒など身に覚えがございません。私がそのシャルロッテさんと関わったのは先ほども説明した殿下への態度を注意したときだけでございます」
そう殿下をしっかりと見つめキッパリ言う。
「嘘をつくな! ここにその毒の入っていた瓶も見つかっている! この瓶も魔法省に調べてもらったがお前の触れた形跡が残っている!」
そう言う殿下の手には10センチほどの小さな小瓶が握られている。
魔法省には、時間が経っていなければ物に残ったわずかな魔力から触れた者を割り出す魔法を使う者がいると聞いたことがある。
そして殿下の持つあの瓶は、何日か前にあったパーティーの化粧室ですれ違った令嬢が落とした物を拾った覚えがある。
もしかしてあの時すれ違った令嬢はこのシャルロッテという令嬢だったの!?
嵌められた!
そう思い何度も説明したが殿下は全く聞く話を聞いてくれない。
「こんな証拠まであると言うのにシャルロッテに謝罪するわけでもなく、さらにはシャルロッテに嵌められただと!? 恥を知れ! こんな悪辣な者をこの国に置いておくわけにはいかない。オレリア・アールグレーン、お前を国外追放とする」
「そ、そんな……」
あぁ、目が回る。
あまりのことに頭が痛くなり足元がフラフラとふらついてくる。
うぅっ、目の前景色がぐるぐるして気持ち悪い。
・・・あれ、私、誰だっけ?
アデライト・アールグレーン。
いや、違う違う! それはうちを興した伝説の魔法使いの名前じゃない。
えーっと、私は、えっと。
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