婚約破棄されたけど前世が伝説の魔法使いだったので楽勝です

sai

文字の大きさ
8 / 113

テスパトール4、そして出発

しおりを挟む

「ここだわ」

 1、2店舗目のことがあったから気合を入れて店に入る。
 この店はジュエリーが専門というわけではなくて、ジュエリー以外にも服や革製品や美容用品など色々扱っているみたい。
 なんだかこのお店聞いたことある名前なのよね。なんて考えていると店の奥から男の人がこちらに向かってくる。

「え! ラムダさん?」

 街道で野営をしていた時にスープを売って欲しいと言ってきた商人さんだ。

そうだ! 《金色の小枝》って、ラムダさんの店の名前だわ!
 別れる時に必要なものがあったら買いに行くと約束して名前まで聞いたのにすっかり忘れてた!

「リアさん! 来てくれたんですね。いやー、よかった! 約束したのはよいものの旅の方のようですし、寄る時間はないかもしれないなと思っていたのですよ。それで、今日はなにをお探しですか?」

「実は買い物じゃなくて、買取先を探してるジュエリーの査定をしていただきたいんです」

 そう言うとラムダさんは、「うちは買い取りもしてますからね。任せてください!」と胸をドンとたたき、査定ができる者を呼びに行った。

 店の商品を見て待っていると、少ししてラムダさんと一緒にシルバーヘアの60代くらいの上品な男性が出てくる。

「リアさん、お待たせしました。うちの査定担当のイレールです」

 そうラムダさんに紹介されたイレールさんはこちらを見ると丁寧に頭を下げる。

「イレールと申します。よろしくお願いいたします」

 今のところイレールさんは今までの2店舗の査定担当と違って私の見た目で侮ったりはしていないようだ。

「よろしくお願いします」

 テーブルに案内されて2人と向かい合ってソファに座り、イレールさんがジュエリーが傷つかないようにテーブルに柔らかそうな布を敷き、手袋を着ける。

「こちらにお出しください」

 そう言われ今まで通り試しにネックレスを1点出す。

「おぉ! これは素晴らしいですな」

 イレールさんはそう言うとルーペを出しじっくりと査定を始める。

「状態も良いですね、これならば大金貨6枚ほどで買い取れます」

 大金貨6枚だと、60万リルね。
 買った時は新品で100万リルくらいだったはずだからかなり良い金額だわ! ここなら信用できるし、もう何点か売っても大丈夫だろう。

「その値段で買い取りをお願いします。他にも何点か見ていただいてもいいですか?」

「もちろんですよ!」

 最終的に5点買い取りしてもらったが、どれも納得のできる値段だった。
 持ってきたジュエリーはまだまだあるけれど、高価なジュエリーを一気に売って怪しまれたら嫌なので今日はもう辞めておこう。
 今日の5点で340万リルになったので、このままいけば隣国に行った後に家を買えるかもしれない。

「また何かありましたら当店をよろしくお願いします」

 そうイーレルさんに言われたがすぐに隣国に向かわなければいけないし、隣国に行ったらここには戻れない。
 旅の途中なのですぐ旅立たなければいけないと伝えるとラムダさんがすごく残念がってくれた。

 ラムダさんのおかげで冒険者登録もできたし今回町に寄る目的にしていたジュエリーの買取も済んだ。
 今日はまた宿に泊まってゆっくり過ごして明日の朝にでも出発しよう。

 さっそく昨日と同じ宿に向かい女将さんにもう1日泊まれるか聞くと、ラッキーなことに部屋が空いていたので部屋をとって休む。
 明日からまた歩き通しの日が続くからね。

 結局夕食以外は部屋でだらだら過ごして朝になってしまった。

 宿で朝食を食べて女将さんにお礼を言い宿をでる。
 この町にきた時は身分証がなかったから玉で確認されたけど、今回は冒険者カードがあるから出る時の身分証はバッチリだ。

 早く国境に着きたいからできるだけ町には寄らずにサクサク進みたいけど、ジュエリーの換金があるから宝石店のあるような大きな町には寄らなくちゃいけない。
 となると次に向かうのはフィリベールね。
 ここからは身体強化とヒールを重ねがけして走れば3日くらいだろう。

「よし、出発しよう!」

 私は門を出て街道に向かって歩き出した。
しおりを挟む
感想 98

あなたにおすすめの小説

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる

千環
恋愛
 第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。  なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を助けようとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

処理中です...