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大森林
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「大森林というのは木まで大きいんだな」
通常では考えられないほど太く高い樹々が並ぶ森の入り口を見上げ呟く。
今朝は朝日が登るとともに辺境伯邸を出て門に向かった。私が到着した時には既に冒険者メンバーが待っており、錚々たるメンバーに町民や冒険者達が何事かと集まっていた。
「いよいよだな」
大森林の奥地。
それは帝国1の冒険者パーティーである金色の逆鱗さえ入ったのことのない未知の世界だ。
「皇太子殿下、馬は私とドナートが連れて帰ります。どうか、どうか無事にお戻りいただけることを祈っております!!」
こらから長期で大森林に入り強力な魔物と戦うことになる。
先頭の邪魔になり餌が荷物になる馬は連れて行けない。
辺境伯は馬を引きながら涙を堪えるような顔で言う。
「必ず魔女を見つけて帰る。待っていてくれ」
私はくるりと振り向き使者団の顔を1人1人見つめる。
皆表情を引き締め覚悟を決めた目をしている。
「皆、この危険な旅に共に来てくれたこと、本当に感謝する。
私たちはこれから大森林へと入り、奥地に住むという魔女を探しに行く。大森林の奥地は未知の世界だ。広大な大地に、見たこともないような強力な魔物。だが私は諦めない! 身体が痛もうとも、心がすり減ろうとも、絶対に成し遂げてみせる! 行くぞ!」
「「「「「オゥッ!!!」」」」」
ウィルフレッドは前を向くと大森林の奥を見据え、深く息を吸い込んだ後足を踏み出した。
大森林に入り巨木の根で波打った地面を歩き始めて30分した頃、ナイトクレッセントの斥候役、猫獣人のアーテルが耳をピクピクッと動かす。
「来た」
「おぉ? さっそくお出ましだぜ!」
金色の逆鱗、竜人ゴルドは普段なかなか出せない本気を出せる相手かとワクワクと肩を回し始める。
「ゴルド、大森林と言ってもまだここは入り口をちょっと入ったところよん? そんな強敵はでないわ。それよりも皆さんの実力を見せてもらった方がいいんじゃないかしらん。」
そうゴルドをたしなめる金色の逆鱗の弓使いブリーゼさんは、とてもそのまともな言動からは考えられないような格好をしている。
大森林にそんな布面積の服で入って大丈夫なのか!? と思わず私が突っ込んでしまったほどだ。
正直目のやり場に困るのだが、着ている服は魔道具で見た目に反して防御力は最高らしい。
「この服は防御力が高いのに加えて布が少ないから戦闘時に邪魔にならないのよん!」と言われてしまっては何も言えない。
「ではまずは俺たちが行きます!」
そう宣言したのはBランクパーティー銀色の刃のリーダーシメオン。
奥からこちらに向かって真っ直ぐ走ってくるビッグボアが近づいてくるとスッとドナシアンが盾を持ち前に出る。
「ヌンッ!!」
腰を落とし盾を構えたドナシアンはビッグボアを正面から迎え打ち、そのままの勢いで弾き飛ばす。
「行くよー!」
そこにリーゼロッテが水魔法で水の刃を撃ち、ビッグボアが怯んだところでシメオンとレジスが斬り込む。
ドナシアンが盾で攻撃を受け流し、リーゼロッテとシメオンとレジスでビッグボアの体力を地道に、着実に削っていく。
傷が増え流れる血が多くなるにつれビッグボアがふらつき始める。
「っ、ここだっ!」
ビッグボアが木の根で脚を滑らせ体制を崩した瞬間、その隙を待っていたと言わんばかりにシメオンが飛び込み、斬っと大剣を振るとビッグボアの首元から血が噴き出した。
プギャァァァァァァー…………!!!!!
ドッ、と地面を揺らしビッグボアの巨体がひっくり返る。
「ふぅ~。緊張した!」
「流石だな! 幼なじみパーティーなだけあって連携が上手い。」
「ありがとうございます! 皇太子殿下にそう言ってもらえるなんて、光栄です!」
「これからしばらく一緒に生活するんだ。ウィルでいい。
今夜はビッグボアのステーキだな。
血の匂いで他の魔物が集まって来る前に解体をしてしまおう」
「はい! 水は私に任せてください!」
水魔法の得意なリーゼロッテが手を挙げる。
「……あの、私、吊るします。」
植物魔法が得意だと言っていた金色の逆鱗の魔法使いローズが手をかざすとあっという間に蔓薔薇が現れビッグボアを吊し上げた。
「おお、すごい!」
思わずそう声を上げると、ローズは人見知りなのか顔を真っ赤にしエルフ特有の長い耳をピコピコ動かしながらゴルドの後ろに隠れた。
「いや~、すまんな。こいつは極度の人見知りなんだ」
「いや、いいんだ。さぁ解体を始めよう」
やっぱりこれだけ人数がいると解体も早いな。
5Mもあるビッグボアがあっという間に肉になる。
腐らず食べれる分だけだけ持ち移動しようとバッグに肉を詰めていると、アーテルが耳を動かして周りの様子を探り始める。
どうやら血の匂いに釣られて魔物が集まってきているらしい。
「まだそこまでじゃないけど、集まってきてる」
「次は俺たちの番だ。時間を稼ぐので荷の準備を進めてください。……いくぞっ!」
ナイトクレッセントのリーダーノエは両手に短剣を持つと出し飛びかかってきたワイルドウルフの群れを相手する。
倒れたワイルドウルフの首元にある刺し傷は全て頸動脈を狂いなく突いていた。
「ノエ、危ない」
ワイルドウルフを相手するノエの横を矢が通り、今にもノエに飛びかかろうとしていたオークの左目を突き刺した。
「ありがとう」
いつの間に登ったのかヴァンは木の上から弓で援護している。
「荷の準備ができた! 急いでここから離れよう!」
倒した魔物は置いくしここを離れれば追ってはこないだろう。
斥候のアーテルを先頭に魔物が少ない方角を選び遭遇した魔物を倒しつつ森の奥へ向かって走る。
「っ! 囲まれた!」
ニヤニヤと牙を見せて笑うオーガ達が木々の間から現れる。
こいつらここで待ち伏せしていたのか!
「フォンセ」
「ああ」
糸使いフォンセが黒い革手袋をした手を振りかざすと、指から光る細糸が飛び出しオーガ達を縛り上げる。
「今のうちに」
糸に縛られ動けなくなったオーガ達の間を走り抜けると、さらに森の奥を目指して走り出した。
「大森林というのは魔物を解体するだけでも命懸けなのだな」
「まぁここはそこら中魔物だらけだからな!でも大森林の本当の怖さはここからだぜ。まだこの辺はこのレベルの魔物しか出てこないが、もう少し奥へ進むと他の場所じゃその地の主レベルの魔物がわんさか出てくる。そうなったら今のようにパーティーごとじゃなく全員で掛かって倒して進むしかねぇな」
大森林に入ったこともあり世界各地を旅したゴルドが言うなら間違いないだろう。
「だが俺達も奥までは入ったことねぇ。正直どれほどのレベルの魔物が出るのか想像もつかないぜ」
「私も王宮を出る前に資料を調べたが、やはり大森林の奥地について詳しく載っている資料は見つからなかった。見つかったのは大森林に住む竜の御伽噺くらいだ」
「まぁSランクパーティーの俺たちでさえ入ったことねぇんだ。過去を遡っても奥まで行ったやつはほとんどいないだろうよ」
ゴルドはワクワクするぜっ! と笑った。
「ゴルドは強いな。心まで強い」
私は皆を率いる者としていつも弱さは見せないようにしているが、今回ばかりはやはり恐ろしい。
魔女は見つかるだろうか? 協力してもらえるか? 母上は助かるだろうか? 考えないようにしても良くないことばかりが頭の中に浮かんでくる。
「ヴィル様は皇太子だろ?この旅が終わって王宮に戻ったらもうこんな冒険をする機会はないかもしれない。行くしかないから恐れるより楽しんだほうがいい。俺だって始めから強かったわけじゃねぇが、どんな旅でも強敵が現れても、いつも楽しむようにしてるぜ」
行くしかないなら恐れるより楽しんだほうがいい、か。
「そうだな」
通常では考えられないほど太く高い樹々が並ぶ森の入り口を見上げ呟く。
今朝は朝日が登るとともに辺境伯邸を出て門に向かった。私が到着した時には既に冒険者メンバーが待っており、錚々たるメンバーに町民や冒険者達が何事かと集まっていた。
「いよいよだな」
大森林の奥地。
それは帝国1の冒険者パーティーである金色の逆鱗さえ入ったのことのない未知の世界だ。
「皇太子殿下、馬は私とドナートが連れて帰ります。どうか、どうか無事にお戻りいただけることを祈っております!!」
こらから長期で大森林に入り強力な魔物と戦うことになる。
先頭の邪魔になり餌が荷物になる馬は連れて行けない。
辺境伯は馬を引きながら涙を堪えるような顔で言う。
「必ず魔女を見つけて帰る。待っていてくれ」
私はくるりと振り向き使者団の顔を1人1人見つめる。
皆表情を引き締め覚悟を決めた目をしている。
「皆、この危険な旅に共に来てくれたこと、本当に感謝する。
私たちはこれから大森林へと入り、奥地に住むという魔女を探しに行く。大森林の奥地は未知の世界だ。広大な大地に、見たこともないような強力な魔物。だが私は諦めない! 身体が痛もうとも、心がすり減ろうとも、絶対に成し遂げてみせる! 行くぞ!」
「「「「「オゥッ!!!」」」」」
ウィルフレッドは前を向くと大森林の奥を見据え、深く息を吸い込んだ後足を踏み出した。
大森林に入り巨木の根で波打った地面を歩き始めて30分した頃、ナイトクレッセントの斥候役、猫獣人のアーテルが耳をピクピクッと動かす。
「来た」
「おぉ? さっそくお出ましだぜ!」
金色の逆鱗、竜人ゴルドは普段なかなか出せない本気を出せる相手かとワクワクと肩を回し始める。
「ゴルド、大森林と言ってもまだここは入り口をちょっと入ったところよん? そんな強敵はでないわ。それよりも皆さんの実力を見せてもらった方がいいんじゃないかしらん。」
そうゴルドをたしなめる金色の逆鱗の弓使いブリーゼさんは、とてもそのまともな言動からは考えられないような格好をしている。
大森林にそんな布面積の服で入って大丈夫なのか!? と思わず私が突っ込んでしまったほどだ。
正直目のやり場に困るのだが、着ている服は魔道具で見た目に反して防御力は最高らしい。
「この服は防御力が高いのに加えて布が少ないから戦闘時に邪魔にならないのよん!」と言われてしまっては何も言えない。
「ではまずは俺たちが行きます!」
そう宣言したのはBランクパーティー銀色の刃のリーダーシメオン。
奥からこちらに向かって真っ直ぐ走ってくるビッグボアが近づいてくるとスッとドナシアンが盾を持ち前に出る。
「ヌンッ!!」
腰を落とし盾を構えたドナシアンはビッグボアを正面から迎え打ち、そのままの勢いで弾き飛ばす。
「行くよー!」
そこにリーゼロッテが水魔法で水の刃を撃ち、ビッグボアが怯んだところでシメオンとレジスが斬り込む。
ドナシアンが盾で攻撃を受け流し、リーゼロッテとシメオンとレジスでビッグボアの体力を地道に、着実に削っていく。
傷が増え流れる血が多くなるにつれビッグボアがふらつき始める。
「っ、ここだっ!」
ビッグボアが木の根で脚を滑らせ体制を崩した瞬間、その隙を待っていたと言わんばかりにシメオンが飛び込み、斬っと大剣を振るとビッグボアの首元から血が噴き出した。
プギャァァァァァァー…………!!!!!
ドッ、と地面を揺らしビッグボアの巨体がひっくり返る。
「ふぅ~。緊張した!」
「流石だな! 幼なじみパーティーなだけあって連携が上手い。」
「ありがとうございます! 皇太子殿下にそう言ってもらえるなんて、光栄です!」
「これからしばらく一緒に生活するんだ。ウィルでいい。
今夜はビッグボアのステーキだな。
血の匂いで他の魔物が集まって来る前に解体をしてしまおう」
「はい! 水は私に任せてください!」
水魔法の得意なリーゼロッテが手を挙げる。
「……あの、私、吊るします。」
植物魔法が得意だと言っていた金色の逆鱗の魔法使いローズが手をかざすとあっという間に蔓薔薇が現れビッグボアを吊し上げた。
「おお、すごい!」
思わずそう声を上げると、ローズは人見知りなのか顔を真っ赤にしエルフ特有の長い耳をピコピコ動かしながらゴルドの後ろに隠れた。
「いや~、すまんな。こいつは極度の人見知りなんだ」
「いや、いいんだ。さぁ解体を始めよう」
やっぱりこれだけ人数がいると解体も早いな。
5Mもあるビッグボアがあっという間に肉になる。
腐らず食べれる分だけだけ持ち移動しようとバッグに肉を詰めていると、アーテルが耳を動かして周りの様子を探り始める。
どうやら血の匂いに釣られて魔物が集まってきているらしい。
「まだそこまでじゃないけど、集まってきてる」
「次は俺たちの番だ。時間を稼ぐので荷の準備を進めてください。……いくぞっ!」
ナイトクレッセントのリーダーノエは両手に短剣を持つと出し飛びかかってきたワイルドウルフの群れを相手する。
倒れたワイルドウルフの首元にある刺し傷は全て頸動脈を狂いなく突いていた。
「ノエ、危ない」
ワイルドウルフを相手するノエの横を矢が通り、今にもノエに飛びかかろうとしていたオークの左目を突き刺した。
「ありがとう」
いつの間に登ったのかヴァンは木の上から弓で援護している。
「荷の準備ができた! 急いでここから離れよう!」
倒した魔物は置いくしここを離れれば追ってはこないだろう。
斥候のアーテルを先頭に魔物が少ない方角を選び遭遇した魔物を倒しつつ森の奥へ向かって走る。
「っ! 囲まれた!」
ニヤニヤと牙を見せて笑うオーガ達が木々の間から現れる。
こいつらここで待ち伏せしていたのか!
「フォンセ」
「ああ」
糸使いフォンセが黒い革手袋をした手を振りかざすと、指から光る細糸が飛び出しオーガ達を縛り上げる。
「今のうちに」
糸に縛られ動けなくなったオーガ達の間を走り抜けると、さらに森の奥を目指して走り出した。
「大森林というのは魔物を解体するだけでも命懸けなのだな」
「まぁここはそこら中魔物だらけだからな!でも大森林の本当の怖さはここからだぜ。まだこの辺はこのレベルの魔物しか出てこないが、もう少し奥へ進むと他の場所じゃその地の主レベルの魔物がわんさか出てくる。そうなったら今のようにパーティーごとじゃなく全員で掛かって倒して進むしかねぇな」
大森林に入ったこともあり世界各地を旅したゴルドが言うなら間違いないだろう。
「だが俺達も奥までは入ったことねぇ。正直どれほどのレベルの魔物が出るのか想像もつかないぜ」
「私も王宮を出る前に資料を調べたが、やはり大森林の奥地について詳しく載っている資料は見つからなかった。見つかったのは大森林に住む竜の御伽噺くらいだ」
「まぁSランクパーティーの俺たちでさえ入ったことねぇんだ。過去を遡っても奥まで行ったやつはほとんどいないだろうよ」
ゴルドはワクワクするぜっ! と笑った。
「ゴルドは強いな。心まで強い」
私は皆を率いる者としていつも弱さは見せないようにしているが、今回ばかりはやはり恐ろしい。
魔女は見つかるだろうか? 協力してもらえるか? 母上は助かるだろうか? 考えないようにしても良くないことばかりが頭の中に浮かんでくる。
「ヴィル様は皇太子だろ?この旅が終わって王宮に戻ったらもうこんな冒険をする機会はないかもしれない。行くしかないから恐れるより楽しんだほうがいい。俺だって始めから強かったわけじゃねぇが、どんな旅でも強敵が現れても、いつも楽しむようにしてるぜ」
行くしかないなら恐れるより楽しんだほうがいい、か。
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