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「条件だと!? 皇太子殿下がここまで命懸けでっ……!」
「騎士団長! いい。その条件を聞かせてくれ」
騎士団長が怒るのも無理はないが、これだけは譲れないのだ。
「皇妃様に魔法を使うとなると王宮に行くことになるかと思います。しかし私は事情があり正体を明かすことができません。
ローブを脱がない、そして私の正体を詮索しないのであればお手伝いさせていただきます」
「皇太子殿下! 危険です!」
騎士団長はすぐさま反対の声を上げる。
まぁそりゃそうなるわよね。身元のハッキリしない人物を王宮に入れるだけでも難しいだろうに、顔も見せないとなると……。皇族を守る立場の騎士団長からしたらとてもじゃないが容認できないだろう。
「母上は何もしなくても治す手立てがなく死が近づいている様な状態だ。危害を加えるメリットはないよ」
「それでもです! 皇妃様以外に危害を加える可能性もあります!」
「それもグリフォンとフェンリルがいれば私達と王宮に入らずとも簡単にできるだろう」
たしかにそうだ。
騎士団長もそう思ったのか何も言い返せず、ぐぬぬぬ……と唸っている。
「今言ったように私は思っているのだが、皇太子である私は1人で決めて返事を出すことはできない。一旦皇帝陛下に確認を取っても良いだろうか?」
「もちろんです」
でも一旦戻って皇帝陛下に話をしてまた大森林に来るとなるとどれだけ時間がかかるか……。
今度こそ死者がでてしまうかもしれない。
「本当にリア殿には申し訳ないのだが、王宮まで一緒に来てはもらえないだろうか? 正直少しの時間も惜しいんだ。行ったり来たりしていてはせっかくリア殿が手を貸してくれると言っても間に合わなくなってしまうかもしれない」
「かまいませんよ。私と皇太子殿下だけならノアに乗ればすぐにでも王宮へ向かえますが……。」
そこまで言いチラッと騎士団長を見るとこちらをめちゃくちゃ睨んでる。
「私は皇帝陛下から皇太子殿下を任されている! もしグリフォンに乗っていくというのなら私も連れて行け!!」
それはノアでも無理だよ……。
流石に筋肉ダルマの騎士団長まで一緒に乗ったら飛べないと思う。
「話に入ってすまん。それは俺達からしてもやめてほしい。
正直ここまで来るのにも死にかけたくらいだ。騎士団長と皇太子殿下が抜けたら俺達だけじゃ町まで戻れねぇ」
たしかに。
「じゃあ全員で森を抜けてクレンセシアまで戻り、そこから私と騎士団長さんと皇太子殿下でノアとネージュに乗って王宮に向かうのはどうでしょうか?」
3人乗せては飛べないから駆けて行くしかないけど、ノアとネージュなら駆けるにしても馬より全然速い。
これ以上いい案はないと思うよ!
「そうだな、それでいこう。後はいつここを出るかだが……。怪我は治ったとはいえあれだけ出血したんだ。また戦うことを考えたら休息も必要だろうし、何日かここの家の前で野営をしてもよいだろうか?」
「でも皇妃様のことを考えたら出来るだけ早く王宮へ行きたいんですよね? それなら私達が戦闘を全て引き受けます。これで日数短縮できませんか?」
皇太子殿下は目をパチパチと瞬き、「すべて……?」と呟く。
「はい、すべて。私たちここに住んでいるんですよ? 全部戦闘を引き受けるくらい朝飯前です!」
「そ、そうか! 皆には少し無理をさせてしまうことになるが、明日1日身体を休め明後日ここを立とう。そしてリア殿、負担が大きくなってしまい申し訳ないがよろしく頼む」
話しがまとまると「それではまた」と言って何故か皇太子殿下が他のメンバーを連れて外へ出ようとする。
まさか家の前で野営をしていいかって言ってたの、本気だったの!?
外だと休めないだろうし家を使ってくださいと言っても、これだけの人数は迷惑になると言って聞かない。
私の元婚約者なら逆に「王族である私に外で寝ろと言うのか! 不敬だ!!」って怒り狂うところだよ。
同じ王子なのにこの違いよ。
狭いなら部屋を作ればいいじゃない。
皇太子殿下を外で寝かせて私が家の中で過ごすわけにはいかないので壁を掘って部屋を増やすことにした。
この家のある岩壁は幅も厚みもかなり大きいのでまだまだ掘っても大丈夫なはず! さすが大森林!
「じゃあ狭くならないように部屋を作ります!」と言って野営準備をするため外に出ようとする皇太子殿下の前で廊下の壁を風魔法で思い切って掘った。
壁を四角くくり抜いてはアイテムボックスへ仕舞い、四角くくり抜いては仕舞う。
皇太子殿下は始めはあんぐりと口を開けて驚いていたが、どんどんと目の前で広がっていく空間に、次第に考えることを放棄したような顔になる。
きっと完璧皇太子殿下のこんな顔は誰も見たことがないだろう。
「はい! できました! 男性はこちらの部屋使ってください!」
女性の方は人数が少ないから小さい部屋でいいよね。
くるっと後ろを向いてまた壁を四角くくり抜いてはアイテムボックスへ仕舞い、四角くくり抜いては仕舞う。
「はい! こっちは女性が使ってくださいね!」
「「「「「………………!!?」」」」」
皆んなが驚きで目を見張り呆然と立っている中、深く考えることをやめた皇太子殿下だけは「……ありがとう、この部屋を使わせてもらうよ」と微笑んだ。
「騎士団長! いい。その条件を聞かせてくれ」
騎士団長が怒るのも無理はないが、これだけは譲れないのだ。
「皇妃様に魔法を使うとなると王宮に行くことになるかと思います。しかし私は事情があり正体を明かすことができません。
ローブを脱がない、そして私の正体を詮索しないのであればお手伝いさせていただきます」
「皇太子殿下! 危険です!」
騎士団長はすぐさま反対の声を上げる。
まぁそりゃそうなるわよね。身元のハッキリしない人物を王宮に入れるだけでも難しいだろうに、顔も見せないとなると……。皇族を守る立場の騎士団長からしたらとてもじゃないが容認できないだろう。
「母上は何もしなくても治す手立てがなく死が近づいている様な状態だ。危害を加えるメリットはないよ」
「それでもです! 皇妃様以外に危害を加える可能性もあります!」
「それもグリフォンとフェンリルがいれば私達と王宮に入らずとも簡単にできるだろう」
たしかにそうだ。
騎士団長もそう思ったのか何も言い返せず、ぐぬぬぬ……と唸っている。
「今言ったように私は思っているのだが、皇太子である私は1人で決めて返事を出すことはできない。一旦皇帝陛下に確認を取っても良いだろうか?」
「もちろんです」
でも一旦戻って皇帝陛下に話をしてまた大森林に来るとなるとどれだけ時間がかかるか……。
今度こそ死者がでてしまうかもしれない。
「本当にリア殿には申し訳ないのだが、王宮まで一緒に来てはもらえないだろうか? 正直少しの時間も惜しいんだ。行ったり来たりしていてはせっかくリア殿が手を貸してくれると言っても間に合わなくなってしまうかもしれない」
「かまいませんよ。私と皇太子殿下だけならノアに乗ればすぐにでも王宮へ向かえますが……。」
そこまで言いチラッと騎士団長を見るとこちらをめちゃくちゃ睨んでる。
「私は皇帝陛下から皇太子殿下を任されている! もしグリフォンに乗っていくというのなら私も連れて行け!!」
それはノアでも無理だよ……。
流石に筋肉ダルマの騎士団長まで一緒に乗ったら飛べないと思う。
「話に入ってすまん。それは俺達からしてもやめてほしい。
正直ここまで来るのにも死にかけたくらいだ。騎士団長と皇太子殿下が抜けたら俺達だけじゃ町まで戻れねぇ」
たしかに。
「じゃあ全員で森を抜けてクレンセシアまで戻り、そこから私と騎士団長さんと皇太子殿下でノアとネージュに乗って王宮に向かうのはどうでしょうか?」
3人乗せては飛べないから駆けて行くしかないけど、ノアとネージュなら駆けるにしても馬より全然速い。
これ以上いい案はないと思うよ!
「そうだな、それでいこう。後はいつここを出るかだが……。怪我は治ったとはいえあれだけ出血したんだ。また戦うことを考えたら休息も必要だろうし、何日かここの家の前で野営をしてもよいだろうか?」
「でも皇妃様のことを考えたら出来るだけ早く王宮へ行きたいんですよね? それなら私達が戦闘を全て引き受けます。これで日数短縮できませんか?」
皇太子殿下は目をパチパチと瞬き、「すべて……?」と呟く。
「はい、すべて。私たちここに住んでいるんですよ? 全部戦闘を引き受けるくらい朝飯前です!」
「そ、そうか! 皆には少し無理をさせてしまうことになるが、明日1日身体を休め明後日ここを立とう。そしてリア殿、負担が大きくなってしまい申し訳ないがよろしく頼む」
話しがまとまると「それではまた」と言って何故か皇太子殿下が他のメンバーを連れて外へ出ようとする。
まさか家の前で野営をしていいかって言ってたの、本気だったの!?
外だと休めないだろうし家を使ってくださいと言っても、これだけの人数は迷惑になると言って聞かない。
私の元婚約者なら逆に「王族である私に外で寝ろと言うのか! 不敬だ!!」って怒り狂うところだよ。
同じ王子なのにこの違いよ。
狭いなら部屋を作ればいいじゃない。
皇太子殿下を外で寝かせて私が家の中で過ごすわけにはいかないので壁を掘って部屋を増やすことにした。
この家のある岩壁は幅も厚みもかなり大きいのでまだまだ掘っても大丈夫なはず! さすが大森林!
「じゃあ狭くならないように部屋を作ります!」と言って野営準備をするため外に出ようとする皇太子殿下の前で廊下の壁を風魔法で思い切って掘った。
壁を四角くくり抜いてはアイテムボックスへ仕舞い、四角くくり抜いては仕舞う。
皇太子殿下は始めはあんぐりと口を開けて驚いていたが、どんどんと目の前で広がっていく空間に、次第に考えることを放棄したような顔になる。
きっと完璧皇太子殿下のこんな顔は誰も見たことがないだろう。
「はい! できました! 男性はこちらの部屋使ってください!」
女性の方は人数が少ないから小さい部屋でいいよね。
くるっと後ろを向いてまた壁を四角くくり抜いてはアイテムボックスへ仕舞い、四角くくり抜いては仕舞う。
「はい! こっちは女性が使ってくださいね!」
「「「「「………………!!?」」」」」
皆んなが驚きで目を見張り呆然と立っている中、深く考えることをやめた皇太子殿下だけは「……ありがとう、この部屋を使わせてもらうよ」と微笑んだ。
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