婚約破棄されたけど前世が伝説の魔法使いだったので楽勝です

sai

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パーティー2

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中に入ると、さまざまな感情の視線が突き刺さる。

「まぁ、お隣の女性は誰かしら」

「どういうこと!? お相手がいるなんて、聞いていないわっ!」

「見たことがないな。他国の令嬢か?」

「とっても素敵なドレス……、見たことがない形だわ!」
 
 会場中の人が私を見定めようとしている。
 そんな視線に負けないように、胸を張って背筋をピンと伸ばし、微笑みを絶やさず優雅に。決して心の焦り、不安を見せてはならない。

 私達が会場に入り奥までたどり着くと、皇帝陛下が入ってくる。
 私達も、私達に注目していた貴族達も一斉に頭を下げたことで、私たちへの視線が途切れた。

「面を上げよ。本日はいつもより開催までの日が短かったにもかかわらず、パーティーへの参加感謝する。領地にいた者は期間の短い中帝都に来るのは大変だっただろう。その分素晴らしい料理や酒を明いっぱい用意させてもらった。ぜひ楽しんでほしい」

 私と王国の事情で準備期間が1ヶ月しかなかったからね。領地にいた人達は手紙が届いてから急いで領地を出て来たことだろう。

「さて、本日のパーティーなのだが、皆に伝えたいことがある。ウィルフレッド、アールグレーン嬢」

 前へ。と言われ前へ進むと、1度皇帝へと向かった視線がまた私たちへと戻ってきた。

 娘を婚約者に据えたかったのか、「まさかっ!」と焦る男性。

 婚約者の立場を狙っていたのか、「いやぁっ!!」と小さく叫び口元を押さえる令嬢。

 とうとう皇太子殿下もお相手を見つけたのかっ! と嬉しそうな老貴族。

 反応はさまざまだ。

「彼女はルボワール王国のオレリア・アールグレーン公爵令嬢。我が息子、ウィルフレッド・ラルージュと婚約することとなった」

 そう決定的な言葉が出ると、会場がワッと盛り上がる。

 よかった。それぞれ色々な思いはあるだろうが、表面上は受け入れてもらえたみたい。

 そう思っていると、1人の男が声を上げる。

「お待ちくださいっ! オレリア・アールグレーンというと、ルボワール王国を殺人未遂の罪で追放されたという令嬢ではございませんか!?」

 その言葉が放たれた瞬間、お祝いムードだった会場は一気にザワザワと騒がしくなる。

「殺人未遂ですって!?」

「そんな令嬢を皇太子殿下の婚約者に……?」

「私もそのような噂を聞いたことがありますわっ!」

 王国と帝国の間に大森林があると言えど、船での交易もある。やっぱり噂は届いているようだ。

「静まれっ!」
 
 皇帝陛下が声を上げると、一気に静寂が訪れた。

「その件については今からきちんと説明しよう。正式な知らせはしていないが、我が国の皇妃クリスティナ・ラルージュが病に倒れていることは皆知っていると思う。内密にセフィーロ神聖王国から実力のある神官を呼び寄せたが、皇妃の容体はどうにもならないところまで進んでいた」

 急に始まった皇妃様の話に、なぜ今皇妃様の話なのか? と皆首を傾げていたが、皇妃様の想像以上にひどい容体に皆心を痛めた顔をしている。

「もう撃つ手がない状況の中、私はある噂を耳にした。曰く、伝説の魔物グリフォンとフェルリルを従えた魔女が大森林に住んでいると。曰く、数100年を生きる魔女だと」

 グリフォンとフェルリルだと!? 急に出てきた伝説の魔物の話に大抵の人は驚きを浮かべているが、街中を走るグリフォンとフェンリルの話を聞いたのか中には落ち着いている人も見られた。

「そこで皇太子が言ったのだ。その者なら皇妃を助けられるのではないか、と。到底信じられる話ではなかったが、皇妃にはもう他に助かる術がなかった。そこで私は藁にもすがる思いでその魔女殿へ使者団を出すことにしたのだ。そして私は金色の逆鱗へと依頼を出した」

  金色の逆鱗。この国1の冒険者パーティーの名に、会場が俄に湧き立つ。

「そんな時、ウィルフレッドが自分も使者団に加えて欲しいと言い出した。ウィルフレッドはこの国の皇太子。そんなことは許されないと伝えたが、ウィルフレッドの意志は固かった。私はその確固たる意志に押されウィルフレッドの参加を認めたが、この国の皇太子を失うわけにはいかない。そこでこの国最強の騎士、近衛騎士団長ジルヴェスター・フォシュマンを皇太子につけることにした。魔女が住むのは大森林の奥地。過酷な旅であったと聞いている。ひと月以上大森林を探すが魔女は見つからない。もう限界だ、帰還するしかないという時に、ウィルフレッド達使者団は大森林の奥地に家を見つけた」
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