90 / 113
セフィーロ神聖教国
しおりを挟む「リアー! これも仕舞っておいてくれっ!」
ノアがそう言いながらドンっと甲板に大きな魚の魔物を乗せる。
「こっちも頼む! ノアー! 引き上げてくれっ!」
今度はネージュが魔法で魔物を仕留めたらしく、空を飛べるノアに引き上げるように頼んだ。
「はいはい」
教国へ向かう間、昼間はずっとこの繰り返しだ。
こんなに狩って食べきれないよ! と言いたいところだけど、ノアとネージュなら食べ切ってしまうだろう。
「もうそろそろ着きそうだよ」
「ウィルフレッド様もそう言っているし、これが最後ね」
「「えぇーーー!」」
そう言ってノアとネージュが並んだのよりも大きい魚の魔物をアイテムボックスにしまって陸の方へと目を向ける。
「うわぁ! 綺麗……!」
教国の建物は主に石灰を使って作られており、船上から見える白い街並みがとても美しい。
……けど、ピカピカの鎧が残念……。
聖女の出迎えとして港にはピッカピカに太陽の光を反射し輝く鎧を纏った集団が。
せっかく海から真っ白な街を眺めるチャンスだったのにっ!
反射が眩しいっ! 惜しいっ!!
「なんだあれは。 眩しくて仕方ない。 森の奥にいるシルバーバグにそっくりだ」
「あの銀色の虫か。確かに似ているな。吹っ飛ばしていいか?」
「だめー!! あれはこの国を守ってる騎士なんだよ! 国際問題になっちゃうよ!」
ノアもネージュも相当眩しいようで、目元に皺を寄せ港を睨みつけている。
けれどこのピカピカの鎧もこの国の聖騎士の証であり、みんなの憧れなのだ。シルバーバグと一緒になんてしたら大変なことになってしまう。
「クッ……、クククッ……」
どうやらウィルフレッド様のツボには入ったみたいだけどね。
「クッ……、ふぅ……。さて、それじゃあ下に降りようか」
ウィルフレッド様は息を整えるとエスコートするように肘を差し出した。
さすが皇太子殿下。立ち直るのも早い。
「聖女様、皇太子殿下、お迎えに上がりました! 私は聖騎士団団長のダーヴィットと申します!」
「ヴィルフレッド・ラルージュだ」
「オレリア・アールグレーンと申します」
というか、私は王国の公爵令嬢で皇太子殿下の婚約者。なのに皇太子殿下より先に私を呼ぶなんて本来あってはいけないことなんだけど……。
これは、教国からしたら皇太子殿下よりも聖女の立場が上だということなのだろう。
チラリとウィルフレッド様を見るが、ウィルフレッド様は微笑みを浮かべるだけ。
あまり気にしていないらしい。というか、教国からしたらそうだよね、という感じだろうか。
「さ、聖女様も殿下も馬車にお乗りください」
でも一度ここで言っておかなくては。
「騎士団長様。私はまだ聖女であると証明されたわけでも任命されたわけでもございませんので、どうぞアールグレーンとお呼びくださいませ」
「いえいえ! 聖女様のお力はセサル様に聞いております! セサル様が聖女であると言うならば間違いないはずです!」
いや、ダメでしょう。 教国にとって聖女って重要な存在じゃないの!? そんな簡単に認めていいもの!?
そう思うが、団長の後ろに並ぶ団員たちも不思議には思っていないようだ。それどころかむしろキラキラとした瞳で見つめてくる。
キラキラなのは鎧だけでもうお腹いっぱいです……。
そして団長と、いえいえ……! いやいや……! というやり取りを何度も繰り返した結果。
負けた……。
「いやぁ、聖女様っ! お待ちしておりましたっ!」
そして現在は宮殿でその元凶と対峙している。
73
あなたにおすすめの小説
婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~
ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。
そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。
シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。
ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。
それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。
それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。
なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた――
☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆
☆全文字はだいたい14万文字になっています☆
☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆
勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる
千環
恋愛
第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。
なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を助けようとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。
ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!
沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。
それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。
失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。
アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。
帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。
そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。
再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。
なんと、皇子は三つ子だった!
アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。
しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。
アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。
一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる