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回復魔法披露
しおりを挟む「おはようございます! 聖女様っ! 今日は任命式ですよっ!」
朝食を食べ終わったところでセサルさんがやってくる。
朝っぱらからテンションが高い……。
「セサル様。私はまだ聖女ではありませんよ。回復魔法を皆んなに見せて、認められてから、任命式ですよ」
「認められるに決まっていますっ! 認めない人など逆に私が認めませんっ! 皆んな私のように魅せられればいい!」
なんだかみせるの意味が私と違うような……。
「本来ならば聖女様の晴れ舞台、最高の服を仕立てるところなのですが……」
今回私とウィルフレッド様はこの国に長期滞在できるわけではないので、服を仕立てたり、任命式の準備に時間をかけることができなかった。
私は特に予定はないけれど、皇太子であるウィルフレッド様はそうはいかないのだ。
本来ならば数ヶ月をかけて豪華に任命式やらお披露目やらパレードをするらしいが、今回は最短での開催になる。
「いや、でも! この服に勝るものはたとえ時間をかけても作ることはできませんよ!」
「みてくださいっ!」と言ってセサルさんと共に来た修道女達が広げた服は、見ただけで素晴らしいとわかる光沢のある白い服に金糸と銀糸で刺繍をし、宝石を縫い付けた素晴らしいものだった。
「こちらは二百年前のパーフェクトヒールを使えた聖女が着ていたとされるものです」
「二百年前の……?」
目の前にある服はとても二百年前のものとは思えない美しさだ。
「そんな昔の物とは思えないほど美しいでしょう? この服は服であって自動修復機能や浄化機能のついた魔道具でもあるのです。もちろんサイズ調節機能もついていますよ。これなら仕立てたものでなくても聖女様にピッタリです」
「こんな貴重な服を着てもよいのですか?」
この服は魔道具としても希少だけど、これが本当に二百年前の聖女様の服ならばものすごく貴重で歴史的にも価値のあるものだろう。
「もちろん! そのために聖下からこの服を使用する許可をもぎ取ってきたのですからっ!」
「もぎとっ…!?」
大丈夫なの!? それっ!
「あ、もちろん聖下にもきちんと納得していただきましたよ! 歴代最高の聖女には歴代最高の服を、と。こんな晴れ舞台にサイズも格も合わない服なんて着せられませんからね! 聖女様の回復魔法を見たら皆んな心酔すること間違いなしですが、初めだけだとしても他の神官に舐められるわけにはいきませんからっ!」
確かに公爵令嬢として生きてきた私には身なりや初めの印象の重要性はとてもよくわかる。
ここはありがたくお借りしよう。
ささ、早速準備を。
そう言うとセサルさんは部屋を出ていき、修道女達が準備を始める。
服を剥ぎ取られ、湯浴みに香油でのマッサージ、髪や化粧。頭のてっぺんからつま先まで完璧だ。
こういうのはどこの国でも変わらないのね……。
「お綺麗ですわ」
「回復魔法だけでなく美しさも歴代最高の聖女様ですわね」
いつも通りのお世辞を聞き流しながら準備が終わり、いよいよ回復魔法の披露がはじまる。
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